2016.03.21 | コラム

脳梗塞の後遺症にどのようなリハビリが良いの?重症度ごとに解説

脳梗塞の後遺症にどのようなリハビリが良いの?重症度ごとに解説の写真
(C) Franz Pfluegl - Fotolia.com

この記事のポイント

1. 脳梗塞の後遺症について
2. 脳梗塞の重症度はどのように判定するの?
3. 脳梗塞の後遺症に対する一般的なリハビリ方法
4. 近年、効果が期待されているリハビリ方法

脳梗塞は、手足の麻痺や言語障害など何らかの後遺症を伴うことが知られています。一度死んでしまった脳細胞は蘇らないため、リハビリによって失われた機能を補う必要があります。今回は、脳梗塞の後遺症に対して一般的にどのようなリハビリが行われるか、また、CI療法など近年効果が期待されているリハビリ方法について詳しく解説します。

◆脳梗塞の後遺症について

脳梗塞発症すると多くの場合、後遺症を伴うことになります。その後遺症は、梗塞の部位に応じて異なるものです。その理由は、脳は各部位によって担っている機能が異なるためです。また、梗塞によって影響を受ける脳の部位が広い範囲にまで及ぶと、複数の後遺症が残る可能性も大きくなります。後遺症としては、以下のような例が代表的ですが、これ以外にも様々な後遺症が残る場合もあり、その後遺症は「目に見えない(気づかれない)」ことさえあります。

  • 片方の手足の動かしづらさ(麻痺
  • 片方の手足のしびれ(感覚障害)
  • しゃべりづらさ(舌がもつれる、言葉がでてこない)
  • ふらつき(歩きづらい、めまい)
  • 会話、集中力、感情などといったより高度な脳機能の障害(高次脳機能障害)

このような後遺症の重症度はどのように判定するのでしょうか?

 

◆脳梗塞の重症度はどのように判定するの?

脳梗塞の重症度は、意識レベル、運動機能、日常生活活動に必要な介助量といった全体像を示す様々な評価指標や、脳梗塞に付随して起こりうる脳卒中後うつなどの特異的な評価指標を用いて判定されます。すべての評価指標が用いられるわけではありませんし、同じ機能や能力を評価していてもどの評価指標を使うかは、病院や個人によって異なります。以下に、その代表的な評価指標を挙げます。

  • Japan Coma Scale(JCS)
    • 意識障害のレベルを評価する指標です。日本で広く使用されています。
       
  • Glasgow Coma Scale(GCS)
    • JCSと少し似ていますが、目を開けるか、言葉を話せるか、体を動かせるかといった点に注目し、それぞれ1〜6段階で評価しているものです。世界的に用いられています。
       
  • modified NIH Stroke Scale(NIHSS)
    • 意識障害や身体の動かしづらさ(麻痺)などを総合的に評価している指標です。
       
  • 脳卒中情動障害スケール(JSS-E)
    • 脳卒中後には、情動障害と呼ばれる気分がはれなかったり、やる気が出ないといった部分の評価を行える指標です。
       
  • 脳卒中うつスケール(JSS-D)
    • 脳卒中後では、多くの人で脳卒中後うつと呼ばれるうつ症状が見られることがあります。その脳卒中後うつを評価できる指標です。
       
  • 脳卒中感情障害(うつ・情動障害)スケール同時評価表(JSS-DE)
    • 脳卒中情動障害スケールや脳卒中うつスケールを合わせた評価指標です。
       
  • 脳卒中運動機能障害重症度スケール(JSS-M)
    • 意識、言語、無視、視野欠損または半盲、眼球運動障害、瞳孔異常、顔面麻痺、足底反射、感覚系、運動系(手、腕、下肢)の12項目で全身状態を評価する指標です。
       
  • 日本版modified Rankin Scale(mRS)判定基準書
    • 障害の程度を「全く症候がない〜死亡」の6段階で評価する指標です。
       
  • Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)
    • 運動機能、筋の緊張、感覚機能、関節の可動域、疼痛、体幹機能、高次脳機能、麻痺していない側の機能について評価する指標です。
       
