しろうせいひふえん
脂漏性皮膚炎
皮脂(皮膚のあぶら)がよく出る部位に起こる湿疹。赤ちゃんと成人に多い
8人の医師がチェック 75回の改訂 最終更新: 2018.11.13

脂漏性皮膚炎とは

脂漏性皮膚炎は皮脂の分泌が原因の一つとなり赤ちゃんや成人に多く起こります。皮脂の分泌が多い頭や顔に多く、頭に起こるとフケが増え、かさぶたが頭全体を覆うような症状になります。顔に起こると赤みやカサカサした皮膚になり、かさぶたが付着します。顔や頭などの目立つ部分に起こるため早く治したいと感じるかもしれません。まず治療のためには病気のことを知って適切に治療を行うことが大切です。ここでは脂漏性皮膚炎の症状、原因、検査、治療などについて簡単に説明します。

1. 脂漏性皮膚炎とは

脂漏性皮膚炎は皮脂の分泌が多いことによって起こる皮膚の炎症と考えられています。皮脂が多く分泌されると皮膚に住むカビ(真菌)に分解されます。その分解された脂肪酸が皮膚に刺激を与えて皮膚炎が起こるとされています。脂漏性皮膚炎の起きた部位では皮膚が赤くなり、皮膚の表面が細かくはがれてフケのようなものがついたり、厚い鱗のようなものがついたりします。皮膚の表面は油っぽいこともあれば、乾いていることもあります。

主に皮脂が多く分泌されたり、皮膚と皮膚が擦れたりする次のような部位に起こりやすいです。

【皮脂の分泌が多い部位】

  • 頭:頭皮・髪の生え際
  • 顔:眉・眉間・鼻周囲・おでこ・頬・耳など
  • 胸:前胸部の中央
  • 背中:背中の上の方

【皮膚の摩擦が多い部位】

  • 脇の下
  • 肘の内側
  • 乳房の下
  • 太ももの付け根
  • お尻の中央

皮脂の分泌が多い頭部〜顔面にできやすく、体幹では前胸部や背中の上の方にできやすいです。皮膚同士が擦れる脇の下、太ももの付け根などにもよく起こります。皮脂の分泌が多いことが原因になるため、なかなか治らない場合や、一度治っても再度繰り返す場合などがあります。

脂腺とは

脂漏性皮膚炎は皮脂の分泌が多いことが原因と考えられています。皮脂を作り出す脂腺について説明します。脂腺の多くは皮膚の中で毛の生えている毛のう付近にあります。手のひらと足の裏以外の全身の皮膚と一部の粘膜に広く存在しています。髪の毛の生えている頭部、顔面のいわゆるTゾーン(おでこ、眉間、小鼻、ほうれい線など)、胸の中央部、背中の上部、脇の下、ヘソの周囲、外陰部などは発達した脂腺が多く集まっており、このような部位は脂漏部位と呼ばれます。

皮脂は汗などの水分と混じり合うことによっていわば天然のクリームのような状態になり皮膚を守る役割を担っています。水分蒸発を防いで皮膚の角質層の水分を保つ機能のほかに、殺菌作用をもち、有害物質の侵入や感染を防ぐ働きもあります。

皮脂の分泌量は年齢によって変わってきます。新生児では多く分泌され、小児期には少なくなり、思春期から再び増加します。女性では10-20代、男性では30-40代にピークを迎え、その後徐々に減少していきます。

また皮脂の分泌量は、男性ではテストステロン、女性ではアンドロゲンが関わっていると言われており、大人の脂漏性皮膚炎ではこれらのホルモンが増加する環境で悪化しやすいと考えられています。新生児の皮脂分泌が盛んなのは、お母さんからの性ホルモンの影響によると考えられています。

脂漏性皮膚炎が起こりやすい年齢は?

脂漏性皮膚炎は1歳未満の乳児と大人に起こりやすく、人口の1%程度の人がかかる病気です。ホルモンの影響で男性が女性の2倍かかりやすいと言われています。乳児型脂漏性皮膚炎と成人型脂漏性皮膚炎とに分けて呼ばれることがあります。

◎乳児型脂漏性皮膚炎

生後2−3週からはじまり、生後4−8ヶ月には治ります。乳児の1/3が経験する病気です。皮脂の分泌には性ホルモンの影響があり、生まれたばかりではお母さんの性ホルモンの影響で皮脂分泌が多くなって脂漏性皮膚炎が起こります。生後3ヶ月以降は皮脂の分泌が減少しはじめるため、多くは自然に改善します。

◎成人型脂漏性皮膚炎

思春期の皮脂分泌が増える時期に始まるのが成人型の脂漏性皮膚炎です。20代から40代が多くかかりますが、70代でもかかります。成人型脂漏性皮膚炎では、皮脂の分泌が多いという体質なども関係しているため、治療が長引く傾向にあります。しかし根気よく皮膚を清潔に保つセルフケアを行なったり、皮脂の分泌を抑える生活を心がけたりすることで、脂漏性皮膚炎は徐々に改善することが多いです。

どのような病気にかかっていると起こりやすい?

