[医師監修・作成]発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療について:抗補体モノクローナル抗体製剤(ソリリス®、ユルトミリス®)など | MEDLEY(メドレー)
ほっさせいやかんへもぐろびんにょうしょう
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)
赤血球が異常に破壊されてしまうことが原因で起こる血液の病気。尿の色調が赤褐色に変化することで病気に気づく人が多い
1人の医師がチェック 40回の改訂 最終更新: 2021.03.23

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療について:抗補体モノクローナル抗体製剤(ソリリス®、ユルトミリス®)など

PNHでは抗補体モノクローナル抗体製剤(ソリリス®、ユルトミリス®)やステロイド薬による治療が行われます。赤血球血小板を補う必要があれば、輸血をします。重症例では、根治を目的として骨髄移植を行うことがあります。

1. 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療について

PNHの主な治療としては以下のものがあります。

  • 抗補体モノクローナル抗体製剤(ソリリス®、ユルトミリス®)
  • ステロイド薬
  • 輸血
  • 骨髄移植

抗補体モノクローナル抗体製剤はPNHの原因となる補体の作用を弱める薬です。輸血は少なくなってしまった赤血球や血小板を血液製剤にて補う方法です。ステロイド薬も一定の効果がある薬剤ですが、長期の使用は副作用が問題になります。骨髄移植は唯一の根治治療ですが、行われるケースは限られています。以下で詳しく説明してきます。

2. 抗補体モノクローナル抗体製剤(ソリリス®、ユルトミリス®)

PNHは補体が赤血球を攻撃することで起こります(詳しくは原因についてのページ)。抗補体モノクローナル抗体製剤は、補体の作用を弱めることでPNHの症状を緩和します。補体をピンポイントで抑える非常に画期的な薬剤です。

ソリリス®ユルトミリス®の2種類があり、外来で点滴します。

ソリリス®は最初の1ヶ月は週に1回間隔で投与し、その後は2週に1回投与を行います。

ユルトミリス®はソリリス®の発売後に登場した薬剤です。最初の1ヶ月が2週間ごとの投与、その後は8週に1回投与と、ソリリス®よりも投与回数が少なくて済むのが特徴です。

ソリリス®とユルトミリス®も高い効果があります。一方で途中でやめてしまうと、補体の赤血球への攻撃が再開し、多くの人で再発してしまうので、治療を続けなければいけないことが多いです。高額な薬剤ではありますが、PNHは国から難病に指定されているので、医療費助成を受けることができます(注意点についてのページ参照)。

ソリリス®とユルトミリス®の重篤な副作用として髄膜炎菌感染症があります。補体はPNHだけでなく、細菌ウイルスから身体を守るうえでも重要な働きがあります。特に補体が働かなくなると、髄膜炎菌という細菌への抵抗力が著しく落ちます。髄膜炎菌は非常にやっかいな細菌で、感染すると命に関わることも珍しくありません。そのため、髄膜炎菌感染症を予防するため、ソリリス®とユルトミリス®の投与前に髄膜炎菌ワクチンを打っておく必要があります。

3. ステロイド薬

ステロイド薬もPNHの治療の一つです。ステロイド薬は塗り薬、飲み薬、点滴薬、目薬などがありますが、PNHの治療としては飲み薬が使われることが多いです。ステロイド薬の飲み薬はより細かくみると、プレドニゾロンメチルプレドニゾロン(商品名:メドロール®)、ベタメタゾン(商品名:リンデロン®)などがあります。プレドニゾロンが使われることが多いですが、それぞれ効果や持続時間が少し違うので、病状によっては他のステロイド薬が選択されることもあります。

ステロイド薬はPNHに対して一定の効果がありますが、長期に使用するとさまざまな副作用の原因になります。具体的な副作用としては、以下のものがあります。

  • 感染症にかかりやすくなる
  • 血糖が上昇する
  • 血圧が上昇する
  • 太りやすくなる
  • コレステロールが上昇する
  • 眠れなくなる
  • 気分の落ち込んだり、高ぶりやすくなる
  • 骨がもろくなる

