貧血(総論)の基礎知識
POINT 貧血(総論)とは
血液中に含まれる細胞である赤血球は、酸素を全身に運ぶ役割を持っています。この赤血球が正常よりも少ない状態を貧血といいます。貧血の原因の多くは鉄欠乏性貧血という病気ですが、他にも貧血になる原因は非常に多く存在します。貧血の症状としては、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、疲れやすさなどがあります。貧血の診断は採血検査で行います。採血によって貧血の診断に加えて、貧血の原因もある程度推測がつくので、予想される原因に応じて採血以外の追加検査も行われます。貧血の治療は貧血の原因や程度によって大きく異なります。貧血が心配な方や治療したい方はまずは一般内科を受診してください。貧血の原因が既に分かっている方は、その原因を専門とする診療科を受診してください。
貧血(総論)について
- 何らかの理由で赤血球が減ってしまい、全身に十分な酸素を供給できなくなってしまった状態
- 赤血球の中に「ヘモグロビン」という物質があり、赤血球が「トラック」だとすると、ヘモグロビンが酸素を運ぶ「荷台」の役割をしている
- ヘモグロビンが不足し、全身に届けられる酸素の量が減ってしまっている状態を貧血という
- 医学用語の「貧血」は日常の言葉で言う「貧血」と意味が違う
- 主な原因
- 継続的な出血(月経に伴う出血、胃や腸からの出血など)
- ヘモグロビンを作るための材料(鉄、ビタミン、葉酸など)の不足
- 赤血球を作る骨髄の異常
- 免疫が異常に働き、自分の赤血球を壊してしまう状態(自己免疫)
- 遺伝子の異常
- 女性に貧血が多い原因として、月経による出血や、ダイエットなどによる鉄分不足などがある
- 主な貧血の種類(詳細はそれぞれの疾患を参照)
- 鉄欠乏性貧血
- 過多月経、胃腸からの出血などが原因として多い
- 栄養の偏りも原因になりやすい
- 鉄芽球性貧血
- 二次性貧血
- 慢性の炎症や腫瘍によって貧血が引き起こされる
- 未熟児貧血
- 妊娠貧血
- 腎性貧血(慢性腎臓病を参照)
- 巨赤芽球性貧血(悪性貧血)
- 溶血性貧血
- サラセミア
- 鎌状赤血球症(日本ではまれ)
- 遺伝性球状赤血球症
- G6PD欠乏症
- ピルビン酸キナーゼ欠乏性貧血
- 自己免疫性溶血性貧血
- 発作性夜間ヘモグロビン尿症
- 溶血性尿毒症症候群(腸管出血性大腸菌による食中毒などで引き起こされる)
- 血栓性血小板減少性紫斑病
- スポーツ選手などで、足の裏で赤血球が破壊されて溶血性貧血を起こすことがある
- 門脈圧亢進(肝硬変など)により脾臓での赤血球破壊が過剰になって貧血を起こすことがある
- パルボウイルス感染症(リンゴ病など)により急激に悪化することがある
- 全身性エリテマトーデス、サルコイドーシス、結核などによる汎血球減少
- 再生不良性貧血
- ファンコーニ(Fanconi)貧血も含まれる
- 赤芽球癆
- 骨髄異形成症候群などによる汎血球減少
- 鉄欠乏性貧血
貧血(総論)の症状
- 主な症状:徐々に貧血になっていく場合は、身体が慣れていくため症状が目立たない
- 酸欠が原因で出現する症状
- めまいがする
- 立ちくらみがする
- 疲れやすい
- 息切れ
- 酸欠に対処しようとして心臓などが頑張りすぎるために出現する症状
- 動悸
- これらの症状は安静にしていると一時的に良くなることが多い
- 酸欠が原因で出現する症状
貧血(総論)の検査・診断
- 血液検査で男性ならばHb(ヘモグロビン)<13g/dl、女性ならばHb<12g/dl程度を目安として貧血と診断する
- 網赤血球は、骨髄が正常ならば貧血に反応して骨髄が産生を増やすので、貧血時に網赤血球は増加するのが一般的
