2016.02.25 | ニュース

電場をかけてがん細胞が増えるのを止めるTTFとは

695人を検証

from JAMA

電場をかけてがん細胞が増えるのを止めるTTFとはの写真

脳にできる膠芽腫(こうがしゅ)は数多くのがんのなかでも最も悪性度が高い種類で完治は非常に困難です。電磁気を利用したTTFという新しい治療法が、初発の膠芽腫の増大を止めるのに有効かどうかスイスの研究チームが検証しました。

TTF(tumor treatment field 交流電場腫瘍治療システム)は、頭皮から電極パッドで脳腫瘍にむけて弱い電場を持続的にあてることで、腫瘍が細胞分裂しようとしても分裂の途中で異常が起こり、増殖できないようにする新しい治療法です。

 

◆初発膠芽腫の695人を検証

研究チームは初発の膠芽腫で、化学放射線療法を受けた後の患者さん695人を、テモゾロミド(経口の抗がん剤)とTTFを併用した群とテモゾロミドのみ使用の群に2対1でランダムに割りつけて効果を検証しました。

 

◆無増悪生存期間が3か月・生存期間が5か月長かった

中間解析時にはTTFとテモゾロミド併用の群210人、テモゾロミドのみ使用した群が105人でした。無増悪生存期間(治療後、症状が進行せず安定した状態の期間)はTTF併用群の半数が7.1ヶ月以上で、テモゾロミドのみの群で半数が4か月以上でした。

全生存期間はTTF併用が半数で20.5か月以上、テモゾロミドのみで半数が15.6か月 以上でした。

 

TTFを併用すると、症状が進行せず安定した状態がつづく期間が3か月長くなり,全生存期間が5か月長かったという結果でした。

 

中間解析の結果を受け試験は早期終了しました。

FDA(米国食品医薬品局)は既に膠芽腫の再発についてこの装置を承認していましたが、この結果をうけ、初発の膠芽腫についてもこの装置の使用を承認しました。

 

2015年3月に厚生労働省より再発の膠芽腫への治療が承認され、日本でも研究・研修が行われています。ただし、2016年2月時点ではまだ保険収載されておらず、使用するためには高額の費用がかかります。また、まだ有効性のメカニズムが十分ではないという論評もあり、現時点では不明なことが多い方法です。将来標準的な治療に加わる価値があるかどうかは、これから試される段階にあります。

参考文献

Maintenance Therapy With Tumor-Treating Fields Plus Temozolomide vs Temozolomide Alone for Glioblastoma: A Randomized Clinical Trial.

JAMA. 2015 Dec 15.

[PMID: 26670971]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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