ふせいせいきしゅっけつ(ふせいしゅっけつ)
不正性器出血(不正出血)
生理(月経)の時以外に膣や子宮から出血すること
7人の医師がチェック 75回の改訂 最終更新: 2020.07.26

不正性器出血(不正出血)の治療

不正性器出血の治療は原因によって異なります。不正性器出血の原因となるのはクラミジア淋菌の感染などによる炎症子宮筋腫などの良性腫瘍、子宮がんなど悪性腫瘍、出血しやすい全身の病気、薬剤、女性ホルモンの不安定な分泌、妊娠などがあります。原因によって治療方法が異なり、抗菌薬などの薬物治療、ホルモン剤での治療、手術治療などさまざまです。妊娠に関連した出血では妊娠の時期や状況に応じて、安静や薬物治療などの治療が行われます。ここではそれぞれの原因について治療方法を説明します。

1. 妊娠に関連した不正出血の治療

妊娠に関連した不正出血では原因によって治療が異なります。妊娠早期では流産切迫流産異所性妊娠などによる出血が起こります。妊娠中期から後期では早産切迫早産や胎盤の異常による性器出血が起こります。妊娠早期の流産による出血では有効な治療方法がないことが多いのですが、その他は治療を行う必要があります。妊娠中の性器出血では妊娠の経過に何らかの問題が起こっている可能性があるため、医療期間に受診して原因について調べてもらってください。それぞれの原因について行う治療について次に説明します。

流産・切迫流産の治療

妊娠初期の性器出血は流産切迫流産の可能性があります。流産とは妊娠22週未満で赤ちゃんが子宮から外に出るか、子宮内で死亡することです。切迫流産流産しかかっている状態です。性器出血とともに多くの場合は軽い下腹部の張りや痛みを感じます。

切迫流産の段階を過ぎ、赤ちゃんやその周りの組織が子宮から外に出始めていて、子宮からの出血が増加している状態を進行流産と言います。赤ちゃんがすでに子宮内で亡くなっているが、子宮内にまだいる場合は稽留流産(けいりゅうりゅうざん)と言います。

産科で切迫流産と言われた場合は妊娠を継続できる可能性がありますが、進行流産と言われるのは妊娠の継続が難しい状況です。

妊娠12週までの流産切迫流産では有効な薬がありません。切迫流産であっても、治療は安静で経過をみることのみです。そのため、夜間や休日などに出血があった場合にはすぐに受診する必要はなく、翌日に医療機関を受診するか、予定されている健診時に受診して子宮内の状態を調べてもらってください。

切迫流産の治療

切迫流産とは子宮の収縮、性器出血、子宮の出入り口が開くこと、子宮の出入り口までの距離(子宮頸管長:しきゅうけいかんちょう)の短縮などが起こっていますが、赤ちゃんがまだ生きている可能性がある状態です。切迫流産の場合には妊娠を継続できる可能性があります。切迫流産の治療には下記のようなものがあります。

  • 安静
  • 薬物治療
  • 感染症の治療

安静にすることで流産が進むことを防ぎます。妊娠16週以降で子宮が収縮しているようであれば、子宮収縮を抑える薬が使われます。膣や子宮頸部の感染が流産の原因になるため、感染があるかどうかを調べて、感染がある場合には抗菌薬などの治療が行われます。子宮と胎盤の間に絨毛膜下血腫ができると、感染を起こすことがあります。血腫があって感染している場合にも抗菌薬などの治療が行われます。

切迫流産については「切迫流産の詳細情報」でも説明しています。

流産の治療

流産したことがわかっている場合には、妊娠の継続を目的とした治療は行われません。流産の過程で治療を必要とする状態が現れます。例えば次のような状態です。

  • 進行流産:赤ちゃんが子宮から外に出始めていて、子宮からの出血が増加している状態
  • 稽留流産:赤ちゃんがすでに子宮内で亡くなっているが、子宮内にまだいる状態

これらの場合には、赤ちゃんや胎盤などが子宮内に残り感染を起こす可能性があります。そのため、子宮の内容物をきちんと外に取り出す手術が必要です。行われる手術は子宮内容除去術で、点滴の麻酔薬を使った全身麻酔で行われます。全身麻酔の手術ですが、日帰りで行うことができます。手術後は感染や出血を起こすことがあるため、抗菌薬や子宮収縮薬を内服します。子宮内容除去術を受けた後に月経2日目の量以上の出血がある場合や、発熱や腹痛がある場合には手術を受けた医療機関に対応について問い合わせてみてください。

切迫早産の治療

妊娠22週以降から37週未満で赤ちゃんが生まれた場合には早産とよびます。切迫早産とは早産になりかかっている状態のことをいいます。具体的には子宮の収縮が続いていて、子宮の出入り口が開き始めている場合や、子宮の出入り口までの距離(子宮頸管長)が短くなっている場合です。切迫早産では性器出血とともに、月経痛のような子宮収縮、腹痛、下腹部の張りなどを感じます。

