しんぼうさいどう
心房細動
本来一定のリズムで拍動する心房が、ぶるぶると不規則に震えることで生じる不整脈。血流が滞り心臓内に血栓を作ることで脳梗塞などの原因となる
18人の医師がチェック 144回の改訂 最終更新: 2023.09.10

心房細動が疑われた人に行われる検査とは?心電図、心臓エコー検査、心臓電気生理学的検査など

動悸や脈がとぶ症状から心房細動が疑われた場合には、まず心電図検査が行われます。また、それ以外にも心臓の状態を調べるために、心臓エコー(超音波)検査やCT検査などが行われます。

このページでは心房細動に関連する検査の内容や目的について説明します。

1. 心電図検査は何を調べるための検査?

心房細動が疑われたときにまず行われるのが心電図検査です。心電図検査は心臓の発する電気刺激を測定する検査です。心臓に電気を流すわけではないので全く痛みを伴いません。

心臓は僅かな電気を発して自身の動きをコントロールしています。この電気刺激の向きと大きさをキャッチして把握するのが心電図検査です。

一般的に行われる12誘導心電図検査では、胸の前側から左側にかけて6か所と両手足に1か所ずつの合計10か所の測定器具を装着します。器具をつけて安静に横になって測定すると、次の12通りの方向から心臓の電気信号をみることができます。

◎四肢誘導

  1. 第Ⅰ誘導
    1. 左心室の横の壁(側壁)の方向から電気信号を確認する
  2. 第Ⅱ誘導
    1. 心臓の先端(心尖部)の方向から電気信号を確認する
  3. 第Ⅲ誘導
    1. 右心室の横の壁(側壁)や左心室の背中側の壁(後壁)の方向から電気信号を確認する
  4. aVR誘導
    1. 右肩の方向から心臓の電気信号を確認する
  5. aVL誘導
    1. 左肩の方向から心臓の電気信号を確認する
  6. aVF誘導
    1. 足の方向から心臓の電気信号を確認する

◎胸部誘導

  1. V1誘導
    1. 右心室の前側や側方から心臓の電気信号を確認する
  2. V2誘導
    1. 左心室や右心室の前側の壁(前壁)の方向から電気信号を確認する
  3. V3誘導
    1. 右心室と左心室の間の壁(心室中隔)の方向から電気信号を確認する
  4. V4誘導
    1. 右心室と左心室の間の壁(心室中隔)の方向から電気信号を確認する
  5. V5誘導
    1. 左心室の前壁や側壁の方向から電気信号を確認する
  6. V6誘導
    1. 左心室の側壁の方向から電気信号を確認する

これらの誘導をチェックすることで心臓を上下左右の12方向から観察できます。心臓をあらゆる方向から確認することで、不整脈の有無やその性質をチェックできます。

心電図ではP波・Q波・R波・S波・T波の5つが基本になります。これらの波形と波の間隔(リズム)を中心に異常の有無を判定します。例えば、心房細動では波の間隔が不規則になり、P波が消失することが特徴的です。しかし、心電図検査では心房細動以外の病気も調べることができます。

次の章でもう少し詳しく説明します。

12誘導心電図検査で分かる病気

上で述べたように、心電図検査では波形と波の間隔がわかります。そのため、波形と間隔に異常が出る病気であれば心電図検査で調べることができます。具体的には次にあげるような病気がそれにあたります。

【心電図検査で分かる病気の例】

もちろんここに挙げた病気以外も調べることができますが、少なくともここにあげた病気が疑われたほぼ全員に心電図検査は行われます。

一方で、12誘導心電図検査には弱点もあります。不整脈には出現するときと出現しないときが交互に繰り返されるものがあります。そういったタイプの不整脈に対しては12誘導心電図検査では異常を調べきれない可能性があります。そこで、異常があるけれどもたまたま検査中に不整脈がみられなかったと疑われる人は、下記に示す24時間装着型のホルター型心電図検査を行うことがあります。

