2016.01.19 | ニュース

胃の薬を使った人を10年以上追跡すると、腎臓に影響が?

アメリカ1万人の調査から

from JAMA internal medicine

胃の薬を使った人を10年以上追跡すると、腎臓に影響が?の写真

胃潰瘍や胃食道逆流の治療によく使われるプロトンポンプ阻害薬は、胃酸の分泌を抑える作用があります。副作用として便秘や下痢などのほか、まれに急性腎不全を起こす可能性があるとも言われます。長期的に腎臓に影響があるかが検討されました。

◆プロトンポンプ阻害薬は慢性腎臓病を起こすのか?

この研究は、過去にアメリカで行われた調査のデータを使って解析を行いました。

1996年から1999年の調査開始時に腎機能が正常か、軽度低下の範囲にあった人(eGFRが60ml/min/1.73m2以上)が対象となり、2011年までの追跡調査により、慢性腎臓病が新たに発症したかどうかが評価されました。

 

◆慢性腎臓病が増加

次の結果が得られました。

プロトンポンプ阻害薬の使用は、慢性腎臓病の新規発症と関連し、未調整の解析でハザード比1.45(95%信頼区間1.11-1.90)、人口統計学的変数、社会経済学的変数、臨床的変数で調整した解析でハザード比1.50(95%信頼区間1.14-1.96)、PPI使用経験を時間依存変数としたモデルの解析で調整ハザード比1.35(95%信頼区間1.17-1.55)だった。この関連は、ベースラインでのPPI使用者を直接H2受容体アンタゴニストの使用者と比較したとき(調整ハザード比1.39、95%信頼区間1.01-1.91)、傾向スコアでマッチングした非使用者と比較したとき(調整ハザード比1.76、95%信頼区間1.13-2.74)にも持続した。

調査開始時にプロトンポンプ阻害薬を使っていた人では、慢性腎臓病の発症が多い傾向が見られました。ほかの種類の薬(H2ブロッカー)を使っていた人と比べても、プロトンポンプ阻害薬を使った人のほうが慢性腎臓病の発症が多くなっていました。

 

プロトンポンプ阻害薬は多くの場面で必要とされる薬です。しかし、起こりうる影響を予測して、ほかの選択肢と適切に使い分けるためには、こうした長期的な検討が役に立つかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Proton Pump Inhibitor Use and the Risk of Chronic Kidney Disease.

JAMA Intern Med. 2016 Jan 11. [Epub ahead of print]

[PMID: 26752337]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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