  • Brunnstrom stage
    • 上肢、手指、下肢の各部位について、麻痺の回復段階がどの程度であるかを評価する指標です。
       
  • Barthel Index
    • 日常生活を送るために必要とされている食事や排泄、入浴などを行うために必要な介助量を評価する指標です。

これ以外にも、QOL(生活の質)や手の機能に特化した評価指標など様々な評価指標があります。これらの評価指標だけで、治療法が決まるわけではありませんが、治療を決定するひとつの要因として用いることもあり、重要な評価になります。それでは次に、脳梗塞の後遺症の重症度ごとによく行われている治療法について解説します。


脳梗塞の後遺症に対する一般的なリハビリ方法

リハビリを受ける患者さんのイメージ

脳梗塞を発症した後のリハビリテーション(リハビリ)は、その重症度のみで行われるリハビリが変わるわけではありませんが、大まかな部分として、今回は重症度ごとに解説したいと思います。

そもそもリハビリテーションはなぜ行われるのでしょうか?脳梗塞をはじめ脳卒中では、脳の細胞が一度死んでしまうとその細胞自体は決して蘇りません。一方で、脳では生きている部分が死んでしまった部分の代役を努めようとしたり、新しい神経回路を作りながら回復していくということがわかっています。リハビリテーションは、生きている部分の脳で、失われた機能を補うことを目指したり、新たな神経回路を作り出す手助けをすることができると言われています。
 

◎後遺症が軽症の場合

後遺症が軽度の場合では、血圧などの内科的な管理下で急性期(発症して間もなく)から歩行練習や日常生活の動作練習が行われます。ただし、軽症と言っても発症後すぐでは麻痺が出ている方も多く、言葉が話しづらいという方もいます。機能回復の機会は脳梗塞を発症してから数ヶ月〜半年であると言われていますので(能力の回復はその期間を過ぎても高められることが多いです)、積極的にリハビリを行うことが大事です。

◎後遺症が中等度の場合

後遺症が中等度の場合ですと、急性期から回復期にかけて、徐々にできることを増やしていきます。急性期では、まず座る練習や起き上がる練習など基本的な動作から、立つ、車椅子への乗り移りなどを練習します。手を使った練習も行いますが、麻痺した手だけではなく、麻痺していない手で行えることも、増やしていきます。回復期に転院する場合、さらにその動作の難易度を上げながら、より実際の生活に近い場面での練習を行うことになります。麻痺によって足がうまくつけなかったり、動かせない場合には、装具を作成することもあります。高次脳機能障害や嚥下障害がある場合にも、回復期では様々な課題を用いて練習を行います(高次脳機能障害のリハビリに関しては、別の記事を御覧ください)。
 

◎後遺症が重度の場合

後遺症が重度の場合では、まずできるだけ座っていられることを目標にリハビリが始まります。また、普段動くことができないため、関節が拘縮したり、麻痺していない方の筋力も落ちてしまうことから、関節を動かす練習やストレッチ、筋力をつける運動をベッド上で行います。これらの効果は脳卒中治療ガイドライン2015にも記載されていますが、マッサージに関しては何かに有効であるという効果は示されていません。気分的な効果などを期待して行われることもありますが、より足や体幹に負担のかかる練習の方が効果的であると言えるでしょう。また内科的な管理を行いながら、病院によっては早期から装具を用いて歩くこともあります。後遺症が中等度の方でも同様で、早期から歩き、足に体重をかけ、さらに足を交互に動かすという運動は長期的に見た時に有効である可能性があります。麻痺が重いと肩の亜脱臼を起こすことがあり、さらに自分の手がどこにあるかわからないといった状態の場合、手の管理ができず知らない間に体の下に引いていたり、どこかに挟んでしまったりということが起きます。そのため、アームスリングと呼ばれる腕の重さを支えるスリングを使うこともあります。

 

後遺症の重症度ごとに行われるリハビリについて解説しました。これらのリハビリは発症後の時期や体の状態によって、オーバーラップしたり、全く異なることが行われる場合もあります。また、早期から行うことは大事ですが、方法によっては逆効果になる場合も考えられます。その人にあったリハビリ治療を行うことが大事です。

