2020.03.31 | コラム

感染症はどうやって起こるのか?新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をきっかけに感染症について考えてみる

感染症はどうやって起こるのかを考えていきます
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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が話題の中心にありますが、今回の状況を踏まえて感染症がどうやって起こるのかについてお話していきます。このコラムを通じて感染症について詳しくなることで、「新しい感染症を正しく怖がる」ことに繋がって欲しいという思いがあります。

1. そもそも感染症とは何なのか?

感染症とは何なのでしょう。今話題の新型コロナウイルス感染症はもちろん感染症ですし、インフルエンザ麻疹はしか)も感染症です。

感染症とは身体の外から微生物が入ってきて引き起こされた病気のことです。何を今さらと思う人も多いかもしれませんが、ここに大事なポイントがあるので説明します。

 

体外から微生物が入っただけでは感染は成立しない

感染症は「身体の外から微生物が入ってきて引き起こされた病気のこと」ですが、身体に微生物が入ってきたら感染が必ず起こるわけではありません。例えば、喉に溶連菌が入ってきたとしても溶連菌性咽頭炎にならない人がいますし、結核菌が入ってきたとしても結核にならない人はたくさんいることもわかっています。これはインフルエンザウイルスでも同じことが言えますし、おそらく新型コロナウイルスにおいても同様のことが起こりうると想定されます。

微生物が体内に入ってくると、組織(喉、腸、肺など)にくっついて定着しそこで炎症を起こします。この炎症が強くなると段々と症状が見られるようになり感染症となるわけです。

 

【微生物が感染症を起こすまでの流れ】

①組織への定着→②定着した部位での炎症→③症状の出現(感染症の成立)

ウイルスや細菌が身体に入って感染症が成立するまで

 

例えば、インフルエンザウイルスは喉の奥(咽頭)に侵入して定着し炎症を起こすことでインフルエンザが成立しますし、肺炎球菌が肺の組織に侵入し炎症を起こすと肺炎球菌性肺炎が成立します。新型コロナウイルス感染症COVID-19)は鼻の奥や喉の奥や気管、肺などで感染が成立しやすいことがわかっています。

一方で、人間の身体には簡単には感染症を起こさせないような仕組みがあります。これがいわゆる免疫システムの類のもので、侵入した微生物を異物として認識して排除するように働きます。ここではあまり詳しくは書きませんが、次のようなものが免疫システムを構成するものとして挙げられます。

 

【免疫システムを構成する主なもの】

  • 組織のバリア
  • 自然免疫
    • 顆粒球(好中球など)
    • マクロファージ
  • 獲得免疫
    • B細胞リンパ球(液性免疫)
    • T細胞性リンパ球(細胞性免疫)

 

大雑把に言うと、「組織のバリア」は微生物を臓器に侵入・定着させないようにするための仕組みで、「自然免疫」は侵入してきた微生物を異物として捕食したりしながら反射的に排除するようなものです。

一方で、「獲得免疫」は一度体外から入ってきた微生物を認識して、感染が長引いた時や同じ微生物が次に侵入してきた時に活かされる仕組みです。この免疫記憶には「抗体」という物質が重要な役割を果たしています。獲得免疫には微生物を捕食したマクロファージや樹状細胞なども絡んでおり、人間の免疫システムはとても入り組んだ様相を呈しながら身体を守っています。

 

どうなると感染症になってしまうのか

免疫システムが効果を発揮している限り、少々微生物が侵入してきても感染症にならずに済む場合が多いです。また、体内には常在菌という形で多くの細菌が住み着いており、これらが侵入微生物が増殖するのを邪魔してくれるというのも大事なポイントです。腸内フローラや善玉菌という言葉を聞いたことのある人もいると思いますが、腸内の常在菌バランスを保つことで消化管の感染症を予防してもらうのが狙いです。

しかし、入ってくる微生物の量が多い場合や免疫機能が低下している場合は、どうしても感染が成立しやすくなります。さらに、微生物によっては侵入しても感染症を起こさないタイプもあれば、少量が侵入しただけで感染症が起こるものもあるので、微生物の人体への毒性(専門的にはビルレンスといいます)も感染症が起こるかどうかに関わってきます。

まとめると感染症が起こりやすいの次のような場合になります。

 

【感染症が起こりやすい状態】

  1. 体内に入ってきた微生物の量が多い
  2. 免疫機能が低下している
  3. 侵入した微生物のビルレンスが高い

 

この3つのポイントを逆手に取ると感染が起こりにくくなる予防策に繋がります。詳しくは最後の章で説明しますので是非覚えてください。

 

2. 感染症は微生物と免疫システムとのバランスを考えることが重要

感染症は微生物によって起こりますが、免疫システムがどの程度効果的に機能しているのかにも大きく関係します。要は「体内に入ってきた微生物の勢いと免疫システムのバランスによって、感染が起こるのか起こらないのかが決まる」というわけです。

実はこれは感染症の発症のみならず、病状の進行程度や治り具合にも関連しています。つまり、微生物の勢いが免疫システムを上回っている場合には病気が進行してしまい、微生物の勢いよりも免疫システムのほうが上回っている場合には病状が快方に向かうことになります。風邪で受診したらお医者さんが「よく休むようにしてくださいね」と言うのには、この免疫システムを少しでも高めようという思いがあるのです。

 

完治とは何なのか?完治しないといけないのか?

