◆プロトンポンプ阻害薬は腎臓に影響するか?
この研究では、プロトンポンプ阻害薬と、違うしくみで胃酸の分泌を抑えるH2ブロッカーを比較しています。
研究班は、アメリカの兵役経験者の治療データベースを参照して、プロトンポンプ阻害薬を新たに使い始めた人173,321人と、H2ブロッカーを新たに使い始めた20,270人の経過を5年以上にわたって調べ、腎機能の変化に違いがあるかを調べました。
◆H2ブロッカーよりも慢性腎臓病が多い
次の結果が得られました。
調整Cox生存モデルにおいて、H2ブロッカー群と比べて、プロトンポンプ阻害薬群は新規発症としてeGFR<60ml/min/1.73m2に至るリスク(ハザード比1.22、95%信頼区間1.18-1.26)および慢性腎臓病の新規発症のリスク(ハザード比1.28、95%信頼区間1.23-1.34)が増加していた。
H2ブロッカーを使った人よりも、プロトンポンプ阻害薬を使った人のほうが、新たに慢性腎臓病となる人の割合が大きくなっていました。
プロトンポンプ阻害薬を使おうとするときには長期的な影響も考えるべきなのかもしれません。
ただし、この結果だけで慢性腎臓病が副作用と判断することはできません。日本ではプロトンポンプ阻害薬の使用期間は限るように決められていますが、この研究で使われたアメリカのデータには、360日以上にわたってプロトンポンプ阻害薬を使い続けた人も含まれています。
使用期間をどの程度にするのが適切か、今後の研究からもデータが集まることで新しい共通理解ができてくるかもしれません。
執筆者
Proton Pump Inhibitors and Risk of Incident CKD and Progression to ESRD.
J Am Soc Nephrol. 2016 Apr 14. [Epub ahead of print]
[PMID: 27080976]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。