こうとうがん
喉頭がん
のどの奥の、のどぼとけのあたりの位置(喉頭)にできるがん
11人の医師がチェック 96回の改訂 最終更新: 2024.10.24

喉頭がんを疑われたときに行う検査は?診断基準はあるのか?

喉頭がんの検査には2つの目的があります。喉頭がんかどうか診断することと、喉頭がんと診断された後で、進行度を把握することです。目的にあわせて検査を使い分けます。検査方法や診断基準について見ていきましょう。

1. 喉頭がんが疑われた時の身体診察

喉頭がんが疑われた際は、がんの視診と、頸部(首)の触診を行います。

がんの視診は間接喉頭鏡を用いたり、喉頭ファイバースコープ検査を行って、がんの大きさや周囲への広がりを観察します。

頸部の触診では、頸部リンパ節転移の有無や、前頸部(首の前側)の腫瘤の有無、甲状軟骨の可動性を調べます。

声門上がんや声門下がんでは、頸部リンパ節転移を早期から起こしやすいため、触診で頸部のしこりがないかを調べます。しこりが触れた場合は、硬さや大きさなどを診察します。

喉頭がんが進行すると、喉頭の前方や後方に広がります。前方に広がると、前頸部の筋肉や甲状軟骨(のどぼとけの軟骨)にがんが浸潤(しんじゅん)します。浸潤とはがんが隣り合った組織に入り込むようにして広がってくることを言います。

がんの浸潤があるかを調べる意味で、触診で前頸部に腫瘤が触れないかを確認します。がんが後方に広がると、背骨の前の筋肉に浸潤して、甲状軟骨が動きにくくなるため、触診で甲状軟骨の動きも確認します。

2. 喉頭がんと血液検査・尿検査

喉頭がんは血液検査で診断はできません。治療方針を決定する際に血液検査を参考にします。手術や放射線治療化学療法には有害事象があります。血液検査によって治療の負担に体が耐えられるかを調べることができます。

全身状態把握のための検査

全身状態を把握するために血液検査を行います。手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)など、どの治療をするにあたっても、治療に耐えうる全身状態かを把握することが必要だからです。貧血の有無や、腎臓、肝臓の機能、栄養状態の他、糖尿病の有無なども検査を行います。

貧血や栄養状態が悪い場合や、糖尿病があると、手術を行った後に、合併症が多くなることが報告されています。合併症とは手術によって引き起こされる望ましくないことを指します。合併症は手術ミスのことではなく、うまくいった手術で合併症が出てしまうこともあります。

放射線治療と化学療法を併用する場合には、抗がん剤の副作用で貧血の悪化や、腎機能の悪化の可能性があり、治療前の評価が必要です。

抗がん剤の中でも白金製剤のシスプラチンを用いる場合は、腎機能によって、抗がん剤の量を検討するため、尿を貯めて、腎臓の機能を調べる検査を行うことがあります。

腫瘍マーカー

血液検査のうち、がんに関係する項目として腫瘍マーカーと総称されるものがあります。腫瘍マーカーは喉頭がんを診断することや、喉頭がんの進行度をはかることに決定的な材料とはなりません。

腫瘍マーカーというのは、がんと関係する微量の物質です。がんがあると血液の中で腫瘍マーカーの量が多くなります。腫瘍マーカーを測定することで、診断の助けになります。

治療前に腫瘍マーカーが上がっていて、治療後に腫瘍マーカーが一度下がり、再び腫瘍マーカーが上がってきた場合は、再発を疑う根拠になります。しかし腫瘍マーカーが上がっても再発していない場合があり、また腫瘍マーカーが上がらなくても再発は否定できません。

喉頭がんの腫瘍マーカーとしていくつかの物質が知られています。喉頭がんはほとんどが、扁平上皮という組織からできた扁平上皮がんです。扁平上皮がんの腫瘍マーカーは、SCC抗原、CYFRA(シフラ)などがありますが、喉頭がんを含む頭頸部がんに保険適用のあるものはSCC抗原のみです。

