喉頭がんで使用する抗がん剤はどんな薬?
喉頭がん
目次
喉頭がんの化学療法で使用する
- フルオロウラシル
- シスプラチン
- ドセタキセル
- パクリタキセル
- セツキシマブ
- ニボルマブ
- テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム
化学療法が適している状況や化学療法の目的などについては「喉頭がんの抗がん剤治療(化学療法)はどんな治療?」で詳しく説明しています。
1. フルオロウラシル(略号・商品名:5-FU)
フルオロウラシルは、がん細胞の
フルオロウラシルは細胞増殖に必要なDNAの合成を障害する作用やRNAの機能障害を引き起こすことでがん細胞の自滅(アポトーシス)を誘導させます。
現在ではフルオロウラシルを単剤(抗がん剤として単独)で使うことは少なく、他の抗がん剤もしくは5-FUの効果を増強する薬剤(主に活性型葉酸製剤)との併用により使われます。
喉頭がんの治療においてはシスプラチンと5-FUを使う治療法(FP療法)や、FP療法にドセタキセルを追加したTPF療法などで使われています。
喉頭がん以外でも、多くのがん化学療法のレジメン(がん治療における薬剤の種類や量、期間、手順などの計画書)で5-FUが使われています。
フルオロウラシルの副作用は?
5-FUで注意するべき副作用は吐き気や下痢、食欲不振などの消化器症状、
2. シスプラチン(商品名:ランダ®、ブリプラチン®など)
シスプラチンは、化学構造中にプラチナ(白金:Pt)を含むことからプラチナ製剤という種類に分類される抗がん剤です。細胞増殖に必要な遺伝情報を持つDNAに結合することでDNA複製を阻害し、がん細胞の分裂を止め、がん細胞の自滅(アポトーシス)を誘導することで抗
喉頭がんの治療ではフルオロウラシル(5-FU)とシスプラチンを使う方法(FP療法)や、FP療法にドセタキセルを追加したTPF療法などで使われています。喉頭がんの
シスプラチンは多くのがん化学療法のレジメンで使われる薬剤です。喉頭がん以外にも肺がん、食道がん、子宮頸がん、乳がん、胃がん、膀胱がんなど色々ながん治療に対して承認されています。
シスプラチンの副作用は?
シスプラチンの注意すべき副作用に腎障害(急性腎障害など)、過敏症、骨髄抑制、末梢神経障害、消化器障害、
また治療中に水分を摂る量が減ると腎障害の悪化などがおこる可能性があります。医師から治療中の具体的な水分摂取量が指示された場合はしっかりと守ることも大切です。
3. ドセタキセル(商品名:タキソテール®、ワンタキソテール®など)
ドセタキセルは、細胞分裂に重要な役割を果たす微小管を阻害することで、がん細胞の増殖を抑えやがて細胞死へ誘導させることで抗腫瘍効果をあらわす微小管阻害薬の一つです。
ドセタキセルはイチイ科の植物(学名:Taxus baccata)の成分から開発された経緯により、微小管阻害薬の中でも、学名を由来としたタキサン系という種類に分類されます。
喉頭がんにおいては、導入化学療法でフルオロウラシル(5-FU)とシスプラチンとドセタキセルを併用した治療法(TPF療法)で用います。
ドセタキセルは、喉頭がん以外にも、食道がん、非小細胞肺がん、乳がん、胃がん、卵巣がん、子宮体がん、前立腺がんなど多くのがん治療に使われることがある抗がん剤です。
ドセタキセルの副作用は?
ドセタキセルで注意すべき副作用に過敏症、骨髄抑制、関節や筋肉の痛み、しびれなどの末梢神経障害、脱毛などがあります。
またドセタキセル製剤は添加物や添付溶解液にエタノールを含むため、アルコール過敏の体質を持つ場合には注意が必要です。
4. パクリタキセル(商品名:タキソール®など)
パクリタキセルは、細胞分裂に重要な役割を果たす微小管を阻害することで、がん細胞の増殖を抑えやがて細胞死へ誘導させることで抗腫瘍効果をあらわす微小管阻害薬の一つです。
ドセタキセルと同じくイチイ科の植物(学名:Taxus baccata)の成分から開発された経緯により、微小管阻害薬の中でも、学名を由来としたタキサン系という種類に分類されます。
再発した切除不能な喉頭がんの治療で使用されます。一次療法ではフルオロウラシル(5-FU)とシスプラチンに、分子標的薬であるセツキシマブを併用します。一次療法で不能となった場合に、パクリタキセルとセツキシマブを毎週投与する治療法を行います。
パクリタキセルは喉頭がんの他、食道がん、肺がん、乳がん、胃がん、卵巣がん、子宮体がん、膀胱がんなどの多くのがん治療に使われることがある抗がん剤です。
パクリタキセルの副作用は?
パクリタキセルで注意すべき副作用に過敏症、骨髄抑制、関節や筋肉の痛み、しびれなどの末梢神経障害、脱毛などがあります。病態などにもよりますが脱毛は抗がん剤の中でも特に高頻度であらわれる薬で、眉毛などが抜ける場合も考えられます。必要に応じて帽子やウイッグなどを用意するなどの事前準備も大切です。
またパクリタキセル製剤は添加物にエタノールを含むため、アルコール過敏の体質を持つ場合には注意が必要です。
5. セツキシマブ(商品名:アービタックス®)
セツキシマブは分子標的薬の中でも、特定分子に結合するモノクロナール
喉頭がんの治療では、
頭頸部がん以外には、大腸がんなどにも使われます。
セツキシマブの副作用は?
