かんしつせいはいえん
間質性肺炎
肺の中の空気の通り道ではなく、肺の支持組織(間質)に炎症が起きた状態
17人の医師がチェック 229回の改訂 最終更新: 2022.10.01

間質性肺炎の注意点:急性増悪、余命、感染予防のワクチンなど

間質性肺炎といっても様々なタイプの間質性肺炎がありますが、ここでは間質性肺炎と付き合いながら生きていくために患者さんやご家族が気をつけること、知っておいてほしいことなどを中心に解説していきます。

1. 間質性肺炎と言われたら日常生活の注意はある?

たばこは吸ってはいけない?

肺のためには禁煙した方がよい、ということはおそらく皆さんお分かりと思います。

喫煙関連の特発性間質性肺炎(SR-ILD: smoking-related interstitial lung disease)に分類される剥離性間質性肺炎(DIP)や呼吸細気管支炎を伴う間質性肺炎(RB-ILD)は基本的に喫煙者の病気です。このように間質性肺炎の種類によっては喫煙しなければ滅多に発症しないものもあります。また、特発性間質性肺炎(IIPs)の中で最も人数が多いと考えられる特発性肺線維症(IPF)についても、喫煙者は1.6倍から2.9倍ほど罹患しやすくなることが報告されています。喫煙との関連性がさほど強いとは言われていないタイプの間質性肺炎においても、喫煙によって間質性肺炎とは別の問題として肺がダメージを受けるので、やはり禁煙はどのようなタイプの間質性肺炎でも重要です。データは多くありませんが、受動喫煙(副流煙)も可能な限り避けるべきでしょう。

このように喫煙の害をご説明しましたが、悪いと分かっていてもなかなか止められないのがタバコというものです。タバコを止められないのは、喫煙習慣の本質はニコチン依存という薬物依存症だからです。ご自身の強い意志で禁煙できる方は素晴らしいですが、タバコを吸ってしまうということは薬物依存症という病気のひとつと考えて医療機関を受診して、医療者と一緒に禁煙していきましょう。

自分の肺機能が悪いこと、胸部CTで肺がどれほどダメージを受けているか見ること、などにショックを受けて禁煙を決意する方もいます。吐いた息に含まれる一酸化炭素濃度を測定することで、禁煙の効果が速やかに目に見えることによりモチベーションを維持できる方もいます。ニコチンガムやニコチンパッチ、バレニクリン(チャンピックス®)などの薬物療法のおかげであまり苦労せずに禁煙できる方もいます。どんな治療が効果的かは個人差がありますが、禁煙外来は禁煙の大きな手助けになってくれるでしょう。

参考文献
Hubbard R, et al. Occupational exposure to metal or wood dust and aetiology of cryptogenic fibrosing alveolitis. Lancet 1996 ; 347 : 284-289.
Miyake Y, et al. Occupational and Environmental Factors and Idiopathic Pulmonary Fibrosis in Japan. Ann Occup Hyg 2005 ; 49 : 259-265.

ワクチンは打ったほうが良い?

間質性肺炎の患者さんがワクチンを特に優先して打つべきかどうかに関しては、現時点ではデータが乏しいと言わざるをえません。しかし、間質性肺炎において最多の死因であると考えられる急性増悪(きゅうせいぞうあく)は、カゼや肺炎などをきっかけとして起こることがしばしばあります。したがって、手洗いうがいを励行すること、人混みなどで適宜マスクを着用することなどの感染対策に加えて、インフルエンザウイルスワクチンや肺炎球菌ワクチン、新型コロナウイルスワクチンといった予防接種をしっかりと受けておくことが推奨されます。

インフルエンザウイルスのワクチンは13歳以上の場合は、基本的には年に1回接種することが勧められています。ワクチンの効果が切れてしまうこと、毎年流行する型が違うこと、を考慮して、毎年予防接種をするのが良いでしょう。インフルエンザにかかることを100%予防出来るわけではありませんが、50%から80%くらいのインフルエンザ感染はワクチンで予防できるという報告があります。

肺炎球菌ワクチンには種類があります。プレベナー®というタイプのワクチンは一度接種していれば再接種は基本的に不要ですが、ニューモバックス®というタイプのワクチンは5年ごとに再接種が必要な点にも注意が必要です。高齢者で公費負担されているものはニューモバックス®です。

参考文献
Bridges CB, et al. Effectiveness and cost-benefit of influenza vaccination of healthy working adults: A randomized controlled trial. JAMA 2000 Oct 4,
Nichol KL, et al. The effectiveness of vaccination against influenza in healthy, working adults. N Engl J Med 1995 Oct 5,
Katayose M, et al. The effectiveness of trivalent inactivated influenza vaccine in children over six consecutive influenza seasons. Vaccine 2011 Feb 17

運動はしないほうが良い?

