たいじょうほうしん
帯状疱疹
水ぼうそうを起こすウイルスの感染が原因。身体の一部に、帯のように痛みのある赤いぶつぶつができる
22人の医師がチェック 205回の改訂 最終更新: 2024.10.25

つづらごは帯状疱疹(たいじょうほうしん)の別名。原因はウイルス

帯状疱疹(たいじょうほうしん)は皮膚に痛みを伴う水ぶくれができる病気です。方言で「つづらご」と呼ぶ地方もあります。水ぼうそうと同じウイルスが原因です。何度も再発することがあり、免疫が弱っているときや妊娠中は特に注意が必要です。

1. つづらご(帯状疱疹)とは?

つづらご(帯状疱疹)とは、痛み水ぶくれなどの皮疹(ひしん、皮膚の症状)を特徴とする皮膚の病気です。

水痘帯状疱疹ウイルスによる感染症で、50歳以上の人に特に多く発症します。重症であっても皮膚科の病院で飲み薬などを使って治せるため、死ぬ病気ではありませんが、後遺症として数年間痛みが続くことがあります。

つづらご(帯状疱疹)の皮疹は一か所に集まり、広範囲には出現しないことがほとんどです。身体の右か左の片側、それも細長い帯のような形に皮疹が広がることが多いので「帯状」という名前があります。「疱疹」は水ぶくれのことです。

2. なぜ帯状疱疹を「つづらご」と言う?

画像:ヒヨドリジョウゴ(つづらご)の実の写真。見た目が似ている帯状疱疹を「つづらご」と呼ぶ地方がある。

(C) harum.koh 2015CC BY-SA 2.0

東北から北関東地方の方言で、帯状疱疹を「つづらご」と呼ぶ地域があります。由来はつづらご(ヒヨドリジョウゴ)という植物と思われます。「つづらごの実のなり方が帯状疱疹に似ていることから」、「つづらごの実を漬けたものが帯状疱疹の民間療法として使われていたことから」などの諸説があります。

3. つづらご(帯状疱疹)の症状は?

つづらご(帯状疱疹)の症状は痛みかゆみで始まり、次いで皮膚の赤み水ぶくれかさぶたへと変化していきます。

知らないと虫刺されやかぶれと間違いやすいのですが、次の特徴に注目することで見分けられます。

  • つづらご(帯状疱疹)は痛み・かゆみが出たあとに見た目の変化が出る
  • つづらご(帯状疱疹)の症状は体の左右どちらか片側に出る
  • つづらご(帯状疱疹)の症状は細長い帯のような形に集まって出る
  • つづらご(帯状疱疹)の症状は2か所の離れた場所には出ることはほとんどない

つづらご(帯状疱疹)の初期症状は痛み・かゆみ

つづらご(帯状疱疹)という病気では最初にかゆみとピリピリ・チクチクした痛みの症状がみられます。

数日から1週間ほどは痛み・かゆみだけがあって目に見える皮疹がない状態が続くので、この時期につづらご(帯状疱疹)だと判断することはなかなか難しいです。中には「首が痛い」と感じてマッサージや接骨院、整形外科に行き、皮疹が出るまで筋骨格系の痛みと思われて治療されていたという人もいます。

水ぶくれが出る前の帯状疱疹と間違いやすい症状が神経痛です。ピリピリした痛みが特徴です。以下のような病気でピリピリした神経痛が現れます。

【神経痛がみられやすい病気】

  • 糖尿病神経障害
    • 糖尿病による合併症のひとつです。左右両側に出ることが多いです。
  • 肋間神経痛
    • 胴体の片側に痛みが出ます。
  • 三叉神経痛
    • の片側に痛みが出ます。耳に出る帯状疱疹の「ラムゼイ・ハント症候群」と見分けることが大切です。
  • 後頭神経痛
    • 後頭部に痛みが出ます。押すと痛むことが多いです。片側のことも両側のこともあります。

つづらご(帯状疱疹)の水ぶくれの特徴

つづらご(帯状疱疹)の代表的な皮疹の写真を提示します。

画像:狭い範囲の帯状疱疹(水ぶくれ)の症状写真

上の写真のように数mm程度の水ぶくれ(水疱)が集まって現れます。

画像:右腕の肘の周り(上腕から前腕)に出た帯状疱疹(水ぶくれ)の症状写真。

上の写真は右腕に現れた帯状疱疹です。ほとんどの場合で片腕に出ます。

画像:右側のお腹から背中に現れた帯状疱疹(水ぶくれ)の症状写真。

上の写真は胴体のお腹から背中にかけて現れた帯状疱疹です。重症に見えますが、右側だけに症状があり、身体の中央(中心線)を越えて左側には広がっていません。片側にとどまるのが帯状疱疹の特徴です。

