しろうせいひふえん
脂漏性皮膚炎
皮脂(皮膚のあぶら)がよく出る部位に起こる湿疹。赤ちゃんと成人に多い
8人の医師がチェック 79回の改訂 最終更新: 2022.08.12

脂漏性皮膚炎の治療:スキンケア・ステロイド外用薬・ニゾラール®︎など

脂漏性皮膚炎のもっとも重要な治療は皮膚を清潔にすることです。皮膚に刺激を与えないように清潔に保ち適切に保湿を行います。マラセチアという真菌(カビ)が要因になるため、抗真菌薬が含まれた塗り薬や、炎症が強い場合にはステロイド外用薬で治療を行います。その他にビタミン剤や抗アレルギー薬、漢方薬などが使われる場合もあります。ここでは薬による治療とセルフケアによる治療について説明します。

1. 脂漏性皮膚炎の治療

脂漏性皮膚炎の治療は皮膚を清潔に保つことと外用薬の使用です。主な治療は次の通りです。

  • セルフケア
    • 皮膚を清潔に保つ(スキンケア)
    • 食事に注意する
    • 精神的・肉体的ストレスとうまく付き合う
  • 塗り薬による治療
    • 抗真菌薬の塗り薬
    • ステロイド外用薬
  • 飲み薬による治療
    • ビタミン剤
    • 抗アレルギー薬

なかでも皮膚を清潔に保つスキンケアは最も重要な治療です。また、皮脂分泌が多くなるような食事を避けたり、ストレスとうまく付き合うことで症状の緩和が期待できるかもしれません。

脂漏性皮膚炎はマラセチアという真菌(カビ)が原因になるため、抗真菌薬が含まれた塗り薬を使う治療もあります。炎症が強い場合にはステロイド外用薬を使用します。ビタミン代謝の異常も原因の一つと考えられておりビタミン剤の内服薬を使用することもあります。かゆみが強い場合には抗アレルギー薬の内服薬を使用することもできます。

以下、それぞれについて詳しく解説をします。

2. セルフケアによる治し方

脂漏性皮膚炎は皮脂腺の機能異常、内分泌異常、ビタミンの代謝異常、真菌(カビ)などのさまざまな要素が重なりあって起きると考えられています。皮脂の分泌を抑えるような日常生活を行うことで症状を改善できる可能性があります。特に皮膚を清潔に保つことは治療でもっとも重要なことです。スキンケアを含めて、自分でできるセルフケアについて説明します。

皮膚を清潔に保つ:スキンケア・洗髪の見直し

脂漏性皮膚炎では皮膚を清潔に保つことは治療の中でも重要です。適切な洗顔や洗髪で清潔に保つことは症状改善にも再発予防にも効果があります。しかし、脂っぽさが気になって洗顔や洗髪を1日に何回もしたり、カサカサした部分を全部取ろうと強く擦りすぎたり、さっぱりしたくて熱いお湯で洗浄したりすると過度に皮脂を落としてしまいます。皮脂を過度に落とすと乾燥からかえって皮脂の分泌が増えて症状が悪化する原因になるため注意してください。

具体的には洗顔は朝晩の1日2回、洗髪は毎日1日1回行います。いずれもぬるま湯でよく石鹸やシャンプーを泡立てて優しく洗います。その後のすすぎはしっかり行なってください。洗髪後には髪の毛をドライヤーで乾かしてください。

食事に注意する

脂漏性皮膚炎の原因はいまだ不明ですが、生活習慣やストレスなどの原因が積み重なって起こるのではないかと考えられており、食生活も原因の一つと考えられます。皮膚の機能維持に関わっているビタミンB群が多く含まれる食事は、症状を改善させる可能性があります。

ビタミンB群を多く含む食品は次のような食品です。

  • レバー
  • カツオ
  • マグロ
  • 大豆
  • バナナ
  • 乳製品

このような食品を普段の食事にバランスよく取り入れるように心がけてみると、脂漏性皮膚炎に効果があるかもしれません。

動物性脂肪や糖質の過剰な摂取や、高GI食品の摂取は皮脂の分泌を増加させる可能性があるため気をつけてください。高GI食品のGIとはグリセミック指数のことで、摂取した食品の中の炭水化物が消化されて糖に変化する速さを相対的に表す値です。高GI値の食品を摂取すると急激に血糖値が上がるため、血糖値を下げようとインスリンが多く分泌されます。血液中のインスリン濃度が高まると、男性ホルモンの分泌が促され、皮脂分泌量を増加させます。つまり、高GI食品の摂取過多は皮脂量の増加につながってしまうのです。

