腸閉塞やイレウスはどんな病気か:原因・症状・治療など
腸閉塞やイレウスでは腸の中の流れが悪くなることによって腹痛や吐き気などの症状があらわれます。原因は手術の影響や大腸がんなどさまざまです。ここでは腸閉塞とイレウスについて、違いや原因、症状、治療などの全体像を説明します。
目次
1. 腸閉塞とはどういう病気か、イレウスとはどう違うか

腸閉塞とイレウスは腸の中の流れが悪くなる病気です。腸閉塞とイレウスという言葉は同じ意味で使われることもありますが、腸閉塞とイレウスを区別する考え方もあります。
腸閉塞とイレウスの違い
腸閉塞とイレウスは腸の中の流れが止まることで症状があらわれる点が共通しています。一方、両者を分ける考え方では以下が違いになります。
【腸の中の流れが止まる原因:腸閉塞とイレウスの違い】
- 腸閉塞:腸にものが詰まったり外側から圧迫されたりなど、物理的な閉塞の原因がある
- イレウス:腸が内や外からの刺激などで動かなくなるが、物理的な原因はない
『急性腹症
従来の分類と『急性腹症診療ガイドライン 2015』に準じたこのページの分類を比較します。
【従来の分類】
- 機械性腸閉塞
- 単純性腸閉塞(閉塞性腸閉塞、閉塞性イレウス)
- 複雑性腸閉塞(絞扼性腸閉塞、絞扼性イレウス)
機能性 腸閉塞麻痺 性腸閉塞(麻痺性イレウス)- 痙攣性腸閉塞(痙攣性イレウス)
【急性腹症診療ガイドライン 2015年に準じた分類】
- 腸閉塞
- 単純性腸閉塞
- 複雑性腸閉塞
- イレウス
このページの解説では、従来機能性腸閉塞と呼んでいたものをイレウスとし、機械性腸閉塞にはイレウスという呼び方をしません。
ただし医療機関によっては腸閉塞とイレウスを区別せずに説明が行われることもあります。どのような意味で使われているかよくわからないときは、腸が動かない原因について尋ねると、自身の体に起きていることがより理解できると思います。
2. 腸閉塞の種類
腸閉塞には単純性腸閉塞と複雑性腸閉塞の2つがあります。違いは腸の血流の有無です。血流が途絶えた状態である複雑性腸閉塞では速やかな治療が必要となるため、両者を見分けることが大事です。
- 単純性腸閉塞:腸の血流がある
- 複雑性腸閉塞:腸の血流が途絶えている
単純性腸閉塞は腸の中にものがつまったり腸の壁が腫れあがって腸の中が狭くなったりすることが原因です。完全に腸がつまっている場合とそうではない場合があります。完全な閉塞が起きていると腸の中の圧力が極めて高くなり腸に穴があくこともあります。治療では鼻や肛門から管を挿入して腸の中の圧力をできるだけ早く下げてあげます。状況によっては手術を検討します。
複雑性腸閉塞は腸が捻(ねじ)れたりして腸の中の流れが悪くなるとともに、腸の血流が途絶えた状態です。腸への血流が途絶えると腸が
3. 腸閉塞やイレウスの原因
腸閉塞とイレウスは同じような症状があらわれますが原因で区別されます。腸閉塞は物理的な圧迫や閉塞が原因で腸の中身が流れなくなります。一方で、イレウスは腸の麻痺や痙攣(けいれん)が原因です。


腸閉塞の主な原因:脱腸・大腸がん・手術による癒着など
腸閉塞の原因となる病気は多岐に渡ります。腸が外側から締め付けられたり腸の中に
腸閉塞は腸の血流の有無で単純性腸閉塞と複雑性腸閉塞の2つに分けることができます。単純性腸閉塞では腸の血流は保たれており
- 単純性腸閉塞の主な原因
- 複雑性腸閉塞の主な原因
単純性腸閉塞の原因は大腸がんによる閉塞やヘルニア、手術による癒着が多いです。重い腸炎も原因になることがあります。単純性腸閉塞は手術をしない保存的な治療で改善することもあります。しかし、腸が完全に閉塞した場合や保存的な治療で改善しないときには手術が検討されます。
