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発作性夜間ヘモグロビン尿症
赤血球が異常に破壊されてしまうことが原因で起こる血液の病気。尿の色調が赤褐色に変化することで病気に気づく人が多い
最終更新: 2020.07.29

発作性夜間ヘモグロビン尿症の基礎知識

POINT 発作性夜間ヘモグロビン尿症とは

発作性夜間ヘモグロビン尿症は、身体の免疫システムを担う補体という物質が自分の赤血球を攻撃して破壊してしまう病気です。重症化すると赤血球のみならず、白血球や血小板も減少していきます。さまざまな症状が見られますが、一番目立つ症状は尿の色調の変化(赤褐色)ですので、コーラ色の尿が続く人は医療機関を受診するようにしてください。感染症にかかったときに色調の変化が目立つようになるのも特徴です。 治療は状況に応じていろいろなものが選択肢にあがります。症状に思い当たる節がある人は、血液内科や総合内科に相談するようにしてください。

発作性夜間ヘモグロビン尿症について

  • 赤血球が通常の寿命よりも早く壊されてしまうために貧血が起こる
    • 壊れた赤血球(溶血)の影響で尿が赤褐色(コーラ色)に変化する
    • 溶血は夜間睡眠中に特に活発に起こる
    • 感染症を患うと尿の変色が目立つようになる
  • グリコシルホスファチジルイノシトール(Glycosyl Phosphatidylinositol: GPI)という物質を作るのに必要な遺伝子(PIGA遺伝子)が変異していることが原因
    • 結果として赤血球の表面に本来あるはずのタンパク質が存在しないことによって、赤血球が免疫システムの一翼を担う物質の1つである補体の攻撃を受けるようになる
    • 遺伝子変異が原因の病気だが、親から子に遺伝するわけではない
    • 感染症で尿の変色が強くなるのは補体が活性化することによる
  • 徐々に進行していくことが多いが、自然治癒することもある
  • 100万人あたり1.2人の罹患率と考えられている
    • 推定患者数は430人ほど
    • 男女差はない
    • 子供にも発症するが20-60歳代に患者が多い

発作性夜間ヘモグロビン尿症の症状

  • 見られやすい症状は次のように大別できる
    • 赤血球が壊れること(溶血)によって起こる症状
      • 尿の赤褐色への変化(ビリルビン尿):血液中に放出されたビリルビンが尿中に排泄されるため
      • 息切れ:貧血によるもの
      • 動悸貧血によるもの
      • 飲み込みづらさ:溶血によって血液中に放出されたヘモグロビンが一酸化窒素を吸収してしまうため筋肉が異常に収縮すると考えられている
      • 胸部や腹部の痛み:溶血によって血液中に放出されたヘモグロビンが一酸化窒素を吸収してしまうため、筋肉が異常に収縮すると考えられている
      • 勃起不全:溶血によって血液中に放出されたヘモグロビンが一酸化窒素を吸収してしまうことの影響と考えられている
      • むくみ:繰り返し大量のビリルビンが腎臓に流れ込むことで、慢性腎不全になってしまうことによる
      • 倦怠感(だるさ):繰り返し大量のビリルビンが腎臓に流れ込むことで、慢性腎不全になってしまうことによる
    • 血球を作る臓器(骨髄)の機能が低下することによって起こる症状
      • 赤血球の減少による症状
        • 息切れ
        • 動悸
        • めまい
        • 易疲労感(疲れやすい) など
      • 白血球の減少による症状
        • 発熱
        • 倦怠感 など
      • 血小板の減少による症状
        • あざ
        • 歯ぐきからの出血 など
    • 血管に血栓が詰まること(血栓症)によって起こる症状
      • 足の痛み:足の静脈が詰まることによる
      • 足のむくみ:足の静脈が詰まることによる
      • 息切れ::肺の動脈が詰まることによる
      • 胸痛:肺の動脈が詰まることによる
      • 意識消失:肺の動脈が詰まることによる

発作性夜間ヘモグロビン尿症の検査・診断

  • PNHが疑われた場合にはまずは次の検査が行われる
    • 血算
      • 白血球数や赤血球数、血小板数の減少を確認する
    • 血液生化学
      • 間接ビリルビンLDHの上昇を確認する
      • ハプトグロビンの減少を確認する
    • 尿検査
      • 尿中ヘモグロビンや尿中ヘモジデリンの陽性を確認する
    • 骨髄穿刺骨髄生検
      • 骨髄赤芽球の増加を確認する
      • 骨髄自体は過形成(過剰に増殖している)のことが多いが、低形成萎縮して減っている)もあり得る
    • Ham(ハム)試験
      • 赤血球が補体によって影響を受けやすくなっている場合に陽性となる
      • この試験はPNH特異的なので、陽性の場合にはPNHが強く疑われる
    • 砂糖水試験
  • 上記の検査でPNHがより疑わしいと判断された人は次の検査を受けて診断を確定することになる
    • フローサイトメトリー
      • PNHに特徴的な血球(GPIアンカー型膜タンパクの欠損血球)を検出する
      • 確定診断以外にも、治療中の人が1年に一度検査を受けることが推奨されている
    • 直接クームス(抗グロブリン)試験
      • 自己免疫貧血薬剤性溶血性貧血などで見られる自己抗体によって赤血球が破壊されているのかどうかを確認する
      • 陽性となった人は溶血性貧血や薬剤性溶血性貧血、新生児溶血性貧血などが疑われる一方で、この試験が陰性となった人はPNHがより強く疑われる

発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療法

  • 根治を目指す治療
    • 骨髄移植
      • 異常な骨髄を正常な骨髄に置き換えることで根治が図れる
      • 白血球の型(HLA)が一致する家族から骨髄を提供してもらうことが多い
      • 誰にでも行えるような治療ではないことと、PNHが経過の良い病気であることから、重症患者(重い症状を繰り返す、重い汎血球減少があるなど)に対して行われる
  • 免疫抑制剤で補体赤血球への攻撃を抑える治療
    • エクリズマブ
      • 補体の活性を抑えることで溶血を防ぐ
      • 頭痛や鼻咽頭炎、吐き気などの副作用が見られることが多い
    • 副腎皮質ステロイド
      • 溶血を抑える効果が期待できる一方で、感染症のリスクが高まるので予防に努める必要がある
    • 抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(Anti-Thymocyte Globulin: ATG)
    • シクロスポリン
    • 蛋白同化ステロイド
    • デフェラシロクス
  • 症状を緩和する治療
    • 赤血球を回復させる治療
      • 輸血
      • 葉酸や鉄剤の投与
      • ハプトグロビンの投与
    • 白血球を回復させる治療
      • 顆粒球コロニー形成刺激因子(Granulocyte Colony Stimulating Factor: G-CSF)
    • 血小板を回復させる治療
      • 輸血
    • 血栓症を改善させる
      • tPA(血栓溶解剤)
      • ヘパリン
    • 血栓症を予防する
      • ワーファリン
      • エクリズマブ
  • 但し、軽症の人は治療せずに経過観察することもある

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