しかし食事と脂漏性皮膚炎の発症や悪化に明らかな関連性は示されていないため、まずは、極端に偏った食生活をしていないかを見直してバランスのよい食事を心がけてください。

ストレスを避ける

ストレス、疲れ、睡眠不足は身体の内分泌異常を起こしやすくします。ストレスや睡眠不足によって交感神経が優位になると、コルチゾールというホルモンの分泌が増えます。コルチゾールの分泌が増えると皮脂の分泌増加に影響するため、脂漏性皮膚炎が悪化する可能性があります。忙しい場合にはなかなか難しいとは思いますが、息抜きをするなどストレスをうまくコントロールするような生活を心がけてみてください。

3. 皮膚科などで処方される塗り薬での治療

皮膚科などの医療機関で脂漏性皮膚炎と診断された場合に処方される薬は、抗真菌薬とステロイドの塗り薬です。脂漏性皮膚炎は真菌(カビ)が原因になるため、真菌の増殖を抑える薬が使われます。皮膚の炎症が強い場合には炎症を抑える目的でステロイド薬などが使われることもあります。

それぞれの薬について、作用機序などの詳細まで踏み込んで説明します。

抗真菌薬:ケトコナゾール(主な商品名:ニゾラール®)

ケトコナゾールは抗真菌薬(こうしんきんやく)といって真菌(カビ)の増殖を抑える作用をあらわす薬です。日本におけるケトコナゾールは主に外用塗布剤(塗り薬)として使われていて、脂漏性皮膚炎における治療の選択肢となっています。

ケトコナゾールを含む塗り薬としての抗真菌薬の多くは、白癬菌やカンジダ菌などの増殖を抑える作用をあらわし、白癬菌が原因となる水虫、カンジダ菌が原因となる皮膚カンジダなどの治療薬としても使われています。

顔などにできやすい脂漏性皮膚炎の治療に足の水虫などに塗る薬、と聞くとあまりイメージが湧かないかもしれませんが、脂漏性皮膚炎や癜風(でんぷう)などの原因のひとつと考えられているのがマラセチア(Malassezia)と呼ばれる皮膚の常在菌で、ケトコナゾールは抗真菌薬の塗り薬の中でもこの菌の増殖を抑える効果が比較的高いとされています。

ケトコナゾールの作用の仕組みを少し詳しくみていくと、真菌などの細胞膜の主な構成成分であるエルゴステロールという物質の合成酵素を阻害する作用をあらわし、これによりエルゴステロールの欠乏を引き起こすことで抗真菌作用をあらわします。

ケトコナゾールの外用塗布剤を脂漏性皮膚炎の治療で使う場合には通常、1日2回患部に使用(塗布)する方法がとられます(一方、白癬や皮膚カンジダなどの治療では通常、1日1回の塗布が一般的です)。適切に使用した場合の安全性はかなり高いとされていますが、皮膚の患部に使う薬ですので、主な副作用として刺激感や痒みなどの皮膚症状、過敏症などがあります。

ケトコナゾールの外用塗布剤にはクリーム剤(主な商品名:ニゾラール®クリーム)の他、ローション剤(主な商品名:ニゾラール®ローション)やスプレー剤(主な商品名:ケトコナゾール外用ポンプスプレー)もあり、ローション剤やスプレー剤は頭皮などの部分に対して有用であることが考えられるなど、部位(患部)によって剤形(剤型)を選択することも可能です。

ステロイド外用薬(外用塗布剤):ロコイド®、リドメックス®など

副腎皮質ホルモンのコルチゾールを元に造られた薬剤で、コルチゾール自体は抗炎症作用、免疫抑制作用など多様な作用を持ち、生体維持に欠かせないホルモンのひとつです。

内服薬や注射剤といった主に全身作用を目的としたステロイド製剤は高血糖糖尿病)や骨粗しょう症などの全身性の副作用に対する懸念がありますが、ステロイドの外用塗布剤(塗り薬)は、内服薬や注射剤を使用した時のような全身作用への懸念がほとんどなく、局所へほぼ限定して効果をあらわす製剤として造られています。