複雑性腸閉塞は腸が捻(ねじ)れたり締め付けられたりすることが原因になります。複雑性腸閉塞は血液の流れが悪いので腸に壊死(細胞の死)が起きます。壊死が起きると腸の壁が弱くなり腸に穴があくこともあります。複雑性腸閉塞はできるだけ早めに治療を開始することが重要です。
イレウスの主な原因:腹膜炎・急性膵炎・薬剤・手術
イレウスは、腸管が麻痺したり(麻痺性イレウス)、痙攣したりする(痙攣性イレウス)ことが原因で腸の動きが止まり、腸管の中の流れが滞る病気です。腸が詰まったり狭くなったりしない点が腸閉塞との違いです。
腸が麻痺する原因には主に腹膜炎、急性膵炎、手術、薬剤などがあります。手術の後に起こることでも知られています。
【麻痺性イレウスの主な原因】
イレウスのほとんどが腸管が麻痺することで起こります。一方、痙攣性イレウスは非常に稀な病気です。腸管が縮こまっている時間が極端に長い時間つづくことが原因です。鉛中毒や精神疾患などが原因となることがあります。
4. 腸閉塞やイレウスの症状:腹痛・嘔吐など
腸閉塞とイレウスの症状はよくにていますが、少しずつ違いがあります。
初期症状
腸閉塞は突発的な腹痛から始まることが多いです。単純性腸閉塞の場合には痛みが強くなったり和らいだりするのが特徴です。これを間欠的(かんけつてき)な痛みと言います。複雑性腸閉塞では痛みは持続することが特徴です。腹痛と同時か少し時間がたって吐き気・嘔吐(おうと)や腹部の強い張り(
イレウスの場合は腸の動きが止まるので嘔吐や腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)の症状が目立ちます。イレウスは腸閉塞とは異なり腹痛は軽度か、感じないこともあります。
腹痛
腹痛は腸閉塞になったほとんど全ての人にあらわれる症状です。腹痛は痛くなったり弱くなったりすることも、強い痛みが持続することもあります。単純性腸閉塞の腹痛は間欠的で腹部全体が痛みます。一方で、複雑性腸閉塞の腹痛は持続的で痛む場所がはっきりとしています。
イレウスの腹痛は軽度であるかまたは感じないこともあり腸閉塞に比べると軽いです。イレウスになって時間が経過すると腸の中がガスや腸液で拡張することで痛みを自覚することがあります。
吃逆(きつぎゃく)
腸閉塞やイレウスが起こると腸にガスが溜まり続けます。ガスがたまると胃や腸は拡張して大きくなります。拡張した胃や腸は横隔膜を刺激します。横隔膜は刺激により痙攣することがあり吃逆の原因になります。
腹部膨満(ふくぶぼうまん)
腸閉塞やイレウスが起きると起きた場所から先には食べ物や腸液、ガス(おならのもと)が流れなくなります。腸にガスがたまると腸が拡張します。腸の拡張がひどくなるとお腹が膨らんでみえ、これを腹部膨満といいます。
腹部膨満の症状が出やすいのは大腸に起こる腸閉塞やイレウスです。
吐き気・嘔吐
腸閉塞やイレウスが起きると腸の流れが悪くなります。腸の流れが悪くなると食べ物や胃液や胆汁を含んだ腸液が腸にとどまり続けます。腸の中の流れが悪い状態が続くと腸液の逆流が起き始めます。腸液の逆流が起きると嘔吐が起きます。
嘔吐はイレウスより腸閉塞に多い傾向があります。さらに腸閉塞が起きた場所が小腸か大腸かで症状に特徴があります。小腸の腸閉塞であらわれる嘔吐物は便のような臭いを放つことがありますが、大腸の場合は酸っぱい臭いを放つことが多いです。
排便・排ガスの停止
