帯状疱疹の治療期間はゾビラックス・バルトレックス・ファムビルを7日間飲む
帯状疱疹の治療期間はアシクロビルの飲み薬(商品名:ゾビラックス®など)で7-10日間です。バルトレックス®、ファムビル®では7日間です。重症の場合などでは長引きます。治療中の生活上の注意点とあわせて説明します。
目次
1. 帯状疱疹の治療期間は7-10日
帯状疱疹の治療期間として、原因の
帯状疱疹を治療しなければ、水ぶくれは7日ほどで自然に破れ、さらに7日ほどでかさぶたになります。かさぶたは数週間で跡を残さず消え、痛み・かゆみもなくなります。
治療する場合には、帯状疱疹の原因である
抗ヘルペスウイルス薬は帯状疱疹の
帯状疱疹に効く市販薬はない
帯状疱疹に市販薬は効きません。痛みやかゆみを感じても自分で薬を塗ったりしないでください。早めに皮膚科などの病院・クリニックで薬をもらってください。薬でウイルスの増殖を防ぐのが痛み・かゆみをなくす近道です。
帯状疱疹の飲み薬の種類と服用期間
帯状疱疹を抗ヘルペスウイルス薬で治療するとき、通常の治療期間は7日間から10日間です。よく使われる飲み薬の例を挙げて説明します。
- アシクロビル
- 治療期間は通常7日間から10日間
- 大人は1日5回飲む
- 1回に800mg(ゾビラックス錠400なら2錠)飲む
- 用量は年齢や
症状 により増減する
- 子どもは1日4回飲む
- 1回に体重1kgあたり20mg飲む
- 用量は1回に800mgまで
- 主な商品名:ゾビラックス®(錠、顆粒)
- その他
- アシクロビルの錠剤一覧はこちら
- アシクロビルの顆粒一覧はこちら
- アシクロビルのシロップ、ゼリー一覧はこちら
- ジェネリック医薬品の商品名
- アイラックス錠
- アシクロビン錠
- アシクロビン顆粒
- アシビル内服ゼリー
- アシロミン錠
- アストリックドライシロップ
- ビクロックスシロップ
- ビクロックス錠
- ビクロックス顆粒
- ビルヘキサル錠
- ほか「アシクロビル」という名前がついているもの
- バラシクロビル塩酸塩
- 治療期間は通常7日間
- 大人と体重40kg以上の子どもは1日に3回飲む
- 1回に1000mg(バルトレックス錠500なら2錠)飲む
- 腎障害のある子どもなどに対しては特に注意
- 主な商品名:バルトレックス®(錠、顆粒)
- その他
- ファムシクロビル
- 1日に3回飲む
- 1回に500mg(ファムビル®錠250mgなら2錠)飲む
- 子どもに対しては安全性が確立していない
- 主な商品名:ファムビル®錠
- その他
- ジェネリック医薬品はない
- 1日に3回飲む
- アメナメビル
- 商品名:アメナリーフ®錠200mg
- 成人で1日1回飲む
- 1回に400mg
薬の種類や全身の健康状態にもよりますが、ゾビラックスを使う場合、通常の治療期間は7-10日間です。ゾビラックスは通常大人で1日5回、子どもなら1日4回飲みます。
バルトレックス、ファムビルは1日3回、7日間飲むのが標準的です。
また、2017年7月に承認されたアメナメビル(商品名アメナリーフ®錠200mg)は、成人で1日1回400mgを原則として7日間飲む薬です。
帯状疱疹の塗り薬
抗ヘルペスウイルス薬の塗り薬は、帯状疱疹の症状がごく軽度の場合などに使われます。薬の例を挙げて説明します。
- ビダラビン軟膏の塗り薬
- 適量を1日1回から4回塗る
- 副作用にかゆみ・刺激感など
- 妊娠中は治療上必要な場合に限り使う
- 主な商品名:アラセナ-A軟膏
- 有効成分が同じアラセナ-Aクリームもある
- その他
- ジェネリック医薬品の商品名
- アラエビン軟膏
- アラーゼ軟膏
