まんせいふくびくうえん(ちくのうしょう)
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)
急性副鼻腔炎が治りきらずに慢性化したもの。一般的には蓄膿症と呼ばれることも多い
11人の医師がチェック 50回の改訂 最終更新: 2022.08.29

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)の症状は?

かぜ症状の治りかけから、鼻づまりやねばっこい鼻水が長引いて、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)になることがあります。しかし、症状がほとんどない副鼻腔炎もあります。慢性副鼻腔炎の症状は、どのようなものがあるか、みていきましょう。 

目次

 

1.慢性副鼻腔炎の症状

慢性副鼻腔炎の症状は下記のものがあります。

  • ねばっこい鼻水

  • 色のついた鼻水

  • 鼻づまり

  • 鼻漏(こうびろう):鼻水がのどの奥に流れる症状

  • 痰がらみの咳

  • 頭痛

  • 頰の痛み

  • 歯痛

  • 嗅覚障害:匂いを感じにくくなる、くさい臭いを感じる

  • 鼻茸(びじょう/はなたけ、鼻ポリープ):鼻の粘膜がむくんで隆起したもの

  • 全身倦怠感(ぜんしんけんたいかん):全身のだるさ

  • めまい

鼻血と慢性慢性副鼻腔炎の関係を心配される人が中にはいますが、副鼻腔炎のみで出血することは稀です。多様な症状が現れる慢性副鼻腔炎ですが、症状がない場合もあります。

副鼻腔は1か所ではなく、大きく分けて左右に4か所ずつあります。副鼻腔炎が起きる部分で痛む場所などの症状の現れ方が異なります。

副鼻腔炎が起きた場所と症状の対応については以下のようになります。

  • 前頭洞(ぜんとうどう):前額部痛、頭重感

  • 上顎洞(じょうがくどう):頬の痛み、歯痛

  • 篩骨洞(しこつどう):眉間や目の奥の痛みや重い感覚、頭重感

  • 蝶形骨洞(ちょうけいこつどう):後頭部痛、頭重感

図:副鼻腔の解剖イラスト。前頭洞、蝶形骨洞、篩骨洞、上顎洞の位置を示す。

ただし、炎症が起きている副鼻腔と症状が一致しないこともあるので、症状だけでどこに炎症が起きているかを完全に判断することはできないこともあります。複数の副鼻腔に炎症が起きることもあるので、症状が強く出たり、複数の症状が起きることもあります。

子供の慢性副鼻腔炎の症状はほとんど大人と同じ、主に以下のものになります。

  • ねばっこい鼻水

  • 色のついた鼻水

  • 口呼吸

  • 痰がらみの咳

子供は本人が症状をうまく伝えらられないことがあるので、周りの大人が上手に症状を聞くことが慢性副鼻腔炎に気づくきっかけになります。

蓄膿症とは「がたまる」という意味です。また、慢性副鼻腔炎は、「鼻に膿がたまる病気」と表現されることが多いのですが、正確には鼻の周囲にある副鼻腔に膿がたまる病気です。ですので、蓄膿症が必ずしも慢性副鼻腔炎を指すわけではありません。

「鼻に膿がたまる」とはどんなものなのでしょうか。以下で説明します。

慢性副鼻腔炎では副鼻腔に分泌液が溜まり、色のついた膿や、粘っこい膿、鼻水などの症状が現れます。鼻の膿を出すことで、分泌液内の細菌や炎症を起こす物質を減らすことができるため、副鼻腔炎の症状を和らげることができます。鼻の膿を出す方法を知っておくと症状に困った時の対応に役立てることができるので、憶えておいてください。鼻の膿の出し方は、下記のようなものがあります。

  • 鼻をかむ

  • 鼻の吸引

  • 鼻洗浄

説明します。

鼻をかむことで副鼻腔内の分泌液を外に出すことができます。しかし、副鼻腔と鼻腔をつなぐ穴や管が狭くなったり塞がっている場合や、分泌液の粘り気が強い場合は、うまく外に出てこないことがあります。その場合は、これから説明する鼻うがいや、鼻の吸引が効果的です。

その他では、粘液溶解剤(カルボシステインなど)やマクロライド系抗菌薬は分泌液の粘稠度(ねんちょうど;粘り気)を改善する効果がありますので、使用してみたい方は主治医に相談してみてもいいでしょう。

■鼻の吸引

鼻の入り口から奥にある分泌液を吸引する方法です。自宅で行うこともできますが、耳鼻咽喉科のクリニックや、子供の場合は小児科でも行っています。

鼻の中にある分泌液を吸引すると鼻づまりが改善されて、分泌液の中にいる細菌や炎症をおこす物質を減らして慢性副鼻腔炎の改善の助けになります。症状を和らげることができます。

