かんしつせいはいえん
間質性肺炎
肺の中の空気の通り道ではなく、肺の支持組織(間質)に炎症が起きた状態
17人の医師がチェック 229回の改訂 最終更新: 2022.10.01

間質性肺炎とは:肺が硬くなる病気? 線維化とは?

正確な頻度は分かっていませんが間質性肺炎は多くの方がかかる病気であり、生活の質や命に大きく関わることもある病気です。ここでは間質性肺炎に関して、基礎的な部分から検査、治療などを説明していきます。

1. 肺の構造

肺の間質とは?

肺の構造のイラスト。気管支は木の枝のように分かれていく。

肺胞の構造のイラスト。正常な肺は、木の枝のように何十回にもわたって細かく分かれる気管支と、枝の先にあたる位置にある袋状の肺胞(はいほう)から主にできています。1個1個の肺胞は目に見えない大きさです。微小な肺胞が集まって上の図のようなブドウの房状の構造物を作っています。

健康な状態では肺胞の中身は空気であり、肺胞の中身とそれに接する壁を合わせて肺実質と呼びますが、大雑把には肺実質のスキマを埋めている支持組織を肺の間質と呼んでいます。この肺の間質に炎症を起こす病気が間質性肺炎ということになります。

肺の間質の役割

肺胞の中身とそれに接する壁を合わせて肺実質と呼びます。肺実質の主な役割は酸素や二酸化炭素などのガスを血液と空気の間で交換することです。肺の機能の主役は肺実質であると言ってよいでしょう。しかし肺の間質も主に肺を支えて形づくるという大事な役割を担っています。

間質性肺炎では肺の間質が炎症を起こします。炎症が続くと次第に間質が分厚く、硬くなっていきます。これを肺の線維化と呼びます。肺の間質がダメージを受けて線維化が進んでしまうと、肺全体が硬くなって膨らみにくくなるので肺活量が減ったり、酸素の吸収効率も悪くなって呼吸がうまくできないようになっていきます。

2. 通常の肺炎(市中肺炎、院内肺炎)とはどう違う?

単に肺炎と言った場合には、ウイルス細菌によって気管支や肺胞に炎症を起こしている状態を指し、間質性肺炎とは違う病気を指していることが多いです。明確に間質性肺炎と区別したい場合には、細菌性肺炎や気管支肺炎、肺胞性肺炎などと言い表します。

ウイルス性肺炎細菌性肺炎も亡くなることがあるような怖い病気ではありますが、多くは適切な治療によって後遺症なく完治します。しかし、種類にもよりますが間質性肺炎の治療は容易ではなく、一度線維化して破壊されてしまった肺は基本的に元に戻りません。このように、通常の肺炎と間質性肺炎では炎症の起きている場所や原因が異なるために治療法や経過も大きく異なります。

3. 間質性肺炎の種類

間質性肺炎という名前はいくつかの病気の総称なので、原因を元にしてそれをさらに細かく分類することができます。結局は原因がよく分からず分類もできないようなものも非常に多いです。しかし、呼吸器内科医をはじめとした臨床医は、少しでも患者さんそれぞれの間質性肺炎の本質に迫って、ベストな治療が出来るようその種類を明らかにしようとしています。
これ以降では、間質性肺炎の分類として最も基本的な、現時点でハッキリとした原因の分かっている間質性肺炎と、そうではない間質性肺炎に分けるという視点で説明していきます。

原因の分かる間質性肺炎

胸部レントゲン胸部CTといった画像検査などで間質性肺炎が疑われた場合、まずは病歴や内服薬、生活環境、職業歴、家族歴、アレルギー歴などに関して詳細な問診が行われます。そういった問診や、採血などの追加検査で以下のような病気が原因の間質性肺炎と判明することがあります。

上記に挙げたのは、原因の分かる間質性肺炎の主な例であり、間質性肺炎を呈する他の病気は他にも多く考えられます。原因をしっかり調べることは治療を行う上で重要です。上で挙げたものについては「原因の分かる間質性肺炎とは?:膠原病?薬剤?アレルギー?放射線?」で詳しく説明しているので参考にして下さい。

原因不明の間質性肺炎(特発性間質性肺炎)

胸部レントゲンや胸部CTといった画像検査などで間質性肺炎が疑われた場合、まずは病歴や内服薬、生活環境、職業歴、家族歴、アレルギー歴などに関して詳細な問診が行われます。そういった問診や、採血などの追加検査を行っても明らかな原因を指摘できない場合には特発性間質性肺炎(IIPs: idiopathic interstitial pneumonias)という診断になります。「特発性」は原因不明という意味で、他の病気でもよく使われる言葉です。突然発症するという意味の「突発性」と混同しないように注意してください。

特発性間質性肺炎(IIPs)は、CT検査や気管支鏡検査の結果、外科的肺生検、病理検査の結果などによって以下のように分類されます。少し難しい内容なので、この部分は読み飛ばしても問題はありません。

【特発間質性肺炎(IIPs)の分類】

  • 特発性肺線維症(IPF: idiopathic pulmonary fibrosis)
  • 非特異性間質性肺炎(NSIP: non-specific interstitial pneumonia)
  • 特発性器質化肺炎(COP: cryptogenic organizing pneumonia)
  • 呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患(RB-ILD: respiratory bronchiolitis-associated interstitial lung disease)
  • 剥離性間質性肺炎(DIP: desquamative interstitial pneumonia)
  • 急性間質性肺炎(AIP: acute interstitial pneumonia)
  • リンパ球性間質性肺炎(LIP: lymphocytic interstitial pneumonia)
  • 特発性胸膜肺実質線維弾性症(iPPFE: idiopathic pleuroparenchymal fibroelastosis)
  • 分類不能な特発性間質性肺炎(unclassifiable IIPs)

