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自己免疫性溶血性貧血
自分の赤血球を攻撃する抗体ができることにより、赤血球が破壊されて貧血が起こる病気
2人の医師がチェック 38回の改訂 最終更新: 2018.02.08

自己免疫性溶血性貧血の基礎知識

POINT 自己免疫性溶血性貧血とは

血液中の成分である赤血球は、肺で酸素を取り込み全身に届ける役割があります。体内での赤血球寿命は約120日ほどです。自己免疫性溶血性貧血では、自身の免疫の異常のため赤血球を攻撃する抗体が作られてしまうことにより、本来の寿命よりも早く赤血球が破壊されてしまいます。そのため、赤血球の産生が壊される量に追いつかずに貧血となります。症状としては、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、だるさ、疲れやすさなどの貧血症状に加えて、黄疸(おうだん:皮膚や目が黄色くなる)、脾腫(脾臓が腫れてお腹が張る)などがあります。自己免疫性溶血性貧血の診断は採血で行います。また、隠れている他の病気の有無を調べるために、画像検査など適宜追加で検査を行います。治療はステロイド薬の内服が中心となります。効果が不十分の場合には追加の免疫抑制薬や、脾臓の摘出(脾摘)が検討されます。溶血性貧血が心配な方や治療したい方は血液内科を受診してください。

自己免疫性溶血性貧血について

  • 自分の赤血球を攻撃する抗体ができることにより、赤血球が破壊されて貧血が起こる病気
    • 免疫の異常によって起こる
    • 様々な因子が関係して発症する病気であり、詳しい原因はまだ不明である
    • 英語表記のautoimmune hemolytic anemiaの頭文字をとってAIHA(アイハ)と呼ばれることもある
    • その他の病気に伴って起こる続発性二次性)AIHAと、そうではない特発性AIHAに分けられる
    • 続発性(二次性)AIHAの原因となる病気としては、悪性リンパ腫やその他の自己免疫性疾患がある
  • 日本全体の患者数は数千人ほどと考えられている
    • 主に10-30歳程度の若年層と、高齢者に多い
  • 抗体が活動しやすい温度によって、以下のように分けられることもある
    • 温式抗体による自己免疫性溶血性貧血(温式AIHA)
      • 体温くらいの温度で活発になる抗体によって起こる
      • 自己免疫性溶血性貧血の約9割を占める
      • 子どもに感染症が原因で起こることもある
      • 10-15%の患者で特発性血小板減少性紫斑病ITP)を合併し、その場合はEvans(エバンス)症候群と呼ばれる
    • 冷式抗体による自己免疫性溶血性貧血(冷式AIHA)
      • 冷たい環境下で活発になる抗体によって起こる
      • さらに、寒冷凝集素症(CAD)と発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)とに分けられる
  • 厚生労働省の指定する難病の1つである
    • 一定の診断基準をみたし、ある程度以上重症であれば治療費の補助を受けられる場合がある

自己免疫性溶血性貧血の症状

  • 貧血による症状
    • めまい、ふらつき、立ちくらみ
    • だるさ、疲れやすさ
    • 息切れ
    • 動悸
    • 顔色が悪い
  • 赤血球が壊れる(溶血)ことにより、黄疸や脾腫がみられる
    • 黄疸:皮膚や眼球が黄色くなる
    • 脾腫:脾臓が腫れてお腹の張りや不快感を生じる
  • 冷式抗体が原因の原因の場合は、寒い環境下にいると起こる

自己免疫性溶血性貧血の検査・診断

  • 血液検査
  • 尿検査
  • 画像検査(CT検査など)
    • 診断に必須ではないが、合併している病気を検索するために行われる
    • 寒冷凝集素症では悪性リンパ腫を合併している場合があり、特に画像検査が有用

自己免疫性溶血性貧血の治療法

  • 副腎皮質ステロイドの使用が基本
    • 温式AIHAの70-80%でステロイドにより貧血が改善する
    • ステロイドは次第に用量を減らせるが、基本的には低用量で無期限に内服が必要
    • ステロイド内服中には感染症骨粗鬆症糖尿病胃潰瘍動脈硬化などの副作用に注意して、必要に応じて副作用の予防薬も使用する
    • ステロイドだけで効果が不十分であれば、脾臓の摘出(脾摘)や免疫抑制療法を検討する
    • 脾摘後は肺炎球菌ワクチンの接種など、感染症対策が重要である
    • 免疫抑制療法としてはシクロスポリンやアザチオプリンなどが使われる
  • 寒冷凝集素症ではステロイドの有効性は一般に低めである
  • 症状が強い場合は輸血を行う
  • 冷式AIHAの場合は寒い環境をなるべく避ける

自己免疫性溶血性貧血の経過と病院探しのポイント

自己免疫性溶血性貧血が心配な方

貧血とは血液中の赤血球、ヘモグロビンが減って、全身に十分な酸素が届けられないことです。赤血球がうまく作れなくなって貧血になる場合と、作った赤血球が壊れてしまって貧血になる場合がありますが、溶血性貧血はこのうちの後者を指します。その中で更に、免疫細胞の異常が原因で生じるのが自己免疫性溶血性貧血です。

自己免疫性溶血性貧血の症状が進行すると少しの運動で息切れがしたり、動悸が出たりします。またそれに加えて黄疸といって、皮膚や白眼の部分が黄色くなるといった症状も溶血性貧血ならではの特徴です。このような症状は溶血性貧血全体に見られるもので、自己免疫性溶血性貧血だけに限ったものというわけではありません。

上記のような症状に心当たりがある場合には、一度お近くの内科クリニックを受診されることをお勧めします。内科の中でも血液内科が専門ではありますが、息切れや黄疸だけでは原因が自己免疫性溶血性貧血だとは言い切れませんので、まずはどの種類の疾患かを判断するという意味で一般内科の受診をお勧めします。もし既にかかりつけの内科があるのならば、そこが消化器内科や循環器内科などの科であったとしてもそちらで問題ありません。はじめの診察、検査を受けて、血液検査で実際に何らかの溶血性貧血があるとなった場合には、その先の詳細な検査に進むことになります。

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自己免疫性溶血性貧血でお困りの方

自己免疫性溶血性貧血は、免疫細胞である白血球や、免疫物質である抗体、補体が異常な働きをしてしまうことが原因となります。温式と冷式と呼ばれる2つのパターンに分かれ、冷式の場合にはまずは体が冷えないようにすることが大切です。それ以外の全体的な治療法としてはステロイド薬が基本となり、どうしても必要な場合に限って、不足した血液を輸血して一時的な対応を行うことがあります。

温式自己免疫性溶血性貧血の場合には脾臓の手術も有効です。脾臓は免疫などいくつかの役割を担っていますが、古くなった血液を再利用のために破壊するという働きももっています。この脾臓を手術で取り去ってしまうことで、血液が破壊されなくなり、貧血が改善することを目的とした治療法です。脾臓の担っていた役割は肝臓など他の臓器で部分的に肩代わりすることができるため、いくつか特定の感染症が重症化しやすくなるといったリスクはあるものの、総合的にメリットの方が大きいと判断される場合には手術は一つの選択肢です。

ただし、このような手術を行うべきか、あるいは手術に限らずどのような治療を受けるべきかについては、まだ唯一に定まった見解はありません。特効薬があってそれで全てが治ってしまうという類の疾患ではないため、長期的に病気と付き合っていく必要があります。専門性の高い病気ですので、信頼できて日常生活の悩みをしっかり相談できる血液内科の主治医を見つけることがとても大切です。

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