早産では赤ちゃんが未熟な状態で生まれるため、生まれた後に色々な不具合を生じます。早産を防ぐために切迫早産に対しては次のような治療が行われます。

切迫早産では規則的な子宮収縮が起こります。子宮収縮があると赤ちゃんを外に押し出すような力が働いてしまうため、子宮収縮を抑える薬が使われます。はじめは塩酸リトドリンという薬が使われることが多く、切迫早産の程度によって飲み薬で治療する場合と、入院のうえ24時間の点滴で治療する場合があります。塩酸リトドリンの24時間の持続点滴治療でも子宮収縮が抑えられない場合には、硫酸マグネシウムの点滴が行われます。

切迫早産の原因として子宮内の感染が考えられる場合には抗菌薬が使われます。

頸管無力症とは子宮の出入り口が開きやすくなってしまう病気です。この病気と診断された場合には、子宮の出入り口を縫い閉じる頸管縫縮術を受けることで早産になる割合を減らすことができます。

さまざまな治療を行っても早産が避けられないと判断された場合には、赤ちゃんの肺の成熟を早めるための治療が行われます。妊娠34週未満で生まれた赤ちゃんは肺が未熟であり、新生児呼吸窮迫症候群になることが多いです。新生児呼吸窮迫症候群は呼吸が十分にできない状態で、命に関わります。そこで、早産が避けられないと判断された時点で、赤ちゃんの肺の成熟を早めるために、お母さんに対して副腎皮質ステロイド製剤(ステロイド薬)の注射が行われます。

異所性妊娠の治療

正常の妊娠では受精卵は子宮体部の子宮内膜に着床します。異所性妊娠とは子宮体部の子宮内膜以外の場所に受精卵が着床することをいいます。異所性妊娠による不正出血の場合には、手術治療もしくは薬物治療が行われます。無症状の異所性妊娠では赤ちゃんが入った胎嚢が自然に吸収されることもあるため、経過観察で吸収されることを待つ待機療法が行われる場合があります。異所性妊娠と診断される場面として、妊娠に気がついておらず腹痛、性器出血で受診して診断される場合があります。このような性器出血や腹痛などの症状がある場合には入院での治療が必要です。主な治療方法は次の通りです。

異所性妊娠の治療では異所性に着床した胎嚢を取り除きます。取り除く方法は手術治療と薬物治療があります。異所性妊娠をしている部位と赤ちゃんを包む胎嚢の大きさ、お腹の中への出血量、出血に伴って血圧が下がるなどの症状があるかで治療方法を決定します。

手術治療は開腹手術と腹腔鏡を使った手術があります。異所性妊娠が破裂してお腹の中ですでに大出血を起こしている場合は、お腹を大きく開ける開腹手術が行われます。大出血を起こしていない場合には腹腔鏡での手術も検討します。手術方法には異所性妊娠をした卵管や子宮、卵巣の一部分を胎嚢と一緒に切り取る方法と、胎嚢のみを取り除く方法があります。すでに破裂している場合には、破裂で傷ついた臓器を残すことは難しく、胎嚢と一緒に切り取る必要があります。破裂していない場合には個々の状況に応じてどこまでの範囲を切り取るか決めます。

薬物治療は異所性妊娠をしていても、性器出血や腹痛などの症状がない場合に行われる治療です。メトトレキサートなどの薬が使われます。薬物を使って胎嚢が大きくなることを止めます。お母さんの身体に注射する方法と、超音波検査や腹腔鏡検査で妊娠している場所を確認しながら胎嚢に注射する方法があります。ただしメトトレキサートによる治療は保険適用外のため自費の診療になります。

それぞれの状況に応じて行う治療を決めます。異所性妊娠が子宮頸部に起きた場合には大量出血が起こることもあり、出血が止まらない場合には子宮を摘出する必要があります。しかし、多くの異所性妊娠は卵管で起こり、治療がうまくいけば治療後の妊娠は可能です。一度、異所性妊娠を起こした場合には、再発することが多いため、次の妊娠でも妊娠初期に腹痛や不正性器出血の症状が起こった場合には、医療機関に受診してください。

胎盤異常の治療

妊娠中期から後期にかけては切迫早産や胎盤の異常による性器出血も起こります。胎盤の異常では妊娠中の検査で診断される前置胎盤低置胎盤と、妊娠の経過で特に問題を指摘されていなくても起こる常位胎盤早期剥離があります。それぞれの治療について次に説明します。

前置胎盤低置胎盤

前置胎盤低置胎盤そのものを治す治療方法はありません。いずれの場合も子宮の出入り口や近い場所に胎盤があるため、妊娠中は性器出血が起こりやすくなります。性器出血が大量になると赤ちゃんの早産の原因になることや、お母さんの身体に危険が及ぶことがあるため、妊娠中は出血が起こらないように日常生活に注意して、出血した場合には医療期間での治療を行います。

前置胎盤低置胎盤が指摘された妊娠中は性器出血が起こりやすいため、過度の運動や性行為は控えてください。出血がない場合には定期的な妊婦健診で経過をみますが、性器出血が起こった場合には入院して子宮収縮を抑える薬を使います。

前置胎盤では子宮の出入り口が胎盤で塞がれているため通常の分娩を行うことはできず、予定の帝王切開で分娩を行います。帝王切開時も出血が多くなることがあるため、妊娠33-34週頃から自分の血液を貯めておく「自己血貯血」を行い分娩に備えます。