かなりややこしい分類で、しかもまだ研究が進んでいる最中の疾患なので枠組みや名称も変更されることがしばしばあります。

患者さんの数が多いのはIPF、NSIP、COPの3種類です。特にIPFはIIPsのうち約半数を占めると考えられており、患者さんの数が多い疾患です。患者さんはひとまずご自身に関係のあるところだけ見ていただければ十分と思います。

また、IPF、NSIP、COP、RB-ILD、DIP、AIPを主要なIIPs(major IIPs)、LIPやiPPFEを稀なIIPs(minor IIPs)と呼ぶこともあります。間質性肺炎は喫煙が関与しているものがかなり多いのですが、DIPとRB-ILDは特に喫煙との関連が強いため喫煙関連IIPs(SR-ILD: smoking-related interstitial lung disease)と呼ばれることもあります。喫煙が原因ならば「原因の分かる間質性肺炎」ということでIIPsに含めるべきでは無いのではないか、という意見もありますが現状では上記のような分類になっています。

「特発性」間質性肺炎というのはあくまで、「診断時点で原因が不明の」間質性肺炎という意味なので、例えばある時点でIPFや特発性のNSIPと診断されても、数年後に実は膠原病が原因の間質性肺炎だった、という診断に変更になるようなケースもよくあります。それは最初の問診や検査が不十分だったからではなく、時間が経って特徴がはっきりしてこないと、何らかの病気が原因の間質性肺炎であったと分からないからです。

4. 間質性肺炎の検査:血液検査、画像検査、気管支鏡検査、外科的肺生検、病理検査等

血液検査:KL-6、SP-D、SP-A

血液検査は残念ながら決して万能な検査ではないので、血液検査のみで間質性肺炎を診断することや、もともとあると分かっている間質性肺炎が良くなったあるいは悪くなったと診断することはできません。しかしKL-6(Krebs von den Lungen-6)やSP-D(surfactant protein D: 肺サーファクタントプロテインD)、SP-A(surfactant protein A: 肺サーファクタントプロテインA)などは間質性肺炎でしばしば正常値を超えて上昇するので、間質性肺炎があることを疑うきっかけとなったり、治療効果や病勢がどうなっているかの参考として使われます。やや特殊な検査なので、クリニックや病院で採血したあと外部の検査機関に提出することも多く、採血してすぐに結果は出ないことも多いですが、大きい病院ではKL-6は院内で検査が出来て当日中に結果が分かることもあります。

間質性肺炎の種類によってこれらの異常値の出やすさには差があります。KL-6、SP-D、SP-Aは特発性肺線維症(IPF)、非特異性間質性肺炎(NSIP)、急性間質性肺炎(AIP)などでは9割近くの方で陽性になるとされていますが、特発性器質化肺炎(COP)では半数くらいの方でしか陽性になりません。

また、肺がん(特に原発性非小細胞肺癌)でもこれらの数値は上昇することがしばしばあります。間質性肺炎のある方は肺がんにかかるリスクも高いので、KL-6、SP-A、SP-Dなどの値の解釈については注意が必要なところです。

このように、間質性肺炎そのものにおける採血検査としてはKL-6、SP-D、SP-Aなどが重要なのは間違いありませんが、間質性肺炎を起こしている原因や合併症を調べるための採血として、感染症関連の項目や、膠原病関連の項目も毎回ではありませんがチェックされることが多いです。具体的には抗核抗体(ANA)、リウマチ因子(RF)、抗ds-DNA抗体、抗Sm抗体、抗RNP抗体、抗SS-A抗体、抗SS-B抗体、抗セントロメア抗体、抗Scl-70抗体、抗ARS抗体、抗CCP抗体、MPO-ANCA、PR3-ANCA、抗GBM抗体、βD-グルカン、サイトメガロウイルス抗原、赤血球沈降速度CRP、γグロブリン、などが必要に応じて調べられます。

参考文献
H Ishii, et al. High serum concentrations of surfactant protein A in usual interstitial pneumonia compared with non-specific interstitial pneumonia. Thorax. 2003 ; 58 : 52-57.
Okada F, et al.Comparison of pulmonary CT findings and serum KL-6 levels in patients with cryptogenic organizing pneumonia. Br J Radiol. 2009 Mar;82(975):212-8.

