しんぼうさいどう
心房細動
本来一定のリズムで拍動する心房が、ぶるぶると不規則に震えることで生じる不整脈。血流が滞り心臓内に血栓を作ることで脳梗塞などの原因となる
18人の医師がチェック 144回の改訂 最終更新: 2023.09.10

心房細動にはどんな症状がある?

心房細動がある人は動悸や息切れなどの症状を感じます。一方で、心房細動があっても特に症状を感じない人もいて、心房細動の状況によって異なります。このページでは心房細動でよくある症状や気をつけたほうがよい症状について説明します。

1. 心房細動があっても無自覚の人がいる? 無症候性心房細動について

心房細動では動悸や息切れなどの症状が出ます。しかし、心房細動があるにもかかわらず症状を感じない人もいます。心房細動の頻度や年齢などのさまざまなことが影響して症状の有無が決まりますが、症状がないほうが安心というわけではないので注意が必要です。というのも、心房細動による症状がある人よりも症状がない人のほうが、心房細動が慢性化しやすいという報告があるからです。

心房細動は症状がないほうが危険?

心房細動は持続しやすいことからも、症状を感じなくてもきちんと治療してコントロールする必要があります。

心房細動が起こると心臓内に血栓(血の塊)ができやすくなるため、脳梗塞などの脳血管障害を起こしやすいことがわかっています。これは自覚症状のない心房細動(無症候性心房細動)でも同様です。特に無症候性の心房細動が24時間以上続いた場合には脳血管障害が起こりやすいという報告があります。「心房細動と診断されたけれども症状がないから大丈夫だろう」とたかをくくっていると痛い目を見ることがあります。

また、心房細動によって脳血管障害や心不全が起こると命を落とすことがあります。心房細動の症状がない人は症状のある人よりも死亡率が高い(およそ2倍)という報告があります。

このように、心房細動は症状があろうがなかろうが、気をつけなければならない病気です。たった今症状がなくても重大な合併症に繋がりかねません。お医者さんから心房細動の治療薬を処方された場合には、症状がなくても飲み忘れないように気をつけて下さい。

2. 心房細動の自覚症状にはどんなものがある?

心房細動を持っている人は、自分の症状を「脈が飛ぶ」とか「どきどきする」、「めまいがする」といった形で表現します。心房細動によって起こる症状は人によってそれぞれですが、代表的なものは次になります。

動悸がする

動悸とは「自分の脈をドキドキと感じる」ことです。脈が乱れたり鼓動が強くなったりすると動悸が起こりやすいです。心房細動では脈が乱れたり、通常よりも脈が早くなったり遅くなったりするため、動悸が起こりやすいです。その他にもアルコールや運動の影響を受けて動悸が起こることがあるため、「動悸があるから心房細動である」というように直線的に診断されるわけではありません。

脈がとぶ

本来は定期的に打たれている心臓の鼓動のリズムが乱れたり、鼓動が一時的にお休みしたりすると、「脈が飛んだ」と自覚します。心房細動によって鼓動が不規則になればなるほど脈が飛びやすくなります。

脈が飛ぶ時間が長くなると非常に危険です。脳に血流が届かなくなるため、めまいやふらつきを自覚し、ひどい場合には意識を失います。めまいやふらつき、意識消失を経験した場合には、必ず医療機関受診して調べてもらって下さい。

胸がなんだか苦しい

心房細動によって胸苦しさを覚えることがあります。人によっては、「胸が痛い」と表現する場合や、「胸がもやもやする」と表現する場合もあります。心臓が通常と違う不規則なリズムで鼓動することで胸に違和感が生じます。

息切れしやすくなる

心房細動が持続すると息切れを感じることがあります。動いたことで脈が早くなって息切れがする場合には、しっかりと休憩を取るようにして下さい。休憩しているにもかかわらず息切れが残る人は要注意です。後述する呼吸困難の一歩手前の状態である可能性があるので、医療機関を受診して下さい。