低置胎盤でも通常の分娩の1.5倍程度の出血になることがあるため、帝王切開での分娩になることが多いです。

帝王切開の予定日前に大量の性器出血が起こった場合には、赤ちゃんが外で生活できる程度に発育している場合には緊急で帝王切開を行います。

前置胎盤では胎盤が子宮に入り込んで成長する癒着胎盤を起こしていることが10-15%にあります。癒着胎盤では特に大量の出血になることがあります。大量の出血が始まってしまうと赤ちゃんだけでなくお母さんにも危険なため、出血が止まらない場合には子宮を摘出する場合があります。

常位胎盤早期剥離

常位胎盤早期剥離は、出産の時期ではないのに胎盤が子宮からはがれてしまうことです。胎盤に血液を送る血管が細くなることや血の塊で詰まることで起こります。

胎盤が子宮からはがれてしまうので、赤ちゃんに酸素が送られなくなり、病院に受診したときにはすでに赤ちゃんがお腹の中で亡くなっているということもあります。

お母さん側の症状としては、胎盤が子宮から剥がれる時の出血により、胎盤と子宮の間に血腫(血の塊)ができます。胎盤と子宮の間に血腫ができる時、血液を固める物質が大量に使われることなどで、全身の血液が固まりにくくなる症状が起こります。

つまり、重症の場合は赤ちゃんのみではなく、お母さんの命にも関わる事態になるため、緊急の治療が必要です。

治療はまずはお母さんの全身状態を保ちながら、速やかな分娩を行います。緊急時には帝王切開で分娩を行います。分娩後に子宮収縮が悪い場合には大出血を起こすことがあります。その場合には子宮に血流を送る血管を手術で結んで血流を遮断する治療や、カテーテルを使った血管内治療で血管を詰める治療などが行われます。

2. 子宮・膣などの炎症の治療

子宮体部から外陰部の炎症を原因とする性器出血の治療は、炎症の原因によって異なります。感染を原因とする炎症の場合には、感染の原因となる病原体の治療を行います。

子宮内膜炎・子宮頸管炎の治療(クラミジア・淋菌感染など)

子宮内膜炎子宮頸管炎の原因として多いのは淋菌などの細菌クラミジアです。感染が子宮の周囲にさらに広がると骨盤内炎症性疾患になり、不妊症や早産の原因になることもあるので早めに受診してきちんと治療を行うことが重要です。性行為で感染する病原体が原因だった場合は、治るまで性行為を控えてください。

細菌性膣炎の場合にその細菌に対応した局所の膣錠や、内服での治療をおこないます。

淋菌感染症では抗菌薬の治療を行います。最近は耐性菌が増加傾向にあり、以前は効果があった抗菌薬が効かなくなる傾向にあるため、セフトリアキソン(商品名:ロセフィン®︎)の点滴で治療を行います。

クラミジア性感染症の場合には内服での治療を行います。マクロライド系抗菌薬、ニューキノロン系抗菌薬、テトラサイクリン系抗菌薬を使います。炎症が強く下腹部の痛みや発熱がある場合には入院での点滴治療も行われます。

淋菌クラミジアは性行為で感染する性感染症(STD)です。コンドームを適切に使うことで感染を防ぐことができます。

淋菌クラミジアが原因の場合にはパートナーの検査や治療が必要になりますので、一方が診断された場合にはパートナーも受診してください。パートナーとうつし合うことを防ぐために、お互いの治療が終了するまで性行為は控えてください。

萎縮性膣炎の治療

萎縮性膣炎は閉経後などに女性ホルモンである卵胞ホルモンエストロゲン)が欠乏することにより、膣の粘膜が乾燥することや薄くなることで、大腸菌などが繁殖しやすくなって炎症を起こした状態です。エストロゲンを補充するためにエストロゲンが含まれた内服薬や膣錠や、抗菌薬が含まれた膣錠で治療が行われます。

性器ヘルペスの治療

性器ヘルペスは陰部に単純ヘルペスウイルスが感染することで起こります。

治療は単純ヘルペスウイルスが増えることを抑えるために、抗ヘルペスウイルス薬を服用します。重症の場合には入院での点滴治療が行われます。パートナーに性器ヘルペスの症状がある場合には、一緒に検査を受けてください。

一度感染したヘルペスウイルスは身体の中に一生残っているため、心身の疲労時などに再発します。再発を繰り返す場合には抗ウイルス薬を毎日内服する治療を行います。この治療によって再発の割合を減らすことができ、パートナーへの感染率も減らすことができます。

3. 子宮体部・子宮頸部などの良性腫瘍の治療

不正出血の原因が下記のような、子宮体部や子宮頸部の良性腫瘍であった場合の治療について説明します。

原因によって治療は異なりますが、主な治療方法は手術などの外科治療と薬物治療です。以下にそれぞれの治療方法について説明します。

子宮筋腫の治療

子宮筋腫は良性腫瘍でありがんではないため、子宮筋腫がある人が全員治療が必要なわけではありません。閉経すると通常、子宮筋腫は小さくなります。不正性器出血の原因が子宮筋腫である場合で、貧血の症状が強い場合などは治療を検討します。その他に子宮筋腫で治療を検討するのは下記の場合があります。

  • 不正性器出血、腹痛などの症状がある場合
  • 出産希望で子宮筋腫が原因と考えられる不妊症不育症がある場合
  • 出産希望で将来の妊娠中や分娩時に、子宮筋腫がトラブルを引き起こす可能性がある場合
  • MRI検査の結果から悪性腫瘍の疑いがある場合