画像検査:レントゲン検査やCT検査

間質性肺炎で最も重要な検査は、胸部レントゲン検査やCT検査などの画像検査です。

レントゲンには手軽に撮影できるメリットがあり、1枚の写真で肺全体が見えるという点でも優れています。間質性肺炎は肺に異常な影が全体的に出現して、その後に肺が固くなって潰れていってしまう病気なので、レントゲンで肺全体が見えると全体的に肺が小さくなってしまっているかどうかが分かりやすいです。

間質性肺炎による異常を検出するためにはレントゲンよりもCT検査の方がより詳しく調べることができます。CT検査では肺を輪切りにして観察できるので、肺に出てきている異常な影がどのような見た目でどのような分布になっているかを知ることができます。間質性肺炎の有無を診ることはもちろん、どのような原因で間質性肺炎が起きているか推測するのにも役立ちます。初めて間質性肺炎の診断をされる際や、節目節目ではレントゲンだけではなくCT検査も撮影されます。

気管支鏡検査:胃カメラのようで異なる検査

胃カメラ大腸カメラのイメージは湧いても、「肺カメラ」である気管支鏡検査は聞き慣れない人が多いと思います。胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)は鼻や口からカメラを入れて、飲食物の通り道である食道を通って胃に進めていきます。同じように「肺カメラ」(気管支鏡検査)も口からカメラを入れて、空気の通り道である気管・気管支に進めます。そこで気管支の中を観察して、間質性肺炎においては気管支肺胞洗浄(BAL: bronchoalveolar lavage)、経気管支肺生検(TBLB: transbronchial lung biopsy)などの検査を施行していきます。間質性肺炎があることが分かったとき、採血や胸部CTでもどんなタイプの間質性肺炎なのかを調べる検査はある程度できますが、やはり直接的に肺の中を調べて、どのような間質性肺炎なのか調べることが必要になるケースはしばしばあります。また、肺の中から特殊なウイルスや菌が検出されてこないかどうかなどを調べることで、間質性肺炎以外の肺疾患を検出することもできます。ただし、気管支鏡検査まで行っても確定診断が必ずつけられるわけではありません。次に、気管支鏡を用いて行う気管支肺胞洗浄(BAL)と経気管支肺生検(TBLB)を簡単に解説します。

気管支肺胞洗浄(BAL)とは?

気管支肺胞洗浄(BAL)は一般的には150mlほどの食塩水を肺の中に流し込んだ後にその液を回収して詳しく調べることによって、カメラが届かない肺の隅々にある細胞や微生物を調べる検査です。細胞の種類によってどのような間質性肺炎であるか見当がつくこともありますし、微生物の種類によっては特殊な感染症を診断することも出来ます。BALは肺の一部をいったん水浸しにしてしまい、流し込んだ食塩水もせいぜい100mlくらいまでしか回収出来ないので、肺の一部は水浸しのままになってしまいます。この食塩水は自然に吸収されるので通常は問題になりませんが、もともと呼吸の状態が悪い場合にはこの検査でさらに呼吸の状態が悪くなり危険な場合があります。また、原因のよくわからない間質性肺炎、すなわち特発性間質性肺炎に対してBALを施行したところ2.4%の患者さんで急激に間質性肺炎の病状が悪くなってしまった(急性増悪した)という報告があります。

つまり、間質性肺炎に対してBALを行うことは、命の危険を引き起こす場合があるのです。したがって、医師は間質性肺炎の患者さんに対して安易にBALは施行しません。危険を冒してでも、今後の治療のために是非必要であると判断したうえで患者さんに提案します。BALを行う場合には、検査が必要な理由だけではなく危険性に関しても、検査前に把握しておくべきでしょう。検査によって病状が悪化する可能性をどうしても心情的に受け入れがたい場合には、医師にその旨を相談してみましょう。BALを施行しない範囲内で最善の治療代替案を提案が受けられると考えられます。

参考文献
Hiwatari N, et al. Bronchoalveolar lavage as a possible cause of acute exacerbation in idiopathic pulmonary fibrosis patients. Tohoku J Exp Med . 1994 Dec;174(4):379-86.

経気管支肺生検(TBLB)とは?

経気管支肺生検(TBLB)は、肺の縁の方から肺の一部分を気管支鏡経由で採取してくる検査です。先端に小さな洗濯ばさみのような装置のついたワイヤーを気管支鏡から出して、肺の一部分を摘んでちぎりとってきます。TBLBにより数mm大の肺が採取できるので、これを顕微鏡でよく観察(病理検査)することで、どのような間質性肺炎であるかを診断できる場合があります。

TBLBによって引き起こされる問題(合併症)としては、肺の縁の方をちぎり取ってくるので、そこから空気漏れを起こして肺がしぼんでしまう「気胸」が最も注意が必要です。多少の空気漏れであれば安静にして様子を見ているだけで治りますが、穴が大きな場合は漏れた空気を逃がすために胸腔ドレーンというチューブを体表から刺しこんだり、穴を閉じるための手術が必要になることがあります。TBLBでは重大な合併症になることはめったにありませんが、それでも考えられる危険は見越して計画を立てる必要があります。そこで、危険を冒してTBLBを行う価値のある状況なのかどうか医師は慎重に判断しますし、検査に際しても細心の注意を払っています。

重大な合併症になってしまうことは決して多くありません。しかし、一定の確率で起こりうるものとして、TBLBを受けられる患者さんは事前に検査の必要性とリスクを知っておくことは理解しておくことは大切なことです。正しい理解は万が一合併症が起きたときに、気持ちに落ち着きを与えてくれるかもしれません。
気胸以外の合併症としては、麻酔薬に対するアレルギー反応や、肺を取ってきた部分からの出血などがあります。したがって血液が固まりにくくなる薬を飲んでいる患者さんは、基本的にはいったん休薬して、薬の効果がなくなるのを待ってからTBLBを行います。