子供がうまく鼻をかむことができない時、鼻づまりや鼻水、後鼻漏による咳などには、鼻水の吸引が効果的な治療法です。吸引の方法には自宅で行う方法と、病院で行う方法があります。自宅で行う方法には、親が口で吸引する方法、掃除機で吸引する方法、電動吸引器で吸引する方法があります。最も効果的なものは、電動吸引器で吸引する方法ですが、吸引器が大きく、持ち運びに不便なことと、購入費用がかかることがデメリットです。

病院での吸引は、吸引圧も十分で、吸引後に副鼻腔内に薬を散布できるネブライザー療法を併用出来る点で有利です。デメリットとしては通院が必要な点があります。

大人の場合は、病院に通院して鼻水を吸引してもらう方法が一番有用です。鼻の中に薬剤のついた棒を入れて、鼻の粘膜を縮めて、鼻の通りをよくした後に、鼻水を吸引して、最後に副鼻腔内に薬を散布するネブライザー療法を行います。

副鼻腔に膿が貯留している状態が慢性副鼻腔炎であり、その治療法は自宅でできる鼻うがい、薬による治療と手術治療があります。手術が勧められる場合の例を挙げます。

初回の手術は、鼻の穴から内視鏡を入れて操作する内視鏡下鼻副鼻腔手術を行うことが多く、顔に傷はつきません。再発を繰り返している場合は、病状に応じて、眉毛の下あたりを切るような手術(Killian手術:キリアン手術)を行なうこともあります。

その他に外来で行える膿の出し方として上顎洞穿刺(せんし)があります。

鼻の横の、頬骨の中にある上顎洞に炎症がある上顎洞炎に対する治療です。

上顎洞穿刺は急性副鼻腔炎に対して行うことがほとんどですが、慢性副鼻腔炎で頬の痛みや腫れ、歯痛などがあるような、病状が急に悪化した場合(急性増悪:きゅうせいぞうあく)にも行います。

鼻内を局所麻酔薬(塩酸リドカインなど)と血管収縮薬(エピネフリンなど)のついたガーゼなどで麻酔した後、太い針で鼻内から上顎洞を刺し、膿を抜きます。膿を抜いた後に上顎洞内を水で洗浄します。合併症として出血や針を刺した部分の痛みなどがあります。

後鼻漏は鼻の奥に何かがあるような感じがして、鼻すすりや飲み込み動作で除去しようとしても除去できない症状です。慢性副鼻腔炎の症状の1つです。後鼻漏があると、鼻とのどの間に痰がからむような感覚や、いつものどの奥に痰があるような感覚になります。

後鼻漏を疑う症状は、鼻水がのどの奥におりる、痰、咳、咳払い、鼻水が多い、のどがヒリヒリするなどがあります。

後鼻漏の量が少ないうちは、鼻の奥の違和感などの症状ですが、後鼻漏の量が多くなると痰がらみの咳になります。

8週間以上の咳が続く場合を、慢性咳嗽(まんせいがいそう)と呼びます。慢性咳嗽の原因は、咳喘息逆流性食道炎など様々ありますが、慢性副鼻腔炎による後鼻漏も原因の1つです。慢性咳嗽があるときは、一度、耳鼻科に受診し、慢性副鼻腔炎などの有無を調べてもいいかもしれません。

慢性副鼻腔炎での後鼻漏の原因は、副鼻腔内にたまった分泌液が、のどの奥にたれることです。鼻をかんでも鼻水としては出てこず、後鼻漏のみが慢性副鼻腔炎の症状のこともあります。

後鼻漏の他の原因としては、アレルギー性鼻炎や、風邪症状のひとつである急性鼻炎、血管運動性鼻炎などもあります。鼻水は正常でも1日に約1リットルは作られるため、正常範囲内の量であっても、後鼻漏として感じる人もいます。後鼻漏があっても必ずしも病気ではなく、正常であることもあります。

嚢胞(のうほう)とは液体成分を含んだ袋のことです。副鼻腔に嚢胞ができることがあり、副鼻腔嚢胞と言います。

原因は、以前の副鼻腔炎の手術が最も多く、その他に顔面の怪我や感染ながあります。嚢胞は徐々に大きくなり、まわりの骨を圧迫したり破壊したりしながら、症状が少しずつ出てきます。症状は嚢胞の場所で異なります。

