2017.04.26 | ニュース

胃の薬を2年飲み続けた人で鉄分が不足する?

地域の統計による解析

from Gastroenterology

胃の薬を2年飲み続けた人で鉄分が不足する?の写真

胸焼け・咳などを起こす逆流性食道炎、腹痛などを起こす胃潰瘍などの治療に、胃酸を減らす薬が使われます。効果はよく知られていますが、胃酸を減らすことでほかに影響はないのでしょうか。統計解析の結果が報告されました。

健康な体の中で、胃酸は鉄を吸収しやすくする働きがあります。食べ物に含まれている鉄は胃と腸を通過する間に還元作用を受けて吸収されます。胃酸があることで還元作用が促されています。

胃がんなどの手術で胃を取り除いた人では、胃酸がなくなることで鉄の吸収が悪くなります。ほかの要因もあって、胃を取り除く手術のあとには貧血が起こりやすいことが知られています。

 

アメリカの研究班が、地域の統計データの解析を行い、胃酸を減らす薬と鉄欠乏の関連について調べた結果を専門誌『Gastroenterology』に報告しました。

鉄欠乏を診断された患者77,046人と、鉄欠乏がなかった389,314人を比較して、一方で薬を飲んでいた人が多いかどうかが検討されました。

胃酸を減らす作用のあるプロトンポンプ阻害薬とH2受容体拮抗薬について検討がなされました。

 

解析により次の結果が得られました。

2年以上のPPI(調整オッズ比2.49、95%信頼区間2.35-2.64)、2年以上のH2受容体拮抗薬(オッズ比1.58、95%信頼区間1.46-1.71)はどちらも、引き続く鉄欠乏のリスク増加と関連した。

プロトンポンプ阻害薬を2年以上飲んだあとと、H2受容体拮抗薬を2年以上飲んだあとで、どちらも鉄欠乏を診断されることが多くなっていました

プロトンポンプ阻害薬を多く飲んだ人のほうが鉄欠乏が多く、プロトンポンプ阻害薬を飲むのをやめたあとは鉄欠乏が減る傾向がありました。

 

胃酸を減らす薬と鉄欠乏の関連についての研究を紹介しました。

胃酸の生理的作用から考えると、胃酸を減らすことで鉄を吸収しにくくなることは説明がつきます。胃酸を減らす薬を飲むときに、鉄が不足しないようにと考えることは間違ってはいないでしょう。実際に鉄欠乏性貧血の治療で使われる鉄剤は、胃酸を減らす薬と一緒に飲むときは注意が必要とされています。

ただし、鉄欠乏ではない人まで、胃酸を減らす薬を飲むからといって鉄剤を飲む必要はありません。

また、薬の副作用として気を付けることはほかにもあります。プロトンポンプ阻害薬とH2受容体拮抗薬のどちらも発疹や便秘などがまれに現れます。

個別の副作用を知っておくことも役に立ちますが、何よりもまず飲んでいる薬を医師や薬剤師にしっかり伝えること、体調の変化を感じたときは早く医師・薬剤師に伝えることが大切です。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Proton Pump Inhibitor and Histamine-2 Receptor Antagonist Use and Iron Deficiency.

Gastroenterology. 2017 Mar.

[PMID: 27890768]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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