- シルベラン軟膏
- ほか「ビダラビン」という名前がついているもの
- 有効成分が同じカサールクリームもある
- アシクロビル軟膏の塗り薬
- 適量を1日数回塗る
- 添付文書上の効能効果に「帯状疱疹」はない
- 副作用にかゆみ・
発疹 など - 妊娠中は治療上必要な場合に限り使う
- 主な商品名:ゾビラックス軟膏
- 有効成分が同じゾビラックスクリームもある
- その他
- ジェネリック医薬品の商品名
- エアーナース軟膏
- ほか「アシクロビル」という名前がついているもの
- 有効成分が同じエアーナースクリーム、ビルヘキサルクリームもある
塗り薬でも治療期間は7日が目安になります。
市販の塗り薬で、帯状疱疹を効能・効果とするものはありません。市販薬で抗ヘルペス薬を成分として含む塗り薬もありますが、いずれも口唇ヘルペスの治療薬として発売されており、帯状疱疹に対して使うことは認可されていません。帯状疱疹は医療機関できちんと診断を受けて、必要であれば
なお、
帯状疱疹で抗ヘルペスウイルス薬以外の薬は使うか
帯状疱疹の治療で、激しい痛みを和らげるために痛み止めの薬などを一緒に使うことがあります。
主な薬の例を挙げます。
- NSAIDs(エヌセイズ)の飲み薬
- 頭痛・腰痛などでも使われる一般的な痛み止め
NSAIDs の例:ロキソプロフェンナトリウム- 商品名にロキソニン®など
- 市販薬のロキソニンSにも有効成分として使われている
- アセトアミノフェン
- NSAIDsに比べて安全性が高く、子どもや妊婦でも治療上必要な場合には使うことができる
- 商品名:カロナール®など
- NSAIDsの塗り薬
- ウフェナマート
- 商品名:コンベック®、フェナゾール®
- イブプロフェンピコナール
- 商品:スタデルム®、ベシカム®
- ベンダザック
- 商品名:ジルダザック®
- ウフェナマート
ビタミン 剤- 帯状疱疹で傷ついた神経の修復を促す
- 帯状疱疹後神経痛にも使う
- メコバラミン(商品名:メチコバール®)など
- ステロイド内服薬
抗菌薬 (抗生物質 )の塗り薬- 傷口から
細菌 が入って化膿 するのを防ぐ - ゲンタシン®軟膏など
- 傷口から
これらの薬は状況に合わせて処方されます。どんな薬も副作用が出ることがあるため、もし使用してから不調を感じた場合には医療機関を受診してください。
重い帯状疱疹には点滴による治療が必要
帯状疱疹が重症の場合や
使われる薬には以下のものがあります。
- アシクロビル
- 1日3回、8時間ごとに、7日間点滴する
- 用量は体重1kgあたり5mg
- 主な商品名:ゾビラックス点滴静注用250
- その他のアシクロビルの点滴一覧はこちらジェネリック医薬品の商品名
- アクチオス点滴
静注 用 - アクチダス点滴静注用
- アシクロビン点滴静注
- ナタジール点滴静注用
- ビクロックス点滴静注
- 点滴静注用ビルヘキサル
- アシクロビル点滴静注液 250mgバッグ100mL「アイロム」
- アクチオス点滴
- ほか「アシクロビル」という名前がついているもの
- ビダラビン
- 1日に体重1kgあたり5mgから10mgを5日間点滴する
- 用量は症状や腎障害の程度により増減する
- 子どもには必要最低限にとどめるなど慎重に使う
- 主な商品名:アラセナ-A点滴静注用
- その他のビダラビンの点滴一覧はこちら
- 薬価が違うジェネリック医薬品はない
2. 帯状疱疹の薬の副作用
抗ヘルペスウイルス薬の主な副作用は以下のものです。
- 消化器症状:腹痛、下痢、吐き気・嘔吐
- 精神神経症状:めまい、意識がぼんやりする
- 過敏症、アナフィラキシー(まれ)