不妊症不育症がある場合で、子宮筋腫以外に原因が見当たらない場合には治療を検討します。その他にも子宮筋腫が5-6cm以上で大きい場合や、子宮の出入口の近くにある場合は、妊娠中や分娩時の問題になる可能性があるため治療を検討します。子宮筋腫変性が起きて悪性腫瘍と区別がつかない場合には手術で摘出して診断を行います。子宮筋腫が大きくなると内部に血流が届かなくなり、内部が壊死して変性を起こすため悪性腫瘍と区別がつきにくくなります。

子宮筋腫の治療方法は下記のものがあります。

  • 手術治療
    • 筋腫のみを取り除く手術(筋腫核出術)
      • 開腹手術
      • 腹腔鏡手術
      • 子宮鏡下手術
    • 子宮ごと筋腫を取る手術(子宮全摘術)
      • 開腹手術
      • 腹腔鏡手術
      • 経膣式手術
  • 子宮動脈塞栓
  • 集束超音波治療
  • 薬物治療
    • 低用量ピルによる治療
    • 偽閉経療法

治療方法を選ぶ時には将来妊娠を希望するかどうかと、子宮を残したいかどうかという希望に応じて決めます。将来妊娠や出産を希望する場合には、基本的には手術で子宮筋腫のみを取り出す子宮筋腫核出術を行います。妊娠や出産を希望しない場合には子宮を残す希望があるかどうかで治療を選択します。

それぞれの治療方法にメリット・デメリットがありますので、担当のお医者さんとよく相談して、自分の考えに最もあう治療方法を選びます。

次から子宮筋腫の治療方法について説明しますが、より詳しい治療方法について知りたい場合には「子宮筋腫の治療:手術、ホルモン療法、カテーテル治療など治療法の解説」を参考にしてください。

◎手術治療

手術は子宮筋腫のみを切り取る筋腫核出術と子宮全体を取り出す子宮全摘術があります。

筋腫核出術は子宮が残せる手術方法なので、将来子供が欲しい場合に行います。筋腫核出術を行う方法にはお腹を開けて手術を行う開腹手術と、腹腔鏡を使って行う腹腔鏡手術、子宮鏡で見ながら切除する子宮鏡下手術があります。

子宮全摘術は筋腫を含めて子宮を取り出してしまう手術です。取り出す方法は、お腹を開けて手術を行う開腹手術と、腹腔鏡を使って行う腹腔鏡手術、切り取った子宮を膣からだす経膣式手術があります。

どの手術方法を行うかは、まず将来に出産したいかどうかや子宮を残す希望があるかどうかと、筋腫の大きさと場所によって決めます。それぞれの方法にメリットやデメリットがありますので、お医者さんとよく相談して決めてください。

詳しい手術の方法は「子宮筋腫の手術:子宮全摘除術、子宮筋腫核出術、腹腔鏡手術などの解説」に書いてありますので、参考にしてみてください。

◎子宮動脈塞栓術

子宮動脈塞栓術は子宮筋腫に栄養を送る子宮動脈の血流を止めて、大きくなることを防ぐ治療です。局所麻酔で皮膚を麻酔した後、足の付け根の血管から細いカテーテルを入れて子宮動脈に血管を詰める物質を注入して、子宮筋腫への血流を遮断します。過多月経などの症状が改善するとともに筋腫が縮小します。しかし、この治療を行うと妊娠率が低下するため、将来妊娠を希望しない人に薦められる治療です。

詳しい治療方法の説明は「子宮筋腫のカテーテル治療とは?」に書いてありますので、参考にしてみてください。

◎集束超音波治療

MRI検査と超音波検査を合わせて行い、検査で使う超音波より強力な超音波を身体の外から当てて、子宮筋腫の内部を60-90℃に加熱して縮小する方法です。保険診療ではないため、治療費の全額を自己負担で行う治療になります。行うことができる医療機関も限られているため、希望する場合には担当のお医者さんに聞いて、医療機関を紹介してもらってください。

◎薬物治療

薬物治療では子宮筋腫による症状を軽くすることはできますが、子宮筋腫を無くする根本治療ではありません。子宮筋腫による症状が強い場合に一時的に行う場合や、手術や閉経前の一時期に行う場合があります。

薬物治療ではピル(経口避妊薬)での治療もしくは、ホルモン剤を使って閉経した時と同じ状態にする治療が行われます。ピルを内服すると排卵を止めることができるため、子宮筋腫による過多月経の症状を軽減できます。

偽閉経療法はエストロゲンを抑えて閉経した時と同じ状態にして筋腫を小さくする治療方法です。GnRHアゴニストであるリュープロレリン酢酸塩(商品名:リュープリン®︎)、ゴセレリン酢酸塩(商品名:ゾラデックス®︎)、酢酸ナファレリン(商品名:ナサニール®︎点鼻薬)、ブセレリン酢酸塩(商品名:スプレキュア®︎点鼻液)などを使って行います。治療を行なっている間は子宮筋腫の大きさは小さくなりますが、治療をやめると再度大きくなります。また、副作用として骨密度が低下して骨がもろくなることや、更年期様の症状が起こることがあるため半年程度のみの治療になります。偽閉経療法は手術前の一時的な治療か、閉経前のごく短期間のみ行う治療として役に立ちます。