  • 頬にある上顎洞に嚢胞ができた場合

    • 頬の痛み

    • 歯痛

  • 眼に近い篩骨洞や蝶形骨洞に嚢胞ができた場合

    • 鼻や目のあたりの鈍い痛み

    • 目が見えにくくなる

    • 目のかすみ

    • 複視(物が二重に見えること)

  • 額にある前頭洞に嚢胞ができた場合

    • 額の重い感覚や違和感

    • 大きくなると眼が圧迫されて位置がずれる

嚢胞に感染を起こした場合は、膿がたまって痛みなどの症状を起こします。診断をするためにCT検査などの画像検査で行います。感染して痛みを伴う場合は痛み止めを使用し、感染による症状が強い場合は抗菌薬(抗生物質)を使用することがあります。

痛みや感染などを繰り返す場合は、手術でも治療できます。嚢胞と鼻の空間をつなげる経路を大きくあける手術や、嚢胞を取り除く手術を行います。鼻の穴から内視鏡を入れて手術することが多いですが、病状によっては歯茎や眉毛の下を切るような手術を行う場合もあります。

視力低下や複視などの症状がでた場合は、病状の進行次第で失明することがありますので、急いで耳鼻咽喉科を受診してください。

頭痛の意外な原因として慢性副鼻腔炎があり、頭痛で内科や脳神経外科を受診したところ画像検査で見つかることがあります。鼻水や鼻づまりがなく、症状は頭痛だけの場合もあります。

この後は慢性副鼻腔炎と頭痛の関係をみていきます。

慢性副鼻腔炎では炎症のある副鼻腔の場所と一致して、頬の痛みや、眼の痛みがでる他に、頭痛や肩こりがでることがあります。眼の奥にある蝶形骨洞に起きる慢性副鼻腔炎は、頭痛や後頭部痛、肩こりの原因になります。また、鼻づまりや鼻水などの鼻症状がない場合でも、頭痛の原因を調べる目的で総合内科や神経内科、脳神経外科を受診し、画像検査で慢性副鼻腔炎を指摘されることもあります。

慢性副鼻腔炎の頭痛は、炎症のある副鼻腔の部位に頭痛がおきます。そのため、頬、額、後頭部などに痛みがおきます。その他に、頭の重い感じ、首の後ろが凝った感じから、頭痛を感じることがあります。このような頭痛に対しては、冷やす方法も、温める方法も効果的なことがあります。どちらが良いというわけではなく、頭痛の部位を冷やしたり、温めたりして、症状が緩和する方を行うことが良いのではないでしょうか。

鼻づまりが強いと頭痛にもつながることがあります。温かい蒸気を吸ったり、入浴したり、蒸しタオルを鼻にあてたりすると鼻の通りが改善することがあります。鼻の通りが良くなると頭痛が治まる可能性がありますので、試してみてもいいかもしれません。

慢性副鼻腔炎に効果のあると言われているツボは下記です。慢性副鼻腔炎そのものが治るというよりは、頭痛や頭重感、顔面痛などの症状が軽くなると考えられています。病院での治療に並行して試してみてもいいかもしれません。

  • 上星(じょうせい):頭の中央で、髪の毛の生え際から頭頂方面に2 cmほどの部位

  • 印堂(いんどう):眉間の中央

  • 迎香(げいこう):小鼻の左右の凹み

  • 鼻通(びつう):迎香の少し上

  • 合谷(ごうこく):手の甲の人差し指と親指の付け根

  • 内庭(ないてい):足の人差し指と中指の付け根

  • 太陽(たいよう):こめかみの目尻側

慢性副鼻腔炎の頭痛は、副鼻腔炎の治療を開始して効果がではじめると、徐々に改善してきます。慢性副鼻腔炎の治療は鼻うがいや、気道疾患治療薬(カルボシステインなどの気道粘液調整薬、気道粘液溶解薬)、鼻用のステロイド薬などがあります。日本で広く行われており、鼻茸のない慢性副鼻腔炎に一定の効果があるとされている治療として、マクロライド系の抗菌薬を通常量の半分で内服する「マクロライド少量長期投与」があります。マクロライド療法では、治療開始から効果がでるまでに2-4週間かかるとされ、効果がではじめると頭痛は軽減してきます。マクロライド少量長期投与では下痢などの副作用が起こりやすいことや、耐性菌の増加の問題があります。慢性副鼻腔炎の症状の強さと、治療による副作用などを考えて、治療方法を検討します。鼻うがいや各種投薬治療でも症状が改善しない場合は、手術治療を考慮します。手術を行なうと頭痛が治ることがあります。頭痛が別の原因であった場合は副鼻腔炎が改善しても頭痛は残ります。

7. 慢性副鼻腔炎で咳は出る?

