高血圧の人はコロナワクチンを打ってもよい? いや打ったほうがよい?
2月から医療従事者への新型コロナワクチン接種が始まり、いよいよそれ以外の人たちにも接種の順番が回ってくるようになりました。
しかし、「持病がある人やアレルギーのある人は接種の前に医師に相談してください」というアナウンスを耳にすることがあります。そのたびに、自分はワクチンを打ってよいのか不安な気持ちになる人もいると思います。
持病として、高血圧はとても多い病気です。血圧が高いと言われている人、血圧を下げる薬を飲んでいる人などは、
「高血圧だけれどもワクチンを打って大丈夫なのか? 打ったほうがよいのか?」
と心配しているかもしれません。
このコラムでは、国内外で既に集まっている多くのデータに基づき、高血圧の人が新型コロナワクチンについて知っておくとよいことを解説します。(喘息とコロナワクチンについてはこちらで解説しています。)
*本コラムは2021年4月20日現在の情報に基づいています。
1. 高血圧の人はワクチンの副反応(副作用)が出やすいのか
高血圧の人でワクチンの副反応(副作用)*が起こりやすい、というデータはありません。少なくとも日本で現在普及しているファイザー社製の新型コロナワクチンについて、高血圧だから特に副反応に注意するという必要はないと言えます[1]。
ただし、副反応そのものが出ないわけではありません。接種部位の局所反応(痛み、腫れ、赤みなど)や、全身反応(だるさ、頭痛、発熱など)は高血圧がない人と同様の頻度で出現すると考えられます。
ファイザー社製のワクチンは一般的に3週間隔で2回の接種を行います。そのうち、特に2回目接種の翌日は多くの人が何らかの副反応を自覚します[2]。ほとんどの人は数日以内には回復するものの、2回目の接種翌日には大事な用事を入れないほうが無難かもしれません。
先行してワクチンを接種している医療機関でも、同じ部署の人はなるべく同日にまとめて打たないなどの工夫をしています。同部署の人が接種翌日に一斉にダウンしてしまうと業務上困るからです。
*ワクチン接種の場合「副作用」ではなく、正確には「副反応」と呼びます。
2. 高血圧の薬を飲んでいても問題ないのか
血圧を下げる薬で、ワクチンとの相互作用が指摘されているものは現在ありません。
接種時の予診票に持病や治療内容を記入する欄があるので、最終的なワクチン接種の可否は予診票を確認したお医者さんが判断します。しかし、何かの薬を飲んでいるという理由だけでワクチン接種を差し控えるよう勧められることは通常ありません。
3. 高血圧の人はワクチンを打ったほうがよいのか
高血圧の人は特にワクチン接種を積極的に検討するよう勧められます。日本の基準では「慢性の心臓病(高血圧を含む)」で通院/入院していれば、
このように高血圧の人が優先される理由として、高血圧の人は新型コロナに感染した時の危険性が健康な人よりも高いことが挙げられます。さまざまな報告がありますが、高血圧の人が新型コロナにかかるとさらに血圧が高まり、心筋梗塞などの心血管トラブルも起きやすいと報告されています[3]。
また、高血圧の人は肥満や糖尿病、睡眠時無呼吸症候群(SAS)など他の病気を
4. まとめ
高血圧の人も問題なくワクチン接種が受けられること、むしろワクチン接種の必要性が高いことを説明しました。
2回目のワクチン接種後は、接種翌日を中心に多くの人が体調不良を自覚します。医療を受けて体調が悪化するという経験を普段はしないため、不安に思う人は少なくないと思います。高血圧などの持病がある人ではなおさらです。
しかし、新型コロナ感染で重大な
未知のものに対する不安は誰もが感じるものですが、この1年間で明らかになってきた事実を先入観なく受け入れる姿勢は、自分自身や社会をより良い方向に導いてくれます。ワクチン接種のメリットとデメリットを正しく天秤にかけて判断し、新型コロナの脅威から解放された日々が早く訪れることを心から願っています。
執筆者
1. Fernando P et al. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. N Engl J Med 2020; 383: 2603-15.
2. 厚生労働省「新型コロナワクチンの接種後の健康状況調査」(2021.4.20閲覧)
3. Vanessa DJ et al. COVID-19 and hypertension: Is there a role for dsDNA and activation of Toll-like receptor 3? Vascul Pharmacol 2021; Apr 9; Online ahead of print.
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。