外科的肺生検:手術して肺を取ってくる検査、VATS

画像検査で間質性肺炎があることがわかった場合、採血や気管支鏡検査などを行ってどのようなタイプの間質性肺炎であるかを調べていくことを上記で説明しました。しかし、気管支鏡検査による経気管支肺生検(TBLB)で採取できる肺組織は数mm大であり、間質性肺炎の種類を診断するには小さすぎることもあります。そこで、手術をして数cm大ほど、ちょっと大きめに肺をとってきてしっかり診断をつけようという方法が外科的肺生検です。多くは胸腔鏡下肺生検(VATS: video-assisted thoracoscopic surgery、バッツ)という方法が使われます。VATSは胸に小さな穴を開けて胸腔鏡というカメラを入れる方法です。胸腔鏡補助下での手術が難しい場合には開胸肺生検という方法がとられることもあります。開胸とは肋骨(ろっこつ)等の骨を切って肺を大きく露出する手術のことです。

がんの手術のように悪いものを取ってくるような手術は患者さんも目的が理解しやすいのですが、診断のために肺を一部分とってくる手術をするというのは患者さんにとって納得し難い場合もあるかと思います。確かに手術はそれなりに体の負担もありますし、手術によって病状が一気に悪化してしまうケースも残念ながらあります。また、手術まで行ったのに「分類不能の特発性間質性肺炎」という診断になって、何のために手術をしたのか患者さんには理解しがたいケースもしばしばあります。それでも、間質性肺炎という難病に今後一生かけて立ち向かっていくために、いま手術をして診断を少しでも突き詰めておくほうがメリットが大きいと判断される場合があります。外科的肺生検を提案された場合には悩まれる場合も多いかと思いますが、担当医と検査の必要性や危険性について十分相談したうえで検討してみてください。

病理検査:顕微鏡で調べる検査

気管支鏡検査や外科的肺生検で、肺の中にいる細胞や肺そのものを取ってきた際に、それらを顕微鏡でみて診断する専門の検査技師や医師がいるのをご存知でしょうか? 患者さんが直接会うことは滅多に無いのでイメージが湧きづらいかと思いますが、病院には細胞検査士という検査技師、病理医という医師がいて、臨床医が採取してきた細胞や組織の診断をつけています。医療機関によっては院内ではなく、院外に検査の依頼をしていることもあります。間質性肺炎がどのような原因で起きているか、という診断は非常に難しく、専門家によって意見が分かれることも非常に多いので、「多分野合議(MDD: multidisciplinary discussion)」といって、実際に患者さんを診る呼吸器内科医、CT検査など画像を専門に診る放射線科医、採られてきた肺を顕微鏡などで診る病理医の意見を総合して診断が行われるよう推奨されています。

5. 間質性肺炎は遺伝する?

間質性肺炎の患者さんやそのご家族にとって、間質性肺炎が遺伝するものなのかどうかというのは非常に気になる問題だと思います。一言で結論を述べるならば、遺伝性がある場合と無い場合がある、ということになります。

間質性肺炎という病気は、肺の間質にダメージを与えていくような病気の総称なので、どのような原因・原疾患で間質性肺炎が起きているかによって遺伝のしやすさは変わってきます。例えば関節リウマチという病気は間質性肺炎を合併しやすいことが分かっていますが、関節リウマチの患者さんが血縁にいると少しだけ関節リウマチにかかってしまう可能性が上がると言われています。ということは間質性肺炎にかかってしまう可能性も少しだけ上がってしまうと言えるでしょう。他の例としては、放射線治療によって間質性肺炎になってしまった方が血縁者にいても、放射線治療を受けなければ特別に間質性肺炎にかかりやすくなることはないでしょう。このように、間質性肺炎の原因によって遺伝するかどうかは変わってきます。

原因がよくわからないタイプの間質性肺炎、すなわち特発性間質性肺炎(IIPs)が遺伝するかどうかについては現在研究が進められています。欧米の研究では、IIPsのうち0.5%から3.7%ほどが家族性の間質性肺炎であると報告されています。したがってそれほど遺伝性が高いというわけではない、と言えそうです。SP-C遺伝子、ABC-A3遺伝子、TERT遺伝子、TERC遺伝子、ELMOD2遺伝子変異、などと呼ばれる遺伝子および遺伝子変異は家族性間質性肺炎の原因となることが分かってきています。ただし、特殊な検査なので一般的な医療機関では調べることはできず、またそもそも直接治療に結びつくわけではないので、研究目的以外に調べられることは基本的にありません。

参考文献
Marshall RP, et al. Adult familial cryptogenic fibrosing alveolitis in the United Kingdom. Thorax 2000 ; 55 : 143-146.
du Bois RM. Genetic factors in pulmonary fibrotic disorders. Semin Respir Crit Care Med 2006 ; 27 : 581-588.

6. 間質性肺炎の治療法

間質性肺炎という病気は肺の間質にダメージを与えていくような病気の総称なので、どのような原因・原疾患で間質性肺炎が起きているかによって治療も変わってきます。基本的に共通して言えることとして、間質性肺炎によって固くなり縮んでしまった肺は元には戻らないので、治療によって健康な肺を少しでも維持していくこと、そして禁煙することが重要です。タバコは多くの間質性肺炎において、発病の可能性を高め、さらに病気になってしまった後の悪化スピードを早めるだろうと言われています。

間質性肺炎のタイプごとの治療法の詳細や、治療薬ごとの使われ方に関しては別項で説明するので、ここでは間質性肺炎治療の大まかな方針を説明します。

まず、原因の分かっている間質性肺炎については、可能な限りその原因を避けることが最大の治療になります。例えば薬剤性の間質性肺炎であれば、原因として怪しい薬(被疑薬)を中止すること、何らかの物質の吸入による間質性肺炎であれば、その物質を吸わないようにマスクをしたり大掃除をしたり転居したりすること、などとなります。

