蓄膿症の治療「鼻に食塩水」、その効果は?
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)は抗菌薬でも治療しにくいことが多く、しばしば治療は長引きます。鼻に食塩水を注いだりスプレーする治療も知られています。食塩水を使った治療について、これまでに研究でどのような結果が出ているかが調査されました。
◆慢性副鼻腔炎の食塩水治療の研究状況は?
ここで紹介する研究は、慢性副鼻腔炎に対して食塩水を使う治療が、現在までの医学研究でどのような効果を示しているかを調査したものです。
研究班は関係する研究報告を集め、内容をまとめました。
◆大量の食塩水で洗浄すると効果あり
調査から次の結果が得られました。
1件の研究が、大量(150ml)の高張(2%)食塩水による洗浄を通常の治療と6か月の期間にわたって比較していた。もう1件の研究は、5mlの食塩水噴霧を1日に2回行う治療と、鼻腔内
副腎皮質ステロイド を比較し、参加者を3か月治療したうえで治療終了時と終了後3か月に評価していた。
大量の食塩水で鼻を洗浄する治療を試した研究と、食塩水を鼻に噴霧(霧吹き)して、効果を鼻に入れる
大量の食塩水の研究で次の結果が出ていました。
治療3か月の期間末に、食塩水グループの患者は偽薬群よりも良好な状態であり(平均差6.3ポイント、95%信頼区間0.89-11.71)、6か月時点ではさらに大きな効果があった(平均差13.5ポイント、95%信頼区間9.63-17.37)。
有害事象のデータは対照群では収集されず、食塩水のグループでは23%が鼻血などの副作用を経験した。
食塩水で洗浄すると、治療開始後3か月と6か月の時点で、慢性副鼻腔炎の症状に関係する生活の質のスコアが改善しました。ただし、鼻血などの副作用がありました。
◆食塩水の噴霧はステロイドより弱い
食塩水の噴霧の研究では次の結果が出ていました。
治療終了時(3か月)、鼻腔内副腎皮質ステロイドの治療を受けた患者のほうが重症の症状が少なかった(平均差-13.50、95%信頼区間-14.44から-12.56)。これは大きな効果量に相当する。
3か月の治療終了時点で、食塩水を噴霧したグループよりもステロイド薬を使ったグループのほうが重症の症状が少なくなっていました。
慢性副鼻腔炎が長引いたときのつらさはなかなかわかってもらえないものですが、さまざまな治療法が研究され、効果のあるものが探られています。
執筆者
Saline irrigation for chronic rhinosinusitis.
Cochrane Database Syst Rev. 2016 Apr 26.
[PMID: 27115216]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。