むずむずあししょうこうぐん
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)
じっとしているときの足の異常な感覚がわずらわしく感じられ、脚を動かさずにはいられなくなる病気
12人の医師がチェック 148回の改訂 最終更新: 2022.02.28

むずむず脚症候群で知っておくとよいこと

むずむず脚症候群になりやすい人の特徴や、子どものむずむず脚症候群の特徴、自分でできる対処法などについてまとめました。

1. むずむず脚症候群になりやすい人とは

むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群:restless legs syndrome:RLS)の一部は遺伝的な要因が関係していることが知られています。親や子ども、兄弟にむずむず脚症候群がいる人では、いない人に比べて3-5倍なりやすいと報告されています。

また、持病が要因となることもあり、慢性腎臓病鉄欠乏性貧血などがある人ではなりやすいことがわかっています。また、妊娠中にも症状が起こりやすいことが知られています。詳しくは「二次性むずむず脚症候群の原因について」に書いてありますので、読んでみてください。

むずむず脚症候群の患者数はどのくらいか

日本人のうち1-4%がむずむず脚症候群を発症すると報告されています。欧米を中心とした白人では日本人より多く、4-15%の人に発症すると言われています。

むずむず脚症候群は男女でどちらが多いのか

男女別では欧米、アジアともに男性よりも女性が多く罹っています。欧米では女性は男性の約1.5-2倍、多く罹っていると報告されています。女性に多い要因としては、妊娠期に多く見られるほか、エストロゲンとの関連などが考えられています。

参考文献:Allen R. P., et.al., : Restless Legs Syndrome Prevalence and Impact: REST General Population Study. Arch Intern Med. 2005 Jun 13;165(11):1286-92

むずむず脚症候群と年齢の関係について

欧米では年齢とともにむずむず脚症候群の有病率が増加するという報告がいくつかありますが、アジアでは年齢との関連ははっきりしていません。

2. 子どものむずむず脚症候群の特徴

むずむず脚症候群は子どもでもなります。子ども全体の2-4%がRLSを罹患しているといわれ、特に思春期では症状が重くなりがちです。大人のRLSは女性に多いですが、子どもでは男女差は明らかではありません。

【むずむず脚症候群の子どもに見られる様子や症状】

  • 夜間や就寝時の様子
    • 脚の痛みや不快感がある
    • 歩き回ったり走ったりする
    • 脚をバタつかせたりして、じっとできない
    • 布団に入ることを嫌がる
  • 睡眠に関わる症状
    • 寝つきが悪い
    • 夜中に起きてしまう
    • 朝、起きられない
    • 日中、眠気やだるさがある
    • 昼寝や居眠りする
  • 情緒面での様子
    • イライラして怒りっぽい
    • 不安を感じやすい
    • 攻撃的、反抗的、挑戦的な行動をとる
    • 注意欠陥多動性障害ADHD)のような症状がある
      • 不注意
      • 多動
      • 学業の成績低下

これらの様子は正常であっても見られるので、当てはまる項目があるからといって必ずしもRLSとは限りません。しかし、子どもでは自分から症状をうまく伝えられないことがあるので、日常生活の中で上記に当てはまるものが多い時は、お子さんに詳しく症状を聞いてみてください。

なお、大人では睡眠時の症状が主ですが、子どもでは日中の学校生活での症状が目立ちがちです。脚の不快感のために落ち着きがなく、注意欠陥多動性症候群(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder:ADHD)や学習障害を疑われることがあります。実際に、子どものRLSでは約3割がADHDと診断されていたと報告があります。その一方で、大人も含めたADHDのうち約4割にRLSが合併するという報告もあります。上記の症状がある人では、お医者さんに相談してみてください。

3. 自分でできるむずむず脚症候群の対策や工夫

脚に不快感が生じることが多くなった時には、むずむず脚症候群なのかどうか気になると思います。チェックリストがあるのかや、不快感に対する日常生活での工夫についてまとめました。

むずむず脚症候群のチェックリストはあるのか

むずむず脚症候群を自己判断できるチェックリストはありませんが、診断基準の次のような項目に当てはまる人では、RLSの可能性が高くなります。

  • 脚の不快感や違和感があり、じっとしていられずに動かしたくなる
  • 不快感や脚を動かしたい感覚は、座ったり、横になったりなどの安静にしている時に起こったり、悪化する
  • 不快感や脚を動かしたい感覚は、歩いたり、脚を動かしたりすることで改善する
  • 不快感や脚を動かしたい感覚は、日中よりも夕方や夜間に強くなる

