コロナワクチンの副反応がツラい… ロキソニンやカロナール(アセトアミノフェン)、イブプロフェンを使ってもOK?
5-6月にかけてコロナワクチンの接種が急激に加速しています。菅総理は「10月から11月にかけて希望者全員への接種を実現したい」と述べており、若い人にワクチンの順番が回ってくるのもそう先のことではなさそうです。
ワクチンの効果については、これまで素晴らしいデータが報告されています[1]。日本で現状最も広く使われているファイザー社製のワクチン(コミナティ®)は約95%の
先行してワクチンを接種している米国などでは、次第にマスクの着用なしで、従来の生活を取り戻しつつあります。
このように効果抜群のワクチンですが、副反応が気になるところかもしれません。重大な副反応は極めてまれであるものの、発熱・だるさ・頭痛・筋肉痛などの副反応はかなりの高頻度で出現します。
こうしたツラい副反応があるときに、
「ロキソニン®などの解熱鎮痛薬を飲んで大丈夫? 変な副作用が起きないか? ワクチンの効果が弱まったりしないか?」
という心配の声をよく聞きます。
そこでこのコラムでは、ワクチン接種の際に解熱鎮痛薬を飲んでよいかどうか、現状の知見を解説します。
*本コラムは2021年6月14日現在の情報に基づいています。
1. よくある副反応はどんなもの?
コロナワクチンにはさまざまな種類があり、ワクチンによって出やすい副反応が異なります。以下では、日本で最も広く使われるファイザー社製ワクチンのデータを中心に解説します。なお、ファイザー社製のものに次いで今後広く使われる予定のモデルナ社製ワクチンは、ファイザー社製と同じmRNAワクチンと呼ばれるタイプです。そのため、副反応もおおむね似た傾向にあります。
ファイザー社製ワクチンは基本的に3週間隔(モデルナ社製は4週間隔)で2回の接種を行います(予約の関係などで決められた間隔で打つことができない場合には、ファイザー社製は3-6週、モデルナ社製は4-6週の間をあけて打つことが望ましいです[2])。
このうち、特に2回目の接種翌日には何らかの副反応を自覚する人が少なくありません。ほとんどの人は数日以内には回復するものの、2回目の接種翌日には大事な用事を入れないほうが無難かもしれません。
【国内におけるファイザー社ワクチン(コミナティ®️)で見られる主な副反応の頻度】
1回目の接種後 | 2回目の接種後 | |
接種部位の痛みや腫れ等 | 92.8% | 91.6% |
23.2% | 69.5% | |
頭痛 | 21.4% | 53.6% |
37.5℃以上の発熱 | 3.3% | 38.5% |
厚生労働省:新型コロナワクチンの接種後の健康状況調査より(2021.6.14閲覧)
なお、上記の副反応は、若い世代の方が出やすい傾向にあります。
先行してワクチンを接種した医療従事者も、同じ部署の人はなるべく同日にまとめて打たないなどの工夫をしていました。これは、同部署の人が接種翌日に一斉に体調不良で欠勤してしまうと困るからです。
2. ワクチン接種の際に解熱鎮痛薬を併用してよい?
