[医師監修・作成]心房細動とはどんな病気か?原因、症状、検査、治療など | MEDLEY(メドレー)
しんぼうさいどう
心房細動
一定のリズムで拍動している心房がぶるぶると不規則に震えたような状態となることで生じる不整脈。血流が滞り心臓内に血栓を作ることで脳梗塞などの原因となることがある
18人の医師がチェック 143回の改訂 最終更新: 2021.02.22

心房細動とはどんな病気か?原因、症状、検査、治療など

心房細動は多くの人に起こりうる不整脈です。心房細動がある人は動悸を感じることが多いですが、発作によって意識を失うような人は危険ですので必ず医療機関にかかる必要があります。心房細動と言われた場合には、どんな検査や治療を受けることになるのでしょうか。

1. 心房細動では心臓で何が起こっている?

心房細動は不整脈の一種です。心臓の中でも心房という部位が原因となって起こります。心房細動のことを英語ではAtrial Fibrillationというため、これを略してAFと呼ばれることがあります。

心房細動はどうして起こるのでしょうか。心臓には定期的に鼓動を打つための仕組みがあります。まずはその仕組について説明します。

心臓が規則正しくリズムを刻むための仕組み

心臓には4つの部屋(右心房右心室左心房左心室)があります。その中の右心房には洞結節という部分があり、そこから一定のリズムで電気信号が起こっています。この信号は房室結節⇛ヒス束⇛左右の脚(左脚・右脚)⇛プルキンエ線維と順々に伝わっていき、最終的には心筋を収縮させます。これを心臓の電気伝導系といいます。

【心臓の電気伝導系の略図】

洞房結節の規則正しい電気刺激が順々に伝わっていく限り、心臓の鼓動は一定のリズムになります。しかし、何らかの理由で規則正しい伝導が伝わらなくなった場合には、心房細動などの不整脈が起こります。

心房細動で起こっていること

心房細動では右心房のあちらこちらで電気刺激が起こっています。その電気刺激は不規則でとても頻回であることが特徴です。それによって心房が不規則に細かく震えるように動きます。

もし、右心房からのとても頻回で不規則な電気刺激がすべて心室に影響すると、心室が不規則に震えてしまいます。心室は全身や肺に血液を送る役割を持っているため、心室が不規則に細かく震えて機能が落ちると非常に危険な状態になります。後述しますが、心室細動は心室が細かく不規則に震えるため非常に危険な不整脈になります。

しかし、心房細動は多くの場合で命の危険性はありません。というのも、心房の細かな電気刺激を房室結節がブロックして一部しか心室に伝えないようにできているため、心室は不規則ながら問題なく全身や肺に血液を送り出すことができるからです。

心房細動と心室細動の違い

心室細動は心房細動と名前は似ていますが、実際はかなり異なります。心室細動は非常に危険な不整脈です。心房細動によって心房が細かく不規則に震えても心室の機能は保たれますが、心室細動で心室自体が細かく震えると肺や全身への血流が著しく低下します。心室細動は早急に治療して全身への血流を回復しないとほとんどの場合で命を落とします。

【心房細動と心室細動の違い】

  心房細動 心室細動
異常の起こっている場所 心房 心室
命の危険度 ほとんどの場合で命の危険はない 早急に治療しないと命を落とす

心室細動が起こると数秒ほどで意識を失うため、心室細動を自力で治すことは不可能に近いです。そのため、誰かができるだけ早く治療(電気的除細動)を行う必要があります。

近年多くの場所に配置されているAEDという機械があります。付属している電極パッドを胸に装着することで心電図波形を解読し、心室細動であると判断されると電気的除細動を行ってくれます。全国のさまざまなところにAEDは配置されているので、心室細動を起こした人に素早く装着し、電気ショックによる除細動を行うようにして下さい。とはいえ、誰に心室細動が起こっているのかは簡単にはわかりにくいので、もし突然気を失って倒れた人がいたらAEDを取り出して付属品のパッドを胸に貼ってみるのが良いです。

2. 心房細動の原因には何がある?