子宮腺筋症の治療

子宮腺筋症は子宮内膜が子宮の外側の筋肉の層まで入り込んでしまう病気です。月経のたびに大量の出血を起こします。卵胞ホルモン(エストロゲン)という女性ホルモンの作用で子宮線筋症は増殖するため、エストロゲンを減らす治療を行います。

子宮腺筋症の症状は月経の経血量が多いことと、月経痛が強いことです。それぞれの症状に対して治療を行います。以前は子宮腺筋症は、妊娠出産を終えた年齢で発症することが多かったのですが、最近では妊娠出産前にも発症することが多く、治療方法は妊娠出産の希望に合わせて選びます。

  • 薬物治療
    • 鎮痛薬
    • 鉄剤
    • 止血剤
    • 低用量ピル
    • 黄体ホルモン製剤
    • 偽閉経療法
  • 手術治療
    • 子宮腺筋症のみを取り出す手術
    • 子宮全体を取り出す手術

月経痛は鎮痛薬で対応し、軽度の過多月経は鉄剤やトラネキサム酸(商品名:トランサミン®︎)などの止血剤で対応します。閉経まで期間が短い場合には閉経と同じような状態にする偽閉経療法というホルモン療法などが行われます。貧血や月経痛の程度が強い場合や、閉経までに長期間ある場合には低用量ピルや黄体ホルモン製剤を使ったホルモン療法や手術治療が行われます。

◎ホルモン療法

ホルモン療法は主にエストロゲンの分泌を抑えることや、子宮内膜への作用を抑えることを行います。ホルモン療法はあくまで症状を和らげる治療で完治をする治療ではありません。つまり、治療中は症状は改善しますが中止すると症状が悪化します。もう一つの問題点としてホルモン療法中は妊娠ができません。妊娠を希望する場合にはホルモン療法を中止する必要がありますが中止に伴い症状が悪化してしまいます。

偽閉経療法はエストロゲンの分泌を抑える治療です。子宮内膜症に準じてGnRHアゴニストを使って行います。副作用として骨密度が低下して骨がもろくなるため継続しての使用は6ヶ月までとしています。閉経まで期間が短い場合や、貧血の程度が強くひとまず出血を抑えたい場合などに使います。

子宮内膜へのエストロゲンの作用を抑える治療には、低用量ピルや黄体ホルモン製剤のジエノゲスト(商品名:ディナゲスト®︎)が使われます。通常の月経周期では子宮内膜がエストロゲンで分厚くなった後、黄体ホルモンが作用してその後に月経が起こります。先に子宮内膜に黄体ホルモンを作用させておくことで、エストロゲンが作用することを抑えることができます。この原理を用いた治療が低用量ピルや黄体ホルモン製剤での治療です。

副作用に低用量ピルでは血栓症があるため、喫煙者、肥満がある人、深部静脈血栓症などの血栓症の経験がある人は内服できません。黄体ホルモン製剤の副作用には不正出血があります。

◎手術治療

手術治療は手術後に妊娠出産を希望するかによって、行う手術が異なります。妊娠出産の希望がない場合には子宮全体を取り出してしまう子宮全摘術を行います。子宮全摘術は、月経痛、過多月経どちらにも最も確実で効果的な治療方法です。しかし、妊娠出産を希望する場合には、子宮線筋症の部分のみを取り除く腺筋症核出術を行います。この手術は下記のような場合が対象になります。

  • 子宮温存を希望する場合
  • 長期間の不妊があり子宮腺筋症が原因と疑われる場合
  • 大きな子宮腺筋症があり、繰り返す流産や早産の原因と疑われる場合

子宮温存を希望する場合や、子宮腺筋症が不妊、流産、早産の原因と考えられる場合には腺筋症核出術を行います。しかし、子宮全体に子宮腺筋症がある場合は、子宮腺筋症の部分を全て取り除くと子宮を作り直すことができません。その場合は子宮腺筋症の部分を一部残して手術を行うため、再発などのリスクがあります。このため、子宮全体に及ぶ子宮腺筋症に対して、腺筋症核出術は積極的には行われない手術です。さらに手術後の子宮は手術前よりも弱くなってしまうので、妊娠による子宮破裂の報告もあります。個々の病状によって手術後のリスクは異なるので、手術を検討する場合にはお医者さんとよく相談して決めてください。

子宮内膜ポリープの治療

子宮内膜ポリープは子宮内膜の粘膜の一部が隆起してできた良性腫瘍です。治療は子宮鏡を使って子宮内部を観察しながらポリープを切り取ります。

手術前に子宮の出入口を広げるための処置をします。手術時は脊椎麻酔もしくは全身麻酔に硬膜外麻酔を併用する麻酔方法などで手術が行われます。脊椎麻酔は背中に注射をして背骨の中を通る神経に麻酔を行って下半身を麻痺させる麻酔方法です。全身麻酔は完全に寝てしまう麻酔方法です。硬膜外麻酔は背中に注射をして、細い管を背骨の中の空間に入れて、痛みをとる麻酔方法です。