典型的な帯状疱疹の症状写真

上の写真は胸から脇の位置に現れた帯状疱疹です。水ぶくれの大きさは大小不均一のことが多いです。

画像:首の右側後ろにできた帯状疱疹(水ぶくれ)の症状写真

上の写真は首筋に出た帯状疱疹です。首の右側にだけ症状があります。首から耳のあたりに水ぶくれが出る「ラムゼイ・ハント症候群」は帯状疱疹の一種ですが、特に後遺症が残りやすい場合です。

写真のように、つづらご(帯状疱疹)は首、腕を含め胸、背中、お腹、足、顔など全身のどこにでもできます。

写真ではつづらご(帯状疱疹)の典型的な特徴が現れています。

  • 体の左右どちらか片側に出る
  • 細長い帯のような形に集まって出る
  • 2か所の離れた場所には出ない

皮疹が広い範囲に出る場合は、ウイルスの勢いが強く、感染力が高いことが懸念されます。また、まれに髄膜炎という重症の状態になることもありますので、皮膚の症状のほかに頭痛がある人、特に頭痛が1日以上続いている人は、すぐに神経内科などの医療機関にかかってください。

つづらご(帯状疱疹)の症状について詳しくは「帯状疱疹の画像:初期症状のかゆみ、赤み、水ぶくれとかさぶた」で説明しています。

つづらご(帯状疱疹)は顔にも出る?

つづらご(帯状疱疹)は顔にも出ます。特に耳性帯状疱疹(ラムゼイ・ハント症候群)と呼ばれる状態では、耳につづらご(帯状疱疹)が出ることにより、顔面神経が侵されて、独特の症状が現れます。

  • 耳の痛み・水ぶくれ
  • 顔面が麻痺して表情を作れない、表情が左右非対称になる
  • めまい、ふらつき
  • 耳鳴り
  • 聞こえにくい(難聴
  • 味覚の異常

ラムゼイ・ハント症候群では4割ほどの人に帯状疱疹後神経痛などの後遺症が残ります。

ほかに眼部帯状疱疹と言って目の周りにつづらご(帯状疱疹)が出ることもあります。

  • 目の周りの痛み・水ぶくれ
  • 目の充血
  • まぶしく見える

眼部帯状疱疹はまれに失明につながることもあります。

顔に当てはまる症状が出たときは、急いで耳鼻科眼科に行ってください。似た症状のある三叉神経痛ベル麻痺と見分けることも大切です。

なお、口の周りに1個から数個の水ぶくれが出る口唇ヘルペスは帯状疱疹ではありません。口唇ヘルペス性器ヘルペスを起こす単純ヘルペスウイルスは帯状疱疹の原因ではありません。治療法も違います。口唇ヘルペス性器ヘルペス単純疱疹(たんじゅんほうしん)とも言います。名前も見た目も紛らわしいですが、別の病気です。

つづらご(帯状疱疹)は絶対に2か所には出ない?

画像:帯状疱疹の症状が離れた2か所に現れている写真。

珍しい場合ですが、つづらご(帯状疱疹)のウイルスが2か所以上の経路から広がってきたときには、上の写真のように離れた場所に皮疹が現れることもあります。

つづらご(帯状疱疹)が一周すると死ぬって本当?

つづらご(帯状疱疹)は死ぬ病気ではありません。水ぶくれはほとんどの場合で体の片側にとどまり、一周することもありません。

左右の両方で同時につづらご(帯状疱疹)の症状が現れた場合に一周することが考えられますが、一周したとしても特に意味はありません。

つづらご(帯状疱疹)はかさぶたになり数週間で治る

画像:つづらご(帯状疱疹)がかさぶたになった写真。かさぶたは数週間で消えるが、その後も帯状疱疹後神経痛という後遺症を残す場合がある。

つづらご(帯状疱疹)の水ぶくれは1週間ほどで自然に潰れ、さらに1週間ほどで上の写真のようなかさぶたになります。かさぶたは数週間できれいに消えます

ウイルスの感染力がある期間がいつまでかは正確にわかっていませんが、水ぶくれがすべてかさぶたになるまでが目安になります。

つづらご(帯状疱疹)の後遺症、帯状疱疹後神経痛

一部の人で、きれいに消えず跡が残ったり、帯状疱疹後神経痛という痛みの後遺症が数ヶ月から数年続きます。

帯状疱疹後神経痛は普通の痛み止めの薬が効きにくい痛みです。神経の興奮を抑えて痛みを和らげるプレガバリン(商品名リリカ®)などの薬を使います。

神経ブロック注射、イオントフォレーシスなどの治療法もあります。ペインクリニックが痛みの治療を専門にしています。

4. つづらご(帯状疱疹)の治療法は?

