だいちょうがん
大腸がん
大腸の粘膜にできるがん。国内のがん患者数がもっと多く、死亡者数も女性において原因の1位
20人の医師がチェック 305回の改訂 最終更新: 2024.01.10

大腸がんの名医はどこにいる? 病院の選び方とセカンドオピニオン

自分が大腸がんの治療を受ける時を考えてみてください。気になることは何でしょう?

どの病院に行ったら良いのか迷ったり、名医に診てもらいたいといった思いが浮かんでくるでしょう。ここでは大腸がんの病院の選び方やセカンドオピニオンに関して述べていきます。

1. セカンドオピニオンとは?

近年、セカンドオピニオンという言葉をよく聞きます。これは何のことでしょうか?

セカンドオピニオンとは主治医以外に治療について意見を聞くシステムのことです。セカンドオピニオンはより正しい治療を選択するうえで有用な手段です。

がんの治療においては判断が難しい場面に直面することがあります。そんな時にセカンドオピニオンを利用すれば、別の角度から客観的な意見を聞くことができます。

セカンドオピニオンを求めるべきかためらってしまう人もいます。今診てもらっている主治医に対して気まずいという意見をよく耳にします。しかし、そんなことはありません。セカンドオピニオンは患者さんのまっとうな権利ですし、最適な治療を探して悩んでいる主治医にとってもありがたい話です。他の医者の話も聞いてみたいと思われたら遠慮なくセカンドオピニオンを求めてください。

2. セカンドオピニオンに必要なもの

セカンドオピニオンを受けるために必要なものがあります。ただ身一つで行けばよいというものではありません。限られた時間で、きちんと相談して回答を得るために準備しておくものがあります。

当たり前のことですが、まずは相談先のセカンドオピニオン外来の受診予約が必要です。突然相談を受けたくなっても、予約なしに病院に向かってもまず門前払いになってしまいます。というのも、セカンドオピニオン外来は特殊な外来で、通常の外来よりも時間をかけてしっかりと話を進めていく必要があるので、飛び込みで受診しようとしても外来がすでに埋まっていることがほとんどだからです。そこを「もう病院に来たのだから受診させてくれ」と言っても無い袖は振れません。早く意見を聞きたい気持ちはわかりますが、落ち着いて相談するためには、きちんと手順を踏む必要があります。

また、いつもかかっている医者に診療情報提供書紹介状)を作ってもらう必要があります。セカンドオピニオンで相談する医者は今まであなたのことを診てきたわけではありません。それどころか初めましての関係ですので、今までの病気の経過を全く把握していません。今の病気の状態を伝えてより正確に判断してもらうようにするものが診療情報提供書になります。診療情報提供書には以下の情報が書いてあります。

  • 現病歴:今までの病気に対して行ってきた検査や治療と今後の方針
  • 既往歴:今までにかかったことのある病気
  • 薬歴:今までに治療で用いた薬
  • アレルギー歴:アレルギーを起こしたことのあるもの

これ以外にも特記事項として必要事項を書き記すこともあります。この書類の中には非常に注意を要する情報が入っているため、じゃあ今すぐ書いてというわけにはいきません。医師は忙しい業務の合間を縫って書類を書いており、書類を希望している人は自分だけではありません。通常は頼んだその場で受け取れることはなく、後日作成した書類を取りに行く段取りとなります。

診療情報提供書に加えて検査の結果も持っていく必要があります。血液検査や画像検査などは現在の病気の状況や身体の状況を把握するためには重要なものとなります。最近では画像検査はCD-ROMで持っていけることも多いので、セカンドオピニオンに行く前に、画像検査の結果も持っていく必要があるのかを主治医に確認してみましょう。

また、セカンドオピニオンは重要ですが、セカンドオピニオンを追いかけるばかりに治療が決定的に遅れるようなことがあれば本末転倒です。セカンドオピニオンを受ける前に、現状は治療をなるべく速やかに行うべきなのか少しは待てるのかを主治医に確認することも大切です。病気を抱えているのも治療を受けるのもご自身なのですから、遠慮なくたずねてください。

3. 名医は誰なんだ?

大腸がんになってしまった場合、多くの人は名医にかかりたいと思うことでしょう。名医を探さなきゃと思う気持ちはわかります。しかし、名医ってなんだろうという問いに答えられる人はなかなかいません。もちろん、知識がない、経験がない、相手の気持がわからないといった医師が名医でないことはわかります。しかし、知識も経験もコミュニケーションスキルも持っていればみな名医というわけではありません。

誰かが「あの先生は名医だから」と言って紹介してくれたとします。果たしてその先生はあなたにとって名医でしょうか? 実際に会ってみると、そうかなあと思うことも少なくないのです。

周りの人に「あなたはきっとあの人と結婚した方がいいわよ」と言われた人と結婚できるかと考えてみてください。もちろん結果的に結婚することもあると思いますが、まずは会ってから考えるのが普通だと思います。これは名医を選ぶときにも言えることなのです。つまり、名医は人に決めてもらうのではなく自分で決めるものなのです。

そのためには名医かどうかを判断する基準を決めておく必要があります。どういったものがあるのか考えてみましょう。

4. 名医かどうかを判断する基準

名医の判断基準として考えられる主なものは以下になります。

  • 手術がうまい
  • 経験が豊富
  • 知識が豊富
  • 人当たりがよい
  • なんとなく馬が合う
  • 患者の状況を察知して案じてくれる

これ以外にも判断の軸は多数あると思います。これらの条件をすべて満たす医師は世の中を広く探してもほとんどいないでしょう。ここで決して忘れてはいけないのは、名医かどうかを判断するのは自分自身なのだということです。上に挙げた判断基準の中でどれを重視するかを自分で決めておくと良いでしょう。しかし、何より大切なのは自分の気持ちです。基準を満たしていてもなんとなく話していて嫌だなと思う相手は、ご自身にとって名医ではないと思います。自分の大事にしている判断基準を整理して、自分の気持ちを大切にしてください。みなさん一人ひとりにとっての名医が見つかることを願っています。

5. 病院の選び方

大腸がんの治療は自分にとっての名医に任せるのが一番です。しかし、名医がいる施設が遠いときは通うだけで身体的にも経済的にも大変になってきます。もちろんそれでも頑張って通院するという選択肢もあります。

しかし、身近にいる医師をないがしろにしてはいけません。身近にいる医師は何かあったときにすぐに診てくれます。実は忘れてはいけないのが、こうしてすぐに見てくれることも名医の一つの判断材料なのです。自分の身近で実直に診てくれる医師はすごくありがたい存在なのです。

がんは進行すると、完治しない限り身体機能を蝕んできます。通院の負担が少ないということは大きな価値があります。また、身近なかかりつけ医と治療を任せるがんの専門的な医師の両方を持つことも可能です。医者同士で情報の共有も可能ですので、自分にあった治療体制をオーダーメイドしていきましょう。