腸閉塞やイレウスが起こると排便・排ガス(おなら)がなくなることがあります。腸閉塞やイレウスが改善すると排便や排ガスが再びあらわれます。排便や排ガスの有無は腸の動きや閉塞の状態を反映していると考えられます。ただし、初期の腸閉塞やイレウスでは排便や排ガスの停止がないこともあるのでこの症状の有無だけで診断はできません。
腸閉塞やイレウスが治療後に改善かしたかどうかの目安として、排便や排ガスの有無を参考にします。
脱水
腸閉塞やイレウスでは脱水が起こります。脱水とは身体の水分が不足することです。
腸閉塞では主に2つの理由で脱水がおきやすくなっています。一つ目の理由は腸から水分の吸収が低下することです。腸は水分の吸収などで大きな役割を果たしています。腸の動きが止まると腸からの水分の吸収が悪くなります。もう一つの理由は嘔吐による水分の喪失です。
腸閉塞になったら脱水を予防するために十分な点滴が必要になります。また、
脱水の症状は、
発熱
腸閉塞やイレウスで微熱が出ることはありますが、38℃を超えることはあまりありません。
腸閉塞で発熱した場合、重症化のサインの可能性があるため注意が必要です。
腸閉塞には単純性腸閉塞と複雑性腸閉塞の2つがあります。発熱することが多いのは複雑性腸閉塞です。複雑性腸閉塞は腸への血流が悪くなった状態を指し、数時間経過すると壊死(細胞の死)が始まります。壊死が起きると腸が脆(もろ)くなり穴が開くことがあります。腸に穴が開くと腹膜炎という重症の状態にいたり命に危険が及びます。
腸閉塞が疑われ発熱をしているときは、重い腸閉塞に進行していないかを確認する必要があります。
腸閉塞やイレウスとの関係が明らかではない症状:口臭
口臭の原因が腸閉塞や便秘ではないかと心配される人がいます。腸閉塞や便秘と口臭の関係は明らかではありません。
腸閉塞やイレウスで嘔吐した際に口臭として感じることはあるかもしれませんが、他に症状を伴わない口臭から腸閉塞やイレウスを疑うことは少ないと思います。
口臭の主な原因は歯肉炎や義歯の不具合、副鼻腔炎、タバコなどです。
5. 腸閉塞やイレウスの治療:イレウス管・手術など
腸閉塞とイレウスでは治療法が異なります。腸閉塞は状態によっては手術が必要になることがありますが、イレウスで手術が必要になるのはまれです。
腸閉塞は腸が物理的な影響を受けて腸の中の流れが悪くなります。腸への物理的な影響を取り除くことで改善することがあります。一方で、イレウスは腸が麻痺などで動かなくなる病気なので腸の動きを取り戻す治療が主体になります。
- 単純性腸閉塞の治療
保存的治療 - 胃管(経鼻胃管)
- イレウス管
- 手術(
内視鏡 的治療を含む)- 癒着剥離術(ゆちゃくはくりじゅつ)
- 腸切除術
消化管 バイパス術- 人工肛門造設術
- 消化管
ステント
- 複雑性腸閉塞の治療
- 手術
- 絞扼解除術(こうやくかいじょじゅつ)
- 腸切除術
- 消化管バイパス術
- 人工肛門造設術
- 手術
- イレウスの治療
- 保存的治療
- 胃管(経鼻胃管)
- イレウス管
- 保存的治療
腸閉塞には血行が保たれている単純性腸閉塞と腸の血流が悪くなった複雑性腸閉塞の2つがあります。
単純性腸閉塞では、症状が比較的軽ければ腸の中の食べ物や腸液を管(胃管・イレウス管)を利用して体の外に出す治療で改善することがあります。手術をしない保存的な治療で改善が見込めない場合は、手術による治療を検討します。
一方で複雑性腸閉塞の場合は手術が必要になります。手術をして腸の血流が悪くなっている原因を解消することが目的です。血流が悪くなる時間が続くと壊死(細胞の死滅)が始まります。壊死が起きている腸は弱くなっており、時間が経過すると穴があくなどの問題がおきます。複雑性腸閉塞が起きた場合には腸に壊死が起きることを考えて治療します。すでに壊死があるときには壊死している部分だけを切り取り腸と腸をつなぎ直します。