つづらご(帯状疱疹)の治療には、抗ヘルペスウイルス薬という薬を処方してもらう必要があります。疑わしいと思ったら急いで皮膚科などの病院・クリニックに行ってください。

重症で入院が必要な場合を除いて、治療期間は7日間ほど飲み薬を飲むことになります。薬は皮疹が出始めてから2日以内に使うことが大切です。よく使われる抗ヘルペスウイルス薬は主に3種類です。

  • アシクロビル(商品名ゾビラックス®)
  • バラシクロビル(商品名バルトレックス®)
  • ファムシクロビル(商品名ファムビル®)

3種類とも安い薬ではありませんでしたが、ジェネリック医薬品の登場などにより負担が軽減され、標準的な治療法では、薬の値段(薬価)は3割負担で1,000-3,000円程度です(2024年10月)。

ほかに痛みを抑えるためにNSAIDsなどの薬を使います。NSAIDsは消炎鎮痛薬の一種で、ロキソプロフェンナトリウム(商品名ロキソニン®)などが該当します。

つづらご(帯状疱疹)に市販薬は効く?

つづらご(帯状疱疹)に対して医学的に有効と考えられている市販薬はありません。間違った薬を使うとかえって悪化させてしまうことも考えられるので、自己判断で薬を塗ったりせずに、病院にかかるようにしてください。

5. つづらご(帯状疱疹)はうつる?

つづらご(帯状疱疹)の原因のウイルスは、空気感染といって接触しなくても近づいただけでうつることがあるウイルスです。健康な大人にうつることはめったにありませんが、子供には気を付けてください。小さい子供は重症になる可能性があるので特に注意が必要です。

水ぶくれの症状が出ているとき、特に水ぶくれが破れているときは、不要な接触は避け、体に触れた人は手を洗うようにしてください。

つづらご(帯状疱疹)のウイルスがうつる(感染する)とどうなる?

ウイルスが体内に入っても自分の免疫がウイルスを排除してくれるますが、運悪くウイルスを排除しきれなかった人の体内では感染が起こります。ワクチンはこの免疫の働きを高めるため、感染を起こさせないようにする予防の観点から重要になります。また、ウイルスによる感染が起こってもいきなりつづらご(帯状疱疹)の症状が出ることはありません。うつった人は水ぼうそう水疱瘡水痘)になり、何年も経ったあとでつづらご(帯状疱疹)が出るようになります。

つづらご(帯状疱疹)にワクチンはある?

水ぼうそうのワクチン水ぼうそうを防ぐことが、つづらご(帯状疱疹)の予防にもなります。現在の日本ではすべての子供が水ぼうそうの予防接種を打つことを勧められています(個別に不適当と判断された場合を除きます)。

水ぼうそうの予防接種には2回の注射があります。1回の注射で水ぼうそうが重症になるのをほとんど防げます。2回注射することで十分に強い免疫がつきます。

つづらご(帯状疱疹)がうつりやすい人は?

つづらご(帯状疱疹)からウイルスがうつって水ぼうそうになるのは、子供で特に注意が必要です。赤ちゃんにうつることもあります。

水ぼうそうのウイルスは感染力が非常に強いウイルスです。家族の中に水ぼうそうが発生した場合、誰も免疫を持っていなければ90%近い確率でうつると言われています。

水ぼうそうにかかったことがある人にはうつりません。ワクチンを打った人にも免疫ができます。

高齢者などで免疫が極端に弱っている場合、例外的にうつることも考えられます。

夫のつづらご(帯状疱疹)は妊婦にうつる?

妊婦に夫や周りの人から帯状疱疹のウイルスがうつることがあります。妊娠中にはじめて感染した場合、お腹の赤ちゃんに影響する恐れがあります。先天性水痘症候群、新生児水痘という状態を引き起こします。いずれも危険な事態です。

妊娠する前に水ぼうそうのワクチンを打っておくことが予防になります。また、つづらご(帯状疱疹)が出ている人は妊婦に近寄らないでください。

妊婦につづらご(帯状疱疹)が出たら赤ちゃんにうつる?

