むずむず脚症候群の検査について
むずむず脚症候群の診断では
目次
1. 問診
症状について
今回受診する理由となった症状について聞かれます。質問の一例は次の通りです。
- どんな症状があるのか
- はじめて症状を感じたのはいつか
- 身体のどこに症状が現れるのか
- 症状はどの時間帯に起こりやすいのか
- 症状が改善、悪化する動作などがあるか
- 家族での同じような症状がある人はいるのか
RLSでは「むずむず」以外にも、ほてる、かゆい、ピリピリする、虫が這うような感じなど、人によってさまざまな症状を感じます。症状は本人にしかわからないため、自分の感じたままを言葉で伝えてください。
また、症状が悪化する状況や、改善する状況について聞かれることがあります。これは、RLSの症状には、夜間やじっとしているときに強く現れ、何かに熱中したり脚を動かすことで緩和するという特徴があるためです。
家族にRLSの人がいるとRLSになりやすいことがわかっています。そのため、同じような症状の家族がいるかどうかについても確認されます。
身体状況や生活習慣について
むずむず脚症候群の原因を調べたり、治療するにあたって必要な情報を得るために、他の病気や生活に関しての質問も行われます。
- 現在治療中の病気や過去にかかった病気はあるか
- 常用薬やサプリメントの服用はあるか
- 嗜好品(アルコール、タバコ、カフェイン飲料)を摂取するか
- 妊娠中もしくは授乳中か
RLSでは持病が原因となることがあります。また、薬が原因となって起こることもあるため、現在内服中の薬がわかるようにお薬手帳などを持参してください。RLSはアルコール摂取や喫煙、カフェイン摂取で悪化するので、これらの摂取量や頻度について聞かれることがあります。妊娠中はRLSの
2. 身体診察
むずむず脚症候群では外見上の異常はありません。他の病気と区別するために、脚の機能や血流の状態、痺れの有無などについて見たり、触ったりして診察が行われます。
3. 血液検査:鉄代謝、腎機能など
むずむず脚症候群の原因となる貧血などの病気が隠れていないかや、治療薬を安全に使えるかなどを調べるために行われます。
4. 睡眠中の症状を調べる検査:終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)
むずむず脚症候群は主に自覚している症状から診断されますが、診断を補助するために終夜睡眠ポリグラフ検査(polysomnography:PSG)が行われることがあります。この検査は一般的には睡眠時無呼吸症候群を調べるために行われるものです。
さまざまなモニターを装着した状態で眠り、睡眠中の状態を継続的に細かく記録します。多くの場合、一泊の検査入院で行われます。検査では次のようなものを記録します。
- 脳波
- 眼球運動
心電図 筋電図 - 呼吸曲線
- いびき
動脈血 酸素飽和度
睡眠時無呼吸症候群では呼吸に関連する項目が重視されますが、RLSでは脚の筋電図の結果が重視されます。RLSで見られやすい脚の筋肉の動きは周期性四肢運動(periodic limb movements:PLM)と呼ばれ、筋電図の記録で評価ができます。また、脚の動きや睡眠中の覚醒について調べるために、検査をビデオで記録することがあります。
周期性四肢運動(PLM)
周期性四肢運動(periodic limb movements:PLM)は脚が周期的に動く現象のことで、RLSの人の8割に起こります。睡眠中はPLMが起きていても自覚がない人が多いですが、ピクつきで目が覚める人もいます。また、眠ろうとした時にPMLが起こる人もいて、入眠の大きな妨げになります。このPLMを終夜睡眠ポリグラフ検査では客観的に調べることができます。
5. 覚醒時の症状を調べる検査:指示不動検査(SIT)
指示不動検査(Suggested immobilization test:SIT)は目が覚めている状態でじっとしている時にRLSの症状が起こるかを調べるものです。終夜睡眠ポリグラフ検査のために入院した時に行われることがあります。
SIT検査では、脚を動かさないようにベッドに座った状態で、不快感の有無や脚の運動、周期性四肢運動について観察します。脚の不快感があるかどうか5分ごとに質問があり、合計60分間記録します。検査に時間がかかることや、60分間安静にしなくてはいけないのが辛いことから、行われない場合も多いです。
6. 生理学的検査:末梢神経伝導速度検査、血管機能検査(ABI、PWV)
生理学的検査はむずむず脚症候群の診断に必須ではなく、必要に応じて行われます。
【主な生理学的検査】
- 末梢神経伝導速度検査
- 血管機能検査
- 脈波伝播速度(pulse wave velocity:PWV):血管の硬さを調べる
- 足関節上腕血圧比(ankle branchial index:ABI):脚の血管の
動脈硬化 の程度を調べる
神経伝達の異常の有無を調べるための末梢神経伝導速度検査や、動脈硬化による血流障害を調べる血管機能検査などが行われます。
7. 画像検査
むずむず脚症候群と同じような症状を起こす病気がないかを調べる目的で、必要に応じて
8. むずむず脚症候群の診断基準はあるのか
睡眠障害国際分類第3版ではむずむず脚症候群の診断基準を次のようなものとしています。
- 脚を動かしたいという強い欲求が、不快な脚の感覚とともに、もしくはその感覚が原因となって起こる
これらの症状は必ず- 寝ている時や座っている時などの安静にしている状態で始まる、あるいは増悪する
- 運動によって改善する
- 日中より夕方・夜間に増悪する
- これらの症状が、ほかの疾患・習慣的行動で説明できない(例えば、筋肉痛、静脈
うっ血 、下肢浮腫 、関節炎、こむら返り、特定の体位における不快感など)
- むずむず脚症候群の症状が不安や睡眠障害を引き起こす。もしくは精神的、肉体的、職業的、教育的な場面において問題を生じる
難しい単語や言い回しもありますが、簡単にいうと、「脚を動かさずにはいられない」という症状があり「動かすと症状が和らぐ」といったRLSの特徴を備えていること、他の病気で症状を説明できないこと、症状によって生活の支障が出ていること、が診断の基準となります。
9. むずむず脚症候群の重症度はどう判断するのか
むずむず脚症候群と診断された人はあわせて重症度が評価され、薬物治療を行うかどうかの参考に用いられます。
重症度の評価として使われる『国際RLS重症度スケール』では、最近2週間以内のRLSの症状の強さ、頻度、日中の疲労感や気分についての10項目の質問があります。それぞれの質問に0-4点の段階で答え、合計点から重症度が決定されます。
参考文献
・日本神経治療学会治療指針作成委員会, 「標準的神経治療:Restless legs 症候群」, 2012
・米国睡眠医学会, 日本睡眠学会診断分類委員会/訳「睡眠障害国際分類第3版」, 2018
・Abetz L., et al. : The Reliability, Validity and Responsiveness of the International Restless Legs Syndrome Study Group Rating Scale and Subscales in a Clinical-Trial Setting. Sleep Med. 2006 ; 7 : 340-349.
・大倉睦美. : むずむず脚症候群の診断 (問診, 検査) と治療. 日本医事新報. 2016 ; 4821 : 36-44.