運動をすることによって間質性肺炎そのものが良くなる、あるいは悪くなるというデータはありません。息切れがひどくて動けない、担当医からあまり動かないように指示されている、というようなケースで無ければ基本的には、無理のない範囲で運動することは良い方向に働くことが多いと考えられます。ただし、肺や心臓の状態によっては長距離走は止めたほうが良い、ダイビングはしないほうが良い、などのアドバイスをすることもあるので、担当医に確認したほうがそれぞれの患者さんに適したベストな回答をもらえるでしょう。

間質性肺炎の患者さんは息切れのためにあまり動かなくなり、それによって身体能力の低下、うつ状態、社会的な孤立、などを招くことがしばしばあります。するとますます呼吸困難感が増していくという悪循環に陥ってしまいます。その対策として呼吸リハビリテーションがあります。

呼吸リハビリというと、呼吸に必要な筋肉のトレーニングをイメージされる方が多いかと思いますが、実際には全身のコンディショニングや、足など全身の筋力トレーニングを行っていきます。また、痰をうまく吐き出す訓練なども行います。最初はクリニックあるいは病院で専門の理学療法士から正しい呼吸リハビリの方法を教えてもらいましょう。動画サイトでリハビリ方法を紹介しているものもあるので、復習として見てみるのも良いでしょう。

在宅酸素療法が必要な重症の患者さんにも呼吸リハビリはもちろん有効ですが、なるべく早く始めるほうがより有効とされています。息切れもありなかなかモチベーションも上がらないかもしれませんが、リハビリを続けることで筋力の増強、運動能力の上昇、呼吸の辛さの緩和、生活の質の向上が得られることが多くのデータで示されており、ぜひ積極的に取り組んでいきたいものです。

参考文献
Nishiyama O, et al. Effects of pulmonary rehabilitation in patients with idiopathic pulmonary fibrosis. Respirology 2008 ; 13 : 394-399.
Anne E. Holland. et al. Predictors of benefit following pulmonary rehabilitation for interstitial lung disease. Respir Med 2012 ; 106 : 429-435.
Dowman L, et al. Pulmonary rehabilitation for interstitial lung disease. Cochrane Database Syst Rev 2014 ; 10 : CD006322.

肺がんになりやすい?

間質性肺炎の患者さんのうち少なくとも一部は肺がんになりやすいと言えます。

間質性肺炎といっても多くの種類の原因がありますので一概には言えません。しかし全ての種類ごとにそれぞれ肺がんのかかりやすさを調べたデータがあるわけではありません。

原因不明の間質性肺炎(特発性間質性肺炎:IIPs)では高頻度で肺がんを発症することが分かっています。特にIIPsの中で最も多いと考えられる特発性肺線維症(IPF)においては5%から30%ほどの患者さんが肺がんにかかるとされ、間質性肺炎の無い人よりも7倍から14倍ほど肺がんにかかりやすいと言われています。IPFの患者さんにおいて死因の1位は急性増悪、2位はゆっくりと呼吸不全になっていくことですが、3位は肺がんといわれており死因の10%ほどを占めています。

このように間質性肺炎の患者さんは肺がんに注意する必要があるため、定期的に画像検査をして間質性肺炎の進行を評価するのと同時に、肺がんの有無に関してもみていくことが多いです。

間質性肺炎に合併した肺がんは治療に関しても難渋するケースが多いことが知られています。肺がんの主な治療は手術、放射線治療化学療法抗がん剤)です。いずれを使う際も急性増悪の引き金になる可能性を常に考えながら治療していく必要があります。具体的には、手術後に肺がんはうまく切除できたけれども急性増悪をしてしまうケースはしばしばあります。また放射線治療や抗がん剤も使用後に急性増悪を起こすことがあります。手術や放射線治療をする場合にはリスクを覚悟で行う、抗がん剤を使用する場合には急性増悪を起こしにくいタイプの抗がん剤を慎重に選んで使用していく、ということになるでしょう。実際には、明らかに目立つ間質性肺炎がある場合には、肺に対する放射線治療は避けられることが多いです。

参考文献
Ozawa Y, et al. Cumulative incidence of and predictive factors for lung cancer in IPF. Respirology 2009 ; 14 : 723-728.
American Thoracic Society; European Respiratory Society, American Thoracic Society/European Respiratory Society International Multidisciplinary Consensus Classification of the Idiopathic Interstitial Pneumonias. Am J Respir Crit Care Med 2002 ; 165 : 277-304.
Natsuizaka M. et al. Epidemiologic Survey of Japanese Patients with Idiopathic Pulmonary Fibrosis and Investigation of Ethnic Differences. Am J Respir Crit Care Med 2014 ; 190 : 773-779.

間質性肺炎は遺伝する?