ホルター型心電図とは

1日中身体に装着しながら日常生活を送るタイプの心電図をホルター型心電図といいます。このタイプでは検査器具(粘着シート型のセンサー)を身体に貼ったまま日常生活を送ります。

ホルター型心電図は24時間心臓を観察できるため、大きなメリットがあります。突然出現していつの間にか消失するタイプの不整脈であっても24時間の観察中に1度でも出現すれば調べることができます。自覚症状と12誘導心電図の結果が乖離している人にはホルター型心電図が適していますし、1度の検査で異常が分からなくても何回か繰り返していくうちに異常が分かることも少なくありません。

2. 心臓エコー(超音波)検査とはどんな検査?

心臓エコー検査エコー(超音波)を用いて心臓の動きや大きさ、血液の流れを確認する検査です。特に痛みを伴うこともなく、X線検査やCT検査のように放射線に被曝することもありません。

心房細動では心不全に至ることがあります。心不全は心臓の機能が悪くなって身体に症状が出る病気ですので、エコー検査を行うと心臓の動きが悪くなっているのがわかります。心房細動のある人の中でも、症状が強い人や昔から心房細動を患っている人は心臓エコー検査を行うことになります。

また、心臓弁膜症などの心臓の病気が原因となって心房細動になることもあります。そのため、心臓エコー検査では心臓の動きや構造に異常がないかについても調べることになります。

3. 心臓CT検査とはどんな検査?

心臓CT検査では放射線を用いて心臓の断面図をみることができます。特に心臓の4つの部屋(右心房、右心室、左心房、左心室)の構造や冠動脈の太さなどをみることができます。動いているものを調べることは簡単ではないという弱点がCT検査にはありますが、動きを学習して同期することで検査の精度を上げることができます。

心房細動では、心不全心臓弁膜症虚血性心疾患などが関連することがあるため、これらの病気を精査するときに心臓CT検査は検査が行われます。

4. 心臓MRI検査とはどんな検査?

MRI検査は磁石の力を使って身体の断面図をみる検査です。心臓の病気が疑われたときにもMRI検査が行われることがあります。心臓の動きや冠動脈の太さなどを調べることができます。

一方で、MRI検査は動いているものを調べることがCT検査よりも難しいです。そのため、動きをしっかりと同期してから検査を行います。心房細動などの不整脈は不規則に心臓が動くため、同期が難しく、検査の精度があまり保てない場合には行うことができません。

5. 心臓電気生理学的検査(EPS)とはどんな検査?

心房細動が持続する人や治療がなかなかうまくいかない人に対して、心臓電気生理学的検査(EPS:Electrophysiological study)という検査を行うことがあります。この検査では通常の心電図では原因の詳細がわからない不整脈を事細かに調べることができます。また、検査と同時に治療(カテーテルアブレーション、焼灼術)に入ることができるのも特徴です。心臓の中でも不整脈の原因となっている部位を特定し、焼灼することで、発作が起こらないようにします。(カテーテルアブレーションの詳細はこちらを参照してください。)

一方で、心臓電気生理学的検査を行うのは簡単ではありません。手術室のような部屋で数時間横になって検査が行われます。

足の付け根や首にある血管にカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、心臓まで到達させます。このカテーテルを使って心臓内の電気回路の様子をくまなく調べていきます。

心臓電気生理学的検査は通常の心電図検査では原因の判別が難しい頻脈不整脈発作性上室性頻拍、心房頻拍、心室頻拍など)を調べるのに適した検査です。実はほとんどの場合で心房細動は通常の心電図検査で診断が可能です。ですので、心房細動に対して心臓電気生理学的検査が行われることは多くはありませんが、どうしても治らない人に対して「心房細動以外になにか問題が隠れていないかを調べるため」あるいは「カテーテルアブレーションを行う人の検査前の最終チェック」として行われることがあります。