てつけつぼうせいひんけつ
鉄欠乏性貧血
体内に蓄えられている鉄分の量が不足することで起こる貧血。鉄は赤血球の原料であり、鉄が不足すると貧血(赤血球不足)になる
15人の医師がチェック 95回の改訂 最終更新: 2017.12.09

鉄欠乏性貧血の基礎知識

POINT 鉄欠乏性貧血とは

貧血とは、酸素を運搬する細胞である赤血球に含まれるヘモグロビンが不足している状態を指します。鉄分は、体がヘモグロビンを作るために必須なので、鉄分不足の状態が続くと鉄欠乏性貧血となります。鉄分不足になる原因には様々なものがありますが、胃腸からの出血、あるいは月経に伴う出血による鉄分の喪失が最も多い原因です。 鉄欠乏性貧血の症状としては、他の貧血と同様にめまい、頭痛、疲労感、怠さ、失神、動悸、息切れなどがあります。診断は採血検査でヘモグロビンの濃度を調べたり、体内の鉄に関連した検査値を調べることで行います。鉄欠乏性貧血の診断がついた場合には、出血源を調べるなど、鉄が体内で不足している原因をつきとめることが重要です。 治療としては、鉄が欠乏する原因を治すことが根本的な治療になります。それと並行して鉄剤の内服や点滴と行い、貧血が著しい場合には輸血が検討されます。鉄欠乏性貧血が心配な方、治療したい方は内科を受診してください。

鉄欠乏性貧血について

  • 体内に蓄えられている鉄(鉄分)が不足して起こる貧血
    • 赤血球ヘモグロビン)が足りないことを貧血というが、ヘモグロビンの原材料である鉄分が不足していると貧血になって、体中に酸素を運ぶことができなくなる
  • 主な原因
    • 過剰な出血や鉄摂取不足
      • 月経による出血(特に子宮筋腫のある場合)
        • 若年女性で非常に多く見られる原因
      • 極端なダイエット、食事の偏り
      • 手術による胃切除後
    • 消化管出血
      • 男性や閉経後の女性では、消化管出血の可能性が高い
      • 消化管出血があると、血便や黒色便(黒い炭のような便)が出る
      • 胃腸から出血する原因としては、胃潰瘍や憩室出血、などがある
    • 妊娠
    • 悪性腫瘍
    • 子どもの成長に伴う、鉄必要量の増加
  • 体内の鉄分はある程度貯蔵されており、これを使いきるには数か月かかるため、鉄欠乏性貧血はゆっくりと進行することが多い
    • 体内に貯蔵されている鉄分は「フェリチン」という検査項目で確認できる
  • 日本人の貧血患者の約7割が鉄欠乏性貧血と言われる
    • 若年から中年の女性に起こりやすい(月経による出血のため)

鉄欠乏性貧血の症状

  • 鉄欠乏性貧血になると、主に貧血による様々な症状が起きる
    • ただし、貧血の出現がゆっくりであった場合、体が貧血状態に慣れてしまい、症状を自覚しないまま貧血が進行していることも多い
  • 貧血による主な症状
    • 頭痛
    • めまい、立ちくらみ
    • 動悸
    • 息切れ
    • 易疲労感(疲れやすい)
  • その他の症状
    • さじ状爪(爪の真ん中がスプーン状に凹む)
    • 異食症(氷や土などを無性に食べたくなる、まれな症状)
    • ひどくなると舌炎、口角炎やそれに伴う嚥下障害が起こることがある(プランマー・ビンソン症候群:Plummer-Vinson症候群、まれな症状)

鉄欠乏性貧血の検査・診断

  • 血液検査
    • まずは赤血球ヘモグロビン)の量を測定して貧血の程度を確認する
    • 更に詳しい血液検査(血清鉄、血清フェリチンなど)で体内の鉄の欠乏具合を確認する
  • 鉄欠乏性貧血の原因となる疾患(消化管出血過多月経など)を問診や身体検査で探すことも大事である
    • 消化管出血(胃腸からの出血)が疑われる場合には、便潜血検査や、胃カメラ大腸カメラ検査を行う
      • 胃腸からの出血は痛みを感じないことも多く、自覚症状がない場合も多い
    • 血小板の数や血液凝固の異常、血液を固まりにくくする薬など、出血の原因が他にないかどうかも確認する

鉄欠乏性貧血の治療法

  • 鉄欠乏性貧血の治療としては鉄剤の内服が原則
    • 何らかの理由で内服が難しい場合には点滴を行うこともある
  • 鉄分はオレンジジュースやビタミンCのサプリメントとともに摂ると効率よく体内に取り込めると言われている
  • 鉄分補給が十分かどうかを確認するために定期的に血液検査を行う
    • 過剰な鉄分の補充は有害となるので、適度な鉄分の量を採血で確認する
  • 鉄剤の内服薬は吐き気が見られることが多く、医師と相談しながらきちんと治療を継続することが重要
  • 鉄欠乏性貧血の原因となる病気そのものをしっかりと調べて、必要があれば治療することも重要
  • 極端な高度貧血の場合には輸血が検討される

鉄欠乏性貧血に関連する治療薬

経口鉄剤

  • 鉄欠乏性貧血による頭痛やめまい、息切れなどの症状を改善する薬
    • 血液中の赤血球には酸素を運ぶヘモグロビンという成分が含まれ、ヘモグロビンをつくるには鉄が必須である
    • 鉄が足りないと全身に十分な酸素が運べなくなる
    • 本剤は鉄分を体内に補給することで、赤血球を増やす作用をもつ
  • 手術前の造血目的などで使用する場合もある
経口鉄剤についてもっと詳しく

鉄欠乏性貧血の経過と病院探しのポイント

鉄欠乏性貧血が心配な方

鉄欠乏性貧血貧血の一種ですので、進行すると少しの運動で息切れがしたり、動悸がしたりします。このような症状は貧血に限らずさまざまな状況で生じますが、鉄欠乏性貧血の場合には、そうなった原因が別にあるはずです。頻度として多いのは、女性であれば月経に伴う出血、高齢者であれば消化管出血です。消化管出血の場合には便が赤や黒といったように普段と異なる色調になることがありますが、少量の出血は肉眼では色の違いが分からないため、便の色が正常だからといって消化管出血がないとは言い切れません。

上記のような症状に心当たりがある場合には、一度お近くの内科クリニックを受診されることをお勧めします。内科の中での診療科は、消化器内科や血液内科など原因によって様々ですので、まず始めに受診するのはかかりつけの内科があればそちらが良いでしょうし、特にかかりつけがなければ通常の一般内科で問題ありません。貧血や、体内の鉄分の量は簡単な血液検査で確認することができますし、ある程度以上に進行した貧血であれば顔色や目の診察で見当をつけることができます。そして、血液検査で実際に鉄欠乏性貧血があるとなった場合には、その先の詳細な検査に進むことになります。

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