2018.11.02 | コラム

国民の10人に1人が腎臓病?:患者数が増加している慢性腎臓病(CKD)の基礎知識・予防・治療について

糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満があれば要注意
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(c)Ben-Schonewille-iStock.com

近年、慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)の人が増えています。慢性腎臓病とは腎臓の機能障害が慢性的に続く病気の総称で、日本では1330万人の患者さんがいると推定されています。つまり、国民のおおよそ10人に1人が慢性腎臓病を抱えていることになります。

腎臓の病気はすぐに症状が出ないことが多いため、心臓や脳の病気と違って腎臓の病気について気にする人はあまりいないかもしれません。確かに腎臓の機能が多少低下した程度では症状を自覚することはほとんどありません。しかし、身体を維持するために腎臓は多くの役割を担っており、その機能が大きく低下してしまうと身体にさまざまな影響が現れます。

このコラムでは「腎臓の基礎知識」と「慢性腎臓病」について要点を絞って説明します。慢性腎臓病の予防や治療に役立ててください。

 

1. 慢性腎臓病(CKD)の説明の前に知っておきたい腎臓の基礎知識

腎臓は腰骨の上辺りの背中側にあり、左右に1つずつあります。形は「そら豆」に例えられることが多く、その大きさは「にぎりこぶし」と同じくらいです。腎臓には主に次の2つの役割があります。

 

  • 血液を基に尿を作り出す
  • ホルモンを分泌する

 

この2つの役割は身体のバランスを保つ上でとても重要です。それぞれについてもう少し詳しく説明していきます。

 

血液を基に尿を作り出す

腎臓は血液から尿を作り出しています。尿には大きな役割があります。「老廃物を外に出すこと」と、「身体の中の水分量の調節を行うこと」の2つの機能を担っています。

 

■老廃物を外に出す

血液中には身体に必要な酸素や栄養とともに、要らなくなった老廃物も含まれています。老廃物が溜まってくると段々と体調が悪くなってきます。そのため、腎臓は血液から老廃物を濾し取って尿を作り、身体の外に出します。

 

■身体の中の水分量の調節を行う

腎臓は身体の水分量を一定に保つために尿を作っています。

具体的に言うと、水分摂取が不十分なときには腎臓は尿量を少なくして身体の中に水分をとどめます。反対に、水分摂取が多いときには腎臓は尿量を増やして余分な水分を身体の外に出します。

 

ホルモンを分泌する

尿を作るだけではなく腎臓はホルモンも分泌します。腎臓から分泌されるホルモンは主に血圧の調節と赤血球をつくることに関わっています。

 

【腎臓が分泌する主なホルモン】

  • 血圧を調節する主なホルモン
    • レニン
    • プロスタグランジン
  • 赤血球を作るように働きかけるホルモン
    • エリスロポエチン

 

腎臓から分泌されるレニンやプロスタグランジンといったホルモンも血圧の調整に関わるホルモンです。腎臓以外にも血圧を調節するシステムは存在しますが、腎臓は腎臓に流れてくる血液量を感知して血圧を適正に保とうと働きます。一方で、腎臓の機能が低下した場合には、ホルモンの分泌に異常が生じ、血圧が不安定になります。

赤血球は血液の成分の一つで、肺で取り込まれた酸素を全身に運搬する働きがあります。赤血球が一定数より少なくなった状態を医学的に貧血といい、動悸や息切れ、ふらつきの原因になります。赤血球は主に骨の中で作られますが、赤血球を作るように促しているのが腎臓から分泌されるエリスロポエチンというホルモンです。腎臓の機能が低下した場合には、エリスロポエチンが減ることで、貧血起こります。

 

2. 慢性腎臓病(CKD)になるとどんな症状が出るのか?

