2018.05.09 | ニュース

椎間板ヘルニアの薬ほか、新薬5製品はどんな薬?

臨床試験のデータとともに

椎間板ヘルニアの薬ほか、新薬5製品はどんな薬?の写真

3月23日に、厚生労働省が新薬16製品を承認しました。そのうち5製品のヘルニコア、アジレクト、シベクトロ、プレバイミス、シングリックスの特徴などを紹介します。

ヘルニコアとは?

コンドリアーゼ(商品名ヘルニコア®)は、「保存療法で十分な改善が得られない後縦靱帯下脱出型の腰椎椎間板ヘルニア」を効能・効果として承認されました。

背骨(脊椎)は椎間板と交互に積み重なっていて、脊髄などの重要な神経とも隣り合っています。椎間板ヘルニアは、椎間板の中心部分にある髄核などが本来の位置から飛び出した状態です。周りの神経などが椎間板ヘルニアの影響を受けることにより、足のしびれ・痛みなどの症状が現れます。

コンドリアーゼは髄核を構成するグリコサミノグリカンを分解する酵素です。椎間板に注射すると、コンドリアーゼはグリコサミノグリカンを分解することによって髄核を小さくし、神経への影響を減らします。

臨床試験では、コンドリアーゼと偽薬を比較して、使用後13週時点での足の痛みの変化を調べました。痛みの変化の基準として、患者が自己申告で痛みの強さを0 mm(痛みなし)から100 mm(これまでに感じた最大の痛み)で表現したもの(VAS)を使いました。

偽薬を使ったグループでは痛みが平均で34.3mm軽くなりましたが、コンドリアーゼのグループでは平均で49.5mm軽くなり、コンドリアーゼのほうが大きい改善となりました

副作用については、ほかの臨床試験のデータとも合わせると、53.3%の人に何らかの副作用が現れました。主な副作用は腰痛などでした。

 

アジレクトとは?

ラサギリン(商品名アジレクト®)は、パーキンソン病治療薬です。作用のしくみからMAO-B阻害薬に分類されます。パーキンソン病の治療で特に重要な薬がレボドパ製剤ですが、ラサギリンはレボドパ製剤を一緒に使う場合にも使わない場合にも有効とする研究結果があります。

レボドパ製剤を使っていない人を対象とした臨床試験で、ラサギリンまたは偽薬を使い、治療開始から26週で運動症状のスコア(MDS-UPDRS Part II+Part III合計スコア)の変化を調べたところ、偽薬を使ったグループと比べてラサギリンを使ったグループのほうが改善していました

レボドパ製剤を使っている人を対象とした臨床試験では、ラサギリンまたは偽薬を使い、1日あたりで薬の効果が失われている時間の変化量を比較したところ、偽薬を使ったグループに比べてラサギリンを使ったグループのほうが短縮がありました

副作用については、集計方法によって割合が違いますが、何らかの副作用が出た人が49.7%とするデータ、55.0%とするデータが添付文書に記載されています。主な副作用はジスキネジア(意思と関係なく身体が動く症状の一種)、転倒などでした。

 

シベクトロとは?

テジゾリド(商品名シベクトロ®)は抗菌薬です。効能・効果は、「深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、びらん・潰瘍の二次感染」のうち、原因となっているのが「テジゾリドに感性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)」である場合として承認されました。

審査報告書に記載されている臨床試験のうちひとつは、12歳以上の患者を対象とし、テジゾリドとリネゾリド(既存の抗菌薬)を比較しました。この試験は原因の細菌が不明な段階でテジゾリドまたはリネゾリドを使い始めた時の結果を比較するものでしたが、あとで原因がMRSAだったと判明した人に絞って比較すると、一定基準によって有効と判定された人の割合は、テジゾリドで81.1%、リネゾリドで75.0%となり、テジゾリドが劣らない結果でした。

副作用が現れた人の割合は、集計範囲によって22.4%、30.1%といった結果が記載されています。主な副作用は吐き気、嘔吐、下痢、頭痛などでした。

 

プレバイミスとは?

レテルモビル(商品名プレバイミス®)は、「同種造血幹細胞移植患者におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制」を効能・効果として承認されました。

同種造血幹細胞移植は、血液由来のがんなどに対する治療として行われる場合があります。この治療は大量の抗がん剤などを使うため、治療の副作用として、一時的に身体がウイルスなどの感染に弱い状態になります。そのためサイトメガロウイルス感染症にも注意が必要となります。

臨床試験では、移植後に(サイトメガロウイルスが感染しているかどうかを確認することなく)レテルモビルを使用するグループと偽薬を使用するグループを比較しました。調査期間内に一定基準を満たすサイトメガロウイルス感染症が見つかった人の割合は、レテルモビルのグループで37.5%、偽薬のグループで60.6%となり、レテルモビルを使ったほうが少なくなりました

副作用は16.9%の人に現れました。主な副作用は吐き気、下痢、嘔吐でした。

 

シングリックスとは?

シングリックス®は、帯状疱疹を予防するワクチンです。50歳以上の人が2回の注射を2か月間隔で打って使います。従来、帯状疱疹の予防に使えるワクチンは、ウイルスそのものをワクチンとしたもの(生ワクチン)でしたが、シングリックス®は遺伝子組み換え技術によって作られたもので、ウイルスそのものは含んでいません。

臨床試験では、偽薬を注射した7,415人中210人に帯状疱疹が現れたのに対して、シングリックス®を注射した人では7,344人中6人に帯状疱疹が現れました。調査した期間を加味して換算すると発症予防効果は97.16%となりました。

副反応(副作用)として、注射した場所の痛みが1回接種後の71.6%、2回接種後の66.7%の人に現れたほか、多かった副反応は注射した場所の赤み・腫れ、筋肉痛、疲労、頭痛、悪寒、発熱、胃腸障害などでした。

 

まとめ

3月23日に承認された新薬16製品のうち5製品を紹介しました。ほかの製品も別に紹介する予定です。

関連記事:糖尿病の薬ほか、新薬6製品はどんな薬?

新しく作られた薬剤が加わることにより、治療の選択肢が広がります。臨床試験のデータを参考に、ほかの治療とメリットやデメリットを比べることで、自分に合った治療になるかどうかを考えることができます。

執筆者

MEDLEY編集部

参考文献

ヘルニコア椎間板注用1.25単位 添付文書、アジレクト錠1mg/アジレクト錠0.5mg 添付文書、シベクトロ錠200mg、同点滴静注用200mg 審査報告書、プレバイミス錠240mg 添付文書、プレバイミス点滴静注240mg 添付文書、シングリックス筋注用 審査報告書

 

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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