イレウスの治療は胃管やイレウス管を用いた治療が主体になります。管を使って腸液などを体の外に出します。これにより腸の拡張を減らし、腸の負担が軽減して、腸は再び正常な動きを取り戻すことができます。
まれなイレウスの原因として、血管に血のかたまりなどがつまって血流が悪くなるもの(上腸間膜動脈閉塞症・下腸間膜動脈閉塞症)があります。腸への血流が悪くなると腸に壊死が起きて命に危険を及ぼします。その場合には緊急での治療が必要になります。
胃管:鼻から胃の中に管を入れる治療
胃管は細長いチューブです。鼻から管を入れて胃まで挿入し、胃液を体の外に出します。鼻から胃に管を挿入するので経鼻胃管(けいびいかん)やNGチューブ(nasogastric tube)と呼ぶ施設もあります。胃管は単純性腸閉塞やイレウスの治療に用いられます。
胃管を挿入すると胃液が腸へ流れないので腸への負担が軽減します。胃管だけで十分な治療効果が得られない場合にはイレウス管に治療法を変えることを検討します。
イレウス管:鼻や肛門から腸にまで管を入れる治療
イレウス管は鼻や肛門から腸まで通す長い管です。イレウス管の先端は閉塞した腸の手前の部分に誘導します。イレウス管は単純性腸閉塞やイレウスの治療に用いられます。
腸閉塞やイレウスが起こると腸の中に液体が溜まり腸が拡張します。腸が拡張すると腸の血流が悪くなったり圧力が高くなったりして腸が破れる危険性が高まります。そのため、イレウス管を用いて腸の内容物を体の外に排出して腸の拡張を減らします。
癒着剥離術(ゆちゃくはくりじゅつ)
手術などが原因で腹腔内に癒着が起きることがあります。腹腔とはお腹の臓器の隙間の空間のことです。腹腔内の癒着によって腸と腸がくっついたり腸を締め付ける索状物(さくじょうぶつ)ができることがあります。この癒着でできた索状物を取り除く手術が癒着剥離術です。癒着を解消することで腸の中の流れがスムーズになります。
癒着剥離術が用いられるのは腹腔内の癒着が原因の腸閉塞です。
絞扼解除術(こうやくかいじょじゅつ)
絞扼解除術は複雑性腸閉塞に用いられます。
複雑性腸閉塞は腸へ血流を送る血管に圧迫などが生じて血流が悪くなっています。血管などが圧迫されることを絞扼(こうやく)といいます。絞扼が起きる原因は、臓器と臓器の間に腸が入り込むことや腸が捻れること、脱腸などさまざまです。
絞扼解除術では血流が悪くなっている原因を解消します。腸への血流が途絶えた時間が長かった場合、絞扼を解除したとしても腸が壊死を始めます。その場合は腸切除をします。
腸切除術
腸閉塞では腸の血流が悪くなり腸が壊死(細胞が死滅)することがあります。壊死が起きた腸は機能することができないので切り取る必要があります。壊死した部分の腸を切り取り腸と腸をつなぎなおします。
消化管バイパス術
がんが腸に
バイパスは本来の道とは別の迂回路(うかいろ)を形成することです。胃と小腸をつなげたり小腸と小腸をつなげたりして迂回路を作ってあげることで、食べ物が迂回路を通ってスムーズに流れるようになります。
人工肛門造設術
腸の閉塞が何箇所にも渡って起きている場合には人工肛門をつくることがあります。がんがお腹の中に広がって複数の箇所で腸閉塞を起こしている場合などが当てはまります。
人工肛門は肛門の代わりとなる便の出口です。手術で腸を切断し、その断面をお腹の表面まで引っ張り出して、腹部から便を出せるようにします。この「手術によって腹壁に造られた排泄口」をストーマといいます。少し細かな話ですが人工肛門を小腸でつくるとイレオストミー、大腸でつくるとコロストミーといいます。