そのため、ステロイド薬はできる限り多い量の使用が長期間にならないように注意します。ステロイド薬は副作用が多いので、副作用を防ぐ目的で予防的に他の薬を飲むことがあります。例えば、感染症にかかりやすくなることへの対策としてはST合剤(エスティーごうざい)などの抗生物質を、骨がもろくなる対策としてビタミンD製剤やビスホスホネート製剤などの骨粗鬆症(こつそしょうしょう)薬などがあります。詳しくは、コラム「ステロイド内服薬の副作用とは」でも紹介しています。

4. 輸血

PNHで赤血球や血小板が少なくなってしまった場合に輸血で補うことがあります。健康な人の献血から作られた血液製剤を投与します。

輸血の主なリスクとしては輸血に対するアレルギーと感染症があります。血液製剤は他人の血液から作られたものであるため、アレルギーを起こしてしまうことがあります。アレルギーの症状としては蕁麻疹などの比較的軽いものから、息苦しさや血圧低下などの重度なものまでさまざまです。頻度は少ないのですが、命に関わるケースもあるので、アレルギーが起きたらすぐに輸血を中止しなければなりません。もし輸血中に何らかの体調の変化がある場合、すぐにお医者さんに声をかけるようにしてください。

感染症は、他人の血液に含まれていたウイルスが血液製剤に混入することで起こります。HIVや肝炎ウイルスの認知が不十分だった時には、これらのウイルスが輸血を介して広まってしまったことがありました。最近ではこれらのウイルスが入っていないか厳しくチェックされているので、ほとんど起こらなくなりましたが、感染症についても輸血のリスクとして知っておく必要があります。

5. 骨髄移植

私たちの血液は骨の中にある骨髄という場所で作られます。赤血球もおおもととなる細胞は骨髄にいます。PNHは異常な赤血球が作られてしまう病気ですが、もし骨髄を健康な人のものに置き換えてしまえば、そこから作られる赤血球も正常なものに置き換えることができます。

骨髄移植はこのような考えを応用したもので、健康な人の骨髄と入れ替える治療です。他の薬剤や輸血とは異なりPNHの根治を目指すことができます。この点は骨髄移植の大きなメリットであると言えます。

一方、骨髄移植を行うためには、まず骨髄を提供してくれる人(ドナーといいます)を探す必要があります。ドナーは家族や骨髄バンクから探しますが、この時、ドナーは白血球の血液型(HLAといいます)が患者さんと一致していなければなりません。HLAが一致していないと移植した骨髄の拒絶が起きてしまうためです。HLAは非常に多くの種類があるので、一致するHLAのドナーがなかなか見つからないこともあります。

また骨髄移植のリスクとしては骨髄が置き換わるまでの間の感染症や移植片対宿主病GVHD:graft versus host disease)についても知っておく必要があります。

骨髄移植した細胞が定着して白血球、赤血球、血小板が作られるようになるまでは、2週間程度かかります。それまでの期間は血液細胞の数が安定しない状態が続きます。この不安定な時期は細菌やウイルスに感染しやすくなってしまうので、しばらくは無菌室で生活します。また感染の予防のため、抗菌薬や抗ウイルス薬の内服も必要です。

GVHDは移植した骨髄が患者さんの身体を攻撃することで起こる副作用です。GVHDが起こると高熱や発疹、口の中があれたり、下痢の原因になることもあります。重症なケースでは多臓器不全を起こし、命に関わる場合もあります。

このように骨髄移植を行うためにはHLAの一致したドナーを探す必要があり、また感染症やGVHDなどの少なくないリスクを伴います。そのため、骨髄移植は抗補体モノクローナル抗体製剤で効果がない場合や、骨髄の状態が非常に悪い(骨髄不全)など限られたケースで行われます。