腫瘍マーカーは喉頭がんがあっても必ず上昇するとは限りません。つまり腫瘍マーカーを測定するだけではがんがあるともないとも確実なことはわかりません。

3. 喉頭がんとファイバースコープ検査

ファイバースコープ検査は喉頭がんの診断に重要です。ファイバースコープ検査では、がんを直接観察したり、がんの一部をつまみとることができます。

ファイバースコープは、胃カメラと似た構造で、先端にカメラとライトがついた細いチューブです。胃カメラより細く、太さが2.5-5mm程度です。

鼻からファイバースコープを挿入して、喉頭を観察します。鼻をファイバースコープが通る時に痛みを感じるため、検査前に鼻の処置を行います。最初に粘膜収縮薬で、鼻の粘膜を収縮させて、鼻の空間をひろげます。次に局所麻酔薬を用います。これらの薬を鼻にスプレーしたり、薬のついた綿棒やガーゼを鼻に入れて処置をします。

ファイバースコープでは、病変に近づいて観察できる利点があります。

最近では特殊な光の波長を用いて早期がんを探すカメラもあります。内視鏡で粘膜の隆起や潰瘍を認めた場合は、がんを疑うことは容易です。しかし、粘膜の発赤のみであった場合、がんと炎症の区別がつきません。その場合は、特殊な光の波長で観察することによって、早期がんを発見できることがあります。

がんを疑った場合は、ファイバースコープを見ながら、腫瘍の一部をつまみます。のどにふれると、オエッとえずく反射が起こりやすいため、のどを局所麻酔薬で麻酔した後に組織を採取します。観察用より太いファイバースコープを鼻から入れて、鉗子(かんし)でがんの一部を1-2mm大で採取します。採取した腫瘍は、病理検査でがんがあるかどうか調べます。

検査後はのどの違和感がありますが、1時間程度で麻酔の効果がなくなり、飲食も検査日から可能です。外来で簡単に行うことができる検査です。腫瘍をつまんだ部分から出血することがあります。血液を固まりにくくする薬を内服していると、検査後に血が止まりにくくなるため、必ず検査前に担当の医師に伝えてください。

4. 喉頭がんと画像検査

喉頭がんの画像検査は、がんと診断された後に、進行度を把握するためと、他のがんがないかを把握するために行います。

超音波検査

超音波検査エコー検査)は、体の中を観察する画像検査です。頸部リンパ節への転移の有無を評価します。観察したい部位にジェルを塗って、プローブという機械を当てると、プローブの先にある部分が画面に移ります。簡便にでき、かつ放射線を用いないことが利点です。

リンパ節転移の評価はCT検査と超音波検査で行います。超音波検査ではリンパ節の形状や、血流の様子などを詳細に観察することが可能です。

リンパ節内にがんがあるかどうか、判断が難しい場合は、穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん)を行います。リンパ節から採取した細胞を顕微鏡で見て、がんらしい細胞がないかを評価する検査です。超音波検査をしながら、リンパ節に注射針を刺して、内部の細胞を吸引して、ガラスに吹き付けて、顕微鏡で評価します。

CT検査

CT検査は体の断面をうつし出せる画像検査です。放射線を使います。がんの周囲組織への広がりと、頸部リンパ節転移の有無などを評価します。がんの広がりを詳細に調べるためにはヨード(ヨウ素)を主成分とする造影剤を注射して撮影を行います。ヨード造影剤のアレルギーがある場合や、糖尿病でメトホルミン製剤(メトグルコ®など)を内服している場合は、造影剤の副作用が出やすいので、医師に検査の前に伝えてください。腎臓の機能が悪い場合も造影剤を使用できないことがあります。

MRI検査

MRI検査は磁気を利用する画像検査です。放射線を使うことはありません。CT同様、がんの広がりを評価します。CTより粘膜病変をより詳細に評価できる利点がありますが、頸部リンパ節の評価はCTに劣ります。がんの筋肉への浸潤や、血管への浸潤などが評価可能で、手術可能ながんであるかを評価する点で重要な検査です。MRI検査ではガドリニウムを主成分とした造影剤を注射して検査を行います。腎臓の機能が悪いと、造影剤は使用できません。

PET検査

PET(ペット)は画像検査で、放射線を使います。PET/CT検査はPETとCT検査を組み合わせた検査です。PETは、がん細胞が通常の細胞に比べて糖分を活発に取り込むことを利用した検査です。

FDG(フルオロデオキシグルコース)という物質を使います。FDGは糖(グルコース)に似た物質です。FDGが取り込まれた場所で放射線が発生します。発生した放射線を利用して画像を撮影することができます。FDGを点滴で体の中に注入してから撮影します。がんはFDGの集積が高くなる(陽性)と考えられています。