原因を回避できる場合はよいのですが、回避できない場合や、原因不明の場合もあります。そうした場合にはまず治療薬が必要なのかどうかを判断します。間質性肺炎とひとくちに言っても、種類によって性質は大きく違います。週単位で進行して命の危険があるものから、数十年かけてゆっくり進んで何の自覚症状も来さないものまで様々です。本当に治療薬が必要なのかどうかは熟考する必要があります。

使う薬はやはり間質性肺炎の原因によって異なるのですが、治療が必要な場合には多くのケースでステロイド薬の飲み薬(プレドニゾロン、プレドニン®、メドロール®、など)が用いられます。間質性肺炎の種類によってはステロイド薬に加えて免疫抑制薬(ネオーラル®、プログラフ®、グラセプター®、アザニン®、イムラン®、エンドキサン®、など)が併用されることもあります。

しかし、原因不明の間質性肺炎(特発性間質性肺炎:IIPs)の中で最もポピュラーな特発性肺線維症(IPF)についてはステロイド薬や免疫抑制薬はあまり効かないことが分かっており、使用が推奨されていません。このような場合には抗線維化薬と呼ばれるピルフェニドン(ピレスパ®)やニンテダニブ(オフェブ®)が用いられます。実際の間質性肺炎診療に際しては、どのような原因の間質性肺炎であるか明確に分けることが難しいケースもしばしばあるので、ステロイドと抗線維化薬が併用されるケースも散見されます。また、2019年から2020年にかけてオフェブは適応が拡大され、IPF以外にも強皮症やその他の線維化が進んでいく間質性肺炎にも使えるようになりました。

7. 間質性肺炎の予後(余命)

間質性肺炎という病気は肺の間質にダメージを与えていくような病気の総称なので、どのような原因・原疾患で間質性肺炎が起きているかによって治療も予後(余命)も変わってきます。間質性肺炎は週単位で進行して命の危険があるものから、数十年かけてゆっくり進んで何の自覚症状も来さないものまで様々なので一概に余命を言い当てることはできません。

ただし、間質性肺炎の予後を考えるうえで「急性増悪(きゅうせいぞうあく)」のことは常に頭に入れておく必要があります。「急性増悪」のことは詳細には別項で説明していますが、1ヶ月以内の範囲で急激に間質性肺炎が悪化して呼吸が出来なくなっていきます。安定しているように見える間質性肺炎でも、突如として何らかのきっかけで急性増悪を起こして亡くなってしまう場合もあるので、間質性肺炎の予後、余命は医師にとっても推定しがたいものです。

間質性肺炎といっても様々な原因があって、全体としては呈示しがたいので、特発性間質性肺炎(IIPs)のうち最もポピュラーな特発性肺線維症(IPF)を例として予後に関して述べると、診断からの生存期間中央値は3年から5年程度とされています。また、死因としては急性増悪が最多であり、他にはゆっくりと呼吸不全が進行する場合、肺がんを合併する場合、肺炎などの感染症で亡くなる場合、が多いと報告されています。急性増悪はいったん発症すると、IPFの場合には少なくとも50%ほどは亡くなってしまうという報告が多く、危険な状態といえます。

特発性肺線維症(IPF)は間質性肺炎の中でも概して予後は悪いほうです。間質性肺炎の中にも多くの種類がありますが、すべての種類について十分なデータがあるとは言えません。一部の種類ではある程度のことがわかっています。例えば、IPFの次に多いと考えられる特発性NSIPでは5年生存率70%から80%程度、10年生存率でも70%近いとする報告が散見されます。

参考文献
・特発性肺線維症の治療ガイドライン 2017. 日呼吸会誌 44 (5), 2006. 359-367.
Travis WD, Idiopathic nonspecific interstitial pneumonia: report of an American Thoracic Society project. Am J Respir Crit Care Med 2008 ; 177 : 1338-1347.

8. 間質性肺炎になった人が気をつけるべき状態

急性増悪とは?

間質性肺炎の急性増悪(きゅうせいぞうあく)とは、ある程度安定して経過していた間質性肺炎が1ヶ月以内くらいの単位で両肺が急激に傷害され、呼吸が出来なくなっていく状態、と考えて頂ければ良いと思います。急性増悪は原因のハッキリしない間質性肺炎(特発性間質性肺炎: IIPs)の代表格である特発性肺線維症(IPF)で見られることが有名な病態でしたが、IPF以外の間質性肺炎でも起こることが分かっています。ただし、データとしてはIPFでのものが多いので、以下の記載は主にIPFについてのものとなります。

IPFの生存期間中央値は診断時からみて3年-5年ほどとされていますが、急性増悪はIPF患者さんにおいて最多の死因となっています。

急性増悪の原因は?

急性増悪がなぜ起きてしまうかは明らかでない場合がしばしばありますが、治療薬を減量した場合、大きな手術を行った場合、気管支肺胞洗浄(BAL)を施行した場合、胃酸を吸い込んでしまった場合、肺炎にかかった場合、肺にダメージを起こしうる薬剤や放射線を使用した場合、などがきっかけとなることもあります。

急性増悪は危険?