これらの項目に当てはまる症状があり、日常生活に支障がある人は、睡眠障害を専門とする医療機関で一度相談してみてください。

むずむず脚症候群に効果のあるサプリや市販薬はあるのか

むずむず脚症候群に効果のある市販薬はありません。RLSは鉄不足が原因の一つとなるため、鉄剤のサプリメントは効果が期待できますが、自己判断で飲み始めるのではなく、症状の原因について受診して調べてもらってください。

むずむず脚症候群に使われる漢方薬はあるのか

いくつかの漢方薬で治療が試みられていますが、どれも少人数での研究であり、効果についてははっきりわかっていません。

漢方はさまざまな効果のある生薬を混ぜて使う薬であり、生薬の効果に加えて個々の体質に合わせて薬が選ばれます。よく使われる薬は抑肝散(よくかんさん)加味逍遙散(かみしょうようさん)です。抑肝散は主に脚がほてる体質の人に使われます。イライラする症状を抑える効果も期待できるため、脚のむずむずからイライラが起きている人にも使われることがあります。一方、加味逍遙散はほてりが少ない人によく使われます。

むずむず脚症候群に効果のある食べ物はあるのか

むずむず脚症候群では鉄の不足が一つの原因になります。そのため、鉄を補う食べ物には効果が期待できます。

鉄には肉・魚などの動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と、植物性食品、海藻類や卵・乳製品に含まれる「非ヘム鉄」があります。ヘム鉄は非ヘム鉄に比べて3-10倍、身体への吸収率が高いとされています。

非ヘム鉄は一緒に食べるものによって吸収率が異なり、動物性タンパク質やビタミンCを含む食品と一緒に食べることで吸収率をあげることができます。一方、タンニンを含むお茶、コーヒー類と摂取すると吸収率が下がるため、食事中は緑茶は薄いものにするか、麦茶などに変更すると良いです。

鉄の推奨摂取量は50-60代の男性で7.5mg、女性6.5mg、70歳以上の男性で7.0mg、女性で6.0mgです。鉄を多く摂取することを意識する時は、これよりも多く、男性12-15mg、女性15-20mgを目標にします。

◎鉄分が多く含まれている食品

動物性食品で1食あたりの鉄含有量が多い食品は次の通りです。これらに含まれる鉄はヘム鉄なので、食べた分の15-20%は吸収されます。

  • ブタレバー(1串50g):6.5mg
  • あさり水煮(大さじ1杯10g):3.8mg
  • 牛ヒレ肉(1切れ80g):2.0mg
  • かき(5-7個100g):1.9mg
  • かつお(4切れ80g):1.5mg

植物性食品で1食あたりの鉄含有量が多い食品は次の通りです。非ヘム鉄なので、食べた分の2-5%が吸収されます。

  • がんもどき(1個80g):2.9mg
  • 納豆(1パック50g):1.7mg
  • 小松菜(小皿1杯50g):1.4mg
  • ほうれん草(小皿1杯50g):1.0mg
  • プルーン(乾燥10粒100g):1.0mg

植物性食品に含まれる非ヘム鉄の吸収率をあげるにはビタミンCを一緒にとると効果的です。1回に摂取する量あたりのビタミンCが多く含まれる食品は次の通りです。なお、ビタミンCの推奨量は大人で1日100mgです。

  • レモン(1個):100mg
  • ブロッコリー(小房4-5個70g):84mg
  • オレンジ(1個):78mg
  • 柿(1/2個):70mg
  • キウイフルーツ(1個):69mg
  • 黄パプリカ(1/4個45g):68mg

鉄剤や鉄のサプリメントから摂取することもできますが、これらの食品を少し意識してとるのは良いことです。鉄の吸収をよくするためには十分なエネルギーやタンパク質もとることも重要なので、バランスの良い食事をとるように心がけてください。

むずむず脚症候群に効くツボはあるのか

むずむず脚症候群にはっきりと効果があるとされるツボはありません。ツボではありませんが、寝る前に脚を軽くマッサージしたりストレッチしたりすることは症状を和らげる効果があります。症状を感じやすい部位や、気持ちよく感じる部分をゆっくり押したり、さすったりしてマッサージしてみてください。

参考文献

日本神経治療学会治療指針作成委員会, 「標準的神経治療:Restless legs 症候群」, 2012
・加藤久美, : むずむず脚症候群, 小児科. 2018 ; 3 : 269-274.
・文部科学省 科学技術・学術審議会 資源調査分科会:日本食品標準成分表2015年版(七訂)