心房細動の原因は心臓の電気伝導系の不調と心房における異常な電気刺激の発生です。電気伝導系が万全であれば、心房から多少の異常な電気刺激が起こっても正常な洞調律(洞結節から始まる正しい電気刺激による心臓の鼓動)が保たれます。一方で、電気伝導系に異常がある場合には、ちょっとした刺激で不整脈が出現します。電気伝導系が不完全なところに、心房で本来起こるべき部位とは違うところから電気刺激が生じると心房細動を起こします。

また、次のような病気がある場合には心房細動が起こりやすくなります。

生活習慣にも起こりやすくする要因があり、例えば喫煙やストレス、過労、睡眠不足なども心房細動を起こしやすくします。心房細動がある人はこのような身体に負担をかける生活習慣を避けるようにして下さい。

3. 心房細動で起こりやすい症状

心房細動で起こりやすい症状はいくつかあります。よくある症状は次のようなものになります。

  • 動悸がする
  • 脈がとぶ
  • 胸がなんだか苦しい
  • 息切れしやすくなる
  • めまいがする

これらの症状が続く人やしばしば感じられる人は一度検査してもらって下さい。心房細動による症状があるときに心電図検査を行えば、簡単に診断することが可能です。

また、心房細動の持病がある人に次のような症状が出ることがあります。

  • 休んでいても息が苦しい
  • 意識が朦朧とする
  • 身体が動かしづらい
  • しゃべりにくい

これらの症状は危険なサインです。心房細動の病状が悪化していることや合併症心不全脳梗塞など)が出現していることが疑われますので、必ず医療機関を受診するようにして下さい。

心房細動による症状について詳しく知りたい方はこちらを参考にして下さい。

4. 心房細動に対して行われる検査

心電図が疑われたときにはさまざまな検査が行われます。次に挙げるのがその代表的なものです。

  • 心電図検査(12誘導心電図ホルター型心電図)
  • 心臓エコー(超音波)検査
  • 心臓CT検査
  • 心臓MRI検査
  • 心臓電気生理学的検査(EPS)

中でも特に心電図検査(心臓内の微小な電気の流れを調べる検査)が重要です。心房細動は心臓を動かすために必要な電気回路の異常ですので、心電図検査を行うことで診断することができます。発作性心房細動という正常の洞調律と心房細動を交互に繰り返す状態では、一度の心電図検査では異常を見つけることができない場合がありますが、何度も12誘導心電図検査を行ったり、24時間装着型心電図検査(ホルター型心電図)を行ったりすることで、心房細動の存在を見つけることができます。どうしても不整脈の原因がわかりにくい場合や根治的な治療(カテーテルアブレーション)を行う場合には心臓電気生理学的検査が行われることがあります。

また、心臓エコー検査やCT検査、MRI検査などは主に心房細動に合併している病気の存在や心機能を調べるために行われます。

心房細動に対する検査について詳しく知りたい方はこちらを参考にして下さい。

5. 心房細動に対して行われる治療

心房細動の治療は薬を用いる治療と薬を用いない治療に大別できます。以下に治療法の概要を示します。

  • 薬物治療
    • レートコントロール(はやくなった脈を抑える治療)
    • リズムコントロール(不定期な脈を整える治療)
    • 抗凝固(血栓による合併症が起こらないようにする治療)
  • 非薬物治療
    • 電気的除細動
    • カテーテルアブレーション
    • ペースメーカー
    • 手術

上にあるように、心房細動の治療法はさまざまですが、患者さん一人ひとりの状況によって適したものが選ばれます。

心房細動に対する治療について詳しく知りたい方はこちらを参考にして下さい。

6. 心房細動に診療ガイドラインはあるのか

心房細動に関する診療ガイドラインは国内外に多く存在します。中でも有名なものは次になります。

【心房細動に関連するガイドライン

これらは医療現場の治療方針決定の場面で尊重されています。ガイドラインに従うことで治療の成功率が上がります。

一方で、医療に絶対解はないため、状況によってはガイドラインと多少異なる治療方針が選ばれることがあります。患者さんがガイドラインを全部把握することは現実的ではないです。しかし、自分の治療法がどうして選ばれたのかや自分の治療法にはどんな注意点があるのかについて主治医によく聞いておくことはとても大切です。病気を自分ごととして考えることで、納得のできる医療や後悔のない医療を受けることができるようになります。