喉頭がんでPET検査を行うのは、頸部リンパ節転移の有無を確認する目的と、遠くの臓器への転移がないかどうかを調べる目的です。

喫煙が原因になる喉頭がんでは、肺がんが同時に存在する場合もあります。PET検査で、肺がんがないかどうかも調べます。

治療後にも、再発の有無を判断するために、定期的なPET検査を行います。

PET検査では糖分の取り込みをみるため、糖尿病がある場合で血糖値が高い場合は、検査を行うことができません。

上部消化管内視鏡検査

喉頭がんでは喫煙、飲酒などが原因になります。喉頭がんがある場合は、同じように、喫煙や飲酒が原因になる食道がんができることがあります。

PET検査では、小さな食道がんは診断が難しいため、治療前に別途、上部消化管内視鏡検査を行います。喉頭がんと診断された場合は、治療前に上部消化管内視鏡検査を行い、食道がんがないかを確認します。

喉頭がんの治療後にも、食道がんになることがあるので、定期的に上部消化管内視鏡検査を行います。

5. 喉頭がんと顕微鏡検査

顕微鏡検査は喉頭がんかどうかを診断するときに最も信頼できる検査です。顕微鏡検査でがんかどうかの確定診断を行います。がんを疑う腫瘍から、細胞や組織の一部を採取して、顕微鏡でよく調べます。

細胞診検査

細胞診検査は、頸部リンパ節転移が疑われた場合に行います。CT検査、PET検査、超音波検査で、明らかに転移と考えられる場合は、細胞診を行わないこともあります。

画像検査で、リンパ節転移か判断が難しい場合は、穿刺吸引細胞診を行います。穿刺吸引細胞診は、リンパ節を針で穿刺(せんし;刺すこと)して、リンパ節内の細胞を吸引して、顕微鏡でみる検査です。超音波検査をしながら、リンパ節に注射針を刺して、内部の細胞を吸引して、ガラスに吹き付けて、顕微鏡で評価します。使用する注射針の太さは、血液検査などで用いる針の太さと同じです。1回穿刺するのみなので、穿刺時には麻酔は使用しません。1回の穿刺で内部の細胞がうまく引けない場合は、再度穿刺することがあります。

まれですが、血管に穿刺した針が当たった場合は、検査後に穿刺部位が腫れることがあります。大きく腫れた場合は、検査をした病院に問い合わせましょう。

病理検査

喉頭がんを疑った際に、がんかどうか調べる検査が必要です。視診や画像検査でがんが疑われた場合は、がんの一部を切り取る生検を行います。採取した組織は、顕微鏡でよく観察して、がんかどうかを調べます。生検では検査結果がでるまでに1-2週間かかります。生検はがんの診断において最も信頼できる検査です。

組織採取の時に出血のリスクがあるため、血を固まりにくくする抗血小板薬(バイアスピリン®、プラビックス®など)や、抗凝固薬(ワーファリン®、エリキュース®など)を服用している場合は忘れずに、医師に伝えましょう。

生検の手順を大まかに説明します。

■局所麻酔を用いた生検

のどにふれると、オエッとえずく反射が起こりやすいため、のどを局所麻酔薬で麻酔した後に組織を採取します。観察用より太いファイバースコープを鼻から入れて、鉗子(かんし)でがんの一部を1-2mm大で採取します。検査後はのどの違和感がありますが、1時間程度で麻酔の効果がなくなり、飲食も検査日から可能です。外来で簡単に行うことができる検査です。

全身麻酔での生検

局所麻酔下でのファイバースコープでの組織検査が難しい場合は、全身麻酔で行います。のどの反射が強い場合や、十分な大きさの組織が採取できないなどの場合です。全身麻酔で検査を行うと、病変部がより詳細に観察できる利点がありますが、短期間の入院が必要になる欠点があります。

6. 喉頭がんに診断基準はあるのか

喉頭がんに診断基準はありません。

ファイバースコープ検査での視診と、顕微鏡検査で確定診断を行います。

その他に、画像検査で頸部リンパ節転移の有無、遠い臓器への転移の有無を確認してステージを決定します。ステージに従って、治療方針を決定します。