喉頭がんを疑われたときに行う検査は?診断基準はあるのか?
喉頭がんの検査には2つの目的があります。喉頭がんかどうか診断することと、喉頭がんと診断された後で、進行度を把握することです。目的にあわせて検査を使い分けます。検査方法や診断基準について見ていきましょう。
目次
1. 喉頭がんが疑われた時の身体診察
喉頭がんが疑われた際は、
がんの視診は間接喉頭鏡を用いたり、
頸部の触診では、頸部
声門上がんや声門下がんでは、頸部リンパ節転移を早期から起こしやすいため、触診で頸部のしこりがないかを調べます。しこりが触れた場合は、硬さや大きさなどを診察します。
喉頭がんが進行すると、喉頭の前方や後方に広がります。前方に広がると、前頸部の筋肉や甲状軟骨(のどぼとけの軟骨)にがんが浸潤(しんじゅん)します。浸潤とはがんが隣り合った組織に入り込むようにして広がってくることを言います。
がんの浸潤があるかを調べる意味で、触診で前頸部に腫瘤が触れないかを確認します。がんが後方に広がると、
2. 喉頭がんと血液検査・尿検査
喉頭がんは血液検査で診断はできません。治療方針を決定する際に血液検査を参考にします。手術や
全身状態把握のための検査
全身状態を把握するために血液検査を行います。手術、放射線治療、化学療法(
貧血や栄養状態が悪い場合や、糖尿病があると、手術を行った後に、
放射線治療と化学療法を併用する場合には、
抗がん剤の中でも白金製剤のシスプラチンを用いる場合は、腎機能によって、抗がん剤の量を検討するため、尿を貯めて、腎臓の機能を調べる検査を行うことがあります。
腫瘍マーカー
血液検査のうち、がんに関係する項目として
腫瘍マーカーというのは、がんと関係する微量の物質です。がんがあると血液の中で腫瘍マーカーの量が多くなります。腫瘍マーカーを測定することで、診断の助けになります。
治療前に腫瘍マーカーが上がっていて、治療後に腫瘍マーカーが一度下がり、再び腫瘍マーカーが上がってきた場合は、再発を疑う根拠になります。しかし腫瘍マーカーが上がっても再発していない場合があり、また腫瘍マーカーが上がらなくても再発は否定できません。
喉頭がんの腫瘍マーカーとしていくつかの物質が知られています。喉頭がんはほとんどが、扁平上皮という組織からできた扁平上皮がんです。扁平上皮がんの腫瘍マーカーは、SCC抗原、CYFRA(シフラ)などがありますが、喉頭がんを含む頭頸部がんに
腫瘍マーカーは喉頭がんがあっても必ず上昇するとは限りません。つまり腫瘍マーカーを測定するだけではがんがあるともないとも確実なことはわかりません。
3. 喉頭がんとファイバースコープ検査
ファイバースコープ検査は喉頭がんの診断に重要です。ファイバースコープ検査では、がんを直接観察したり、がんの一部をつまみとることができます。
ファイバースコープは、
鼻からファイバースコープを挿入して、喉頭を観察します。鼻をファイバースコープが通る時に痛みを感じるため、検査前に鼻の処置を行います。最初に粘膜収縮薬で、鼻の粘膜を収縮させて、鼻の空間をひろげます。次に局所麻酔薬を用います。これらの薬を鼻にスプレーしたり、薬のついた綿棒やガーゼを鼻に入れて処置をします。
ファイバースコープでは、
最近では特殊な光の波長を用いて早期がんを探すカメラもあります。
がんを疑った場合は、ファイバースコープを見ながら、
検査後はのどの違和感がありますが、1時間程度で麻酔の効果がなくなり、飲食も検査日から可能です。外来で簡単に行うことができる検査です。腫瘍をつまんだ部分から出血することがあります。血液を固まりにくくする薬を内服していると、検査後に血が止まりにくくなるため、必ず検査前に担当の医師に伝えてください。
4. 喉頭がんと画像検査
喉頭がんの画像検査は、がんと診断された後に、進行度を把握するためと、他のがんがないかを把握するために行います。