7. 心房細動の人が気をつけるべき重大な病気

心房細動はよほど重症にならない限り命にかかわることはありません。しかし、ときに重篤な病気を引き起こすことがあるため注意が必要です。特に注意しなければならないのは、心不全脳梗塞です。次の段落からもう少し詳しく説明します。

心不全

心不全とは心臓の機能が低下して全身のバランスが崩れた状態のことを指します。心臓は全身に血液を送る役割を担っているので、心不全になると全身のさまざまな臓器が栄養不足になり機能が低下します。

心房細動では心臓が定期的な拍動を起こすことができなくなるため、心機能が低下し心不全になることがあります。そのため、心房細動を持っている人に心不全の症状が出てきた場合は要注意です。

心不全の症状】

  • 息苦しさ
  • 浮腫むくみ
  • 倦怠感(だるさ)
  • 手足の冷たさ
  • チアノーゼ

これらの症状が見られた場合には医療機関を受診することをおすすめします。

心不全についてもっと詳しく知りたい人は心不全の詳細情報を参考にして下さい。

脳梗塞

脳梗塞は脳の血管に血栓やコレステロールなどが詰まる病気です。脳の血管が詰まることで身体を動かすことやしゃべることに不自由が生じます。脳梗塞にはいろいろな種類がありますが、その一つに心臓の病気が原因となって起こるタイプ(心原性脳梗塞)があります。心原性脳梗塞のほとんどが心房細動によって起こることが分かっています。

心房細動では心臓が不規則に収縮し、心臓の一部で血液のうっ滞が起こります。うっ滞した血液は固まりやすい(血栓ができやすい)性質があるので、心臓内に血栓が生じることがあります。こうしてできた心臓内の血栓が血流に乗って脳の動脈へ飛んでいくと、脳血管を詰まらせてしまうことがあります。

心房細動がどの程度脳梗塞を起こしやすいかについて状況ごとに分類する方法にCHADS2スコアというものがあります。

【CHADS2 score】

スコアの内容 点数
C:うっ血性心不全 1点
H:高血圧症 1点
A:年齢(75歳以上) 1点
D:糖尿病 1点
S:脳梗塞TIA一過性脳虚血発作)の既往 2点

上のスコアの合計点数によって1年間で脳梗塞発症する確率は次のようになります。

  • 合計0点:1.9%
  • 合計1点:2.8%
  • 合計2点:4.0%
  • 合計3点:5.9%
  • 合計4点:8.5%
  • 合計5点:12.5%
  • 合計6点:18.2%

近年では、このスコアを軸として、冠動脈疾患の有無と性別も加えたCHA2DS2-VAScスコアというものが用いられることも多くなってきています。また、ATRIAと呼ばれるスコアのほうが、より正確に心房細動による脳梗塞のリスクを分類できるかもしれないという報告もあります。これらのスコアはかなり専門的な話になるため、自分で状況を把握するのは簡単ではありません。自分の心房細動はどういった状況で、どのくらい脳梗塞になりうるのかについて主治医に確認してみて下さい。

脳梗塞についてもっと詳しく知りたい人は脳梗塞の詳細記事を参考にして下さい。

【参考】

心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)

不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)

2014 AHA/ACC/HRS Guideline for the Management of Patients With Atrial Fibrillation

2016 ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation developed in collaboration with EACTS

Comparative Performance of ATRIA, CHADS2, and CHA2DS2-VASc Risk Scores Predicting Stroke in Patients With Atrial Fibrillation: Results From a National Primary Care Database. J Am Coll Cardiol. 2015 Oct 27;66(17):1851-9