一般的にステロイド外用塗布剤は、アトピー性皮膚炎などの皮膚症状の改善目的で使われまていますが、抗炎症効果などを期待して脂漏性皮膚炎の治療に使われることも考えられます。脂漏性皮膚炎の治療では先ほどのケトコナゾールなどの抗真菌薬と併用されることもしばしばです。

冒頭でも少し触れたように、ステロイド外用塗布剤はステロイドの内服薬や注射剤のような全身の副作用への懸念がかなり少ないと考えられますが、一方で使用部位などにおける皮膚症状には注意が必要です。ステロイド自体の作用として免疫抑制作用がありますが、特にある程度の期間、使用を継続していくことで主に使用部位(患部)の免疫が低下し細菌や真菌、ウイルスなどへ感染しやすくなるケースも考えられます。アトピー性皮膚炎などの治療において長期にわたり継続使用されることも多いステロイド外用塗布剤ではありますが、脂漏性皮膚炎の原因のひとつにマラセチアという菌の関与が考えられていることもあり、継続使用中の皮膚状態の変化などを医師や薬剤師に伝えることも大切です。

ステロイド外用塗布剤における注意すべき副作用としてはこの他、皮膚の色素変化、皮膚萎縮ざ瘡にきび)などがあります(ステロイド外用塗布剤の注意などに関してはメドレーコラム「ステロイド外用剤の"副作用"って??」でも紹介しています)。

ステロイド外用塗布剤には軟膏剤、クリーム剤、ローション剤などの剤形(剤型)があり、製剤ごとの効果の度合い(強さや臨床上の効果などにより一般的に5段階に分けられます)も含め、通常、適切な製剤が選択されています。患部の場所や状態だけでなく肌の乾燥の度合いなどによっても使用する製剤が異なってくる場合もあるため、事前に自身の肌体質などを医師などに伝えておくことも大切です。

4. 皮膚科などで処方される飲み薬での治療

脂漏性皮膚炎の治療の中心は皮膚を清潔に保つことと、抗真菌薬やステロイドの塗り薬です。飲み薬は補助的に使われ、ビタミン剤やかゆみを抑える抗ヒスタミン薬などがあります。皮膚科などで処方される飲み薬について説明します。

ビタミンB群(ビタミンB2、ビタミンB6など)

脂漏性皮膚炎の原因としては、皮脂腺の機能異常、内分泌異常、真菌(カビ)などの様々な要素が考えられていますが、ビタミンの代謝異常もそのひとつとされています。ビタミンの中でも水溶性のビタミンB群は皮膚との関係が深いビタミンのひとつとされています。

ビタミンB群にはB1(チアミン)、B2(リボフラビン)、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6(ピリドキシン)などがあり、それぞれがそれぞれを補助しつつ、脳や神経、皮膚などの維持やエネルギー代謝を補助する働きを担っています。

皮膚の機能維持に関わるビタミンB群の中でもビタミンB2、ビタミンB6などは特に深くか関わるビタミンB群とされていて、なんらかの理由でこれらのビタミンが不足したり代謝過程に異常が生じた場合には脂漏性皮膚炎などの皮膚症状があらわれやすくなると考えられています。ここではビタミンB群の中でも特に皮膚に深く関わるとされるビタミンB2などに関してみていきます。

■ビタミンB2(リボフラビン)

ビタミンB2(リボフラビン)は、栄養素である炭水化物・タンパク質・脂質の代謝を促進しエネルギー代謝を助けるビタミンとされ、皮膚や粘膜の機能維持や成長に深く関わるとされています。そのため、ビタミンB2が不足すると肌荒れや口内炎、髪の毛のトラブルなどが起こりやすくなります。また脂質代謝のバランスが乱れることでベタつきやすい脂性の肌になり、ざ瘡にきび)や脂漏性皮膚炎などを引き起こしやすくなることも考えられます。医療用のビタミンB2製剤としてはリボフラビン(主な商品名:ハイボン®)やリボフラビンの活性成分であるFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)製剤(主な商品名:フラビタン®)などが使われています。またビタミンB2は近年、頭痛との関連性が考えられていて、頭痛(片頭痛発作予防にビタミンB2製剤が使われることもあります。

ビタミンB2を比較的多く含む食品としては、牛や豚などのレバー、牛乳などの乳製品などがあります。

■ビタミンB6(ピリドキシン)