以前は初回の急性増悪を起こすと80%ほどはそのまま亡くなってしまうと言われていましたが、最近は50%ほどが生存して退院することが出来るという報告も出てきました。ただ、いずれにしても命に関わる非常に危険な状態であることは間違いないので、間質性肺炎の急性増悪と診断された場合には入院は必須と考えて良いでしょう。治療としては様々な工夫がされていますが、「ステロイドパルス療法」などのように大量のステロイドを点滴で使用する治療法が最も広く行われています。

急性増悪は予防できる?

急性増悪を防ぐために患者さんご自身、あるいはご家族で出来ること、というのは限られていますが、受動喫煙(副流煙)も含めてタバコを避けること、ワクチン接種や手洗いうがいなどを励行して風邪肺炎にかからないようにすること、などが挙げられます。また、息苦しさが数日から数週単位で悪化してきた場合や発熱した場合には早めに医療機関を受診するようにすることが、急性増悪の早期治療につながるかもしれません。

参考文献
・日本呼吸器学会, 特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き 改訂第3版, 南江堂, 2016

たばこはやめたほうが良い?

肺のためには禁煙したほうがよい、ということはおそらく皆さんお分かりと思います。

喫煙関連の特発性間質性肺炎(SR-ILD: smoking-related interstitial lung disease)に分類される剥離性間質性肺炎(DIP)や呼吸細気管支炎を伴う間質性肺炎(RB-ILD)は基本的に喫煙者の病気です。このように間質性肺炎の種類によっては喫煙しなければ滅多に発症しないものもあります。また、特発性間質性肺炎(IIPs)の中で最も人数が多いと考えられる特発性肺線維症(IPF)においても、喫煙者は1.6倍から2.9倍ほど罹患しやすくなることが報告されています。喫煙との関連性がさほど強いとは言われていないタイプの間質性肺炎においても、喫煙によって間質性肺炎とは別の問題として肺がダメージを受けるので、やはり禁煙はどのようなタイプの間質性肺炎でも重要です。データは多くありませんが、受動喫煙(副流煙)も可能な限り避けるべきでしょう。

このように喫煙の害をご説明しましたが、悪いと分かっていてもなかなか止められないのがタバコというものです。タバコを止められないのは、喫煙習慣の本質はニコチン依存という薬物依存症だからです。ご自身の強い意志で禁煙できる方は素晴らしいですが、タバコを吸ってしまうということは薬物依存症という病気のひとつと考えて医療機関を受診して、医療者と一緒に禁煙していきましょう。

自分の肺機能が悪いこと、胸部CTで肺がどれほどダメージを受けているか見ること、などにショックを受けて禁煙を決意する方もいます。吐いた息に含まれる一酸化炭素濃度を測定することで、禁煙の効果が速やかに目に見えることによりモチベーションを維持できる方もいます。ニコチンガムやニコチンパッチ、バレニクリン(チャンピックス®)などの薬物療法のおかげであまり苦労せずに禁煙できる方もいます。どんな治療が効果的かは個人差がありますが、禁煙外来は禁煙の大きな手助けになってくれるでしょう。

参考文献
Hubbard R, et al. Occupational exposure to metal or wood dust and aetiology of cryptogenic fibrosing alveolitis. Lancet 1996 ; 347 : 284-289.
Miyake Y, et al. Occupational and Environmental Factors and Idiopathic Pulmonary Fibrosis in Japan. Ann Occup Hyg 2005 ; 49 : 259-265.   

ワクチンは打ったほうが良い?

間質性肺炎の患者さんが、ワクチンを特に優先して打つべきかどうかということに関しては、現時点ではデータが乏しいと言わざるをえません。しかし、間質性肺炎において最多の死因であると考えられる急性増悪は、カゼや肺炎などをきっかけとして起こることがしばしばあります。したがって、手洗いうがいを励行すること、人混みなどで適宜マスクを着用することなどの感染対策に加えて、インフルエンザウイルスワクチンや肺炎球菌ワクチンといった予防接種をしっかりと受けておくことが推奨されます。

インフルエンザウイルスのワクチンは13歳以上の場合は、基本的には年に1回接種することが勧められています。ワクチンの効果が切れてしまうこと、毎年流行する型が違うこと、を考慮して、毎年予防接種をするのが良いでしょう。インフルエンザにかかることを100%予防出来るわけではありませんが、50%から80%くらいのインフルエンザ感染はワクチンで予防できるという報告があります。

肺炎球菌ワクチンには種類があります。プレベナー®というタイプのワクチンは一度接種していれば再接種は基本的に不要ですが、ニューモバックス®というタイプのワクチンは5年ごとに再接種が必要な点にも注意が必要です。高齢者で公費負担されているものはニューモバックス®です。

参考文献
Bridges CB, et al. Effectiveness and cost-benefit of influenza vaccination of healthy working adults: A randomized controlled trial. JAMA 2000 Oct 4,
Nichol KL, et al. The effectiveness of vaccination against influenza in healthy, working adults. N Engl J Med 1995 Oct 5,
Katayose M, et al. The effectiveness of trivalent inactivated influenza vaccine in children over six consecutive influenza seasons. Vaccine 2011 Feb 17

肺がんになりやすい?

