大腸がんの手術後のストーマ(人工肛門):どういった時に作るのか?日常生活における管理方法について
大腸がんの手術には、人工肛門(ストーマ)を作るものがあります。人工肛門は日常生活にどのような影響を与えるのでしょうか?ストーマケア、ストーマ装具の注意点など、大腸がん手術後の人工肛門について説明します。
1. 人工肛門(ストーマ)とは?
人工肛門(ストーマ)とは、肛門から排便ができなくなったときに、人工的にお腹に作る排泄口のことです。お腹に穴を開けて自分の腸とつなぎ合わせ、便を出します。出てきた便は、人工肛門に取り付けた袋(パウチ)に収めることになります。
人工肛門には、一時的に人工肛門を作って後になって閉じる一時的人工肛門と、永久に閉じない永久人工肛門があります。人工肛門を作るために使う腸は多くの場合、結腸(大腸の一部)または小腸です。腸の内側は粘膜に覆われピンク色をしているので、人工肛門を作った場合は腸の内側の粘膜部分がお腹の表面に見えることになります。
2. 人工肛門が必要な手術、必要ない手術
人工肛門が必要となる手術に関して説明します。
大腸がんの中でも肛門に近い直腸に
一方、肛門に近い直腸にがんがあった場合でも肛門を残す手術法もあります。内
肛門の周りには、肛門を開いたり閉じたりする肛門括約筋(こうもんかつやくきん)という筋肉があり、内側にある内肛門括約筋と外側にある外肛門括約筋に分かれます。
内肛門括約筋切除術は、内肛門括約筋のみを切除し、外肛門括約筋を残すという手術方法です。外肛門括約筋が残っていれば肛門として機能するため、この方法ですと人工肛門を作る必要はありません。
しかしデメリットとしては、これまで内肛門括約筋と外肛門括約筋で担っていた肛門の機能の片方がなくなるため、その機能が弱くなることがあります。つまり、便が知らず知らずのうちに漏れてしまうことや、ガスが出やすくなるといったことが起きてしまいます。この手術方法は高度な技術が必要になりますので、行える施設は限られます。
人工肛門と肛門を残せる内肛門括約筋切除術のどちらも選択できる場合には両者のメリット・デメリットを医師からしっかりと聞いて選択することが大切です。
他の手術方法に関しては「大腸がんの手術法」をご覧ください。
3. ストーマケアとは
人工肛門を作るとき気になるのは、人工肛門って危なくないの?人工肛門をつけたままこれまで通り生活できるの?といったことではないでしょうか。
人工肛門にはパウチ(袋)を装着して便を取り出す管理が必要です。このことをストーマケアと言います。
排便方法には、腸の活動によって自然に排便されるのに任せる自然排便法と、意図的に腸を刺激して排便する洗腸排便法があります。意図的に腸を刺激する場合、人工肛門からぬるま湯を入れることで、浣腸(かんちょう)のような効果で排泄させることができます。一度洗腸すればしばらくの間排便はされませんが、洗腸するのに時間がかかることや、誤った方法で行うと腸に穴が開く危険性があるというデメリットもあります。
人工肛門の周りでは肌のトラブルも起きやすくなりますので、清潔にし適切な管理を行うことが必要です。
4. ストーマによって日常生活で困るかもしれないこと
人工肛門をつけているということで完全にできなくなる日常生活はほとんどありません。例えば、食事は通常と同じように摂ることができますし、入浴もできます。
一方、ストーマをつけていることで不便を感じる場面はあります。例えば、外出時にはストーマのトラブルが起きても良いように予備のパウチを持ち歩いたほうが安心でしょう。またストーマは基本的に臭いが漏れにくい構造にはなっていますが、それでも気になってしまうという人もいます。
5. 人工肛門のサポート
永久人工肛門を作った場合、申請すれば身体障害者手帳が交付されます。住民票のある市区町村に問い合わせ、申請しましょう。手帳を持っていると、助成制度としてストーマ装具の給付、公共交通機関・携帯電話料金の割引などを受けることができます。
また、非常に大事なサポートになるのが、患者会や、人工肛門を作った方に便利なトイレを検索できるシステムです。サポートを受けられるコミュニティやサイトをまとめましたので、「ストーマ(人工肛門)の情報サイト一覧」をご覧ください。