2021.07.06 | コラム

透析だけではない? 腎臓の代わりをする治療について

3つある腎代替療法(じんだいたいりょうほう)に詳しくなれます
透析だけではない? 腎臓の代わりをする治療についての写真
(c)Семен Саливанчукstock.adobe.com

腎臓が悪くなるとその代わりとして「透析」が必要になるのは知られた話かもしれません。実は、腎臓の代わりをする治療法は他にも存在し、それらを総称して腎代替療法(じんだいたいりょうほう)と呼びます。 また、透析についても実際にどんなことをするのか具体的なイメージを持っている人は少ないかもしれません。そこで、このコラムでは「腎代替療法」について、その内容を簡単に説明していきます。

腎臓の機能について:特に大事なのは?

腎代替療法の理解をより深めるために、まず腎臓の機能について簡単に触れておきます。腎臓にはさまざまな役割がありますが、主なものは次の2つです。

 

【腎臓の機能】

  • 血液中の余分なものを尿として排出する
  • ホルモンを分泌する

 

この2つのうち、特に大事なのは「血液から尿を作る」機能です。 腎臓では血液に含まれる余分な水分や老廃物を尿にして身体の外に排泄します。尿を作る過程で、体液の電解質(ナトリウムやカリウムなど)の濃度の調節もしています。 また、腎臓は血圧を調節したり、赤血球を作るように促すホルモンなどを分泌をしています。

(なお、「ホルモンを分泌する機能」について詳しく知りたい人は「国民の10人に1人が腎臓病?」を参考にしてください。)

 

腎臓の機能が低下するとどんなことが起こるのか

腎臓の機能が低下すると、余分な水分や老廃物を尿として十分に排泄できなくなり、水分や老廃物が身体に過剰にたまります(①)。また、電解質の調節も上手くいかなくなります(②)。そして意外かもしれませんが、ホルモンの低下によって貧血の原因にもなります(③)。

 

①余分な水分や老廃物が体にたまり続けると、どうなるのか

血管中の水分量が増すと血圧が上昇し、過剰な水分が血管の外に染み出し身体がひどくむくみます。さらに、肺に水分がたまって呼吸がしづらくなるなど、身体の至ることろで問題となります。 また、腎機能が高度に低下すると、体内に尿毒素が蓄積し、食欲低下や吐き気、倦怠感、意識障害などさまざまな症状が現れることがあります。この状態を尿毒症と呼びます。

②電解質の調節が上手くいかなくなると、どうなるのか

電解質の濃度にくるいが生じると、全身に深刻な問題が起こります。特に、カリウムの濃度が高度に上昇すると、死に至る不整脈の原因になります。この状態を高カリウム血症といい、危険な状態です。

③腎臓のホルモンが低下すると、どうなるのか

腎臓から出るホルモンはいくつかあるのですが、その一つであるエリスロポエチンには赤血球を作るように促す役割があります。そのため、エリスロポエチンが減少すると、赤血球が作りづらくなり、貧血になってしまいます(腎性貧血)。幸い腎性貧血は赤血球を作る働きを補う内服薬や注射薬で治療ができるので、適切な管理を行うことで貧血を予防できます。


腎機能の低下が軽度であれば悪影響はほとんど感じない程度なのですが、腎機能が高度に低下し、体液量や電解質の調節が難しくなったり、尿毒症の症状が現れたりすると、腎代替療法を検討する必要があります。

なお、年齢や持病、本人の希望などによっては、後述する透析や腎移植を行わず、症状を和らげながら生活の質を重視する保存的腎臓療法(CKM)を選択する場合もあります。

腎代替療法には3つの方法がある:血液透析、腹膜透析、腎移植

腎臓の代わりの治療(腎代替療法)というと、多くの人が「透析」を思い浮かべるかもしれません。実は、比較的なじみがある透析には「血液透析」と「腹膜透析」の2つがあり、そして全く別の方法として「腎移植」があります。

血液透析

「透析」というと、こちらの血液透析を指していることが多いです。実際に腎代替療法が必要になった人々のうち90%以上が血液透析を選んでいます。

血液を身体の外に抜き出して、機械で不要な老廃物や水分を取り除き、きれいになった血液を身体に戻す方法です。基本的には医療機関で行う治療です。毎回以下のような流れで行われます。