ビタミンB6(ピリドキシン)は、タンパク質の分解や合成に関わったり皮膚や粘膜の機能維持に関わるビタミンとされています。ビタミンB6が不足すると様々な代謝異常があらわれ、なかでも皮膚や粘膜の機能維持が不調となり、口内炎舌炎結膜炎、脂漏性皮膚炎などが引き起こされやすくなることも考えられます。医療用のビタミンB6製剤としてはピリドキシン(主な商品名:アデロキシン®)やピリドキサール(主な商品名:ピドキサール®)などが使われています。またビタミンB6は神経の機能維持にも関わり、不足すると末梢神経障害やけいれんなどがあらわれやすくなることも考えられます。そのため、イソニアジド(抗菌薬のひとつ)などの薬物投与によるビタミンB6欠乏の予防目的やけいれん(てんかんなど)発作の予防目的などで使われる場合もあります。

ビタミンB6を比較的多く含む食品としては、肉類のレバー、カツオやマグロなど魚介類、大豆、バナナなどがあります。

■ビオチン

ビオチンは、以前はビタミンB7と呼ばれていたこともあるビタミンB群のひとつです。またビオチンはビタミンH(Hはドイツ語で「皮膚」を意味する「Haut」が語源とされる)とも呼ばれていたこともあり、皮膚とのつながりが深いビタミンでもあります。

ビオチンは食品からの摂取以外に腸内細菌によっても合成されるため健康な状態では不足することが少ないとされていますが、喫煙や飲酒、不規則な生活などで影響を受けることで体内での合成量が減少し不足がちになることもあり、なんらかの理由によってビオチンが不足すると、皮膚炎結膜炎、白髪の増加や脱毛といった髪の毛のトラブルなどが引き起こされやすくなることが考えられます。接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、ざ瘡にきび)、アトピー性皮膚炎などに対しても有用とされ、子どもから高齢者まで幅広い年齢において皮膚症状の改善に使われています。またビオチンには、花粉症や、手や足などにウミが溜まった疱(のうほう)と呼ばれる皮疹があらわれる掌蹠膿疱症などの疾患への有用性も考えられています。

医療用のビオチン製剤としては散剤(ビオチン散、ビオチンドライシロップ)や注射剤が使われています。

ビオチンを比較的多く含む食品としては、牛レバー、乳製品、大豆などがあります。

ここではビタミンB群の中でも主にビタミンB2、ビタミンB6、ビオチンに関してみていきましたが、例えばナイアシンが皮膚や粘膜などの機能維持に関わるといったように他のビタミンB群に関しても互いに補うようにして働くため、不足することによって皮膚機能のバランスが崩れることが考えられます。

ビタミンB群を補充する場合、医薬品以外にサプリメント(健康食品)の摂取や食事の改善などの方法もあります。ビタミンB群は水溶性ビタミンで、ビタミンAやビタミンEなどの脂溶性ビタミンに比べ、仮に過剰摂取となった場合でも副作用の懸念は少ないことが考えられます。ただし、例えば仮にビタミンB6をかなり過剰に摂取し続けるとかえって神経異常などを引き起こす可能性が考えられるなど、自身の病態などに合わせて適切に摂取することが重要とされています。医薬品や食品などから適切にバランスよくビタミンを摂取するため、医師や薬剤師、栄養士などとよく相談することも大切です。

抗アレルギー薬

脂漏性皮膚炎では皮膚が赤くなったりポロポロとむけるなどの症状の他、皮膚の掻痒(かゆみ)などがあらわれる場合もあります。塗り薬など外用薬を使っても症状が緩和しないかゆみなどには内服薬(飲み薬)の使用が考慮される場合もあります。

飲み薬の中でも比較的よく使われる薬のひとつに、アレルギー症状などを引き起こす体内物質ヒスタミンの働きを抑える抗ヒスタミン薬があります。ヒスタミン自体は花粉症アトピー性皮膚炎などを引き起こす因子にもなるため、一般的に抗ヒスタミン薬はこれらの疾患の治療薬として使われていますが、脂漏性皮膚炎による痒みなどの症状緩和に対しても改善効果が期待できます。実際にオロパタジン(主な商品名:アレロック®)、ベポタスチン(主な商品:タリオン®)、レボセチリジン(商品名:ザイザル®)などの近年開発された第2世代に分類される抗ヒスタミン薬の多くは皮膚炎皮膚掻痒症などの皮膚症状の治療に対して保険承認されていて、実際に治療の選択肢にもなっています。