めまいがする

心房細動のある人がめまいを覚える場合は状況があまりよくありません。心房細動がひどくなると、心臓から全身に送られる血液量が低下します。その影響を受けて脳への血流が低下するとめまいを覚えます。

めまいが悪化すると意識がなくなることがあります。意識消失は時と場合によっては命を落としかねないので要注意です。めまいを自覚する場合には一度医療機関を受診して原因を調べてもらうようにして下さい。

3. 心房細動のある人にこんな症状が起こるのは危険な状態

心房細動の状況が悪化すると命を落とす危険があります。特に注意しなくてはならないのが、意識消失と呼吸困難です。これらの症状は心房細動が軽症のときには見られませんが、持続したり重症になったりすると見られるようになります。

意識消失(意識がなくなる)

意識消失はいろいろなことが原因となって起こります。不整脈によっても意識消失が起こることがあります。

【意識消失の原因の例】

一方で、一般的に心房細動は意識消失を起こしやすい不整脈ではありません。しかし、心房細動が持続する場合や脈の乱れが激しい場合には意識を失うことがあります。心房細動がある人に起こる意識消失は直ちに治療を始めたほうがよい状態です。すみやかに医療機関を受診して下さい。

呼吸困難

心房細動が原因で呼吸困難が持続する人は注意が必要です。心房細動によって呼吸困難が起こることは多くはなく、身体を動かしたときに息苦しく感じることはあっても、身体を休めているうちに息苦しさは改善します。

しかし、身体を休めても息苦しさが改善せず呼吸困難が続く人は心不全になっている可能性があります。心不全とは心臓の機能が低下して全身のバランスが崩れた状態のことです。(心不全について詳しく知りたい人はこちらのページを参考にして下さい。)全身のバランスが崩れて肺に水が溜まると呼吸困難になります。

心房細動が持続すると心臓に負担がかかるため、心不全になることがあります。そのため、心房細動になった人の一部は、状況が悪化して呼吸困難になります。心房細動と診断された場合には、悪化しないように正しく治療することが大切ですし、息が苦しい状態が長く続く場合には医療機関を受診するようにして下さい。

身体を動かしにくい、しゃべりにくい

心房細動のそのものの症状ではないですが、心房細動の人に「身体を動かしにくくなる」や「しゃべりにくくなる」といった症状が突然出ることがあります。これらは脳梗塞の症状です。心房細動が原因で脳梗塞になるときは、急に症状が現れることが特徴です。

脳梗塞はいろいろなことが原因となりますが、心房細動はその一つです。心房細動があると心臓内に血栓(血のかたまり)ができやすくなり、それが脳の血管まで飛んでいくと脳梗塞が起こります。

心房細動がある人が脳梗塞を起こす危険性は次のスコアリングで推測できます。

【CHADS2 score】

上のスコアの合計点数によって1年間で脳梗塞発症する確率は次のようになります。

【合計点による脳梗塞の年間発症率】

  • 合計0点:1.9%
  • 合計1点:2.8%
  • 合計2点:4.0%
  • 合計3点:5.9%
  • 合計4点:8.5%
  • 合計5点:12.5%
  • 合計6点:18.2%

一般的には、合計1点以上に該当する人は血をサラサラにする薬(抗凝固薬:ワーファリン、エリキュース®、イグザレルト®、プラザキサ®、リクシアナ®など)を飲むことが検討されます。もし心房細動に対する治療をすることになったら、毎日薬を飲む必要があるので、飲み忘れがないように注意して下さい。

【参考】

Progression to the Persistent Form in Asymptomatic Paroxysmal Atrial Fibrillation. Circ J. 2014;78(5):1121-6

Duration of device-detected subclinical atrial fibrillation and occurrence of stroke in ASSERT. Eur Heart J. 2017 May 1;38(17):1339-44

Asymptomatic Atrial Fibrillation: Clinical Correlates, Management, and Outcomes in the EORP-AF Pilot General Registry. Am J Med. 2015 May;128(5):509-18