- 網赤血球は、これから赤血球に変化していく未熟な細胞
- 網赤血球数が期待される範囲ならば溶血または出血が疑われる
- 網赤血球数が低値ならば赤血球の増殖または成熟の障害が疑われる
- RBC(赤血球数)、HCT(ヘマトクリット)からMCV(平均赤血球容積)、MCH(平均赤血球ヘモグロビン量)、MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)を計算する
- MCV=HCT/RBC、MCH=Hb/RBC、MCHC=Hb/HCT
- MCVは正常ならば80-100fl(フェムトリットル)
- 貧血の程度、患者背景、白血球や血小板の異常の有無、網赤血球数、MCV、などのデータを総合的に判断して、貧血の原因を推測する
- 原因が推測されたら、その原因を証明するための追加検査を行う
貧血(総論)の治療法
治療法の詳細貧血(総論)に関連する治療薬
葉酸製剤
- ビタミンの一つである葉酸を補い、葉酸欠乏による貧血や口内炎を予防する、もしくは妊娠時の葉酸補充などに使用する薬
- 葉酸は水溶性(水に溶けやすい性質)ビタミンである
- 赤血球の合成や細胞の生成を助け、皮膚の粘膜強化などにも作用する
- 胎児の成長に大切な役割を果たすため、妊娠中では十分な量の葉酸摂取が必要となる
- 「関節リウマチでの薬物療法」「がん治療での化学療法」「抗てんかん薬による治療」などにおける補充療法薬としても使用する場合がある
経口鉄剤
- 鉄欠乏性貧血による頭痛やめまい、息切れなどの症状を改善する薬
- 血液中の赤血球には酸素を運ぶヘモグロビンという成分が含まれ、ヘモグロビンをつくるには鉄が必須である
- 鉄が足りないと全身に十分な酸素が運べなくなる
- 本剤は鉄分を体内に補給することで、赤血球を増やす作用をもつ
- 手術前の造血目的などで使用する場合もある
ビタミンB12製剤
- ビタミンB12を補い、貧血や末梢神経痛、しびれなどを改善する薬
- ビタミンB12は水溶性(水に溶けやすい性質)ビタミンで細胞の分裂などに欠かせない核酸の合成に関わる
- ビタミンB12は血液中の酸素を運ぶヘモグロビンの合成に関わり貧血などを改善する
- ビタミンB12は末梢神経の修復などに関わり、痛みやしびれなどを改善する
- めまいや耳鳴りなどの治療に使用される場合もある
貧血(総論)の経過と病院探しのポイント
貧血(総論)が心配な方
貧血は血液中のヘモグロビンが減って、全身に十分な酸素が届けられない状態です。進行すると少しの運動で息切れがしたり、動悸が出たりします。このような症状は貧血に限らず様々な状況で生じますが、貧血の場合にはその背景に何らかの原因が隠れています。
頻度として多いのは、女性であれば月経に伴う出血、高齢者であれば胃腸からの出血が原因の鉄欠乏性貧血です。消化管出血の場合には便が赤や黒といったように普段と異なる色調になることがありますが、少量の出血は目で見ても色の違いが分からないため、便の色が正常だからといって消化管出血がないとは言い切れません。また、鉄欠乏性貧血以外では、様々な疾患が原因になり得ます。
上記のような症状に心当たりがある場合には、一度お近くの内科クリニックを受診されることをお勧めします。内科の中での診療科は、貧血の原因によって、消化器内科や血液内科など様々ですので、まず始めに受診するのはかかりつけの内科があればそちらが良いでしょうし、特にかかりつけがなければ通常の一般内科で問題ありません。そこで診察、検査を受けて、血液検査で実際に貧血があるとなった場合には、その先の詳細な検査に進むことになります。詳しい検査や治療については、それぞれの疾患のページも参考になさって下さい。
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