抗ヒスタミン薬で注意すべき副作用には眠気、口渇、便秘などがあり、これらの多くは体内物質アセチルコリンの働きを抑える抗コリン作用と呼ばれるものに起因します。一般的に第2世代の抗ヒスタミン薬の多くは第1世代と比較して抗コリン作用への懸念が少ないものが多く、よく使われている理由のひとつになっています。

また第2世代の中でもフェキソフェナジン(主な商品名:アレグラ®)やロラタジン(主な商品名:クラリチン®)などは成分の脳内への移行性が少ないなどの特徴から一般的に眠気などがより少ない(あらわれにくい)薬剤になっています。

一方で第1世代の抗ヒスタミン薬に含まれるものにも、クロルフェニラミン(主な商品名:ポララミン®)は妊婦に対しての安全性が高い薬剤とされていたり、ジフェンヒドラミンには外用塗布剤(主な商品名:レスタミンコーワクリーム、ベナパスタ®軟膏)の剤形があるなど、個々の薬剤ごとの有用性が考えられます。

抗ヒスタミン薬の特徴や副作用などは個々の薬剤によっても異なってくることがあるため、自身の体質や生活習慣などを事前に伝えたうえでお医者さんや薬剤師さんから注意点などを含めて説明をしっかりと聞いておくことが大切です。

5. 脂漏性皮膚炎に漢方薬は効果がある?

脂漏性皮膚炎には漢方薬が有用となる場合も考えられます。

例えば、脂漏性皮膚炎を引き起こす要因のひとつに皮脂がありますが、皮脂を含む身体からの分泌物が多い状態を改善するような漢方薬には脂漏性皮膚炎の改善も期待でき治療の選択肢となることが考えられます。

蕁麻疹アトピー性皮膚炎などに使われている消風散(ショウフウサン)は、局所の熱感や比較的強い痒みがあるような皮膚症状の改善に効果が期待できるとされ、分泌物やかさぶたが多い皮膚状態に対して適するとされることからも脂漏性皮膚炎の症状改善がイメージできる漢方薬です。

越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)は関節痛、浮腫などを伴う腎疾患などに使われる他、浮腫を伴うアトピー性皮膚炎などの皮膚症状改善も期待できるとされていて、赤ら顔などの酒さ様皮膚炎、脂漏性皮膚炎などに対しても改善効果が期待できるとされています。

この他、一般的には更年期障害など婦人科領域でよく使われている桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)は瘀血(おけつ)といって血の流れが悪くなっている状態の改善に適するとされていますが、瘀血によって肌が油っぽい状態になることもあり、これを改善することでざ瘡にきび)や脂漏性皮膚炎などの皮膚症状改善が期待できる場合も考えられます。

ここで挙げた以外にも皮膚症状改善が期待できる漢方薬は様々です。漢方薬は一般的に個々の体質や症状などを「証(しょう)」という言葉であらわし、この証に合わせた漢方薬が選択されます。脂漏性皮膚炎を引き起こしたり悪化に関わる要因は睡眠不足、ホルモンバランスの乱れなど様々ですが、漢方薬は個々の体質なども含め全身の状態を考慮して使われることもあり、これら要因の改善が期待できることも考えられます。

一方で、一般的に安全性が高いとされる漢方薬も「薬」のひとつですので、副作用がおこる可能性はあります。お医者さんや薬剤師さんなどに自身の体質や症状などを事前によく伝え、身体に適した漢方薬を有効的に使うことが大切です。

6. 脂漏性皮膚炎の治療ができる市販薬はある?

