2020.09.28 | コラム

ソビラックス、バルトレックス、カチリなど・・・水痘(水疱瘡、みずぼうそう)に使う薬剤について解説

水疱瘡治療薬

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1.水痘(みずほうそう)とは?
2.水痘に使う抗ウイルス薬(ソビラックス、バルトレックスなど)について
3.塗り薬「カチリ」について

水痘(みずぼうそう)はヘルペスウイルスの一つである水痘帯状疱疹ウイルスによって発症する感染症です。多くの場合、幼少期に感染しますが成人になってから感染する場合もあります。ここでは水痘(みずぼうそう)の治療薬について解説します。

◆ 水痘(みずぼうそう)とは?

水痘(みずぼうそう)はウイルスが原因で全身に水ぶくれを主体とする発疹と発熱などが主な症状としてあらわれる感染症です。初めて水痘帯状疱疹ウイルス(ヘルペスウイルスの一つ)に感染することで発症し、多くは小児の頃に感染しますが、成人になってから感染する場合もあります。またこのウイルスは人から人へ感染し、空気中のウイルスを吸い込むことでも感染します。

幼少期の水痘は症状が軽度であることも多く、その場合は水ぶくれに対して塗り薬、痒みに対して痒み止め、発熱に対しては解熱薬といったように対症療法が選択される場合もあります。幼少期に比べある程度年齢を重ねた段階での感染などにおいて、場合によっては重症化することがありヘルペスウイルスに対して抗ウイルス薬を使用することもあります。

 

◆ 水痘に使う抗ウイルス薬について

水痘治療に使う主な抗ウイルス薬としてはアシクロビル(主な商品名:ゾビラックス® )、バラシクロビル塩酸塩(主な商品名:バルトレックス® )があります。(なお、水痘帯状疱疹ウイルスなどへの抗ウイルス薬としては、ファムシクロビル(主な商品名:ファムビル®)やアメナメビル(商品名:アメナリーフ® )もあります。2020年9月時点で、ファムシクロビルは主に単純疱疹と帯状疱疹の治療薬として、アメナメビルは主に帯状疱疹の治療薬として使われています)

ウイルスが増殖するためには遺伝情報などを含むDNAの複製が必要となります。DNAを複製する過程で必要な酵素にDNAポリメラーゼがありアシクロビルはこの酵素に作用することでDNA複製を阻害します。もう少し詳しく説明するとアシクロビル(正確には体内でリン酸化された状態のアシクロビル三リン酸)がDNAポリメラーゼによってウイルスDNAに取り込まれ、これによりDNA鎖の伸長が停止することでDNA複製が阻害されウイルス増殖が抑えられます。

アシクロビル製剤には錠剤や散剤などがありますが、水痘に限ってみれば対象は小児であることが多いこともあり散剤(製剤例:ゾビラックス®顆粒40% など)がよく使われます。水痘治療でアシクロビルを使う場合「通常、小児には体重1kg当たりアシクロビルとして1回20mg、1日4回服用」させます。ここでややネックになるのが「1日4回」という服用回数かもしれません。アシクロビル製剤は基本的に食事の有無に関わらず服用可能であり、水痘感染時に食欲低下がおこった場合でも食事の有無における服用への影響はさほどありません。しかし「1日4回」の服用というのはなかなか難儀かもしれませんし、もしも散剤が苦手な場合などでは更に困難になる可能性もあります。

水痘自体が人から人へ感染する疾患ということもあり、感染拡大を防ぐ観点などからも抗ウイルス薬は指示された回数・処方された日数を適切に服用することが重要になってきます。そこでアシクロビルを元に薬剤の吸収などを改善させた薬剤がバラシクロビル塩酸塩になります。

バラシクロビル塩酸塩は服用後に速やかに消化管から吸収され、その後アシクロビルに変換され抗ウイルス作用をあらわす薬剤です。体内への吸収効率が良いなどの理由から、バラシクロビル塩酸塩の水痘治療における服用回数は通常「1日3回」となっていて、アシクロビル製剤より1回服用回数が少なくて済みます。

アシクロビル製剤にも散剤に甘みを加えたりすることによって飲みやすくする工夫を施した薬(製剤例:アシクロビルDS80%「NK」(旧販売名:アストリック®ドライシロップ80%)など)などもあり、一長一短がありますが、服用回数が少なくて済むことは「適切な服用」という点を考えるとメリットとなります。(アシクロビル、バラシクロビル塩酸塩共に、水痘治療以外の目的で使用する場合や腎機能の低下している場合などでは1日の服用回数などが異なる場合もあります)

アシクロビル、バラシクロビル塩酸塩は共に比較的安全性が高い薬剤とされていますが、注意すべき副作用として吐き気・下痢・腹痛などの消化器症状や発疹などの過敏症、腎障害や排尿障害などが頻度はまれですが報告されています。また、意識低下やめまいなどの精神神経系症状も頻度はまれですが報告されていて注意が必要となっています。

 

◆ 塗り薬「カチリ」に関して

水痘に使う薬剤は抗ウイルス薬の他、痒みがある場合は抗ヒスタミン薬、発熱に対しては解熱薬を使う場合もあります。また水痘の水ぶくれに対してよく使われる「カチリ」という塗り薬があります。

「カチリ」の正式名称はフェノール・亜鉛華リニメントと言って、フェノールの防腐・消毒・鎮痒作用と酸化亜鉛の収れん(タンパク質変性などにより組織や血管を縮め鎮痛、止血作用などをあらわす)作用や消炎作用などの効果が期待できる塗り薬です。また皮膚に塗った後、水分が蒸発し薄い被膜を形成することで皮膚の保護作用もあらわします。本剤はドロッとしたのり状の塗り薬で水ぶくれに塗ると薄い被膜ができ、再度塗る場合はその被膜の上から重ねて塗布します。注意すべきこととしては、頻度は非常に稀ですが使用部位の過敏症などがあります。また粘膜や傷がある部分などに付着すると刺激感などがあらわれやすいため注意が必要です。

 

ここでは主に水痘(みずぼうそう)の治療薬について紹介してきました。水痘帯状疱疹ウイルスに一度感染すると水痘が治ってもウイルス自体は神経(神経節)に潜伏し続けます。過労やストレスなどで免疫力が低下するとウイルスが再び活性化し皮膚に痛みなどを伴う帯のような発疹があらわれます。これが帯状疱疹であり、水痘帯状疱疹ウイルスがやっかいな理由の一つになっています。

水痘治療において抗ウイルス薬の使用開始時期については発病初期に近いほど効果が期待でき皮疹出現後、通常3日以内に開始することとされています。また帯状疱疹においても発症からできるだけ早めに治療を行うことが原則とされています。過去に水痘にかかった経験がある場合において、帯状の湿疹があらわれた時などは特に要注意となり皮膚科などへの速やかな受診を考慮することが大切です。

 

*2016年4月6日に配信された記事を2020年9月28日に更新しました。 

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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