こうとうがん
喉頭がん
のどの奥の、のどぼとけのあたりの位置(喉頭)にできるがん
11人の医師がチェック 94回の改訂 最終更新: 2022.03.07

喉頭がんになるとどんな症状がでる?

1. 喉頭がんに初期症状はあるのか?

喉頭がんは初期では症状がないことがほとんどです。

例外的に声門がんは、嗄声(声がれ)が早期から出るため、がんが小さいうちに発見されることがあります。嗄声はがん以外の病気でも出現する症状ですが、1ヶ月以上、嗄声が持続する場合は、がんの可能性もありますので、耳鼻咽喉科に受診しましょう。

声門上がんや、声門下がんは、初期症状がほとんどありません。のどの違和感などが1ヶ月以上持続する場合は、耳鼻咽喉科に一度受診しましょう。

2. 喉頭がんでよく出現する症状はなにか

喉頭がんの症状は、がんのできる部位によって異なり、多様です。また、喉頭がんでしか出現しない症状はありません。下に記載した症状があるときも、他の病気である可能性もあります。喉頭がんは検診などが行われていないため、気になる症状があり、1ヶ月以上にわたって長引く場合は、早めに耳鼻咽喉科に受診しましょう。

嗄声(声がれ)

喉頭の機能として発声の機能があります。嗄声(させい)は声がかすれる症状です。声のかすれの症状は、ガラガラしたしゃがれ声や、息が漏れるような声など様々です。初期には長く声が続かなくなったなどの症状のこともあります。

嗄声になるしくみについて説明します。声は喉頭にある声帯が動いて出しています。声帯は帯状の構造物で、肺から吐き出された空気で振動して声を出します。嗄声は声帯がきちんと揺れない場合、声帯がきちんと閉じない場合や、両方の原因が混じって起こります。

声門がんでは、声帯にできた腫瘤できちんと声帯が揺れず、声帯もきちんと閉じないため、嗄声を起こします。声帯がきちんと揺れないため、低い声になり、きちんと閉じないため、息漏れも起こします。

声門上がんや、声門下がんでは腫瘤が邪魔をして声帯が閉じなくなり、嗄声を起こします。また、がんは周りの組織に入り込むようにして広がっていく性質があります。がんが浸潤(しんじゅん)すると言います。がんが声帯の動きをコントロールする神経に浸潤すると、声帯の開閉ができずに声を出す際も声帯に隙間ができるようになり、嗄声を起こします。

その他の嗄声の原因として、急性喉頭炎声帯ポリープポリープ様声帯声帯結節症、喉頭肉芽腫、声帯白板症反回神経麻痺などがあります。

急性喉頭炎風邪の時に声がでなくなる病気です。

反回神経麻痺は声帯の開閉をコントロールする反回神経が麻痺した状態です。原因としては、声門上がん、声門下がん、肺がん食道がん甲状腺がん大動脈瘤大動脈瘤や解離性大動脈瘤の手術後、特発性反回神経麻痺などがあります。

嗄声の原因は上記のように多くあるため、1ヶ月以上の嗄声が持続する場合は、一度耳鼻咽喉科に受診してみましょう。

息苦しさ(呼吸困難感)

喉頭の働きの1つに鼻や口から吸った空気を肺に送り込み、肺から出てきた空気を吐き出すという気道の働きもあります。声帯の部分は気道の中で一番狭い部分です。喉頭がんが大きくなると、空気の通り道を塞いで、空気の出入りを邪魔して、呼吸がうまく出来なくなります。病状が進行すると、徐々に声帯の動きが悪くなります。がんができた側と反対側にがんが広がると、両側の声帯が動かなくなります。両側の声帯が動かなくなる時には、声帯が閉じた状態で固定することが多く、空気を吸うことが困難になり、息苦しさが急激に悪化します。

息苦しさが急激に悪化した場合や、体への酸素の取り込みが悪化した場合は、そのまま放置すると窒息して死に至る可能性があります。この場合は、救命のために、呼吸の経路を作る気管切開という手術を行うことがあります。

気管切開では頸部の鎖骨の間あたりの皮膚を切開し、気管に穴をあけます。気管の穴に、直径10mm程度のシリコン製のチューブ(気管切開チューブ、気管切開カニューレ)を入れて、そのチューブを通して呼吸ができるようにします。気管切開を行った後は、声がでなくなります。チューブの種類によっては、声がでるものもあり、病状に応じて変更することもあります。

のどの痛み

がんが小さい時は、のどの違和感やイガイガ感、食事を飲んだ際に引っかかる感じの症状のみであることが多く、がんが大きくなると、飲水時や食べ物を飲み込んだ際に、がんに食べ物などが触れることで、痛みを自覚することがあります。

部位別では声門上がんで最も自覚しやすい症状です。がんが大きくなるにつれてのどの痛みも悪化します。声門がんや声門下がんでは、初期には痛みの症状がでることはほとんどなく、かなり進行してから痛みの症状がでます。

