しょくどうがん
食道がん
食道の表面の粘膜にできたがん。たばこ、飲酒などが一因であると言われている
15人の医師がチェック 234回の改訂 最終更新: 2022.10.24

食道がんの基礎知識

POINT 食道がんとは

食道の粘膜にできるがんです。喫煙者やアルコール多飲者に多いことが分かっています。食道がんの初期には症状が出ることはありませんが、病状が進行すると飲み込んだ際の違和感やしみる感じを感じるようになります。また、さらに進行すると声がれや体重減少が起こります。 症状や身体診察に加えて、血液検査・画像検査・内視鏡検査を行って診断します。治療法には手術・化学療法(抗がん剤治療)・放射線治療があります。食道がんが心配な人や治療したい人は、消化器内科や消化器外科を受診して下さい。

食道がんについて

  • 食道の粘膜の部分から発生するがん
    • 食道の壁は層構造になっていて、内側に粘膜があり外側に筋肉の層がある
    • がんは粘膜から発生して徐々に大きくなり、進行すると壁の深いところにある筋肉の層に入り込んでいく
    • さらに進行すると血管やリンパ管にがん細胞が入り、他の臓器やリンパ節転移する
  • 男性に多く、年間約2万5千人に食道がんが発生し、約1万人が食道がんで死亡している
  • 原因
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食道がんの症状

  • 主な症状
    • 初期の食道がん(がんが粘膜の部分だけに存在する状態)では症状が出ないことが多い
    • 進行の程度によって軽い症状が出ることがある
      • 食べ物がわずかにしみる感じる
      • 飲み込んだときにものが通る感じがする
    • がんがさらに進行して大きくなると食道の内側が狭くなる
      • (特に固めのものが)飲み込みづらい
      • 体重が減る
    • がんの影響がしゃべる時に必要な神経(反回神経)に及ぶと、声がかすれること(嗄声)もある
症状の詳細

食道がんの検査・診断

  • 上部消化管造影検査(食道造影検査)
    • 造影剤を飲み込んでレントゲン撮影を行い、食道の壁に変形がないかを調べる
  • 上部消化管内視鏡検査
    • 内視鏡を使って食道の壁に異常がないかを観察する
    • 病気の深さを調べるために、超音波を搭載した内視鏡で検査を行うこともある(超音波内視鏡検査
    • がんの疑いがある部分の組織を採取(生検)して顕微鏡検査を行う(病理検査)
      • 生検:胃カメラの際に食道の壁の一部を取り、がん細胞の有無や悪性度を詳しく調べる
  • 画像検査:以下の検査を組み合わせて、がんの大きさや広がり、転移などを調べる
    • 腹部超音波検査頚部超音波検査
    • 腹部CT検査
    • MRI検査:食道がんが周囲の臓器へどのくらい広がっているかを判断するために行われる
    • PET検査:全身へのがんの転移を調べるために行われる
  • 血液検査
    • 肝臓や腎臓の機能、白血球赤血球の数、腫瘍マーカーを調べる
  • 以上の検査結果を総合してがんの進行度(ステージ)を判断する
検査・診断の詳細

食道がんの治療法

  • ステージ0(ゼロ)食道がんの治療
    • 内視鏡治療
      • ステージ0食道がんではがんの深さが浅くリンパ節転移の可能性が極めて低いため、内視鏡を使ってがんの部分のみを切り取る内視鏡的切除が行われる
      • 手術に比べて身体への負担が少ないが、初期の食道がんにのみ行うことができる
    • ステージ0食道がんでも内視鏡で取り除くことが困難と考えられる場合には手術を行うことがある
    • 内視鏡治療でがんが取りきれなかった場合には、外科治療(手術)・化学療法抗がん剤治療)・放射線治療または化学放射線療法などの追加治療が必要になることがある
  • ステージI 食道がんの治療
    • 外科手術
      • ステージI食道がんではがんの本体は食道の壁の中にとどまっているもののリンパ節転移を起こす可能性が高いため、内視鏡治療ではなく外科治療(手術)が行われる
    • 化学放射線療法
      • 食道の温存を希望する場合は、化学療法(抗がん剤治療)と放射線治療の組み合わせで治療を行うこともある
  • ステージII、III 食道がんの治療
    • 外科手術
      • ステージII、III食道がんは、がん細胞が食道の壁の奥深くまで入り込み、近くのリンパ節にも転移が見られる状態。外科手術が治療の基本であり、手術前に化学療法(抗がん剤治療)を行ってから手術を行うことが多い。
    • 術前化学療法
      • 手術前に化学療法(抗がん剤治療)を行うことで、がんのサイズを小さくしたり、手術でがんを取り切る可能性を高めることができる
    • 術後化学療法
      • 外科手術を先行した場合には、手術後に化学療法を行ってがんの再発を予防することがある
    • 化学放射線療法、放射線療法
      • 体力的に外科手術に耐えられない場合、化学放射線療法または放射線療法単独で治療することもある
  • ステージIV 食道がんの治療
    • 化学放射線療法
      • ステージIV食道がんではがんのサイズが大きく、周囲に広がっていたり他の臓器への転移があるため、外科手術を行わないのが一般的
      • 他の臓器への転移がない場合は化学療法(抗がん剤治療)と放射線治療の組み合わせで治療を行う
    • 化学療法
      • 他の臓器への転移がある場合は化学療法を行う
      • 食道の狭窄による症状がある場合は放射線治療を追加することがある
  • その他の治療
    • あらゆる場面で苦痛を和らげるための治療(緩和治療)を行うことができる
      • 緩和治療は他の治療法と並行して行うことができ、全てのステージの人が受けることができる
    • 食道ががんで狭くなっている場合、内視鏡で金属製の柔らかい筒(ステント)を入れて狭い部分を拡げる治療がある
  • 予後(診断後の経過)
    • 食道がんの中でも早期がんでは、治療を行えば5年生存率は75%前後である
    • がんが進行するにつれて5年生存率は下がっていく
治療法の詳細