超音波検査
リンパ節転移の評価は
リンパ節内にがんがあるかどうか、判断が難しい場合は、
CT検査
CT検査は体の断面をうつし出せる画像検査です。放射線を使います。がんの周囲組織への広がりと、頸部リンパ節転移の有無などを評価します。がんの広がりを詳細に調べるためにはヨード(ヨウ素)を主成分とする
MRI検査
PET検査
PET(ペット)は画像検査で、放射線を使います。PET/CT検査はPETとCT検査を組み合わせた検査です。PETは、がん細胞が通常の細胞に比べて糖分を活発に取り込むことを利用した検査です。
FDG(フルオロデオキシ
喉頭がんで
喫煙が原因になる喉頭がんでは、肺がんが同時に存在する場合もあります。PET検査で、肺がんがないかどうかも調べます。
治療後にも、再発の有無を判断するために、定期的なPET検査を行います。
PET検査では糖分の取り込みをみるため、糖尿病がある場合で
上部消化管内視鏡検査
喉頭がんでは喫煙、飲酒などが原因になります。喉頭がんがある場合は、同じように、喫煙や飲酒が原因になる食道がんができることがあります。
PET検査では、小さな食道がんは診断が難しいため、治療前に別途、
喉頭がんの治療後にも、食道がんになることがあるので、定期的に上部消化管内視鏡検査を行います。
5. 喉頭がんと顕微鏡検査
顕微鏡検査は喉頭がんかどうかを診断するときに最も信頼できる検査です。顕微鏡検査でがんかどうかの確定診断を行います。がんを疑う腫瘍から、細胞や組織の一部を採取して、顕微鏡でよく調べます。
細胞診検査
細胞診検査は、頸部リンパ節転移が疑われた場合に行います。CT検査、PET検査、超音波検査で、明らかに転移と考えられる場合は、細胞診を行わないこともあります。
画像検査で、リンパ節転移か判断が難しい場合は、穿刺吸引細胞診を行います。穿刺吸引細胞診は、リンパ節を針で穿刺(せんし;刺すこと)して、リンパ節内の細胞を吸引して、顕微鏡でみる検査です。超音波検査をしながら、リンパ節に注射針を刺して、内部の細胞を吸引して、ガラスに吹き付けて、顕微鏡で評価します。使用する注射針の太さは、血液検査などで用いる針の太さと同じです。1回穿刺するのみなので、穿刺時には麻酔は使用しません。1回の穿刺で内部の細胞がうまく引けない場合は、再度穿刺することがあります。
まれですが、血管に穿刺した針が当たった場合は、検査後に穿刺部位が腫れることがあります。大きく腫れた場合は、検査をした病院に問い合わせましょう。
病理検査
喉頭がんを疑った際に、がんかどうか調べる検査が必要です。視診や画像検査でがんが疑われた場合は、がんの一部を切り取る
組織採取の時に出血のリスクがあるため、血を固まりにくくする
生検の手順を大まかに説明します。
■局所麻酔を用いた生検
のどにふれると、オエッとえずく反射が起こりやすいため、のどを局所麻酔薬で麻酔した後に組織を採取します。観察用より太いファイバースコープを鼻から入れて、鉗子(かんし)でがんの一部を1-2mm大で採取します。検査後はのどの違和感がありますが、1時間程度で麻酔の効果がなくなり、飲食も検査日から可能です。外来で簡単に行うことができる検査です。
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局所麻酔下でのファイバースコープでの組織検査が難しい場合は、全身麻酔で行います。のどの反射が強い場合や、十分な大きさの組織が採取できないなどの場合です。全身麻酔で検査を行うと、病変部がより詳細に観察できる利点がありますが、短期間の入院が必要になる欠点があります。
6. 喉頭がんに診断基準はあるのか
喉頭がんに診断基準はありません。
ファイバースコープ検査での視診と、顕微鏡検査で確定診断を行います。
その他に、画像検査で頸部リンパ節転移の有無、遠い臓器への転移の有無を確認して