市販の医薬品や医薬品に準ずる医薬部外品などには、脂漏性湿疹の改善を助けてくれるものもあります。(なお、本記事に登場する製剤や商品に関して、株式会社メドレーは特定の製薬企業やその関係団体との利害関係はありません)

医療機関で処方され皮膚症状などの改善を補助するリボフラビンやピリドキシンなどのビタミンB群は一般用医薬品(市販薬)の製剤にも使われています。実際にリボフラビンやピリドキシンなどのビタミン成分を含む製剤としてチョコラBB®プラストラフル®BBチャージハイチオール®Bなどがあり、肌荒れや皮膚炎などの効能・効果が承認されています。

市販されている商品には、あせもやただれ、脱毛などを防止する目的として使われる医薬品に準ずる製品として多くの医薬部外品が発売されていますが、その中にも脂漏性皮膚炎などの皮膚症状改善を補助する効果が期待できるものもいくつかあります。

例えば、コラージュフルフルネクストシリーズ(持田ヘルスケア株式会社)のシャンプーやリンスにはミコナゾールという抗真菌成分が含まれています。

ミコナゾールは医療用医薬品として脂漏性皮膚炎などの治療に使われているケトコナゾールと同じ抗真菌薬に分類され、ミコナゾール自体もフロリードなどの医療用医薬品の成分としても使われています。コラージュフルフルネクストのシャンプーやリンスは、ミコナゾールが配合されていることで、頭皮のフケなどの原因となる真菌の働きを抑え、フケや痒みを防いだり毛髪や頭皮を健康的に保つなどの効果が期待できます。

この他にも、薬用化粧品に代表されるような皮膚の潤いを保ったり肌をケアする市販の商品は多くあり、スキンケアなどの選択肢のひとつになっています。

ただし、医薬部外品や薬用化粧品として販売されているものは、医薬品と比較すると身体に対する作用が緩和なものであり、あくまでもセルフメディケーション(自分自身で健康の維持・増進、病気の予防・治療にあたること)を主な目的とするものです。症状が慢性的になっていたり、市販の商品を使っても改善が十分にはかれないような場合には医療機関の受診を検討するなど適切に対処することが大切です。

7. 頭皮の治療の時に心がけること

頭皮の脂漏性皮膚炎は治療が長引くことが多く、根気強い治療が必要になる場合もあります。なかなか治らない場合には下記のことを見直してみてください。

  • つい掻いてしまっていないか
  • 頭皮を洗う時にこすっていないか
  • ドライヤーで髪の毛をきちんと乾かしているか
  • 薬が上手に塗れているか

頭皮の脂漏性皮膚炎の注意点について、次に具体的に説明します。

◎つい掻いてしまっていないか

脂漏性皮膚炎でかゆみが強い場合には、繰り返し掻いてしまうことで皮膚炎が改善しにくくなります。頭皮は手が届きやすい部位でもあるため無意識に掻いてしまっていることもあります。無意識に掻いてしまっていないか振り返ってみてください。

◎頭皮を洗う時にこすっていないか

脂漏性皮膚炎では頭皮にフケがつくため、頑張って落とそうと強くこすると頭皮に刺激を与えてしまいます。フケは皮膚の炎症がおさまると出なくなりますので、炎症をおさえるように薬を使用してください。また、洗髪を1日に何回もすると皮脂が取れすぎることで、かえって皮脂の分泌が増えることがあるため、1日1回までにしてください。

◎ドライヤーで髪の毛をきちんと乾かしているか

髪の毛が湿ったままだと頭皮に菌が繁殖しやすくなるため、湿疹を起こす原因になります。洗髪後はきちんと乾かすようにしてください。

◎薬が上手に塗れているか

薬は頭髪に塗るのではなく頭皮に塗ります。うまく塗るコツは、髪の毛を根元から倒すようにかき分けて、手に取ったローションを少しずつ頭皮の地肌に指でのばすことです。とはいえ、頭皮に塗る場合にはうまく自分では見えません。可能であれば誰か他の人に塗ってもらってください。

8. 赤ちゃんの脂漏性湿疹の治療で注意したいこと

赤ちゃんは皮脂の分泌が盛んなため脂漏性湿疹が起きやすくなります。赤ちゃんに起こる乳児脂漏性皮膚炎は生後2−3週から生後4−8ヶ月までによくみられます。治療では、皮脂を除去するためのスキンケアを行います。基本的には清潔に保つようにして適切に保湿を行います。

頭部の脂漏性皮膚炎のケア

赤ちゃんでは前頭部から頭頂部にかけて皮脂の分泌が盛んになり、脂漏が分厚いかさぶたのようになります。分厚いかさぶたになる前に、適切なスキンケアで脂漏を取り除くようにしますが、もし分厚くなって脂漏性皮膚炎を起こした場合には、分厚いかさぶたを取り除いてからのスキンケアが必要です。次から具体的に説明します。

