きのうせいしきゅうしゅっけつ
機能性子宮出血
器質的疾患を認めない子宮からの不正性器出血
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最終更新: 2020.07.27
機能性子宮出血の基礎知識
POINT 機能性子宮出血とは
機能性子宮出血とは、子宮に明らかな病気がない人に起こる生理(月経)以外の出血を指します。エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモン分泌の異常が関係していると考えられています。生理時期以外の性器からの出血が主な症状です。機能性子宮出血は①妊娠による出血ではないこと②子宮に病気がないことの2点を確認することで診断されます。問診や妊娠反応検査、子宮内膜細胞診、経腟超音波検査などが行われます。治療はホルモン療法が行われます。生理以外に性器からの出血がある場合には、機能性子宮出血や他の病気の可能性もあるので、産婦人科を受診することをおすすめします。
機能性子宮出血について
- 子宮からの出血のうち、月経や妊娠以外の出血で、かつ器質的疾患を認めないもの。
主に月経をコントロールする
ホルモン のバランスが崩れたことが原因となる- 不正性器出血の一種
卵胞ホルモン (エストロゲン )と黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌バランスが崩れることが原因
- 思春期と更年期に多い
- 20%は20歳未満、50%は更年期に起こると言われている
- 出血は様々な分類がある
- ホルモンバランスの状態による分類
- 消退出血:黄体ホルモンの低下
- 破綻出血:卵胞ホルモンの持続的な分泌
- 排卵の有無による分類
- 排卵性出血:排卵に関連した出血(20-40歳に多い)
- 無排卵性出血:排卵に関係のない出血(10歳代、更年期に多い)
- ホルモンバランスの状態による分類
- 他の出血する病気でないことを確認することが重要
- ホルモンバランスの問題で妊娠しにくい可能性がある
- 基礎体温をつけてホルモンバランスを確認することが望ましい
機能性子宮出血の症状
機能性子宮出血の検査・診断
- 基礎体温表のチェック:基礎体温の変動を調べる
- 血液検査:血中の
ホルモン 測定、排卵有無を調べる - 他の病気ではないことを確かめる検査
- 経腟
超音波検査 :ポリープや子宮筋腫などの異常の有無を確かめる 子宮内膜 細胞診 :腫瘍 の種類を調べるコルポスコピー (腟拡大鏡):内視鏡 を使って、子宮の中を調べる
- 経腟
機能性子宮出血の治療法
- 治療の目的:
ホルモン バランスを正常に戻すこと - 主な治療
- ホルモン剤の服用
エストロゲン 製剤、プロゲスチン製剤を使う- 女性ホルモンを薬剤により補い、人工的に月経周期と同じようなホルモンのバランスを作り出す
- ホルモン剤の服用
- 決められた期間と回数を必ず服用する事が大切
- 排卵が正常に行われていない場合、排卵誘発薬が用いられることもある
症状 が軽い場合は、自然に治癒 することが多く、特に治療を行わない場合もある- 症状が重い場合には
子宮内膜 掻爬術(子宮の内膜を書き出す治療)や子宮内留置バルーンを用いた圧迫止血、カテーテル治療 (子宮動脈塞栓 術)が検討される
機能性子宮出血に関連する治療薬
卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合製剤
- 女性ホルモンを補充し卵胞の成熟を抑え排卵を抑えることで月経困難症や月経周期異常などを治療する薬
- 子宮内膜は受精が不成立なら剥がれ落ち、その際に下腹部の強い痛み、吐き気やそれに伴う抑うつなどがあらわれることがあり、これが月経困難症の症状となる
- 適正に月経が起こるには卵胞ホルモンと黄体ホルモンの働きが必要で、これらのホルモンが脳に指令を与えることで卵胞の成熟が止まる
- 本剤は卵胞ホルモン・黄体ホルモンの混合剤で、脳にこれらを認識させることで卵胞の成熟を抑え排卵を抑える
- 薬剤によっては、骨粗しょう症や更年期障害などの治療に使われる場合もある
- 一般的に、卵胞ホルモンの含有量によって少ない順に低用量製剤、中用量製剤、高用量製剤に分けられる(一般的な低用量製剤に比べ、卵胞ホルモンの含有量がさらに少ない超低用量製剤もある)
黄体ホルモン製剤
- 黄体ホルモンを補充し、無月経、月経周期異常、月経困難症、機能性子宮出血、不妊症などを治療する薬
- 黄体ホルモン(プロゲステロン)には子宮内膜を増やし受精卵が着床するように子宮内環境を整える作用がある
- 黄体ホルモンの不足やバランスの崩れにより無月経や月経周期異常がおこる
- 黄体ホルモンの不足やバランスの崩れは機能性子宮出血や不妊症なども引き起こす
卵胞ホルモン製剤(エストロゲン製剤)
- 卵胞ホルモンを補充し、更年期障害によるほてり、発汗などの症状や不妊症、卵巣欠落症状などを改善する薬
- 更年期障害では卵胞ホルモン(エストロゲン)が減ることで自律神経失調や精神症状がおこる
- 更年期障害では、血管運動症状(ほてり、発汗など)や冷え、不眠、疲労感などがあらわれる
- 卵巣機能不全による不妊症や卵巣摘出による卵巣欠落症状などでは卵胞ホルモンの不足がおこる
- 薬剤よっては不妊治療や骨粗しょう症に使用する場合もある
- 薬剤によって剤形が内服薬、貼付剤、塗布剤など様々であり各製剤毎に適切な使用方法などの理解が必要となる