脂漏性皮膚炎はHIV感染症パーキンソン病の人に起こりやすいことが知られています。脂漏性皮膚炎の人が全員このような病気であるというわけではありません。脂漏性皮膚炎の症状が強い場合、繰り返す場合などでは、原因となる他の病気がないかの検査を行います。HIV感染症では免疫が低下することによって、皮膚のカビ(真菌)が増えて起こると言われています。

パーキンソン病では皮脂の分泌が増えて脂っぽい顔になることが多く、脂漏性皮膚炎を起こしやすくなります。パーキンソン病のみならず、てんかんなどの病気でも脂漏性皮膚炎が起こると言われています。パーキンソン病では性ホルモンの分泌異常が起こることと、病気の影響であまり動かなくなることで、皮脂が増えて脂漏性皮膚炎になると考えられています。

脂漏性皮膚炎の治療を行うとともに、原因となっているもともとの病気の治療を行うと皮膚炎の症状は改善していきます。

2. 脂漏性皮膚炎の症状:顔のかさぶた、頭のフケ

脂漏性皮膚炎は皮脂の分泌が多い頭部や顔面、前胸部や背中の上の方にできやすいです。皮膚同士が擦れる脇の下、太ももの付け根などにもよく起こります。

なかでも頭部に起こることが多いです。髪の毛があるため分泌された皮脂が残りやすく、フケが増えたり、かさぶたのようなべったりしたものがついたりします。

脂漏性皮膚炎で起こる症状は次の通りです。

  • 皮膚の赤み:紅斑(こうはん)
  • 皮膚の表面の毛羽立ち:鱗屑(りんせつ)
  • 皮膚や頭皮のかゆみ:掻痒(そうよう)
  • 頭からのフケ
  • 頭皮のかさぶた:痂皮(かひ)

炎症を起こした皮膚は赤みをおびて紅斑になり、その上に白色や黄色の鱗屑や痂皮がくっつきます。鱗屑とは皮膚の表面の角化物が剥がれ落ちずにくっついた皮膚の毛羽立ちのようなもので、痂皮はそれらがあつまって分厚くなったもので、いわゆるかさぶたです。頭部に起こった鱗屑が剥がれるとフケになり、さらに進行すると分厚いかさぶたで頭皮が覆われるような症状になります。かゆみは強くはないですが起こることがあります。

脂漏性皮膚炎の詳しい症状は「脂漏性皮膚炎の症状」に記載してありますので、参考にしてください。

3. 脂漏性皮膚炎の原因:真菌、食事、スキンケア不足など

脂漏性皮膚炎の原因はいまだにはっきりしていません。生活習慣、ストレスなどと関連して、皮脂を分泌する脂腺の機能異常や、ホルモンの分泌異常、ビタミン代謝異常などの様々な要素が積み重なって起こるのではないかと考えられています。皮脂が増加した状態でマラセチアという真菌(カビ)が増殖することで、脂漏性皮膚炎が発症すると言われています。マラセチアは皮膚にもともとに住んでいるの常在菌で、健康な時には特に人の身体には害がない菌です。現時点で脂漏性皮膚炎の原因や悪化させる可能性があるものとして次のものがあります。

【脂漏性皮膚炎を引き起こす要因】

  • マラセチア
  • 顔や髪の毛の不十分なケア
  • 偏った食生活・飲酒
  • ストレス
  • 睡眠不足

マラセチアは皮脂を食べて増殖するため、皮脂分泌が多くなると増殖します。皮脂がマラセチアに分解されてできた遊離脂肪酸が皮膚に刺激を与えることで脂漏性皮膚炎を起こすと考えられています。同じように皮脂の分泌が原因となる皮膚の病気にニキビ(尋常性ざ瘡)がありますが、ニキビはアクネ菌が原因になります。

その他には顔のスキンケア不足や髪の毛の不十分はケアで皮脂がたまったり、偏った食生活によって皮脂分泌が増えたりすると脂漏性皮膚炎が悪化すると考えられています。皮脂分泌は男性ではテストステロン、女性ではアンドロゲンなどのホルモンによって増えます。ストレスや睡眠不足ではこれらのホルモンが増加するため、脂漏性皮膚炎が悪化する可能性があります。

脂漏性皮膚炎の詳しい原因については「脂漏性皮膚炎の原因」について記載してありますので、参考にしてください。

4. 脂漏性皮膚炎の検査:アトピー性皮膚炎などと区別するための検査

脂漏性皮膚炎かもしれないと心配になる症状は、皮膚が赤みを帯びてカサカサしたり、フケが増えたり、分厚いかさぶたのようなものがついたりすることだと思います。心配して医療機関を受診した場合には問診や検査が行われて診断がつけられます。具体的には次のような検査が行なわれます。

