Beta 喉頭がんのQ&A
喉頭がんの原因、メカニズムについて教えて下さい。
喉頭とは、舌の付け根から気管までの間にある器官で、発声や呼吸に関わります。喉頭がんは、喉頭組織にできた悪性の病気で、多くが上皮の基底細胞が悪性化した扁平上皮がんです。しかし、まれに腺がんやその他のがんが生じます。喫煙と飲酒によって発生リスクが高くなり、患者の90%以上が喫煙者です。飲酒は喉頭がんの中でも、声門上がんに関与すると言われています。他にも、アスベストの曝露やヒトパピローマウイルスとの関連が報告されています。
喉頭がんは、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?
喉頭がんは50歳代から80歳代に多く、発生率は10万人に約3人です。男性に発症する割合が多く、10:1で男性の喉頭がん患者が多いです。女性患者の9割は喫煙者と報告されています。喉頭がんには、発生部位により、声門がん、声門上がん、声門下がんに分かれます。最も多いのが声門がんで60-65%、声門上がんは30-35%、声門下がんの頻度は低く1-2%です。
喉頭がんと声帯ポリープの違いについて教えて下さい。
喉頭がんと声帯ポリープは、喫煙者に発生しやすく初期症状の多くが「声嗄れ」であることなど類似点が多いです。しかし、喉頭がんが悪性の病気であり早期治療が望ましい一方で、声帯ポリープは良性の病気であり必ずしも治療を急がないことなどが異なっています。声帯ポリープの場合は、のどを安静にすることで症状が改善することがありますが、喉頭がんの場合は、様子を見ても改善するよりはむしろ症状が悪くなる傾向にあります。
喉頭がんは、遺伝する病気ですか?
国際がん研究機関 (IARC)の調査では、近親者に頭頸部がん患者がいる頭頸部がんの家系の人々は発がんリスクが1.7倍に増加し、頭頸部がんの中でも咽頭がんと喉頭がんは、家系による影響が大きくなったと報告しています。特に、頭頸部がんの遺伝的なリスクをもつ人が喫煙と飲酒をすると、頭頸部がんのリスクは7.2倍と劇的に増加するようです。
喉頭がんは、どんな症状で発症するのですか?
喉頭がんの症状は発生部位によって異なります。声門がんではほぼ全例に嗄声(声のかすれ)が生じます。1ヶ月以上嗄声が続く場合は、喉頭がんの可能性があり耳鼻咽喉科での検査をお勧めします。進行してくると痰に血が混じったり、呼吸困難感が生じたりすることがあります。リンパ節への転移は比較的少ないのが特徴で、首の腫れはあまり起こりません。声門上がんは、飲み込みの違和感や痛みが生じます。比較的早期から首のリンパ節に転移しやすく、首が腫れて気がつくこともあります。嗄声は早期には生じませんが、進行すると声門へがんが広がり、嗄声や呼吸苦が出てきます。声門下がんの場合は、進行するまで無症状であることが多く、進行すると嗄声や呼吸苦が生じます。
喉頭がんの、その他の症状について教えて下さい。
喉頭にがんができることで放散痛として耳に痛みを感じたり、のどの違和感から咳がよく出るようになることがあります。また、がんが食事の通り道まで広がると、飲み込みに障害が生じることがあります。
喉頭がんは、どのように診断するのですか?
のどの中を細い内視鏡で診察し、のどにできものができていないかを診察したり、首の腫れがないかを確認します。最近ではNBIやi-scan、FICEといった画像強調イメージンング技術が開発され、異型血管や微小血管の増生、粘膜不整領域の明視化など、がんを早期発見しやすくなっています。がんの診断には細胞診や組織検査が必要で、内視鏡下に組織を一部切除する場合もあれば、全身麻酔下に組織を採取する場合もあります。病理検査によって、がんと確定診断されます。
喉頭がんの、その他の検査について教えて下さい。
病気の進展の程度や首のリンパ節転移、その他の転移の評価のために、頚部や胸部のCT検査やMRI検査を行います。場合によってはPET検査で全身を検査することもあります。嚥下造影検査で飲み込みの機能、食道の蠕動機能や重複がんの有無を確認します。
喉頭がんと診断が紛らわしい病気はありますか?
声帯ポリープの中には出血しやすいものもあります。また、喉頭乳頭腫というヒトパピローマウイルスに関連する良性の腫瘍は、内視鏡では悪性と良性との区別が難しく、一見喉頭がんを疑います。治療しても再発しやすく、まれに悪性化します。他に、喉頭結核という肉芽腫を形成する病気やサルコイドーシス、喉頭真菌症などは喉頭がんと区別しにくいことが多いです。組織検査が重要です。
喉頭がんの治療法について教えて下さい。
喉頭がんの治療は放射線治療と手術治療が中心です。抗がん剤(化学治療)は喉頭を温存するため放射線治療や手術治療と組み合わせて用いられたり、手術不可能な場合や放射線治療後の再発などの場合に使われたりします。最近では、放射線増感剤(Radiosensitizer)の投与やがん予防(Chemoprevention)治療の臨床試験が行われています。
喉頭がんの治療の使い分けについて教えて下さい。
喉頭がんの発生部位や進展状況によって異なります。Ⅰ期の場合は、手術治療または放射線治療が適応になります。Ⅱ期の場合は、手術治療と放射線治療を組み合わせたり、化学治療を組み合わせることがあります。Ⅲ、Ⅳ期は化学治療や放射線治療と手術治療を組み合わせて治療します。
喉頭がんの手術治療では入院はどの程度必要ですか?
早期の手術の場合は、全身麻酔での手術ですが経口法で治療するため、入院は短期間(数日-1週間程度)です。進行がんの場合は、喉頭を摘出する必要があり、首のリンパ節転移に対する治療も必要なことが多く、傷が落ち着くまで2-3週間の入院が必要です。さらに拡大した手術が必要な場合には、1ヶ月以上の入院が必要なこともあります。
放射線治療では入院が必要ですか?通院はどの程度必要ですか?
一般的に、放射線治療のみでは入院は必要ありません。約1ヶ月半の通院が必要になります。放射線治療により皮膚炎や粘膜炎などが生じると、入院治療が必要になる場合もあります。抗がん剤を併用する場合には入院が必要な場合が多いです。
抗がん剤治療では入院が必要ですか?治療期間はどのくらいですか?
抗がん剤の種類と量にもよりますが、抗がん剤による副作用に注意する必要があるため、多くの場合入院を必要とします。内服による抗がん剤治療の場合は通院でも可能です。抗がん剤は3週間から1ヶ月を1クールとし、治療は約3ヶ月にかかることが多いです
喉頭がんは、完治する病気ですか?あるいは、治っても後遺症の残る病気ですか?
Ⅰ期では80-90%が手術や放射線治療で治療することが可能といわれています。Ⅰ-Ⅳ期では65-70%の5年生存率ですが、発声機能を保存できる確立(喉頭温存率)は高くはありません。発声や呼吸、嚥下に関連する場所の治療であることから、後遺症として嗄声や嚥下障害、痰からみなどの症状が生じることが多いです。喉頭温存できなかった場合は、発声機能を喪失し、呼吸の通り道として永久気管孔(気管と交通する首のあな)が必要になります。