2017.11.02 | ニュース

血が固まりにくくなる薬の作用を止めるイダルシズマブの効果は?

503人のデータから
from The New England journal of medicine
血が固まりにくくなる薬の作用を止めるイダルシズマブの効果は?の写真
(c) ktsdesign - Fotolia.com

ダビガトランは血を固まりにくくする薬です。血栓を防ぐ作用がありますが、出血の恐れもあります。イダルシズマブ(商品名プリズバインド®)がダビガトランの作用を中和する効果が報告されました。

ダビガトランとは?

ダビガトランは抗凝固薬(血を固まりにくくする薬)に分類されます。日本では「非弁膜症心房細動患者における虚血脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制」を効能・効果として承認されています。心房細動不整脈の一種)がある人に対して、心臓の中で血の塊ができて脳の血管まで流れ着き脳梗塞を起こすといった事態を防ぐことがダビガトランの目的に含まれます。

ダビガトランは血を固まりにくくすることで出血を起こす可能性に注意が必要とされます。

 

イダルシズマブはダビガトランの作用を中和するか?

多国籍の研究班が、ダビガトランの抗凝固作用をイダルシズマブで中和できるかを調べ、結果を医学誌『The New England Journal of Medicine』に報告しました。

 

この研究の中間解析の結果は2015年に報告されています。そこでは90人の対象者について「イダルシズマブはダビガトランの抗凝固作用を数分以内に完全に中和した」と結論されています。

イダルシズマブは日本では2016年に、「生命を脅かす出血又は止血困難な出血の発現時」または「重大な出血が予想される緊急を要する手術又は処置の施行時」におけるダビガトランの抗凝固作用の中和を効能・効果として承認されました。

 

503人参加後のデータを検証

今回の報告は、中間解析以後のデータも含め、研究計画に従って503人が参加した結果をもとにしています。

ダビガトランを使用中の患者で、2種類の条件のどちらかに当てはまる人が対象となりました。

  • 生命を脅かす出血または止血困難な出血があった人(グループA)
  • 緊急の手術または処置の直前であり正常に止血できる必要がある人(グループB)

対象者には5gのイダルシズマブが静脈内投与されました。効果判定のため、イダルシズマブ投与後4時間以内の2種類の検査値(希釈トロンビン時間・エカリン凝固時間)から抗凝固作用の中和の割合を算出しました。

 

抗凝固作用を100%中和

イダルシズマブ投与の結果、ダビガトランの抗凝固作用は2種類の検査とも100%中和されたと見られました。

グループAで止血までの時間を測定できた人では、半数の人で2.5時間以内に出血が止まっていました。グループBで手術や処置を開始できるまでの時間は半数の人で1.6時間以内でした。

90日後までにグループAでは6.3%、グループBでは7.4%の人に血栓をともなう状態(肺塞栓、脳梗塞深部静脈血栓症心筋梗塞など)が発生しました。

 

イダルシズマブはやはり有効?

イダルシズマブの効果の報告を紹介しました。中間解析と同様に、ダビガトランの抗凝固作用を中和するために効果的という結果でした。

ダビガトランとともにイダルシズマブが使用可能であることで、危ない事態の対応に役立つかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Idarucizumab for Dabigatran Reversal - Full Cohort Analysis.

N Engl J Med. 2017 Aug 3.

[PMID: 28693366]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。