  • 問診
  • 身体診察
  • 他の病気を区別するための検査
    • ダーマスコピー
    • 真菌を調べる検査
    • 血液検査
    • パッチテスト

はじめに問診が行われて病気の症状、今までにかかった病気や普段飲んでいる薬などについて詳しく聞かれます。身体診察では皮膚の状態をよく観察されます。脂漏性皮膚炎は皮膚の見た目のみで確定診断をすることは難しいため、他の病気ではないか調べるための検査が行われます。ダーマスコピーという皮膚を拡大してみる虫眼鏡のような道具が使われたり、原因となるマラセチアという真菌(カビ)がいないかを確かめる検査が行われます。症状によっては血液検査やパッチテストと呼ばれる皮膚のアレルギーの有無を調べる検査が行われることもあります。このような検査の結果を総合的に判断して診断が行われます。

しかし、病気によっては脂漏性皮膚炎と見分けがつきにくいことがあります。治療がなかなか効かないなどの場合には、他の病気を考えてさらに追加で検査が行われることがあります。

脂漏性皮膚炎が疑われた場合に行われる検査や、脂漏性皮膚炎と見分けがつきにくい病気については「脂漏性皮膚炎の検査」に詳しく書いてありますので参考にしてください。

5. 脂漏性皮膚炎の治療:スキンケア・抗真菌薬・ステロイド外用薬など

脂漏性皮膚炎の治療は皮膚を清潔に保つことと適切な外用薬による治療です。主な治療は次の通りです。

  • セルフケア
    • 皮膚を清潔に保つ(スキンケア)
    • 食事に注意する
    • 精神的・肉体的ストレスとうまく付き合う
  • 塗り薬による治療
    • 抗真菌薬の塗り薬
    • ステロイド外用薬
  • 飲み薬による治療
    • ビタミン剤
    • 抗アレルギー薬

皮膚を清潔に保つセルフケアはもっとも重要な治療の一つです。皮膚に刺激を与えないように清潔に保ち適切に保湿を行います。皮脂分泌が多いことが脂漏性皮膚炎の原因になるため、皮脂分泌が多くなるような食事に注意したり、ストレスとうまく付き合ったりすることも症状を緩和させるかもしれません。

脂漏性皮膚炎はマラセチアという真菌(カビ)が原因になるため、皮膚を清潔にした後に抗真菌薬が含まれた塗り薬や、炎症が強い場合にはステロイド外用薬を使用します。その他にビタミン代謝の異常も原因の一つと考えられておりビタミン剤の内服薬や、かゆみが強い場合には抗アレルギー薬の内服薬を使用することもできます。

薬による治療とセルフケアによる治療については「脂漏性皮膚炎の治療」に詳しく書いてありますので参考にしてください。

6. 脂漏性皮膚炎の人が知っておきたいこと:洗顔、シャンプー、食事など

脂漏性皮膚炎は皮脂腺の機能異常、内分泌異常、ビタミンの代謝異常、真菌(カビ)などの様々な要素が重なりあって起きると考えられています。脂漏性皮膚炎になると自分でできることがないかと考えると思います。脂漏性皮膚炎では自分でできるセルフケアは重要な治療の一つです。セルフケアで重要なことは皮膚や頭皮を清潔に保ち、適切に保湿を行うことです。セルフケアと一言に言っても次のような疑問が浮かぶかもしれません。

  • 石鹸、洗顔料、シャンプーなどはどのようなものを使えばいいのか
  • 洗う時の注意点は何があるのか
  • ベタつく場合は保湿はしなくていいのか
  • 保湿はどんなものを使えばいいのか
  • 赤ちゃんの場合はどうケアしてあげればいいのか

皮膚や頭皮を清潔に保つ時は、自分に合った石鹸、洗顔料、シャンプーなどを使うことが重要です。洗い終わった後にスッキリしすぎたり、つっぱる感じがしたりする場合には、刺激が強いと考えられるので低刺激性のものを使ってみてください。

脂漏性皮膚炎ではかさぶたができるため、強くこすって取ろうとしたくなりますが、皮膚に負担をかけると炎症が強くなり皮膚炎の悪化につなががります。洗う時は優しく洗うことが重要です。洗浄後の乾燥はかえって皮脂の分泌を増やすため、適切に保湿を行うことが重要です。赤ちゃんの場合にもスキンケアが同様に重要で、きちんと清潔に保って適切に保湿をしてください。

その他食べ物などの注意点を含めて、日常生活の注意点は「脂漏性皮膚炎の日常生活の注意点」について書いてありますので、参考にしてください。