間質性肺炎の患者さんのうち少なくとも一部は肺がんになりやすいと言えます。

間質性肺炎といっても多くの種類の原因がありますので一概には言えません。しかし全ての種類ごとにそれぞれ肺がんのかかりやすさを調べたデータがあるわけではありません。

原因不明の間質性肺炎(特発性間質性肺炎:IIPs)では高頻度で肺がんを発症することが分かっています。特にIIPsの中で最も多いと考えられる特発性肺線維症(IPF)においては5%から30%ほどの患者さんが肺がんにかかるとされ、間質性肺炎の無い人よりも7倍から14倍ほど肺がんにかかりやすいと言われています。IPFの患者さんにおいて死因の1位は急性増悪、2位はゆっくりと呼吸不全になっていくことですが、3位は肺がんといわれており死因の10%ほどを占めています。

このように間質性肺炎の患者さんは肺がんに注意する必要があるため、定期的に画像検査をして間質性肺炎の進行を評価するのと同時に、肺がんの有無に関してもみていくことが多いです。

間質性肺炎に合併した肺がんは治療に関しても難渋するケースが多いことが知られています。肺がんの主な治療は手術、放射線治療、化学療法抗がん剤)です。いずれを使う際も急性増悪の引き金になる可能性を常に考えながら治療していく必要があります。具体的には、手術後に肺がんはうまく切除できたけれども急性増悪をしてしまうケースはしばしばあります。また放射線治療や抗がん剤も使用後に急性増悪を起こすことがあります。手術や放射線治療をする場合にはリスクを覚悟で行う、抗がん剤を使用する場合には急性増悪を起こしにくいタイプの抗がん剤を慎重に選んで使用していく、ということになるでしょう。実際には、明らかに目立つ間質性肺炎がある場合には、肺に対する放射線治療は避けられることが多いです。

参考文献
Ozawa Y, et al. Cumulative incidence of and predictive factors for lung cancer in IPF. Respirology 2009 ; 14 : 723-728.
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9. 間質性肺炎は難病?

難病指定とは?

難病の方へ向けた医療費助成制度とは、「難病の患者に対する医療等に関する法律」という法律に基づく制度で、まだ治療法が確立していない難病患者さんのデータ収集を効率的に行って治療研究を推進すること、効果的な治療法が確立されるまでの間、経済的な負担が大きい患者さんを支援すること、を目的とした制度です。したがって、既にある程度のデータが集まっていて治療法がそれなりに確立されているような病気では、たとえ難治性の病気であってもこの制度の対象とならないものも多いです。2020年7月現在、333疾患が指定されています。

間質性肺炎に関しては、間質性肺炎を起こしている原因が分かっているようなタイプのものについては難病指定されていません。例えば、放射線や薬剤による間質性肺炎、膠原病による間質性肺炎、何らかの物質の吸入により起きている間質性肺炎などは原因の分かっているので医療費助成制度の対象ではありません。一方で、原因のよく分からない間質性肺炎、すなわち特発性間質性肺炎(IIPs)は難病指定されています。IIPsの患者さんは、まずはご自身の病気がこの難病指定に該当するのかどうか、主治医に確認してみると良いでしょう。注意点としては、診断はIIPsであってもそれなりに病気が進行した重症の方でないと難病指定は受けられず、この制度による直接の恩恵は乏しいということが挙げられます。例としては、あまり正確な表現ではありませんが、普段の生活の中でも酸素を持続的に使わないといけないような患者さん、つまり在宅酸素療法(HOT: home oxygen therapy)が必要なくらいの重症度が難病指定対象の目安となります。

実際に難病指定を申請する場合、つまり特定医療費受給者証の交付を申請する場合には、担当医に確認した上で都道府県のホームページまたは保健所か自治体に行き「臨床調査個人票」を入手します。その後、「難病指定医」に臨床調査個人票を記入してもらってから、お住いの市区町村窓口へ提出することで申請が完了します。ここでの注意点としては、難病指定医の資格を持った医師はどの病院にでも居るわけではありません。かかりつけの病院に難病指定医の医師が居るかどうかを確認しておきましょう。仮にいない際、臨床調査個人票を書いてもらう場合には、難病指定医が居る病院へと紹介してもらう必要があるでしょう。また他の注意点として、申請しても必ずしも審査が通るとは限らないこと、認定の結果が出るまで数ヶ月かかることもあるということが挙げられます。

難病指定により受けられる公的支援

どの程度の補助が受けられるかは世帯の所得によっても変わってきます。しかし、一般的には認定を受けている病気、およびその病気に付随して起きている病気に関する医療費や一部の介護サービス等に関して大きな補助を受けることができます。たとえば医療費がもともと3割負担の場合には2割負担になります。また月の医療費上限が定められます。つまり所得や助成を受けている期間、人工呼吸器装着の有無などに応じて月々の支払い上限が1,000円から30,000円の範囲内で定められます。上の例に当てはまるかどうかなど詳細は個々人によるので、実際に給付を受けられる場合には、受給者証を発行する都道府県の窓口や保健所でお尋ねください。

以下に例として、認定を受けた病気、およびその病気に付随して起きている病気に対するサービスで、助成対象となる内容の例を列挙します。

  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 居宅療養管理指導
  • 介護療養施設サービス
  • 介護予防訪問看護
  • 介護予防訪問リハビリテーション
  • 介護予防居宅療養管理指導

などがあります。逆に、助成対象とはならない費用の例として、認定外の病気やケガによる医療費、保険診療外の治療費、入院時のベッド差額代・個室料、入院時の食費、介護保険での訪問介護の費用、医療機関までの交通費、補装具の作成費用、はり・きゅう・あんま・マッサージの費用、認定申請時等に提出する診断書の作成費用、療養証明書の証明作成費用、などが挙げられます。

難病医療費助成制度以外の補助は受けられる?