子宮鏡を子宮内に入れて、子宮内に液体を入れて子宮の内腔を広げて観察しながら子宮内部のポリープを電気メスで切り取ります。手術のために1日〜数日入院をします。

子宮頸管ポリープの治療

子宮頸管ポリープは子宮頸部の粘膜が隆起してできたキノコの様な腫瘤(塊)です。大きさは2mm大から3cm大です。ポリープが小さく無症状の場合は大きさを見ていくこともできます。しかし、ポリープが大きくなり出血を繰り返す場合や、悪性の子宮頸がんと区別がつかない場合は治療を検討します。治療方法は日帰り手術でポリープを切り取りとる子宮頸管ポリープ切除術が行われます。手術後は少量の性器出血が1週間程度続きますが、大量出血はほとんどありません。月経2日目程度の大量の出血がある場合には治療を行なった医療機関に問い合わせてください。

子宮頸管ポリープを切除した後は再発の可能性があるので、定期的に受診して再発をしていないかどうか検査を受けることが望ましいです。

4. 子宮・膣などの悪性腫瘍の治療

子宮体部、子宮頸部、外陰部の悪性腫瘍は次のようなものがあります。いずれのがんも不正性器出血を起こします。子宮体がんは主に閉経後、子宮頸がんは30歳代後半以降、外陰がんは高齢者の不正出血の原因になります。治療はそれぞれのがんができた場所と広がりによって異なります。

治療前には画像検査や組織を一部切り取る検査などを行い、がんの広がりをよく調べて、ステージ病期と呼ばれる進行度を診断します。進行度に応じて、手術治療、放射線治療抗がん剤による薬物治療を単独もしくは組み合わせて治療が行われます。

子宮内膜増殖症子宮体がんになる一歩手前の病気(前がん病変)と考えられています。細胞に異型がないものは子宮体がんにはなりにくいと言われています。一方、異型のあるものは子宮体がんに準じて治療がおこなわれます。異型とは正常の細胞と見た目の形が違っていることです。

子宮体がんの治療では手術が中心で、手術後の状況によって放射線治療や薬物治療が追加されます。子宮を残す治療ができるのはごく早期の場合で、ホルモン療法に効果があるタイプのみです。他の場合には子宮を取り除くことが必要です。がんの広がりに応じて子宮のみを摘出する場合と、卵巣や周囲のリンパ節を含めて摘出する場合があります。手術後の検査結果によっては放射線治療か、抗がん剤もしくはホルモン剤による薬物治療が追加で行われます。

子宮頸がんの治療では手術治療が主な治療で、状況に応じて放射線治療や薬物療法がおこなわれます。上皮内がんで妊娠出産の希望がある場合には子宮を残す治療を行います。子宮頸部のレーザー治療や子宮頸部の一部を円錐状に切り取る手術が行われます。妊娠出産の希望がない場合の上皮内がんや、上皮内がんより進行していてもがんの広がりが浅い範囲までの場合には子宮のみを摘出します。がんが子宮頸部に広がっている場合には子宮や卵巣を含めた広範囲を摘出します。しかし妊娠出産を希望する場合には子宮頸部のみを切り取り、子宮体部を残す治療が行われる場合もあります。手術後に再発リスクが高いと予想された場合には、放射線治療か、抗がん剤を組み合わせた放射線治療を追加で行います。がんが骨盤の中に広がっている場合には放射線治療や、抗がん剤を組み合わせた放射線治療が行われます。

子宮頸がんは早期発見ができれば比較的治療が行いやすいがんですが、進行すると治療が困難です。初期は無症状であるため、20歳を過ぎたら2年に1回の子宮頸がん検診が推奨されています。

外陰がんでは手術治療が主に行われますが、高齢者に多いがんであるため年齢や全身状態などを考えて治療方法が選択されます。手術は外陰部にあるがんを含めて周囲を切り取ります。尿道や膣にも浸潤している場合には合わせて切り取ります。鼠径部(そけいぶ;脚の付け根)のリンパ節に転移を起こしやすいため合わせて切除します。外陰部の欠損が大きい場合には、切り取った部分に他の部分から組織を移植する再建術が行われます。手術後に再発リスクが高いと判断された場合には放射線治療を追加します。

いずれのがんの場合もはじめの診断時に全身に転移がある場合には抗がん剤による薬物治療が行われます。手術後に再発した場合には、状況に応じて放射線治療や薬物治療が行われます。

外科的治療(手術治療)

いずれのがんでも主な治療は手術です。手術で切り取る範囲はがんの広がりで主に決められますが、手術後に妊娠出産を希望するかどうかも合わせて検討します。

子宮頸がんの早期ではがんの部分のみ切り取る方法が行われますが、周囲に広がっている場合には子宮とその周囲の卵巣なども含めて切り取る手術が行われます。外陰がんの場合でもがんの広がりに応じて手術が行われ、欠損部分が大きい場合には組織を移植する再建術が合わせて行われます。