人工肛門で生活をおくる人は生活で注意する点がいくつかあります。「公共社団法人 日本オストミー協会」のウェブサイトを参考にしたりストーマに精通した医療スタッフに気になる点を質問したりするなどしてみてください。
消化管ステント留置術
ステントとは筒状の形をしており狭くなった管状の臓器を内側から広げる器具です。がんなどが原因で単純性腸閉塞が起きているときに使われることがあります。
消化管ステントは針金でできています。狭くなった場所に留置するとステントが自然と広がり狭くなった腸を広げることができます。ステントが広がると腸の中をステントが裏打ちするような格好になります。消化管ステントは手術ができない人などに使われます。
6. 腸閉塞やイレウスに効果のある薬
腸閉塞やイレウスに効果のある薬は少ないですが、腸の動きを良くする漢方薬や便を柔らかくする緩下薬(かんげやく)などが治療と予防で効果を発揮します。
大建中湯(ダイケンチュウトウ)
大建中湯は漢方薬です。
腹部の手術後には腸閉塞やイレウスが起きることがあります。漢方薬の大建中湯は消化管運動を改善する効果を期待して使われることがあります。
大建中湯は乾姜(カンキョウ:生姜の根茎を乾燥したもの)、人参(ニンジン)、山椒(サンショウ)という3種類の生薬から構成されます。3種類とも食品などとしても比較的身近なものです。大建中湯は、一般的には「お腹や手足が冷えて腹痛、吐き気、腹部膨満感などがある」ような状態に適するとされています。
大建中湯は腸管血流量の増加作用や抗炎症作用などをあらわし、術後の腸閉塞やイレウスによる腹痛、膨満感などの改善に対して有用とされています。また
酸化マグネシウム
酸化マグネシウムには制酸(胃酸を中和する)作用の他、便を柔らかくする働きもあり便秘の解消目的で使われることがあります。酸化マグネシウムは腸の中に入ると炭酸マグネシウムへ変化します。
炭酸マグネシウムは腸の中に水分を引き込む力があります。このため便が水分を含み柔らかくなります。また水分が多くなった便はかさが増えるので腸を刺激して排便が促されます。
7. 新生児の腸閉塞やイレウスの原因
新生児は生後28日以内の赤ちゃんのことです。
生まれて間もない赤ちゃんにも腸閉塞やイレウスが起きることがあります。その多くは先天異常から起こるもので、生まれてから早い段階で治療をする必要があります。
【新生児の腸閉塞の主な原因】
先天性 腸閉鎖・狭窄- 先天性食道閉鎖
- 先天性十二指腸閉鎖・狭窄
- 先天性小腸閉鎖・狭窄
【新生児のイレウスの主な原因】
- ヒルシュスプルング病
- 低体重児
- 敗血症
- 甲状腺機能低下症
新生児の腸閉塞やイレウスは生まれてすぐの診察で見つかったり、母乳やミルクの嘔吐を繰りかえすことなどで発見されます。ただし新生児は授乳にまだ慣れていなので嘔吐をすることはよくあります。嘔吐をしたからといって腸閉塞やイレウスが必ずしも起きているわけではありません。
嘔吐の回数が多い場合や嘔吐物から酸っぱい匂いがするなどの場合は医療機関で診察や検査を受けてください。
8. 子どもの腸閉塞やイレウスの原因
子どもの腸閉塞は成人とは違う原因で起きることがあります。一方でイレウスは大人と同じく腹膜炎や過去に受けた手術などが主に原因となります。
【子どもの腸閉塞の主な原因】
【子どものイレウスの主な原因】
- 腹膜炎
- 腹部
打撲傷
子どもの腸閉塞やイレウスは嘔吐や腹部膨満感などの症状で発見されることがあります。子どもの場合、症状を上手く伝えられなくて病気が