セツキシマブの副作用には、皮膚症状、インフュージョンリアクション、低マグネシウム血症、間質性肺炎などがあります。
■皮膚症状
皮膚症状は、最も多い副作用です。治療開始後1-4週間で、にきびのような
セツキシマブが標的とするEGFRは皮膚や爪にもあるため、このような症状を起こします。皮膚症状はセツキシマブが効果を発揮しているサインです。皮膚症状の悪化による治療中止は、できるだけ避けたいため、予防の保湿が重要です。症状が出た後は、担当医に報告しましょう。皮膚科医と連携して治療を行います。
■インフュージョンリアクション
インフュージョンリアクションという過敏症が現れることがあります。インフュージョンリアクションはセツキシマブ投与中や、投与開始後24時間以内に現れる症状です。軽症から中等症では、発熱、寒気、
■低マグネシウム血症
低マグネシウム血症の症状は、
間質性肺炎はまれな副作用ですが、喉頭がんの患者さんでは、喫煙歴、高齢、肺の病気をもっているなど、間質性肺炎になりやすい背景を持つ人がよくいます。咳や呼吸が苦しい、微熱が続くなどの症状がある時は、担当医に伝えてください。
6. ニボルマブ(商品名:オプジーボ®)
ニボルマブは分子標的薬の中でも、特定分子に結合するモノクロナール抗体という種類の薬です。
本来体内には、がん細胞などを異物として攻撃する
しかし、がん細胞は自らPD-1リガンドという物質を作り出し、リンパ球T細胞の表面にあるPD-1という受容体に結合させることで、リンパ球の活性化を抑えてしまいます。これにより、がん細胞は免疫反応を回避でき、がん細胞の増殖が行われてしまいます。
ニボルマブは世界初のPD-1に対するモノクロナール抗体で、PD-1とPD-1リガンドとの結合を阻害し、がん細胞により不応答となっていた抗原
ニボルマブは日本ではまず2013年に悪性黒色腫に対する抗がん剤として承認されました。次いで2015年には一部の肺がん(切除不能な進行・再発非小細胞肺がん)、2016年には腎細胞がんの
ニボルマブは、抗がん剤の中でも高額な薬価(発売当初はオプジーボ点滴
ニボルマブの副作用は?
ニボルマブで注意したい副作用には間質性肺炎、
またニボルマブの使用中は免疫機能が活性化しているため、ワクチン接種を行った際に過度な免疫反応が現れる可能性があります。他にも
ニボルマブを投与後に、効果があるにもかかわらず腫瘍が大きくなっているようにみえること(Non-conventional response, あるいはPseudo-progression)があります。これはニボルマブによって活性化したリンパ球が腫瘍周囲に集まることで起こると考えられています。そのため、ニボルマブを使ってから腫瘍が大きくなった場合は、薬が効いていない場合と、上記のnon-conventional responseの両方を考慮する必要がありますが、ほとんどの場合は薬が効いていないケースなので、non-conventional responseを期待しすぎて、効いていないニボルマブを漫然と投与し続けるのは避けたいものです。
新しい種類の薬で、値段の高さからもニュースなどでよく取り上げられた薬ですが、決して夢のような薬ではないということには注意が必要です。確かにいったん効き始めると長期間腫瘍の勢いを止めてくれることがあるのですが、効く人の割合はその他の一般的な抗がん剤と比べて決して勝っているとは言い難い面もあります。
7. テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(略号:S-1、商品名:TS-1®)
S-1はテガフール、ギメラシル、オテラシルカリウムという3種類の成分からできている配合剤です。商品名としてはティーエスワン®などがあります。
中心となるのはテガフールです。テガフールは体内でフルオロウラシル(5-FU)という成分に徐々に変換され抗腫瘍効果をあらわします。テガフールのように体内で代謝を受けることで薬効をあらわす薬のことを一般的にプロドラッグと呼びます。
5-FUは細胞増殖に必要なDNAの合成を障害する作用やRNAの機能障害を引き起こすことでがん細胞の自滅(アポトーシス)を誘導させる代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)という種類の抗がん剤です。
テガフール以外の2種類の成分はテガフールを補助する役割を果たします。
ギメラシルは5-FUを分解するDPD(dihydropyrimidine dehydrogenase)の活性を阻害することで5-FUの血中濃度を高めて抗腫瘍効果を増強する役割を果たします。オテラシルカリウムは5-FUの主な副作用である消化器症状(
S-1は胃がんの抗がん剤として1999年に承認されました。その後、頭頸部がん、大腸がん、肺がん(非小細胞肺がん)、乳がん、膵がんといったがんに対しても追加承認されています。
頭頸部がんにおいては、補助化学療法や放射線治療に併用する抗がん剤として用いられます。補助化学療法は、手術後や化学放射線治療後に、再発リスクを下げるために行う化学療法です。放射線治療に併用する抗がん剤は、シスプラチンが一般的ですが、高齢者や、腎臓が悪い場合には使用することが難しい場合があります。そのような場合に、シスプラチンのかわりにS-1を併用して放射線治療を行います。
S-1による治療は休薬期間を設ける場合も多く「28日間服用後、14日間休薬」が一般的です。その他に「14日間服用後、7日間休薬」、「隔日投与(1日おきの内服)」などの服薬スケジュールが指示される場合があります。処方医や薬剤師から服薬方法などをしっかりと聞いておくことも大切です。
S-1の副作用は?
S-1の副作用として、オテラシルカリウムによって負担が軽減されているとはいえ食欲不振、吐き気、下痢、口内炎などの消化器症状には注意が必要です。他に骨髄抑制、肝機能障害、間質性肺炎などにも注意が必要です。
また、皮膚や爪などが黒くなる
S-1は