- 腎障害(まれ)
これら以外にも副作用として出現しうるため、使用してから不調がみられた場合には注意が必要です。
帯状疱疹の薬を注意して使うべき人
特に
- 健康診断などにおいて腎臓が悪いと言われたことがある
透析 を受けている- 尿が出にくい
むくみ がある
上の中に該当するものがあれば、帯状疱疹の治療を受ける前に医師に伝えてください。
抗ヘルペスウイルス薬の飲み薬は、妊娠中は治療上必要な場合に限り使われます。また、抗ヘルペスウイルス薬を飲んでいる間は授乳ができません。若い女性が病院に行くときは、帯状疱疹に限らず、妊娠・授乳について忘れずに伝えてください。
抗ヘルペスウイルス薬の飲み合わせに注意するべき薬
以下の薬は抗ヘルペスウイルス薬と同時に使う場合に注意が必要です。
- 尿酸値を下げる薬:プロベネシド(商品名:ベネシッド®)
- 痛風予防などに使われる薬です。併用することで抗ヘルペスウイルス薬が正常に尿の中に排泄される作用が抑えられ、通常よりも抗ヘルペスウイルス薬の血液中の量が増えることにより、作用が過度に増強するなどの可能性が考えられます。
- 胃酸の分泌を抑える薬:シメチジン(商品名:タガメット®など)
- 胃潰瘍などの治療で使われています。併用することで抗ヘルペスウイルス薬の排泄が抑えられる可能性が考えられます。
- 免疫抑制薬:ミコフェノール酸モフェチル(商品名:セルセプト®など)
- 臓器移植後に使われます。併用することで抗ヘルペスウイルス薬とミコフェノール酸モフェチルの両方の排泄が抑えられる可能性が考えられます。
- 喘息の薬:テオフィリン(商品名:テオドール®、テオロング®、ユニフィル®など)
- 併用することでテオフィリンの血液中の量が増えるとされています。
帯状疱疹に限らず、病気の治療のときにはほかに飲んでいる薬や健康食品、サプリメントなどがあれば漏れなく医師に伝えることがとても大切です。
3. 帯状疱疹の治療費
帯状疱疹の治療のため病院・薬局で支払う費用の合計は、3割負担で5千円-1万円程度が目安となります。これは、初診料、再診料、検査料、7-10日の薬代を合わせた費用です(2024年8月現在)。
帯状疱疹の治療の中心になる抗ヘルペスウイルス薬は「高い」と言われていましたが、ジェネリック医薬品(後発品)の登場や薬価の値下げにより以前より安価になりました。ただし、医薬品間で薬価は異なります。実際にどの薬を使うかは薬価だけではなく、病気の状態や個々の医薬品の特徴によって決められます。そのため、薬の費用が気になる人は、診察した医師と相談してください。
4. 帯状疱疹の診療ガイドライン
帯状疱疹の治療について、
5. 実際に帯状疱疹を治療した医師からのコメント
協力医師からも、実際に経験した帯状疱疹の治療期間を教えてもらいました。
80歳女性。糖尿病以外特に大きな病気はなかった。久しぶりの旅行で疲れて帰ってきたあと、3日くらいして、右の首の後ろが少し痛い気がする。気のせいかとほっておいたらその2日後には同じ場所にぶつぶつができている。
経過と皮膚
やはり数週間程度で症状がよくなっていたようです。
6. 帯状疱疹の治療期間の生活上の注意
帯状疱疹の治療期間には、早く治すために身体を休めること、ほかの人にうつさないことに気を付けてください。特に、水ぶくれが破れている状態や水ぶくれの出ている範囲が広い場合には、ほかの人にうつす可能性が高いと考えてください。
帯状疱疹にかかると、入院治療が必要な特殊な場合以外、自宅で療養することになります。そこで、自宅で生活する際によくある疑問について答えます。
帯状疱疹はうつる?
帯状疱疹の原因の水痘帯状疱疹ウイルスは、
帯状疱疹のウイルスがうつるとどうなる?
