[医師監修・作成]喉頭がんの抗がん剤治療(化学療法)はどんな治療? | MEDLEY(メドレー)
こうとうがん
喉頭がん
のどの奥の、のどぼとけのあたりの位置(喉頭)にできるがん
11人の医師がチェック 94回の改訂 最終更新: 2022.03.07

喉頭がんの抗がん剤治療(化学療法)はどんな治療?

喉頭がんの治療として、抗がん剤を使用する場合、がんを治す目的の根治治療には、抗がん剤単独では使用しません。抗がん剤単独では根治治療にはなりません。他の治療と併用したり、がんの勢いのコントロール目的で使用します。

喉頭がんの治療で抗がん剤を使用する場合は下記のどれかになります。

  1. 導入化学療法
  2. 放射線治療との同時併用(化学放射線療法
  3. 他臓器への転移がある進行がんや、再発した場合に対する治療

各々説明した後に、抗がん剤の優れている点や、気をつけるべき点について解説します。

使用する薬の特徴や副作用などについては「喉頭がんで使用する抗がん剤はどんな薬?」で詳しく説明しています。

1. 導入化学療法とは?

導入化学療法とは、全ての治療の最初に行う抗がん剤治療です。目的は、手術可能な喉頭がんに対して喉頭温存率をあげることと、手術ができない喉頭がんの生存率をあげることです。導入化学療法の効果として、喉頭温存率の上昇は見られるものの、生存率の向上がないことが知られています。そのため、導入化学療法を行わない施設もあります。

手術可能な喉頭がんに対しての導入化学療法は、根治治療である放射線治療や、化学放射線治療の前に行います。

手術可能な喉頭がんで喉頭温存を希望した場合は、導入化学療法を行い、その後の治療方針を決めます。導入化学療法で、がんの縮小が見られれば、放射線治療か化学放射線治療を行い、がんの縮小がない場合は、手術を行います。

導入化学療法には抗がん剤のドセタキセル、シスプラチン、フルオロウラシルを組み合わせたTPF療法を用います。TPF療法は効果的ですが治療の副作用が強いため、個々の併存症や年齢などに応じて、ドセタキセルを除いた2剤の、PF療法を用いる場合もあります。

参考文献
N Engl J Med. 2007 Oct 25;357(17):1705-15.

2. 放射線治療との同時併用(化学放射線療法)

放射線治療に抗がん剤を併用する目的は、放射線療法の効果を増強させることと、放射線の当たらない照射野外の、目に見えないがんをコントロールすることです。

喉頭がんにおいては、切除可能な大きさであっても、喉頭温存の希望がある場合は、最初の治療として、化学放射線療法を行います。その他に、根治手術後に再発のリスクが高いと考えられる場合にも術後の化学放射線療法を行います。再発のリスクが高いと考えられるのは、切除したがんの断端陽性の場合と、リンパ節の節外浸潤がある場合です。断端陽性とは、切除したがんの端にがんが残っていた状態で、体内にがんが一部残っていることを示します。リンパ節の節外浸潤は、転移したリンパ節の外にがんがひろがっている様子が見えることを言います。

併用する抗がん剤は、シスプラチンが主ですが、年齢や併存疾患によって、セツキシマブなどを使用します。

3. 他臓器への転移がある進行がんや、再発した場合の化学療法

診断時にすでに他の臓器への転移がある場合や、手術や化学放射線治療後の再発して、手術や化学放射線治療ができない場合は、がんの進行を遅らせる目的で化学療法を行います。

診断時に他の臓器への転移(遠隔転移)がある場合は、すでに全身にがんが拡がっている状態です。この場合は、例外はあるものの、手術や化学放射線治療などは行いません。

手術や化学放射線治療を行った後に、がんが再発した場合は、再発部位の手術や化学放射線治療を検討します。他の臓器へ転移がある場合や、手術や化学放射線治療ができない場合は、化学療法を行います。

使用する抗がん剤は、シスプラチン、フルオロウラシル、セツキシマブの組み合わせや、パクリタキセル、セツキシマブの組み合わせなどがあります。これらの効果がなくなった場合には、ニボルマブの使用を検討します。

4. 抗がん剤治療の優れている点

抗がん剤のみの治療を行う場合は、他臓器への転移がある進行がんや、再発した場合に対する治療で使用します。全身にまわるように投与を行うため、他の臓器に転移をしている場合でも使用できるというメリットがあります。

しかしながら、抗がん剤のみで、根治を目指すことは難しく、抗がん剤を使用しながらがんの進行速度をうまくコントロールしていく治療になります。

抗がん剤の種類や投与方法によっては、外来での治療も可能になるため、慣れた環境で過ごすことができるという点もメリットです。

5. 抗がん剤治療で気をつけるべき点

抗がん剤を使用する際は副作用に気をつける必要があります。

抗がん剤で治療をするとがんだけではなく、正常な骨髄機能が低下します。骨髄機能が低下すると、白血球など体を異物から守る免疫機能が低下します。特に注意が必要なのが発熱性好中球減少症です。

白血球の中の一種類に好中球があります。好中球は細菌などから体を守る上で重要な役割を果たしています。抗がん剤により好中球が減少したところに細菌などが侵入すると、身体の防御機能が低下しているために重症化します。対処の遅れにより命に影響が及ぶことがあります。このような事態を予防すべく、現在では、好中球を増やす薬があります。G-CSFという薬には好中球を増やす作用があります。発熱が認められた場合は適切な抗菌薬を使用して対処します。好中球減少症の多くの場合は入院して治療します。

重症感染症から体を守るには手洗いなどによる衛生管理、うがいや歯磨きなどによる口の清潔保持など日常生活の中での感染対策が大切です。抗がん剤治療中は頻繁に採血が行われる時期があります。それは好中球が減少してきており、医師も慎重に経過を見ているからです。自らの状況を把握しておくことは感染予防に役立ちます。医師から血液検査の結果が説明された時には白血球(好中球)の値に注目したり、具体的な対策を質問しておくことをお勧めします。