◎予防のための洗髪方法

シャンプーで1日1回は頭髪とともに頭皮も洗います。ぬるま湯で頭部を濡らした後に、指の腹で地肌をこすらないよう優しく洗ってください。泡はすすぎ残しがないように、顔や首筋にかかったものも含めてよく洗い流してください。使用するシャンプーはその他の皮膚トラブルがない場合には、ベビー用でも成人用でも構いません。家族にアトピー性皮膚炎などの人がいる場合で、赤ちゃんも皮膚が弱い可能性があれば、低刺激性シャンプーを使用してください。

◎脂漏性皮膚炎が起きた後の洗髪方法

初期の薄いかさぶたの場合にはオリーブオイルをつけて柔らかくして取り除きます。この時、オイルが肌に残らないように十分にシャンプーで洗ってください。

分厚いかさぶたが頭皮にべったりと付着した状態になると、オリーブオイルやシャンプーだけでは取り除けません。分厚いかさぶたの場合には白色ワセリンや亜鉛華軟膏などを使って柔らかくします。かさぶたがある頭皮全体に軟膏を厚めに塗って、ガーゼなどで覆ってネットを帽子のように被せます。半日から1日そのままにして、クシですくか、オリーブオイルで拭き取ってかさぶたを取り除きます。その後にシャンプーで十分に洗います。1回では綺麗にならないので、1-2週間にわたり毎日行います。

顔の脂漏性皮膚炎のケア

顔に起きた脂漏性皮膚炎も基本的には洗浄で清潔に保つことと、洗浄後に保湿を行うことが重要です。具体的な方法を次に説明します。

◎洗顔方法

赤ちゃんの顔の脂漏性皮膚炎のケアでは、石鹸もしくは洗顔料を使って1日1回洗顔を行います。石鹸は皮膚トラブルがなければベビー用でなくても構いません。家族にアトピー性皮膚炎などの人がいる場合で、赤ちゃんの皮膚が弱い可能性があれば、低刺激性の石鹸や洗顔料を使用してください。

よく泡立てて優しく洗うか、柔らかい綿の布などで洗います。洗った後はよくすすぎます。眉毛にこびりついたかさぶたは石鹸などで洗うだけでは取れないことがあるため、オリーブオイルなどを浸して柔らかくしてから洗います。一気に取ろうとすると皮膚が剥がれて炎症が悪化することがありますので、毎日少しずつ剥がしていくようにします。

◎洗顔後のスキンケア

洗浄後は赤ちゃんであっても乾燥します。よく洗浄してかさぶたを取り除いた後は保湿をきちんと行ってください。子どもには大人のように何種類も保湿クリーム重ね塗りするのが難しい場合が多いため、1種類の保湿クリームを主に使います。夏場は保湿用ローションなどに変更します。小児科や皮膚科で処方してもらうこともできますし、市販の低刺激性ものを使用しても構いません。

9. 脂漏性皮膚炎で困った時は何科の病院に相談すればいいの?

脂漏性皮膚炎は皮膚の病気ですので皮膚科を受診してください。症状が軽いうちはすぐに病院に受診しようとは思わないかもしれませんが、脂漏性皮膚炎にみえても他の病気の可能性もあります。症状が長引いている場合には皮膚科での診断および治療をおすすめします。受診した時には、自分でできるセルフケアを含めて詳しく治療方法を聞いておくと治療が行いやすくなります。

10. 脂漏性皮膚炎の名医はどこにいる?

人によっては何年も脂漏性皮膚炎が続いたり、治ったり悪化したりを繰り返したりして悩むこともあります。なかなか治らず、もし名医がいたらかかりたいと思うこともあるかもしれません。脂漏性皮膚炎の名医はどこにいるのでしょうか。

まず名医を考えるにあたってどのような人が名医か考えてみてください。

  • 的確な診断を行える医師
  • 最新の知見を元に治療を行う医師
  • 話を親身に聞いてくれる医師
  • 何でも相談できる医師

いろいろな基準があると思います。どのような医師を名医と感じるかは人それぞれであり、名医と感じるには医師との信頼関係がどれほど築けているかということに影響される可能性があります。医師との相性は何回も診察を重ねていくことでわかってくることもあります。脂漏性皮膚炎で治りにくい場合には、心配であることも担当医に相談したうえで、他の医師にかかってみたいこともお話してみてはどうでしょうか。