 

◆近年、効果が期待されているリハビリ方法

最後に、一部の病院によって行われているリハビリの方法を紹介します。特に近年その効果が検証されているリハビリ方法ですが、取り入れている病院が限られているということも留意しなければいけません。

 

◎CI療法

麻痺した手を積極的に使ってもらうために、麻痺していない手の使用を何かしらの形で制限する方法です。さらに、その状態でその人に合った適切な難易度を調整しながら麻痺した手を使うことで、より効果が高められると言われています。CI療法の適応に関しては様々な議論がされていますが、脳卒中治療ガイドライン2015では、慢性期であったり、軽症であることが条件として記載されています。その他の方への効果に関しても個々の研究では効果が示唆されています。
 

◎トレッドミル練習(歩行練習)

単に歩くだけの練習を行うだけではなく、よくスポーツクラブなどで見かけるランニングマシーン(トレッドミル)の上を歩く練習方法です。練習後、歩く速度が向上するという報告があります。また、トレッドミル練習でも、体重を支える装置を用いた免荷式トレッドミル練習を行うと、重度の麻痺があり、歩くのにかなりの介助量が必要な場合でも、安全かつ長時間歩く練習を行うことができます。
 

◎自転車エルゴメーター

こちらもスポーツクラブにあるような、自転車エルゴメーターを用いた練習方法です。座って行えるため、比較的安全に練習することができます。自転車を漕いでいる時の筋肉の活動が、歩いている時の筋肉の活動に似ているため、自転車を漕いだ後に歩行能力が向上するという研究が報告されています。また、持久力をつける練習にもなります。麻痺した足で漕ぐことができない場合は、アシスト付きの自転車を使ったり、専門家がアシストして漕いでもらうこともあります。
 

​◎末梢電気刺激

足や手を電気で刺激しながら、動作を行う方法です(動作を行わずに流す場合もあります)。その効果としては、筋肉の緊張が和らいだり、手や足を動かしやすくなるといったことが言われています。電気刺激自体は、痛いものではありません(人によって感じ方は異なりますが、強い痛みが出ることは非常に稀です)。自転車エルゴメーターや、トレッドミル練習などの際にも行うことで、相乗効果が見られるという研究報告があります。
 

◎経頭蓋磁気刺激

頭に磁気で刺激を行い、脳の活動を調整するという方法です。頭への磁気刺激は少し衝撃がありますが、回数や方法を守っていれば安全であると言われています。磁場を発生させることで、頭の中で電流を起こし、脳の活動を調整することができるという仕組みです。脳梗塞で障害を受けた脳の活性化を目的に行われることがほとんどです。脳梗塞を起こした側と反対側の脳では、脳梗塞を起こした側との連携がうまくいかず、過剰に活動することもあります。その場合には、反対側の脳活動を少し下げるという方法も行えます。
 

◎経頭蓋直流電気刺激

経頭蓋磁気刺激と似ていますが、こちらは頭の上に電極を貼り、電流を流す方法です。経頭蓋磁気刺激と異なり、微弱な電流によって脳の活動を調整することができると言われています。電極によって、その活動を上げたり、下げたりすることもできるため、経頭蓋磁気刺激と同様の目的で使うことができます。

 

この他にも、鏡を使って麻痺している手が動いているように錯覚させることで、脳の回復を図る方法など様々な方法があります。

以上のリハビリ方法の多くは、脳卒中治療ガイドライン2015にも掲載されている方法です。経頭蓋磁気刺激、経頭蓋直流電気刺激に関しては、その効果は検証段階でありますが、安全性などを配慮した上で、使用を考慮しても良いとされています。

 

脳梗塞後のリハビリ方法について、重症度ごとに詳しく解説しました。もちろん今回記載した内容だけではなく、その人にあったリハビリ方法もあります。脳卒中治療ガイドライン2015に掲載されている方法はその効果に関して比較的多く根拠が示されていますので、それを踏まえ、専門家と相談しながら進めることが大切です。

執筆者

NK

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。


MEDLEYニュース新着記事