 

【血液透析の流れ】

  • 2箇所の血管に針を指して、血管内に細いチューブを挿入する
    • 片方は血液を身体から抜き出すために用いられ、もう片方は血液を身体にもどすために用いられる
  • 血管内に挿入したチューブと機械をつなげる
  • 血液を抜き出して、機械で血液に含まれる余分な水分や電解質、老廃物などを除去する
  • きれいになった血液を身体に戻す
  • 針を抜いてしっかりと止血する

 

血液透析

 

一回の血液透析には、3時間から5時間程度が必要です。その間は用意されたベッドの上で静かに過ごします。たいていの人は、週に3回行う必要があります。血液透析を行うにはシャントと呼ばれる処置をしておく必要があります。シャントについては「血液透析に必要なシャントとはどんなものなのか?」で説明しているので、参考にしてください。

腹膜透析

腹膜透析も「透析」の一つなのですが、血液透析に比べると、行っている人は多くはありません。機械を利用する血液透析に対して、腹膜透析は「腹膜」という自分の身体の一部を利用して血液をきれいにする方法です。

腹膜は胃や腸といったお腹の中の臓器を包む構造物です。腹膜には毛細血管と呼ばれる細い血管が張り巡らされていて、お腹の中に透析液という特殊な液体を入れると、毛細血管の壁から余分な水分や老廃物が染み出して、血液がきれいになります。

腹膜透析には、主に「CAPD(連続携行式腹膜透析)」と「APD(自動腹膜透析)」の2つの方法があります。CAPDは、日中に自分で透析液を交換する方法です。一般的には1日に数回、透析液をお腹の中に入れ替えます。1回の交換にかかる時間はそれほど長くありませんが、毎日決められた回数の交換を行う必要があります。一方、APDは専用の機械を使って、主に睡眠中に透析液を自動で交換する方法です。夜間にまとめて透析を行えるため、日中の透析液交換を減らせる、あるいは行わずに済むことがあります。どちらの方法が適しているかは、腎臓の状態だけでなく、生活スタイルや仕事、家族のサポートなども踏まえて決めます。

透析液をお腹に入れるため、あらかじめカテーテルという管を手術で埋め込んでおきます。また、お腹の中に透析液を入れたり抜いたりする作業は自分で行えるので、血液透析と違って、医療機関に行く必要はありません。加えて、透析中は器具とつながっている必要もないので、血液透析と比べると行動の制限が小さいといえます。(腹膜透析について詳しくはこちらのコラムも参考に)

 

腎移植

腎移植は他人の健康な腎臓を移植することによって、腎臓の機能を回復させる治療法です。ただし、もともとある自分の腎臓を取り除いて、その場所に新しい腎臓を埋め込むわけではありません。自分の腎臓は残したまま、足の付根にあるスペースに新しい腎臓を埋め込みます。 移植した腎臓が良好に機能すれば、透析を必要とせず、生活上の制約も大きく減らすことができます。ただし、他人の腎臓であるために、何もしないと拒絶反応が起きて移植した腎臓が破壊されてしまいます。したがって、拒絶反応を抑える免疫抑制薬を生涯飲み続けなければなりません。

 

「以前のコラム「国民の10人に1人が腎臓病?」」でも説明したように、今や慢性腎臓病は多くの人がかかる病気です。だからこそ、このコラムの内容は腎代替療法が差し迫っている人やその家族だけではなく、多くの人に知ってほしいと考えています。 今回は腎代替療法の概要を説明しましたが、それぞれの治療についてもっと深く知りたいと思った人もいるかもしれません。折を見て各治療法について詳しく説明していきたいと考えています。

 

参考文献

・日本腎臓学会, 日本透析医学会, 日本腹膜透析医学会, 日本臨床腎移植学会, 日本小児腎臓病学会/編集「腎代替療法選択ガイド2020」, ライフサイエンス出版, 2020

・赤座英之/監修「標準泌尿器科学」, 医学書院, 2014

・日本透析医学会統計調査委員会:わが国の慢性透析医療の現況(2021.5.6閲覧)

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。