しろうせいひふえん
脂漏性皮膚炎
皮脂(皮膚のあぶら)がよく出る部位に起こる湿疹。赤ちゃんと成人に多い
8人の医師がチェック 79回の改訂 最終更新: 2022.08.12

脂漏性皮膚炎の原因:真菌、食事、スキンケア不足など

脂漏性皮膚炎の原因はいまだにはっきりしていません。皮脂を分泌する脂腺の機能異常、ホルモンの分泌異常、ビタミン代謝異常などに加わり、マラセチアという真菌(カビ)が関連して引き起こすのではないかと考えられています。脂漏性皮膚炎を引き起こしたり、悪化させたりする原因について説明します。

1. 脂漏性皮膚炎が起こる仕組み

脂漏性皮膚炎の原因はいまだはっきりしていません。生活習慣、ストレスなどと関連して、皮脂を分泌する脂腺の機能異常や、ホルモンの分泌異常などのさまざまな要素が積み重なって起こるのではないかと考えられています。

最近はこれらの要因に、皮膚の常在菌であるマラセチアという真菌(カビ)が加わることで、脂漏性皮膚炎が発症すると言われています。常在菌とは主に人の体にもともといる菌で、健康な時には特に人の体には害がない菌です。皮脂が多いとマラセチアが増えて脂漏性皮膚炎を引き起こすと考えられています。皮脂が多いことが原因になる皮膚の病気はニキビ(尋常性ざ瘡)が有名ですが、ニキビはアクネ菌が原因になります。

【脂漏性皮膚炎を引き起こす要因】

  • マラセチア
  • 顔や髪の毛の不十分なケア
  • 偏った食生活・飲酒
  • ストレス
  • 睡眠不足

2. 真菌感染:マラセチア

現時点で脂漏性皮膚炎の原因としてもっとも有力なのが真菌の一種であるマラセチアの関与です。真菌とはいわゆるカビのことです。マラセチアは皮膚に常在する真菌のうち最も多い菌です。マラセチアは増殖するのに脂質を必要とします。皮膚には汗を出す汗腺と皮脂を分泌する脂腺があります。マラセチアは脂腺から分泌される皮脂を栄養源として増殖します。

マラセチアは脂質を分解する酵素をもっており、皮脂の成分の1つであるトリグリセリドを遊離脂肪酸に分解します。この遊離脂肪酸が皮膚に刺激を与えることで脂漏性皮膚炎を引き起こすのではないかと考えられています。

3. 顔や髪の毛の不十分なケア

洗顔や洗髪が不十分で皮脂がたまると、溜まった皮脂を栄養分としてマラセチアが増殖して皮膚に炎症を起こして脂漏性皮膚炎を悪化させます。髪の毛や顔を洗う頻度は1日1回を目安にします。洗顔はお湯による洗浄だけでは皮脂を洗い落とすには不十分であり、1日1回は石鹸を使って丁寧に洗うことが必要と考えられています。ただし、ゴシゴシ洗って皮脂を完全に落としてしまうと、かえって皮膚が弱くなってしまいます。また、皮脂を全て落とそうとすると過剰に皮脂を分泌する方向に働きます。くれぐれも洗いすぎないように注意してください。

4. 偏った食生活・飲酒

偏った食生活も脂漏性皮膚炎を悪化させる原因の一つになる可能性が示唆されています。アルコール、コーヒー、過剰な糖質や脂肪、香辛料などが原因になるとも言われていますが、現時点では脂漏性皮膚炎を悪化させる食べ物や飲み物について、明らかな関連性があるものはありません。

その他に下記のような極端に偏った食事では皮脂分泌が過剰になると言われていますが、脂漏性皮膚炎を悪化させるかや、原因になるかは現時点でははっきりしません。いずれにせよ偏った食事は他の病気を引き起こす要因にもなりますので、バランスの良い食事をとるように心がけてください。

動物性脂肪・糖質の過剰な摂取

動物性脂肪や糖質を多く含む食品は皮脂線を刺激して皮脂分泌を促すと言われていますが、脂漏性皮膚炎の原因になるかや、悪化させる原因になるかについては現時点では不明です。

高GI食(GI:グリセミック指数)の摂取

GIとはグリセミック指数で、摂取した食品の中の炭水化物が消化されて、糖に変化する速さを相対的に表す値です。糖尿病の食事指導などで用いられます。高GI値の食品では急激な血糖の増加をきたすため、多くのインスリンが分泌されます。インスリンが過剰に分泌されると、男性ホルモンの分泌を刺激する作用があるため、高GI食事に偏ると皮脂量が増えると言われています。

高GI値が皮脂分泌を増やすと言われているものの、脂漏性皮膚炎とGI値の関連については一定の見解はありません。

ビタミン類の不足

ビタミンの中でも水溶性のビタミンB群は皮膚との関係が深いビタミンのひとつとされています。ビタミンB群にはB1(チアミン)、B2(リボフラビン)、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6(ピリドキシン)などがあり、それぞれがそれぞれを補助しつつ、脳や神経、皮膚などの維持やエネルギー代謝を補助する働きを担っています。

皮膚の機能維持には、ビタミンB群の中でもビタミンB2、ビタミンB6などが特に深く関わるとされていて、なんらかの理由でこれらのビタミンが不足したり代謝過程に異常が生じた場合には、皮脂の過剰分泌を起こして脂漏性皮膚炎などの皮膚症状があらわれやすくなると考えられています。

5. ストレス

ストレスがかかると男性ホルモンの分泌が増えるため、皮脂分泌が増えると言われていますが、脂漏性皮膚炎の明らかな要因であるかは現時点でははっきりしていません。

6. 睡眠不足

睡眠不足で皮脂分泌が増えると言われており、脂漏性皮膚炎を悪化させる一つの要因と予想されていますが、明らかな要因であるかは現時点でははっきりしていません。