腸閉塞やイレウスはできるだけ早く発見して治療することが望ましいです。早期発見のためには、保護者が感じる「いつもと違う」という感覚を大事にしてください。いつもより少し元気がなかったり機嫌不良が続くときは、詳しく質問をしたり体に触れて症状がないかを聞いてあげたりすることも良い方法だと思います。
9. 高齢者に腸閉塞が多い理由
腸閉塞は若くてもなることはありますが、高齢者ほど多い傾向にあります。腸閉塞の原因として多いものはがん(大腸がんなど)や脱腸(ヘルニア)、便秘などです。これらは年齢を重ねるほどにかかる割合が上がります。したがって、高齢者は腸閉塞になる危険性も高まると考えられます。
がん(大腸がん・胃がん・膵臓がん・胆道がんなど)
腸閉塞を起こすのは大腸がんが最も多く、他には胃がんや膵臓がん、胆道がんなどがお腹の中に広がることなどで腸閉塞が起きます。
がんによる腸閉塞は大腸がんであればがんを大腸とともに切除します。がんの広がりが大きい場合などでは消化管バイパス術や人工肛門造設術を行い治療することもあります。
脱腸(ヘルニア)
ヘルニアは体の壁の構造に異常が起きて本来中に収まっているものが脱出してくる状態のことを指します。腸が体の外に向かって脱出するヘルニアは脱腸とも呼ばれます。主なものとして3種類あります。
ヘルニアは高齢者ほど多くなります。ヘルニアの原因のひとつはお腹の筋肉などが弱くなることです。筋肉は青年期に最も発達してその後筋力は低下していきます。高齢者になると筋力が低下することでヘルニアが発症しやすくなります。
便秘
便秘でも腸閉塞になることがあります。高齢者は腸の動きが弱くなっており便秘になりがちです。さらに、1日の運動量が低下すると腸の動きが弱くなり便秘になりやすくなります。高齢者では活動量も低下しがちですので、無理のない範囲での運動と適量の食物繊維の摂取などが効果的です。
ただし、沢山の食物繊維は腸の流れを妨げるので、とりすぎは禁物です。食事の量をどのくらいとればよいのかは判断が簡単ではないので、医師や栄養士に相談してみてください。
10. 腸閉塞やイレウスの再発予防
腸閉塞やイレウスは再発を繰り返すことがあります。詳しい再発率は不明ですが、一度なったことがある人は再発に注意が必要です。
以下では腸閉塞やイレウスを再発しないための注意点について考えていきます。
食生活の見直し
食事は腸閉塞やイレウスを予防するうえで重要です。腸閉塞やイレウスになったことがある場合は食生活を一度見直すことをお勧めします。
【食事の見直しのポイント】
- 一回の食事の量を控えめにする
- 食べる速度はゆっくりと、食べ物はよく噛んでから飲み込む
- 消化の悪いものをとりすぎない
まずは、食事の量と内容について確認することをお勧めします。腸閉塞やイレウスを繰り返している人は、一回の食事量を控えめにして回数を分けるほうがよいです。もともと腸の動きが弱くなりやすくなっているところへ多くの食べ物がいっぺんに流れ込むと、腸閉塞やイレウスがおきる可能性が高くなります。
また、食事はゆっくりとしっかり噛み砕いて飲みこむことも大事です。特に消化が悪いと考えられている食品を飲み込む際には気をつけてください。
食事の内容も大事です。消化の悪いものを多く摂取するとやはり腸閉塞やイレウスが起きる可能性が高くなります。栄養士に食事について相談することも有効な手段です。
適度な運動
腸の動きは適度な運動により活性化します。運動不足がないかを確認してみてください。激しい運動は必要ありません。ウォーキングなどの軽い運動で十分です。
便秘の解消・予防