血痰

血痰(けったん)は血の混じった痰がでることです。空気の通り道である喉頭にがんができると、咳の時にがんから出血して、血痰がでることがあります。がんが大きくなると、がんの違和感で常にのどに痰があるような感覚になることがあります。その痰の感覚をとるために、頻繁に咳をします。咳のたびにがんがこすれるため、血痰が悪化します。

部位別では声門がんや声門下がんに多い症状です。

しかし、血痰のみの症状の場合は、喉頭がん以外の病気の可能性があります。血痰は肺がんなどの肺や気管支の病気や、慢性心不全の悪化などの心臓の病気でも出る症状です。血痰のみで、嗄声やのどの違和感などの症状がない場合は、喉頭がん以外の可能性があります。内科などの医療機関に受診して相談しましょう。

誤嚥

喉頭には誤嚥(ごえん)防止の働きもあります。食べ物を飲み込む時に、喉頭蓋(こうとうがい)が蓋のように倒れることと、声帯が閉まることで、食べ物が気管の中に入ること(誤嚥)を防止します。

誤嚥の症状は、喉頭がんでもでますが、咽頭がんのほうが多い症状です。

喉頭がんの場合、声帯にできたがんが、気道に食べ物が入ることを邪魔するため、誤嚥は起こりにくくなります。しかし、がんができた影響で、喉頭蓋が倒れない、声帯が麻痺して嚥下の時に閉じない、などの症状があると、誤嚥を起こすことがあります。

一方、咽頭がんのうち、下咽頭がんでは誤嚥が起こりやすいです。食べ物の通り道にがんが出来るため、食べ物が食道に入りにくくなります。下咽頭と喉頭は隣にあるため、あふれた食べ物は喉頭を通って気管に入り、誤嚥を起こします。

その他にも中咽頭がんでも、がんの痛みのためにうまく嚥下動作ができずに、誤嚥を起こすこともあります。

誤嚥はがん以外の原因でも起こります。最近食事の時にむせやすくなったなどの症状がある場合は、一度耳鼻咽喉科に受診してみても良いでしょう。

首のしこり

喉頭がんでは頸部(首)のしこりを自覚する場合もあります。頸部のしこりはがんが転移した頸部のリンパ節です。

部位別では、首のしこりで診断される喉頭がんは声門上がんと声門下がんです。声門下がんや声門上がんは、周囲のリンパ流が発達しているため、早期から頸部のリンパ節に転移を起こします。声門がんでは、首のしこりを初発症状とすることは少なく、嗄声などの症状が先に出ます。

頸部リンパ節転移のしこりは、一般的には硬く、痛みはありません。周囲の組織とくっついているため、指でつまんで動かそうとしてもなかなか動きません。

頸部のしこりのみでは他の病気の可能性もありますが、頸部のしこりに加えて、嗄声やのどの痛みや違和感がある場合は、一度医療機関に受診して調べてみましょう。

どんな症状が出たら喉頭がんを疑ったほうが良いのか?

喉頭がんでしか出現しない症状はありませんが、急性上気道炎かぜ症候群)などの症状と違い、嗄声(させい:声がれ)やのどの違和感などの症状が、1ヶ月以上などの長期間に渡って続くことが特徴です。もちろん、長期間の症状がある場合でも、声帯ポリープや、声帯結節などである場合もあり、必ずしも喉頭がんとは限りません。

喉頭がんを診断された人の90%は喫煙歴があります。喫煙歴があり、長期間の嗄声やのどの違和感などの症状がある場合は、一度耳鼻咽喉科に受診してみましょう。

声門上がんや声門下がんでは、のどの症状が出る前に頸部リンパ節転移による、首のしこり(塊)を触れることもあります。頸部リンパ節炎などの炎症と異なる点は、痛みを伴わないことと、長期間腫れが続くことです。これらの症状がある場合も、一度耳鼻咽喉科に受診してみましょう。

3. 喉頭がんの症状にチェックリストはあるか?

声門がん以外の喉頭がんには初期には症状がないこともあります。そのため症状に気をつけていても、声門上がんや、声門下がんでは早期発見が困難なことがあります。喉頭がんが心配になった時にも、1つ1つ症状をチェックしても診断の助けにはならないかもしれません。喉頭がんを心配して、症状がないのに、頻繁に耳鼻咽喉科に受診して、ファイバースコピー検査を行うことも、一般的には勧められるとは言えません。

喉頭がんは喫煙者に多いがんなので、過去に喫煙をしていた人や、現在喫煙している人、受動喫煙している場合は、喉頭がんのリスクが高いです。そのような人は、1ヶ月以上持続する嗄声や、のどの違和感、痛みなどがある場合には、一度医療機関に受診して調べてもらってもいいでしょう。