こうがしゅ(あくせいしんけいこうしゅ)
膠芽腫(悪性神経膠腫、グリオブラストーマ)
脳腫瘍の一種である神経膠腫のなかで、最も悪性度が高いもの
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最終更新: 2022.02.25
膠芽腫(悪性神経膠腫、グリオブラストーマ)の基礎知識
POINT 膠芽腫(悪性神経膠腫、グリオブラストーマ)とは
悪性の脳腫瘍で、最も悪性度が高いとされています。高齢者に多く発生し、経過は非常に厳しく、5年生存率は10%以下とされています。頭痛やけいれん、手足の動かしにくさ、しゃべりづらさなどさまざまな症状が現れます。診断のために頭部CT検査や頭部MRI検査などが行なわれます。手術と放射線、抗がん剤を組み合わせた治療が行なわれますが、再発が多く完治は難しいとされます。
膠芽腫(悪性神経膠腫、グリオブラストーマ)について
膠芽腫(悪性神経膠腫、グリオブラストーマ)の症状
- 主な
症状 - 頭痛
- けいれん
- 運動
麻痺 - 感覚麻痺
失語 、構音障害 など
- 病気が進行すると、
意識障害 や精神症状(性格の変化や認知症様の症状)がでる - 病状の進行は早いことが多く、週単位で進行する
膠芽腫(悪性神経膠腫、グリオブラストーマ)の検査・診断
- 画像検査:
腫瘍 の位置や形、大きさが分かる頭部CT 頭部MRI :MRI の方がより詳しく分かる
- 組織検査
- 手術でとった腫瘍の一部を、顕微鏡などを用いて、腫瘍の種類や
悪性度 を調べる
- 手術でとった腫瘍の一部を、顕微鏡などを用いて、腫瘍の種類や
- 遺伝子検査
- 手術でとった腫瘍の遺伝子異常を調べる
- 遺伝子異常は、治療の選択に役立つことがある
膠芽腫(悪性神経膠腫、グリオブラストーマ)の治療法
- 様々な治療法が研究され、治療は日々進化している
- 標準的な治療は、まず開頭手術でできるだけ多く
腫瘍 を摘出し、その後すぐ放射線治療 と化学療法 (テモダール®)を同時に行う - 手術
- 手術前の
症状 を悪化させない範囲で、腫瘍を可能な限り摘出する - 腫瘍の発生した部位が手足の動きや言語をつかさどっているなどの場合は、一部のみの摘出になることがある
- 手術前の
- 放射線治療
- 膠芽腫は実際に腫瘍と見えている部分の周囲までひろがっていることが多いため、腫瘍とその周囲に放射線を照射する
- 標準的な治療法では、放射線治療が6週間行われる
- 高齢者の場合、脳への副作用が大きく、放射線の量を減らすことが推奨される
- 化学療法
- テモダール®(テモゾロミド)という
抗がん剤 を使用する - 放射線治療と同時に化学療法を行った後、テモダール®単独で化学療法が継続される
- その他に、ギリアデル®やアバスチン®という薬剤を使用する場合もあるが、明らかな効果は確認されていない
- テモダール®(テモゾロミド)という
- 再発することもあり、その場合さらに
予後 は悪いと言われている
膠芽腫(悪性神経膠腫、グリオブラストーマ)に関連する治療薬
アルキル化剤
- 細胞増殖に必要なDNAに作用しDNA複製阻害作用やDNAの破壊作用により抗腫瘍効果をあらわす薬
- がん細胞は無秩序な増殖を繰り返し転移することで細胞を障害し組織を壊す
- 細胞の増殖には遺伝情報をもつDNAの複製が必要となる
- 本剤は薬剤中のアルキル基というものがDNAに結合することで抗腫瘍効果をあらわす
分子標的薬(ベバシズマブ〔抗VEGFヒト化モノクローナル抗体〕)
- がん細胞の増殖に必要なVEGFという物質の働きを阻害し血管新生を抑えることで抗腫瘍効果をあらわす薬
- がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
- がん細胞の増殖には、がんに栄養を送る血管の新生が必要となり血管内皮増殖因子(VEGF)という物質が血管内皮の増殖や血管新生に関与する
- 本剤はVEGFに結合しVEGFの働きを阻害することで腫瘍組織の血管新生を抑制する作用をあらわす
- 本剤は他の抗がん薬の効果を高める作用もあらわす
- 本剤はがん細胞の増殖などに関わる特定分子の情報伝達を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす分子標的薬となる