[医師監修・作成]発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の検査について:血液検査、フローサイトメトリー、骨髄検査など | MEDLEY(メドレー)
ほっさせいやかんへもぐろびんにょうしょう
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)
赤血球が異常に破壊されてしまうことが原因で起こる血液の病気。尿の色調が赤褐色に変化することで病気に気づく人が多い
1人の医師がチェック 40回の改訂 最終更新: 2021.03.23

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の検査について:血液検査、フローサイトメトリー、骨髄検査など

PNHが疑われる人には問診、身体診察、血液検査、尿検査、フローサイトメトリー、骨髄検査などが行われます。問診、身体診察、血液検査、尿検査からPNHの絞り込みを行います。フローサイトメトリーは診断を確定するために用いられます。骨髄検査は血液が正常に作られているかを調べるための検査です。

1. 問診

問診とは医師の質問に答える形で身体の状態や生活背景を伝えることをいいます。PNHの人は以下のポイントを中心に聞かれます。

  • どのような症状があるか
  • 症状はいつから出現しているか
  • 治療中の病気・持病はあるか
  • 飲んでいる薬は何かあるか
  • 妊娠しているか・今後の妊娠希望はあるか
  • アレルギーがあるか

貧血症状、朝の尿が黒いなどの症状があれば、PNHを疑うきっかけになります。問診により疑わしい病気を絞り込み、身体診察やその他の検査を用いてより詳しく調べられます。持病やアレルギーの情報は治療薬を決めるうえで、大事な情報になります。

2. 身体診察

身体診察は医師による身体の状態の評価です。PNHを疑わせるサインがないかや、重症度の把握を行います。例えば、まぶたの裏側を色を見ることで貧血の程度を予測することができますし、皮膚にあざがたくさんできているようであれば、出血のサインかもしれません。身体診察からは即座に多くの情報を得ることができます。

3. 血液検査

PNHの診断や状態把握において血液検査は欠かせません。具体的には以下の項目を中心にチェックしていきます。

  • 血液細胞の状態を調べる検査:ヘモグロビン白血球血小板
  • 血液細胞の形を顕微鏡でみる検査:血液像
  • 赤血球が壊されているか調べる検査:LDH、ハプトグロビン
  • 腎機能をみる検査:BUN、クレアチニン

以下でそれぞれの項目について説明していきます。

血液細胞の数や含まれる物質の濃度を調べる検査:ヘモグロビン、白血球、血小板

血液には赤血球や白血球などの血液細胞が含まれています。PNHでは、血液検査で血液細胞の状態を調べておくことが重要です。ヘモグロビンの濃度を確認したり、白血球や血小板の数などを確認します。

【ヘモグロビン】

ヘモグロビンは赤血球に含まれる物質です。赤血球は酸素の運び屋としての役割があります。これは酸素がヘモグロビンとくっつくことで行われます。ヘモグロビンは検査結果の用紙にはHb(Hemoglobinの略)と記載されることもあります。血液中に含まれるヘモグロビンの濃度は「g/dL」という単位で表されます。正常値は男性は13g/dL以上、女性が12g/dL以上です。ヘモグロビンは貧血の重症度を把握するために用いることができます。

【白血球】

白血球は免疫システムに関わる細胞です。検査結果の用紙にはWBC(White Blood Cellsの略)と記載されることもあります。白血球の正常値は3500-8500/μLです。PNHでは白血球が壊されることにより、白血球の数も少なくなることがあります。もし、白血球が少ない時に感染症にかかると重症化しやすいので、感染対策に気を付ける必要があります。

【血小板】

血小板は出血を止めるのに必要な血液成分です。検査結果の用紙にはPlt(Plateletsの略)と記載されることもあります。血小板の正常値は15-40万/μLです。PNHでは血小板の数も低下することがあります。血小板の数が少ない場合には、出血のリスクが高まるので注意が必要です。

血液細胞の形を顕微鏡でみる検査:血液像

血液を顕微鏡で観察する検査を血液像といいます。血液中を漂っている細胞の形に異常がないかを確認します。例えば、白血球の形が異常であれば、白血病などの他の貧血を起こす病気の可能性についても考えなくてはなりません。