以下に主に子宮頸がん子宮体がんで行われる術式について説明します。

◎円錐切除術

子宮頸部を円錐状に切除する方法です。子宮頸がんが強く疑われた際に診断の確認のための検査としても、ごく早期の上皮内がんの治療としても行われます。

◎単純子宮全摘出術

子宮を膣から切り離して子宮のみを摘出する方法です。卵巣や卵管も合わせて摘出する両側付属器切除術が合わせて行われる場合もあります。

子宮頸がんで妊娠出産の希望がない場合の上皮内がんや、がんが浅い範囲までしか広がっていない場合に対して行われます。

単純子宮全摘出術は子宮体がんの多くで行われる手術方法です。子宮内膜増殖症で細胞に異型がある場合もこの手術が行われます。

◎広汎子宮全摘出術

子宮と子宮の周りにある骨盤内の組織を広く摘出する方法です。子宮と膣の一部、卵巣や卵管が合わせて摘出されます。がんが転移しやすいリンパ節も合わせて摘出します。

子宮頸がんでがんが子宮頸部の周りにも広がっている場合や、子宮体がんでがんが子宮頸部にも広がっている場合に行われます。

放射線治療

放射線治療はがんのある部分に放射線を当てて、がん細胞を傷つけることで、がんが増えるのを抑えて小さくする治療です。放射線を身体の外から当てる方法と、身体の中に放射線を出す機械を入れて周囲を照射する方法があります。子宮頸がんでは膣内に機械を入れて子宮頸部に放射線を照射します。放射線治療はがんの根治を目的に行う場合と、手術後に補助的に行う場合があります。

薬物治療

薬物治療は放射線治療と組み合わせて行われる場合と、薬物治療単独で行われる場合があります。放射線治療と組み合わせて行われる方法は、がんの根治が目的の場合と、手術後の再発を防ぐ目的の場合があります。薬物治療単独での治療は診断時にすでに離れた臓器にがんが広がっている場合(遠隔転移)や、再発した場合に行われます。

5. 子宮・膣などの手術操作などによる出血の治療

手術などで子宮や膣を操作した場合や、子宮内避妊器具は出血の原因となります。子宮内に感染を起こした場合などは出血と共に発熱や腹痛が起こります。

子宮内容除去術後の場合には、症状に応じて子宮収縮薬や抗菌薬による治療が行われます。

子宮内避妊器具を入れた後数日間は出血を起こす場合があります。子宮内避妊器具のタイプによっては、黄体ホルモン(レボノルゲストレル)が持続的に放出されるものもあり、不定期に性器出血を起こすことや、月経様出血が数日間持続することがあります。

子宮内の操作後の出血の場合で、月経2日目の量以上の出血がある場合や、激しい腹痛や発熱がある場合には手術を受けた医療機関に問い合わせてみてください。

6. 出血しやすい全身の病気(出血性素因)の治療

出血しやすい全身の病気が原因となって不正性器出血が起こっている場合には、原因の病気を治療を行います。原因の病気によって治療が異なります。診断のための検査や治療はいずれの病気も血液内科で行います。

フォンヴィレブランド病は生まれつきの病気ですが、出血の程度が強くないため大人になって診断がつくこともあります。その他の病気は子供から大人まで、ある日突然発症することが多く、病状の進行も早いため早急な治療が必要になります。皮膚に紫色の点状や斑状の出血がたくさん現れた場合や、いつもと同じ力の歯磨きで出血するなどの症状がある場合には、早急に内科もしくは血液内科に受診して相談してみてください。

フォンヴィレブランド病の治療

フォンヴィレブランド病フォンウィルブランド病)ではフォンヴィレブランド因子(フォンウィルブランド因子)が不足することや、機能が低下することで起こります。

多くの場合には特別な治療が必要となりませんが、貧血が強い場合には鉄剤を内服したり、低用量ピル(経口避妊薬)を使用して排卵を抑制させることで、通常の月経を起こらなくさせることで出血量を減らします。出血の程度が強い場合にはフォンヴィレブランド因子を増やすような治療を行います。デスモプレシンの点鼻薬や、フォンヴィレブランド因子を含む輸血などが行われる場合があります。

急性白血病の治療

急性白血病は血液細胞の元となる細胞が血液細胞へ成熟する過程で化する病気です。急性白血病では数日から数週単位で病状が悪化します。白血病細胞が増えることで、正常な血液細胞が減少して、出血が止まりにくくなります。その他にも、感染症にかかりやすくなることや貧血になることもあります。治療は基本的には抗がん剤を使った薬物治療が行われます。急性白血病と診断された場合には緊急で入院して抗がん剤治療が行われるとともに、感染症や貧血の治療も合わせて行われます。白血病細胞のタイプや治療の経過で骨髄移植なども検討されます。

再生不良性貧血の治療

再生不良性貧血は血液細胞の元となる細胞(造血幹細胞)が減少する病気です。血を固める血小板も減ることで、出血をしやすくなります。治療は重症度に応じて行われます。中等症から重症の場合には、入院して抗胸腺細胞グロブリン療法、免疫抑制療法、蛋白同化ホルモン療法などが行われます。経過によっては骨髄移植なども検討されます。合わせて起こしやすい感染症や貧血の治療も行われます。

特発性血小板減少性紫斑病の治療

特発性血小板減少性紫斑病(免疫性血小板減少症)は、血を固める機能を持つ血小板が減少する病気です。免疫の異常が原因で脾臓で血小板が壊されます。血小板が減るため出血しやすく、止まりにくくなります。

治療ははじめにピロリ菌の感染があれば内服薬での除菌を行います。ピロリ菌の除菌で改善しない場合には、ステロイド薬を使う治療や脾臓を摘出する治療、トロンボポエチン受容体作動薬の治療などが行われます。大出血で緊急時には血小板の輸血や免疫グロブリン大量療法、ステロイドパルス療法などが行われます。