水痘帯状疱疹ウイルスがうつると、まず水ぼうそうになります。ウイルスがうつってもいきなり帯状疱疹が出ることはありません。
水ぼうそうが治ったあと、ウイルスは体の中に何年も潜んでいて、何らかの原因で免疫力が落ちたときに帯状疱疹を起こすようになります。
帯状疱疹にかかりやすい人は?
帯状疱疹は50歳以上の人で特に多く発生します。元気な若い大人には帯状疱疹は少なく、極度の疲労やストレスが重なったとき、
帯状疱疹の水ぶくれはつぶさないほうがいい?
水ぶくれが潰れると、ウイルスが外に飛び出して周囲の人へ感染させるリスクが上がります。また、水ぶくれを潰すことで早く治るということもありませんので、帯状疱疹の水ぶくれをあえて潰す必要性はありません。皮膚を傷つけて感染が起こるのを避ける意味からも、水ぶくれは潰さないようにしてください。
運動はしてもいい?
動き回ると周囲にウイルスを広げるリスクが上がり、身体の疲労度も増してしまいます。帯状疱疹があるときの強い運動は望ましくありません。帯状疱疹があるときはなるべく家の中にいてください。
お風呂に入ってもいい?
帯状疱疹は、水ぶくれの部分から細菌が入ってきて悪化することがあります。そのため、水ぶくれの部分を清潔に保つ必要性があります。しかし、家族にウイルスを広げてしまうリスクを考えますと、水ぶくれのあるうちは入浴を避けてシャワーを用いるのが無難です。
洗濯物やスリッパで感染する?
洗濯物を同じ洗濯機に入れたことで感染する可能性は低いですが、帯状疱疹が出ている人の触ったものにはウイルスがいますので、可能であれば洗濯物やスリッパは別々にするほうが良いと思われます。
帯状疱疹にいい食べ物はある?
体力を回復できるように、食事を摂ることは大切です。食べやすいものを食べてください。帯状疱疹で食べてはいけない食べ物は特にありません。極度の疲労やストレスが帯状疱疹の原因のひとつなので、しっかり食べて体力を回復してください。
うつさない・うつらないために何をすればいい?
帯状疱疹は周りの人にうつる病気ですが、予防法があります。手洗い、マスクとワクチン接種が大切です。詳しくは「帯状疱疹がうつる期間はかさぶたになるまで」のページをご覧ください。
7. 帯状疱疹で入院する場合
帯状疱疹が出た人で、全身が衰弱していたり、免疫が弱っていたり、広範囲に皮疹が出ていたりするような重症の場合は、入院して抗ヘルペスウイルス薬の点滴による治療を行います。
帯状疱疹の点滴薬
帯状疱疹が重症の場合などで、入院して点滴に使う注射剤にはアシクロビル(主な商品名:ゾビラックス®点滴静注用)やビダラビン(主な商品名:アラセナ®A点滴静注用)があります。
帯状疱疹で入院した場合の治療期間
海外のデータですが、帯状疱疹を主な理由に入院した人の半数は入院期間が1日から8日の範囲だったという報告があります。全体としては、帯状疱疹で入院が必要なのは重症の場合なので、人によって治療期間がかなり違います。
関連記事:帯状疱疹の年齢ごとの頻度、入院期間は?統計から解析した結果(参照文献:BMC Infect Dis. 2016 Mar 1)
8. 帯状疱疹の後遺症
帯状疱疹が出たあと、皮疹が消えたにもかかわらず痛みが残ることがあります。帯状疱疹後神経痛(たいじょうほうしんごしんけいつう)と呼ばれる後遺症です。
帯状疱疹後神経痛が出ると、治療しても痛みがなかなか治まらず、治療期間が数年に及ぶことがあります。
帯状疱疹後神経痛の治療には普通の痛み止めの薬が効きにくいので、神経に働きかけるプレガバリン(商品名:リリカ®)やワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(商品名:ノイロトロピン®)などの薬のほか、
最初に行った病院で治療効果に満足できないときは、「ペインクリニックを紹介してください」と言ってみるのもひとつの方法です。
詳しくは「イオントフォレーシスなど、帯状疱疹後神経痛の治療を解説」で説明します。