もともと水ぼうそうにかかったことがある女性で、妊娠中につづらご(帯状疱疹)が出ても、お腹の赤ちゃんに影響はありません。ただし、出産後の接触には気を付けてください。また、治療に使う薬には授乳中には飲めないものがあります。

6. つづらご(帯状疱疹)の原因は?

つづらご(帯状疱疹)は、水ぼうそうのウイルスが原因となる病気です。加齢ストレス疲労ステロイドの長期内服がんなどで免疫が弱ったときに症状が現れやすくなります。

水ぼうそうとつづらご(帯状疱疹)は、どちらも水痘帯状疱疹ウイルスというウイルスの感染が原因です。水ぼうそうにかかると、ウイルスは皮膚を中心に全身に感染を起こしていきます(初期感染)。

水痘帯状疱疹ウイルスの初期感染で水ぼうそうの症状が出る

その後ウイルスは免疫の働きで排除されますが、一部のウイルスは排除されずに神経に息を潜めて隠れています。

水ぼうそうは免疫の力で治るが、原因の水痘帯状疱疹ウイルスは神経節に潜伏感染している

なんらかの原因で体力や免疫が落ちると、この潜んでいたウイルスが再び勢いを取り戻し、神経を伝って周りに広がるなど、体を蝕んできます。

免疫が弱くなると神経節に潜伏感染していた水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化する

神経に潜んでいたウイルスの感染が皮膚にまで広がると帯状疱疹(二次感染:再感染)の典型的な症状である痛みや水ぶくれが現れます。

水痘帯状疱疹ウイルスの再感染により痛みと水ぶくれができる

ここで大事なポイントは、つづらご(帯状疱疹)は免疫力が落ちている人に起こりやすい感染症であるということです。免疫力が落ちる原因として以下が考えられます。

  • 加齢
  • ストレス
  • 疲労
  • ステロイドの長期内服
  • HIV
  • がん

逆に言うと、これらに関係のない人はつづらご(帯状疱疹)が起こる可能性は非常に低いです。

詳しくは「帯状疱疹の原因:加齢・ストレス・疲労・癌でウイルスが再感染」で説明しています。

つづらご(帯状疱疹)が発症しやすい年齢と頻度

つづらご(帯状疱疹)は50歳以上の人に多く発症します。かかる人の7割前後が50歳以上です。子供にも少数ですが発症します。男性と女性で大きな違いはありません。おおよそ一生のうちに10-20%の人が経験すると言われています。

7. つづらご(帯状疱疹)は再発する?

つづらご(帯状疱疹)が治癒した後におおよそ4%の人で再発します。つづらご(帯状疱疹)を経験した人は、次に症状が出たらすぐに治療を始められるように、皮疹や痛みを覚えておいてください。 

つづらご(帯状疱疹)の再発を防ぐには?

水痘帯状疱疹ウイルスの抗体は加齢とともに少なくなりやすく、特に50歳以上の人は比較的危険性が高いと考えられます。そこで、50歳以上の人は水ぼうそうワクチンの再接種を受けることができます。ワクチンの再接種により抗体が強まり、再発率を下げる効果が見込まれます。

高齢者を対象にした研究で、水ぼうそうワクチンの接種後の帯状疱疹が半分ほどに減ったという結果が出ています。

関連記事:痛い水ぶくれ「帯状疱疹」はワクチンで防げるか?(参照文献:Cochrane Database Syst Rev. 2016 Mar 3

8. 免疫の落ちている人の帯状疱疹は特に危険!

帯状疱疹に特に気を付けるべき人は50歳以上の人、ステロイドの長期内服中の人、HIVに感染している人、がんを抱えている人など、免疫が弱くなっている人です。

ウイルスが勢いを増すと弱った免疫では抑えきれず、力のバランスがかなりウイルス優勢に傾いていることが多く、通常の帯状疱疹よりも症状が激烈になりうるので注意が必要です。

関連記事:帯状疱疹の年齢ごとの頻度、入院期間は?統計から解析した結果(参照文献:BMC Infect Dis. 2016 Mar 1

関連記事:新薬研究中に帯状疱疹が発生、副作用か(参照文献:Ann Rheum Dis. 2016 Mar 23

免疫が落ちている人が帯状疱疹にかかると重症になる?

特に通常の帯状疱疹よりも重症で全身に水ぶくれができる汎発性帯状疱疹(はんぱつせいたいじょうほうしん)は、主にステロイドなどの免疫抑制薬(めんえきよくせいやく)を服用中であったり、HIV感染症などにより免疫不全になっている状態などで起こります。

免疫が弱くなっている人に帯状疱疹が出たときは、点滴薬を使うために入院して治療することが強く勧められます。