ここまで、腎臓のさまざまな役割について説明してきました。

近年患者数が増えている慢性腎臓病は、腎臓の障害が慢性的に続いて機能が徐々に低下する病気です。初期の慢性腎臓病は無症状のことがほとんどですが、進行すると、ここまで説明してきた腎臓の役割が十分に果たせなくなり、主に次のような症状が現れます。

 

  • 身体がむくむ(水分が身体に溜まった影響)
  • 倦怠感が現れる(老廃物が溜まった影響)
  • 動悸や息切れ(貧血の影響)

 

慢性腎臓病さらに進行すると、尿をほとんど作り出せなくなり、老廃物や余分な水分を身体の外に出せなくなります。この段階まで進むと、血液透析や腹膜透析といった腎臓の代わりをする治療が必要になります。

また、慢性腎臓病になると、脳卒中心筋梗塞といった心臓や血管の病気になりやすいこともわかっています。脳卒中になると身体の片側が麻痺したりしゃべりにくくなったりします。また、心筋梗塞になると胸の痛みや動悸、肩の痛みなどが起こります。

慢性腎臓病は誰にでも起こりうる病気ですが、なりやすい人の特徴がわかっています。この次の章で説明していきます。

 

3. どんな人が慢性腎臓病(CKD)になりやすいのか

慢性腎臓病になりやすい人はリスク因子と呼ばれる特徴をもつ人です。慢性腎臓病のリスク因子は以下のものです。

 

慢性腎臓病の主なリスク因子】

 

いずれのリスク因子も生活習慣と密接に関わるものです。リスク因子を抱えていると慢性腎臓病になる危険性が高くなるだけでなく、発症後に病気の進行を加速させる要因にもなります。リスク因子を適切に治療することで、慢性腎臓病の予防や病気の進行を遅らせる必要があります

例えば、糖尿病の人であれば運動療法や食事療法、薬物療法によって血糖値を正常に保つことが大切であり、肥満の人であれば運動や食事の工夫で適正な体重に近づけることが大切です。

 

4. 慢性腎臓病(CKD)と言われたら気をつけたい生活習慣

慢性腎臓病の人は、リスク因子の治療とともに、腎臓にできるだけ負担をかけないような生活習慣の工夫が必要です。

 

慢性腎臓病の人に勧められる生活習慣】

  • 禁煙
  • 食事療法
    • 塩分の制限
    • タンパク質の制限
    • 適切なカロリーの摂取

 

喫煙は慢性腎臓病の発症や進行に関わると考えられているので、禁煙をするのが望ましいです。自力での禁煙が難しい時には、周りの人の力を借りたり禁煙外来を利用したりすると禁煙できる可能性を高めることができます。

また、慢性腎臓病の進行を遅らせるには食事療法も重要です。たかが食事と考えるかもしれませんが、過度な塩分やタンパク質の摂取は腎臓に負担をかけてしまい、腎臓に障害が起こる原因になります。慢性腎臓病と言われたら、適切なカロリー摂取の方法も含めて、管理栄養士に相談するようにしてください。

 

5. 慢性腎臓病(CKD)の予防や治療のために必要なこと

腎臓は一度機能が低下すると、その低下した部分が元に戻ることはありません慢性腎臓病と上手くつきあいながら自分らしく生活するには、腎臓の機能を保つための心構えが必要です。そのためには、「リスク因子の治療」と「腎臓に負担をかけない生活」の2つが重要です。

慢性腎臓病と指摘された人や心配な人は、このコラムの内容を参考にして、未来の自分の生活をより良くする取り組みについて考えてみてください。

 

執筆者

斎木 寛

参考文献

エビデンスに基づくCKDガイドライン2018

・「腎臓内科診療マニュアル」(浅野 泰/監修)、日本医学館、2010

・「標準泌尿器科学」(赤座英之/監 並木幹夫、堀江重郎/編)、医学書院、2014

・「泌尿器科診療ガイド」(勝岡洋治/編)、金芳堂、2011

・「異常値の出るメカニズム」(河合 忠/著)、医学書院、2018

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。