むずむず脚症候群の原因について:妊娠、貧血、腎不全など
むずむず脚
1. むずむず脚症候群が起こるメカニズム
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群:restless legs syndrome:RLS)は、脳や
ドパミンには日内変動があり、日中に高く夕方から夜にかけて低くなります。また血液中の鉄の濃度も日中に高く夕方から夜にかけて低くなります。これらのことが、RLSの症状が夜に悪化する要因と推測されています。
2. むずむず脚症候群の原因による分類:特発性と二次性
むずむず脚症候群は原因が特定されていない「特発性」ものと、原因がある「二次性」のものに分類されます。
特発性RLSの人の約4割は血縁者にRLSの人がいることから[1]、遺伝的な要因が考えられています。欧米を中心とした研究では、親や兄弟にむずむず脚症候群がいる人では3-5倍かかりやすくなると報告されています[2]。
遺伝が関連するRLSでは発症年齢が二次性RLSよりも若いのが特徴で、45歳以下の発症がほとんどです。また、症状は軽いことが多く、病気の進行速度も比較的遅いとされています。
二次性RLSの原因となるのは、妊娠、鉄欠乏性貧血や腎不全などの病気、薬物などです。二次性RLSでは原因を取り除くことで症状が改善する可能性があり、原因として考えられるものが何もない場合には特発性RLSとして治療が行われます。
二次性RLSの原因について、次に詳しく説明します。
3. 二次性むずむず脚症候群の原因について
二次性むずむず脚症候群原因を大きくわけると次のようになります。
【二次性むずむず脚症候群の原因】
- 妊娠
- 病気
- 薬物
これらについて詳しく説明します。
妊娠
妊娠では様々な変化が身体に起こります。妊娠中には鉄欠乏や葉酸欠乏が起こりやすく、これらが原因でむずむず脚症候群が起こると言われています。典型的には妊娠3-4か月頃から始まり、8か月頃にかけて症状が強くなります。妊娠9か月頃になると症状がなくなることが多く、出産後はほとんどの人で症状は治まります。
病気
むずむず脚症候群では次のような病気が原因となることがあります。
原因となる病気について一つひとつ説明します。
鉄の不足は前述のようにRLSの要因の一つと考えられています。しかし、鉄欠乏性貧血の人全員がRLSになるわけではないこと、また貧血を起こさない程度の軽い鉄欠乏でもRLSが起こることなどから、鉄
◎腎不全
腎不全の人はRLSになりやすく、なかでも透析を受けている人に多いです。また、
◎糖尿病
2型糖尿病の17-45%の人にRLSが起こるという報告があります[3]。特に糖尿病性ニューロパチーがあると、RLSが起こりやすくなります。糖尿病性ニューロパチーとは糖尿病の三大
◎自己免疫疾患:関節リウマチなど
自己免疫疾患は
◎神経の病気:パーキンソン病など
パーキンソン病などの神経の病気ではRLSの割合が増えます。パーキンソン病では発症後4-5年で、むずむず脚症候群を
その他にも、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、脊髄損傷、脊髄空洞症などの神経の病気がある人では、RLSにかかる人が多いことが知られています。
慢性閉塞性肺疾患があるとRLSになりやすくなります。COPDに罹ってから長期間経っている人や、低酸素血症、高炭酸血症、気道の閉塞がある人に特に起こりやすいです。
◎その他
上記疾患の他にRLSが起こりやすい病気は次の通りです。
薬物によるもの:抗うつ薬、抗精神病薬、抗ヒスタミン薬など
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群:restless legs syndrome:RLS)は薬物によっても起こります。RLSの原因になりうる薬剤は次のようなものがあります。
- ドパミン遮断薬
抗精神病薬 - 抗ドパミン薬(消化管運動改善薬)
- 抗うつ薬
- 抗ヒスタミン薬
- カルシウム拮抗薬
- 非ステロイド抗炎症薬(
NSAIDs )
うつ病があるとRLSが起こりやすく、かつ治療で使われる抗うつ薬によってもRLSが起こりやすくなります。もしこのような薬を内服しはじめてRLSの症状が起きた人は、かかりつけのお医者さんに相談してみてください。
4. むずむず脚症候群の症状を悪化させる要因
カフェインやアルコールの摂取、喫煙はむずむず脚症状群の症状を悪化させる要因になります。カフェインを多く含むのはコーヒーや緑茶、紅茶、エナジードリンクなどです。むずむず脚症候群の治療では、まずこれらの嗜好品を中止することが大切です。
参考文献
1. J Winkelmann, et al. Clinical characteristics and frequency of the hereditary restless legs syndrome in a population of 300 patients. Sleep. 2000 Aug 1;23(5):597-602.
2. Richard P Allen, et al. Restless legs syndrome: diagnostic criteria, special considerations, and epidemiology. A report from the restless legs syndrome diagnosis and epidemiology workshop at the National Institutes of Health. Sleep Med. 2003 Mar;4(2):101-19. doi: 10.1016/s1389-9457(03)00010-8.
3. 日本神経治療学会治療指針作成委員会, 「標準的神経治療:Restless legs 症候群」, 2012
4. 日本医事新報. 2016 ; 4821 : 28-35.