「病気が完治した」という言葉を聞いたことあると思います。多くの人のイメージの通り、完治とは漢字の通り病気が完全に治ったことを指します。

ただし、ここで少し知っておいて欲しいことがあります。いろいろな病気が世の中に存在しますが、実は完治しない病気は結構多いのです。例えば肺がんは手術がうまくいって完全に切除できた場合には完治となりますが、関節リウマチ脳梗塞など完治が難しい病気はたくさんあります。感染症においても同じことが言えて、風邪急性上気道炎)の多くは完治しますが、HIV感染症は完治できないことで有名です。また、水痘水ぼうそう)のウイルスは症状が消えた後も体内に潜み続け、免疫システムが弱まると勢いを増して帯状疱疹を起こします。

このように完治できない病気が少なくないことは事実ですが、完治できないといけないわけではないということは忘れてはいけません。完治しなくてもきちんと病気をコントロールできていれば、天寿を全うできることも少なくないので、症状が起こらないように気をつけながら、身体に無理をかけないような生活を送ることで、病気と上手に付き合っていくことが出来ます。新型コロナウイルス感染症が完治するのか気になる人も多いと思いますが、まだ確定的なことを言えない状況です。ですが、少なくとも症状が改善して検査が2回陰性となって退院している人は多くおり、回復すれば今まで通りの日常生活を送れるようになることは間違いなさそうです。

 

3. どうやったら感染症になりにくくなるか

とはいえ予防できる感染症は予防するに越したことはありません。新型コロナウイルス感染症COVID-19)が問題となっている昨今で、みなさんは感染症について興味が深まっていることと思います。このコラムの最後に、「どうやったら感染症になりにくくなるのか」について考えてみたいと思います。

 

感染症が起こりにくい環境を作る

先ほど感染症が起こりやすい状態についてお話しました。感染の予防はこの状態にならないように心がけるのがポイントです。つまり、次のことを心がけるようにしてください。

 

【感染症にかからないようにするポイント】

  • 「体内に入ってくる微生物の量を減らすために」
    • 手洗いや手指消毒をする
    • マスクやうがいは明らかな効果がないものの、オプションとして考える
    • 咳のある人はマスクをして周囲に感染源を広げないようにする(咳エチケット)
    • 人混みには極力行かないようにする
  • 「免疫機能を低下させないために」
    • 十分な休息を取る
    • バランスの悪い食生活を避ける
    • 持病がある場合はきちんとコントロールすることを心がける
  • 「ビルレンスの高い微生物を侵入させないため」
    • 流行していると分かっている地域には行かないようにする
    • 発症者と濃厚接触しないようにする

 

これらを心がけても完全に感染症にならないようにすることは難しいですが、感染症になりにくくなるのは確かです。新型コロナウイルス感染症に際して専門家たちが繰り返し「手洗い(orアルコール消毒)と咳エチケットをしてください」と言っていた理由も理解しやすくなると思います。

 

期待されるワクチンについて

新型コロナウイルスに関連して、早急なワクチンの開発が求められています。一般的なワクチンに関して、今市場に出ているものは国が接種を推奨しているわけですし、感染症を専門とする医師を中心にほとんどの医師は接種を推奨しています。一方で、副反応の懸念からワクチンに対して否定的な意見を持っている人も少なくないと聞いています。確かにワクチンによって副反応が出現する可能性は少ないながらも存在するので、主張の内容は理解できます。しかし、「流行病においてワクチンがあるとないとでこうも状況が違うのか」という事実を今我々は目の当たりにしているわけです。

 

新型コロナウイルスに対して抗体を持っていない状態で対峙しているからこそ、我々はいま脅威にされされています。しかし、これはほぼ全ての感染症について同様に起こりうることで、インフルエンザについても同じことが言えますし、麻疹についても同じことが言えるわけです。極論を言うと、ワクチンがなければ人は感染症にかかることでしか抗体を作ることができません。抗体のないナイーブな人だらけの世界ではどんな状況になりうるか、医療者を含めた人類全員が再認識させられています。

おそらく多くの人がこの状況に対して恐怖を感じており、だからこそ新型コロナウイルスに対するワクチンの誕生を期待しているのではないでしょうか。新型コロナウイルス感染症に対するワクチンは早くも中国や米国で早くも実証段階に入ったという話が出ていますが、安全性を担保しつつできるだけ早く完成に至ることを期待しましょう。そして、それまでは罹患する人が増えないように日常の中でできることを凡事徹底していく気持ちが大切です。

 

きっと僕らは医療者も非医療者も、この試練を通して、感染予防のあり方やワクチンの重要性の理解を深めていくことができると思っています。個人の努力で感染症を打破することは難しいですが、みんなの努力で難局を乗り越ええることはできるはずです。そして、この経験は次の新たな感染症の出現の場面に活かされることでしょう。

執筆者

園田 唯

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。