7. 薬剤性出血の治療

薬剤による不正性器出血の場合には原因となる薬の量の調整などが行われます。

抗凝固薬を心臓や脳の病気のために内服している場合などは、中止することで心臓や脳の大きな病気につながる可能性もあり、薬の中止や変更は危険性を見極めて慎重に判断する必要があります。そのため、自己判断で中止せずに薬を処方してもらっているお医者さんに相談してください。

経口避妊薬(低用量ピル)は出血を起こすことがありますが、使い始めて3ヶ月以内なら自然に改善することがあるため、継続して内服して構いません。3ヶ月以上経過してから出血が起きた場合には、一度処方してもらっているお医者さんの診察を受けてください。

黄体ホルモン製剤による出血は薬の特性上、継続して起こってしまいますので、気になる場合には薬を処方してもらっているお医者さんに相談してみてください。

乳がんの治療などで抗エストロゲン薬を使用している期間に不正出血がある場合には、一度婦人科で診察してもらってください。特に閉経後の出血の場合には子宮体がんの場合があります。子宮体がんと診断された場合には、子宮体がんの治療を行います。

抗精神病薬、抗うつ薬、抗潰瘍薬などによる不正性器出血の場合には、薬の中止や変更で出血が治る可能性があります。処方してもらっているお医者さんに受診して症状を説明して、薬を続けるかどうか相談してください。薬による出血かどうか判断するために、産婦人科での検査を受けると安心です。

8. 機能性子宮出血の治療

機能性子宮出血は子宮に腫瘍や炎症などの明らかな異常がない場合の出血のことを言います。ホルモンの影響で起こることが多く、思春期や更年期に起こりやすい出血です。

思春期では月経周期を調整する脳のメカニズムが整っておらず、卵巣からのホルモン分泌がうまくできないため出血を起こします。初経から3年たっても60%の人は無排卵の月経を起こしていることがわかっています。時間が経つと正常の排卵を伴う月経になるため、治療をおこなわずに経過をみても構いません。

更年期では卵巣機能の低下に伴って出血が起こりやすくなります。貧血などの症状がある場合にはホルモン治療などを検討します。

薬物治療

◎止血剤

軽度の出血の場合には止血剤を服用して経過をみます。規則的に起こる過多月経の治療に主に使われます。一般的な止血剤のトラネキサム酸が使われるほか、「痛み止めの薬」として知られるNSAIDs過多月経の出血量を減らすことが知られています。

◎ホルモン治療

機能性子宮出血で使われるホルモン療法には下記のものがあります。いずれも避妊効果があるため妊娠を希望する場合には適しません。

  • 低用量ピル
  • 黄体ホルモン製剤
  • GnRHアゴニスト(偽閉経療法)
  • ダナゾール
  • レボノルゲストレル含有子宮内避妊器具

更年期に起こる機能性子宮出血では主にホルモン療法が行われます。ホルモン療法で使われるのは、経口避妊薬(低用量ピル)や黄体ホルモン製剤です。出血が数ヶ月間コントロールされるまで使用します。

人工的に月経周期と同じようなホルモンバランスを作り出す治療です。

経口避妊薬は卵胞ホルモンと黄体ホルモンが両方含まれた薬です。卵胞ホルモンが含まれる薬は血栓症のリスクがあるため、心臓や脳血管が悪い人には使うことができません。その場合には黄体ホルモンのみの薬を使います。

排卵が正常に行われていない場合には、排卵誘発薬を使って排卵を行わせることで、不正出血を治療することもあります。

出血が多く貧血が強い場合にはGnRHアゴニストを使ってエストロゲンを抑え、閉経と同じ状態にすることで出血を抑えます。エストロゲンの産生を抑えるため、子宮内膜の増殖が起こらず月経が停止します。これを偽閉経療法と言います。出血に対しては効果的な治療ではありますが、エストロゲンが減るため骨量の減少などの副作用が起こります。そのため、6ヶ月を超える継続投与は原則として行いません。

ダナゾールという男性ホルモンを使用する場合もありますが、副作用として体重増加、むくみ、ニキビ、肝機能障害、血栓症などがあるため、少ない量を使うか膣錠を用います。使う期間も4ヶ月未満としています。通常は他の治療が優先され、ダナゾールはどの治療も行うことができない場合に行う治療です。

思春期の場合、出血日数が長い場合などは経口避妊薬(低用量ピル)を使って月経周期の調整を行います。月経に関して困っていない場合には、何も治療しないで経過を見ることもあります。

外科的治療

◎子宮内膜焼灼術

子宮内膜をレーザーなどで焼く治療方法です。焼灼(しょうしゃく)とは焼くことです。出血の原因となる子宮内膜を焼灼することで出血を抑えます。焼灼できるのは子宮内膜のみで深部までは焼灼されません。深部に病気が起こる子宮腺筋症では、表面のみを焼く治療では改善しません。出血が治らない場合には、子宮腺筋症などが隠れている可能性がありますので、追加での検査を行う場合があります。

◎子宮全摘術

将来の妊娠出産希望がなく、子宮を残す希望がない場合に検討されます。他の治療を行なっても症状がある貧血や、出血の影響で日々の生活に不便が多い場合などに検討される治療です。