さて、ここからが本題です。上記のように高頻度で発熱、接種部位の痛み、頭痛などが出るならば、解熱鎮痛薬を使おうと思う人も多いはずです。
解熱鎮痛薬とは、熱を下げて、痛みを抑えてくれる薬です。解熱作用と鎮痛作用を併せもつ薬が多いので、解熱鎮痛薬と呼ばれます。主な薬として以下のようなものがあります。
【主な解熱鎮痛薬の成分】
- アセトアミノフェン(処方薬:カロナール®、コカール® など、市販薬:タイレノール®A など)
- イブプロフェン(処方薬:ブルフェン® など、市販薬:イブ®️、リングル®︎アイビーなど)
- ロキソプロフェン(処方薬:ロキソニン® など、市販薬:ロキソニン®︎S、ロキソプロフェン など)
- アスピリン(処方薬:アスピリン、バイアスピリン®︎ など、市販薬:バイエルアスピリン®︎、バファリンA など)
効き目としては一般的に「アセトアミノフェン < イブプロフェン < ロキソプロフェン」と言われています。いずれも処方箋なしで買える薬ではありますが、肝臓・胃腸・腎臓が悪い人や、妊娠中・授乳中などの人はお医者さんと相談してから使う必要があります。
市販の風邪薬はさまざまな成分が配合されているため純粋な解熱鎮痛薬は少ないですが、多くの風邪薬や痛み止めには上記のような成分が含まれています。購入の際にはパッケージに記載された「成分」をチェックするか、薬剤師さんに相談するようにしてください。
解熱鎮痛薬の安全性について
解熱鎮痛薬の安全性については、ワクチンを接種したからといって変わるとは報告されていません。「ワクチンとの相互作用で変な
解熱鎮痛薬がワクチンの効果に与える影響について
次に、効果の面についてです。解熱鎮痛薬を使うとワクチンの効果が弱まることはありえるのでしょうか。実は解熱鎮痛薬が体内の
こうした報告はコロナワクチンのデータではないですし、子どもでのデータが主体だったりするので、コロナワクチンでの議論にそのまま当てはめることはできません。しかし、コロナ以前の一般論にはなりますが、世界保健機構(WHO)や米国疾病管理予防センター(CDC)はワクチン接種の前に予防的に、あるいは当日などに解熱鎮痛薬を飲むことを推奨していませんでした[5]。
一方で、コロナワクチンについては解熱鎮痛薬を併用しても十分な
副反応が強めに出ているのに解熱鎮痛薬を使わないのはツラいですし、副反応を恐れてワクチン接種を見合わせてしまうのは本末転倒です。そのため、症状がツラい人は解熱鎮痛薬を飲むのが無難と筆者は考えています。
ただし、ワクチン接種の前から予防的に服用するような使い方は推奨されておらず、あくまでツラい症状が出たときだけにするべきです[6]。
3. 筆者のワクチン体験談
参考までに筆者のワクチン接種体験談を簡単に紹介します。
筆者は医療従事者なので、3月に2回のワクチン接種を受けました。1回目の接種時は、接種した左肩がなんとなく重だるい程度で、目立った症状は出ませんでした。
2回目の接種時には、接種翌日に37℃強の微熱と軽い頭痛が出ました。手持ちのロキソニンを使おうかとも思いましたが、それほど強い症状ではなく休日だったので、薬は使わないでよく寝ることにしました。そうすると、接種翌々日にはすっかり元気になりました。
大した症状でもないのにワクチンの効果が少しでも弱くなると悔しいので、筆者は結局最後まで解熱鎮痛薬を使いませんでした。ただし、熱が38℃以上あったり、もう少し頭痛が強かったら、躊躇なく解熱鎮痛薬を使っていたと思います。くどいですが、解熱鎮痛薬を使うかどうかは、症状のツラさとの兼ね合いで考えるようにしてください。
お医者さんでも解熱鎮痛薬を使って乗り切った人はとても多いので、そうした体験談も読んでみたい人はぜひ以下のコラムも参考にしてください。
- 「2回目は高熱が出たけどカロナールを服用したら大丈夫だった」新型コロナワクチンを体験した医師が思う皆さんに伝えておきたい心構え
- 2回目の副反応がちょっと辛かった… 新型コロナワクチン体験記ー内科医の場合
4. まとめ
ここまでコロナワクチンと解熱鎮痛薬の関係を中心に解説しました。要点をまとめると以下の通りです。
【要点のまとめ】
- コロナワクチンは2回目の接種翌日に発熱、頭痛、だるさなどの副反応が出やすい
- 解熱鎮痛薬がワクチンの効果を弱める可能性は否定できないが、大した影響ではないと考えられるため、副反応がツラい人は飲んでよい
- ワクチン接種前から予防的に解熱鎮痛薬を飲むことは推奨できない
多くの人がコロナワクチンに対する理解を深めて接種が進み、活気ある日常が早く戻ることを心から願っています。
執筆者
1. Fernando P et al. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. N Engl J Med 2020; 383:2603-15.
2. Centers for Disease Control and Prevention: Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine Questions and Moderna COVID-19 Vaccine Questions. 2021.6.14.閲覧
3. Prymula R et al. Effect of prophylactic acetaminophen administration at time of vaccination on febrile reactions and antibody responses in children: two open-label, randomised controlled trials. Lancet 2009; 374(9698):1339-50.
4. Mahyar E et al. Should Antipyretics Be Used to Relieve Acute Adverse Events Related to COVID-19 Vaccines? Chest 2021; 159(6):2171-2.
5. CDC General Best Practice Guidelines for Immunization: Best Practices Guidance of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP). 2021.6.14.閲覧
6. 厚生労働省:新型コロナワクチンQ&A 2021.6.14.閲覧
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。