慢性副鼻腔炎では分泌液が後鼻漏(こうびろう)としてのどに落ちて気道粘膜を刺激することで、咳の原因となります。咳の原因はさまざまですが、慢性副鼻腔炎も原因のひとつです。慢性副鼻腔炎と咳の関係性を説明します。

子供の咳の原因は多くありますが、熱を伴う場合は、ウイルス性の急性上気道炎かぜ)が主な原因です。ウイルスが直接、気道に悪さをして咳を起こす場合と、鼻水が後鼻漏になって咳のを起こす場合があります。子供の咳がひどく何科に相談すればいいかわからない場合は、小児科に受診するとよいです。

熱、のどの痛み、鼻水などが改善しても、咳が残る場合は、慢性副鼻腔炎の可能性があるので、耳鼻咽喉科に受診することも検討してみて下さい。子どもの副鼻腔炎(蓄膿症)は自然に治ることも多いですが、症状に応じて治療が必要なこともあります。

慢性副鼻腔炎の治療中に咳と熱が出た場合は、別の上気道炎かぜ)にかかった場合や、慢性副鼻腔炎が急に悪化(急性増悪:きゅうせいぞうあく)した場合を考えます。症状が軽い場合は、自然治癒することもあるので、経過を見ても構いません。ただし、症状が悪化した場合は、小児科や耳鼻咽喉科を受診して調べてもらって下さい。

慢性副鼻腔炎による咳は、気管に入りそうな後鼻漏を気管から追い出すような働きをしています。このため、咳止めはかえって悪影響が出ることがあります。しかし、咳で眠れない場合は体力を消耗するため、咳止めの使用しても検討してみて下さい。

後鼻漏による咳は副鼻腔炎の治療(鼻水の吸引、鼻うがい、薬物治療など)をすることで改善することがあります。子どもの場合、鼻うがいが難しいので鼻水吸引が有効です。電動吸引器が最も効果的ですが、大きくて持ち運びが不便なので、親が口で吸引するタイプや掃除機に接続して吸引するタイプなどもあります。どの方法が合うかは個人差があるので医療者と相談して最もあった方法を選んでみて下さい。

咳で喉が痛い時にできることの例を挙げます。

  • 喉が乾燥しないよう部屋の加湿をする

  • あまり話しすぎないようにする

  • こまめに水分補給をする

後鼻漏が原因の咳の場合は、鼻うがいや鼻水の吸引をしたり、耳鼻咽喉科を受診して鼻の処置や薬の変更などの相談をしたりしてもいいかもしれません。

市販薬に含まれる咳止めの成分としては、咳中枢に効く成分、痰を切れやすくする成分、気管支をひろげる成分がまじっています。

  • 咳中枢に効く成分:急にでた咳の発作をとめる

  • 痰を切れやすくする成分:気道粘膜に張り付いた痰を除去して、咳をおさえる

  • 気管支をひろげる成分:気管支をひろげて呼吸を楽にする

慢性副鼻腔炎では鼻から流れ落ちた後鼻漏が気道粘膜にはりついて、それを除去しようとして咳がでます。このため、慢性副鼻腔炎による咳に対する薬では、咳を抑える効果とともに痰を切れやすくする効果が重要です。市販薬は上記の成分が混合して入っているため、痰を切れやすくする成分(カルボシステインなど)が含まれているものを選ぶと効果があるかもしれません。

市販薬にどの成分が含まれているかは薬局・ドラッグストアの薬剤師などに尋ねてください。

慢性副鼻腔炎と咳喘息は、どちらも慢性咳嗽(まんせいがいそう)の原因疾患ですが、この2つは異なる疾患です。

慢性咳嗽は、8週間以上持続する咳のことです。慢性咳嗽の原因となる病気はほかにもあります。

咳喘息の診断基準は、ゼーゼーしない咳が8週間以上持続し、気管支拡張薬(β遮断薬、テオフィリン製剤)で症状が緩和することです。慢性副鼻腔炎も同様に咳がありますが、痰を伴う咳になることが多く、気管支拡張薬は無効であることが、見分けられる点です。咳喘息については「咳喘息の詳細ページ」も参考にして下さい。

慢性副鼻腔炎は咳ではうつりません。慢性副鼻腔炎は細菌感染を繰り返して、鼻内に細菌感染がなくなった後も、炎症が長引いて残存した状態です。慢性副鼻腔炎はウイルスや細菌の感染がない状態なので、まわりにうつることはありません。慢性副鼻腔炎の治療中に、他のウイルス感染を合併した時には、咳でウイルスがうつることがありますが、慢性副鼻腔炎自体がうつることはありません。