間質性肺炎の患者さんにとって、難病医療費助成制度は仮に認定されれば非常に大きな経済的補助となるでしょう。しかし、特発性ではない、すなわち原因が分かっている間質性肺炎の患者さんは認定が受けられず、特発性間質性肺炎(IIPs)でもある程度以上病気が進行しないと認定が受けられないのが現状です。

その一方で間質性肺炎も新薬が続々と出てきており、治療に使われる抗線維化薬や免疫抑制薬は高価なものが増えてきています。例えば2015年8月に承認されたニンテダニブ(商品名:オフェブ®)は特発性肺線維症(IPF)の進行抑制や急性増悪予防に優れた成績を示していますが、単純に1ヶ月の薬価を計算すると通常用量で40万円ほどになります。そこで、難病医療費助成制度以外で間質性肺炎の患者さんに有益と思われる補助制度の例を挙げてみます。

■高額療養費制度

同一月に高額の治療費を支払った場合に、所得に応じて自己負担の上限が決められている制度です。自己負担限度額を超える支払い分に関しては払い戻しがあります。所得の少ない方や、オフェブ®、ピレスパ®、ネオーラル®、プログラフ®、オプスミット®、などといった高額な治療薬を使用している方、入院治療をした方などは、対象となるか医療機関の窓口などで相談してみましょう。
高額療養費制度について詳しくは厚生労働省のウェブサイトやこちらの「コラム」による説明を参考にしてください。

■生活保護制度

医療費の自己負担なく治療を受けることができます。

■介護保険制度

要介護度の認定は、間質性肺炎がどの程度重症であるかとは関係なく、どのくらい介護に手がかかるかをみて判断されるので、間質性肺炎は軽症だけれどもご高齢などの理由で介護が必要な方には特に申請をお勧めしたいと思います。65歳以上の患者さんでは介護が必要になるほどの状態であれば申請してみましょう。

■身体障害者福祉関係制度

ある程度進行した間質性肺炎の患者さんでは身体障害者福祉手帳(身障者手帳)が給付されることがあります。認定される等級によってもサービスは異なりますが、身障者手帳があれば保険医療費の免除、医療機器の貸与、障害手当などの給付、免税や減税、交通費の割引、NHK放送受信料の減免、市町村障害者生活支援事業・身体障害者ホームヘルプサービス事業を受けられる、公営住宅の優先入居、など様々なサービスが受けられます。

適切なサポートを受けるためにも、認定されそうな間質性肺炎患者さんにはぜひ身障者手帳の給付申請をお勧めします。ご自身が認定されそうかどうか、かかりつけ医に一度聞いてみるとよいでしょう。認定されそうならば、役所の障害者福祉担当窓口で「身体障害者診断書・意見書」の用紙を入手して、かかりつけ医療機関に提出して指定医師に記載してもらいます。ここでのポイントとして、指定医師でなければこの診断書・意見書は書けません。医師ならば誰でも書けるわけではないことに注意してください。かかりつけの医師が指定医師でない場合には、その病院で診断書を出してもらえる医師に書いてもらうか、障害福祉担当窓口で書いてくれる医師を教えてもらうことができます。

ちなみに間質性肺炎などの呼吸器疾患による身障者認定の級数は1級、3級、4級の3種類があります。どの級数になるかは総合的な判断になるので難しいところではありますが、客観的な評価として以下のような目安が重視されています。

  • 1級:スパイロメトリーでの%1秒量が20%以下、または動脈血液ガス分析でPaO2が50Torr以下。
  • 3級:スパイロメトリーでの%1秒量が20%を超えるが30%以下、または動脈血液ガス分析でPaO2が50Torrを超えるが60Torr以下。
  • 4級:スパイロメトリーでの%1秒量が30%を超えるが40%以下、または動脈血液ガス分析でPaO2が60Torrを超えるが70Torr以下。

スパイロメトリーや動脈血液ガス分析に関しては別項で詳細に説明していますが、大ざっぱにはスパイロメトリーは肺活量検査のこと、動脈血液ガス分析は血液中酸素濃度測定のことと思ってください。したがって、間質性肺炎のため身障者手帳の交付を申請する場合には、基本的にスパイロメトリー(肺機能検査)と動脈血液ガス検査が必要になります。上記の基準はなかなか厳しいものです。ご自身でスタスタと歩いて病院に通って来られるような患者さんでは基本的に4級の目安に当てはまることも少ないでしょう。

■障害者基礎年金、障害者厚生年金制度

身障者認定の級数が1級または2級の方が、一定の条件を満たした場合に65歳未満でも年金を受け取ることが出来るようになる制度です。呼吸器疾患による身障者認定は1級、3級、4級しか無いので、間質性肺炎の場合には1級に認定された場合この給付が受けられる可能性があります。間質性肺炎と診断されるまでに年金を納めてきたか、診断されてからどのくらいの期間が経過しているか、在宅酸素療法を行っているかどうか、などによって受給資格も変わってくるので年金の申請窓口、病院の窓口でよく相談する必要があるでしょう。提出書類の数も多く、たびたび病院や年金窓口へ出向く必要も多くなりがちで面倒と感じてしまう方が多いですが、収入や財産に依らず受給資格が得られ、非高齢者が働きながらでも受給できる貴重な制度なので積極的に活用したいところです。