赤血球が壊されているか調べる検査:LDH、間接ビリルビン、ハプトグロビンなど

貧血は赤血球の破壊以外にも、産生が低下することによっても起こります(詳しくは原因についてのページ参照)。もし、赤血球が壊されているサインを見つけることができれば、PNHの診断に近づくことができます。

赤血球が壊されているサインは血液検査にも現れます。具体的にはLDH、間接ビリルビン、ハプトグロビンなどが破壊されているかどうかを教えてくれます。

【LDH】

LDH(乳酸脱水素酵素)は細胞中に含まれる物質の一つです。基準値は120-220 U/lです。細胞が壊れるとLDHが血液中に漏れ出るため、LDHの値が上昇します。PNHでは赤血球が壊れることで LDHが上昇します。ただし、肝障害や心筋梗塞などのように他の細胞が壊れる病気でも上昇してしまいます。そのため、LDHの上昇のみで赤血球が壊れていると判断せず、間接ビリルビンやハプトグロビンの値も参考にします。

【間接ビリルビン】

間接ビリルビンは壊れた赤血球を分解する過程で出る物質です。PNHでは壊れる赤血球の数が増えるため、分解の結果生じる間接ビリルビンの値も高くなります。

【ハプトグロビン】

ハプトグロビンはLDHや間接ビリルビンよりも、赤血球の破壊のチェックに特化した検査項目です。赤血球が破壊されていると、ハプトグロビンの値は低下します。

ハプトグロビンはヘモグロビンと関連がある物質です。赤血球が壊れて生身のヘモグロビンが血液中に漏れ出た場合には、ヘモグロビンは毒性を発揮することがあります。ハプトグロビンはこのような状況において、生身のヘモグロビンの毒性を落とす作用がある物質です。具体的には、血液中に漏れ出た生身のヘモグロビンと結合することで、ヘモグロビンが悪さをしないようにします。

赤血球が壊されたことで起こるタイプの貧血では、大量のハプトグロビンが消費されます。その結果、血液中のハプトグロビンの値が低下することになります。

腎機能をみる検査:BUN、クレアチニン

BUN、クレアチニンは腎臓の機能を調べる検査です。PNHではヘモグロビンが尿中に漏れ出る過程で、腎臓に負担をかけることがあります。そのため、腎臓の機能の評価をします。

BUNとクレアチニンは腎臓から常時排泄されている物質です。腎臓の機能が落ちてくると、血液中のBUN、クレアチニンを排泄できずに濃度が上昇してきます。そのため腎臓の機能を予測する検査として用いることができます。

4. 尿検査

PNHの特徴であるヘモグロビン尿は、見た目が明らかにコーラ色であれば即座に判断することができます。しかし、尿に漏れ出ているヘモグロビンの量が少なければ、見た目だけでは判断が難しいことがあります。尿検査では見た目でわからないような微量なヘモグロビンも検出することができます。

5. フローサイトメトリー

難しい名前ですが、フローサイトメトリーは細胞の表面にある物質を調べられる検査です。PNHの原因は赤血球の表面にCD55やCD59がないことです(詳しくは原因についてのページ参照)。CD55とCD59は本来、健康な人の赤血球の表面に出ている物質です。赤血球にCD55やCD59がないことが異常(PNH)、CD55やCD59があることが正常(健康な人)とも言えます。

フローサイトメトリーで赤血球にCD55やCD59があるかないか確認することで、PNHの診断を行います。

6. 骨髄検査

骨の内部には「骨髄」という場所があります。骨髄は血液を作っており、「血液の工場」と呼ばれています。骨髄検査は骨に針を刺して、骨髄の一部をとってくる検査です。PNHでは、骨髄に異常があらわれることがあるので、骨髄検査を行います。

骨髄検査はおしりの骨または胸の骨に専用の針を刺して行います。胸の骨の近くには心臓などの重要な臓器があるので、特別の理由がなければ、おしりの骨で行われることが多いです。検査中はおしりに骨が押されたり、引っ張られる感覚はあります。骨に針を刺す前には麻酔の注射を行うので、痛みはさほど強くないことが多いですが、もし痛みが強い場合には、お医者さんに声をかけるようにしてください。