咳が治らない場合は、咳の原因疾患を調べる必要があります。咳の持続期間や、痰があるかどうかなどを参考に診断をつけます。

咳は持続期間により下記のように分類されます。

  • 3週間未満:急性咳嗽(きゅうせいがいそう)

  • 3週間以上8週間未満:遷延性咳嗽(せんえんせいがいそう)

  • 8週間以上:慢性咳嗽(まんせいがいそう)

慢性咳嗽の原因疾患としては下記のものがあります。

何科に受診していいかわからない場合は、まず大人であれば内科、子供であれば小児科に行けば治療を受けることができますし、必要に応じて専門的な診療科に紹介してもらえます。画像検査や血液検査などの検査で慢性副鼻腔炎と診断された場合は耳鼻咽喉科で治療を行います。

慢性副鼻腔炎では熱がでることはほとんどありません。鼻水、鼻づまり、咳などに熱を伴う場合は慢性副鼻腔炎と急性上気道炎かぜ)が重なった場合や、慢性副鼻腔炎の急な悪化(急性増悪)が起きた場合です。

慢性副鼻腔炎と発熱の関係について説明します。

慢性副鼻腔炎では熱がでることはほとんどありませんが、次の場合は発熱することがあります。

慢性副鼻腔炎になっていところに急性上気道炎かぜ)にかかると発熱を伴うことがあります。急性上気道炎については「急性上気道炎の詳細情報ページ」も参考にして下さい。

副鼻腔に貯留していた分泌液に細菌が感染した場合を慢性副鼻腔炎の急性増悪といいます。頬や歯、額などの副鼻腔に一致した部位に痛みや腫れを伴い、鼻水の量が増えます。急性増悪を起こした場合は、症状によって薬の変更をしなければならないことがあるので、慢性副鼻腔炎を治療中の人で急性増悪を疑わせるような場合は耳鼻咽喉科を受診して相談してみて下さい。

幼児は慢性副鼻腔炎になることはまれであり、発熱を伴う場合は他の病気を考えます。熱がでて、鼻水、鼻づまりがある場合は、上気道炎かぜ)の可能性が高いです。鼻水が多くなると、後鼻漏(こうびろう)から咳になります。幼児で鼻水が多い場合は、鼻づまりや咳で眠れないことが多いです。鼻水のウイルスや細菌から急性中耳炎にもなりやすいため、早めに医療機関に受診しましょう。

慢性副鼻腔炎はウイルスや細菌の感染を伴わない状態のため、熱もなく、うつることもありません。慢性副鼻腔炎の熱の原因の多くは、慢性副鼻腔炎急性増悪か、新しくかかった上気道炎かぜ)です。ウイルス感染や細菌感染をきっかけに、慢性副鼻腔炎が急性増悪します。ウイルス感染や細菌感染はうつる可能性がありますが、一般的なかぜと同様です。慢性副鼻腔炎だからといって特に危険性が増えるわけではありません。

体調次第で、学校や仕事を休んで休養しても良いですが、インフルエンザの出席停止期間のように、休むことが必須な状態ではありません。

慢性副鼻腔炎の急性増悪による発熱は数日で解熱することがほとんどです。慢性副鼻腔炎急性増悪の初期はウイルス感染が多く、抗菌薬の治療を必要としません。しかし、発熱の期間が長引く場合などは細菌感染を考え、より詳しく調べて必要に応じて抗菌薬(抗生物質)を投与します。

副鼻腔気管支症候群は、長期間に渡って、気道の炎症を繰り返す状態です。気道とは肺までつながる空気の通り道で、上気道と下気道に分類されます。上気道は鼻からのど(喉頭)までで、下気道は気管から肺へ至る細い気管支までです。副鼻腔気管支症候群は上気道と下気道どちらにも炎症を起こした状態です。上気道の慢性副鼻腔炎に、下気道の慢性気管支炎気管支拡張症びまん性汎細気管支炎を合併した病気のことです。

診断基準は下記です。

  1. 8週間以上続く呼吸困難発作を伴わない湿性咳嗽

  2. 次の所見のうち1つ以上を認める

    1. 後鼻漏、鼻汁、咳払いなどの副鼻腔炎様症状

    2. 敷石状所見を含む口腔鼻咽頭における粘液性あるいは粘膿性の分泌液

    3. 副鼻腔炎を示唆する画像所見

  3. 14・15員環マクロライド系抗菌薬や去痰薬による治療が有効

参考文献:日本呼吸器学会咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019作成委員会/編, 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019. メディ
カルレビュー社,2019.