便秘は腸閉塞の原因になります。できれば便秘にならないようにすること、また便秘であれば解消することが腸閉塞の再発予防になります。
便秘の解消・予防には以下のような方法があります。
- 生活リズムを整える(食事の時間、就寝時間)
- 食物繊維を適度に摂取する
- 水分を摂取する
- 適度な運動を生活に取り入れる
まず、便秘の解消・予防によい習慣を取り入れることから始めてみてください。食物繊維や水分の積極的な摂取は便秘の改善・予防に効果的です。適度な運動をすることで腸に刺激を与えることができ、腸の動きを活発化することができます。
このどれもに当てはまることですが、適度・適量というのが大切です。例えば、食物繊維を摂りすぎるとかえって腸の流れを妨げるので、安易に摂りすぎることは避けるべきです。
これらの方法でも便秘を解消できない場合は医師に相談して便を柔らかくする薬などを検討してもらってください。
11. 腸閉塞やイレウスの死亡率
腸閉塞の中でも複雑性腸閉塞は状態によっては死亡することもある危険な状態です。腸閉塞がおきると死亡率はどのくらいなのでしょうか。
参考文献
・福井次矢, 黒川 清/日本語監修, ハリソン内科学 第2版, MEDSi, 2006
腸閉塞
腸閉塞は単純性と複雑性に分けられます。単純性では腸に届く血流が保たれています。複雑性は腸が詰まることに加えて腸の血流が悪くなった状態です。複雑性腸閉塞は命に影響を及ぼすことがあり重い状態です。
小腸と大腸のどちらに腸閉塞がおきたかでも死亡率は違ってきます。
小腸の腸閉塞は単純性腸閉塞のことも複雑性腸閉塞のこともあります。
単純性腸閉塞の死亡率は5-8%とされています。一方で複雑性腸閉塞の死亡率は20-75%とされています。
大腸に起きる腸閉塞は単純性腸閉塞が多いです。その死亡率は約20%とされています。大腸は複雑性腸閉塞が起こることは少ないとされています。
イレウス
イレウスは腸閉塞とは異なり腸の流れが悪くなる原因は腸管の麻痺や痙攣です。腸の中の流れが悪くなるのは物理的障害物ではありません。
イレウスの経過は良好なことが多く死亡することは少ないと考えられています。ただしイレウスと腸閉塞は症状が似ており検査でも見分けがつかないことがあります。イレウスと考えられていた人が時間の経過を見ていると腸閉塞であったことが明らかになることはあり得る話です。腸閉塞であった場合はイレウスに比べて死亡率が高く注意が必要です。
12. サブイレウスとはなにか
サブイレウスは腸閉塞やイレウスが起きる前の段階をあらわす言葉として使われることがあります。正確にいうと医学用語としてサブイレウスという言葉はありません。
サブイレウスという言葉を病院で聞いたときには腸閉塞やイレウスの一歩手前の状態で注意が必要な状態を指していると思ってください。
13. 腸閉塞やイレウスは何科を受診すればよいか
腸の病気を専門とする診療科は消化器内科や消化器外科です。腹痛や嘔吐などの症状があり腸閉塞やイレウスが心配な場合は消化器内科か消化器外科が相談するのに適した診療科です。
お腹の手術が原因で腸閉塞やイレウスが起こることがあります。消化器外科以外にも泌尿器科や産婦人科などでも開腹手術をします。腹部の手術を経験したことがあるならばまずは手術を受けた医療機関に受診することをお勧めします。手術を担当したところであれば手術をした状況を把握しているので情報量が多く適切な判断が下せるからです。消化器内科や消化器外科の協力が必要な場合は担当医から相談してもらえると思います。
休日や夜間は救急外来を受診すると診察や検査を受けることができます。腸閉塞やイレウスは早めに治療を開始することが大事です。