間質性肺炎の患者さんやそのご家族にとって、間質性肺炎が遺伝するものなのかどうかというのは非常に気になる問題だと思います。一言で結論を述べるならば、遺伝性がある場合と無い場合がある、ということになります。

間質性肺炎という病気は、肺の間質にダメージを与えていくような病気の総称なので、どのような原因・原疾患で間質性肺炎が起きているかによって遺伝のしやすさは変わってきます。例えば関節リウマチという病気は間質性肺炎を合併しやすいことが分かっていますが、関節リウマチの患者さんが血縁にいると少しだけ関節リウマチにかかってしまう可能性が上がると言われています。ということは間質性肺炎にかかってしまう可能性も少しだけ上がってしまうと言えるでしょう。他の例としては、放射線治療によって間質性肺炎になってしまった方が血縁者にいても、放射線治療を受けなければ特別に間質性肺炎にかかりやすくなることはないでしょう。このように、間質性肺炎の原因によって遺伝するかどうかは変わってきます。

原因がよくわからないタイプの間質性肺炎、すなわち特発性間質性肺炎(IIPs)が遺伝するかどうかについては現在研究が進められています。欧米の研究では、IIPsのうち0.5%から3.7%ほどが家族性の間質性肺炎であると報告されています。したがってそれほど遺伝性が高いわけではない、と言えそうです。SP-C遺伝子、ABC-A3遺伝子、TERT遺伝子、TERC遺伝子、ELMOD2遺伝子変異、などと呼ばれる遺伝子および遺伝子変異は家族性間質性肺炎の原因となることが分かってきています。ただし、特殊な検査なので一般的な医療機関では調べることはできず、またそもそも直接治療に結びつくわけではないので、研究目的以外に調べられることは基本的にありません。

参考文献
Marshall RP, et al. Adult familial cryptogenic fibrosing alveolitis in the United Kingdom. Thorax 2000 ; 55 : 143-146.
du Bois RM. Genetic factors in pulmonary fibrotic disorders. Semin Respir Crit Care Med 2006 ; 27 : 581-588.

2. 間質性肺炎の名医はどこにいる?

何をもって名医とするかはとても難しいところです。手術をする外科医であれば、手術が上手いか下手かというのはそれなりの指標になるかもしれませんが、内科医の場合には何をもって名医とするか、さらに難しいでしょう。

内科の若手医師は勉強熱心なことも多く、最新の治療や、間質性肺炎以外の分野の知識が豊富かもしれません。普段からよく自分で手を動かしているぶん、処置がうまいかもしれません。一方で、ベテランの先生は長年の経験があって、医学書には書かれていないような面での勘が鋭いかもしれません。患者さんへの接し方にも余裕があるかもしれません。

ただ、上に挙げたような医師の差も、結局は医師個人の特徴であり、若手かベテランか、有名かどうかで判断できるようなものではありません。無名でも立派な診療をしている医師は山ほどいますし、有名でも例えば研究に没頭して、あるいは管理者としての業務が忙しくて患者さんを熱心に診る余裕のない医師だっているでしょう。

基本的には日本で保険診療を行っている医師はガイドラインに記載されている内容に基づいて治療しています。あとは患者さんやご家族が担当医をどれくらい信頼できるか、という問題ではないでしょうか。

日常的に間質性肺炎の診療をしている医師であって、患者さんやご家族が信頼して話ができる医師であれば、それは患者さん・ご家族にとっての名医と言えるでしょう。

3. 間質性肺炎は呼吸器専門医に診てもらったほうが良い?

間質性肺炎の患者さんが最も多い診療科は呼吸器内科です。純粋に間質性肺炎だけを診てもらうのであれば呼吸器内科にかかるのが一番よいでしょう。ただ、例えば膠原病(こうげんびょう)と呼ばれるタイプの病気に伴って間質性肺炎が起きている場合には膠原病内科、アレルギー科、リウマチ科、などの診療科が適していることもありますし、強皮症(きょうひしょう)という病気に伴う間質性肺炎は皮膚科で主に診られているようなこともあります。このようにケースバイケースとしか言えませんが、間質性肺炎のことが気になって、質問できるかかりつけ医がいないような状況であれば、呼吸器内科を受診するのが無難と思います。

「呼吸器専門医」と言うと、一般的には日本呼吸器学会の資格試験に合格して認定を受けている医師を指します。呼吸器の病気をある程度以上診療した経験があり、テストに合格しているという点で、安心できる指標の1つになるかもしれません。ただし、この資格を得るためには特定の施設である程度以上の期間勤務して試験を受ける必要があるので、若手ではどんなに優秀でもこの資格がとれなかったり、ベテランでもあまりこの資格に重きをおかずに資格を取得しない医師もいます。なので、絶対的なものではなく、参考のひとつとしてとらえて頂くとよいかと思います。

4. 間質性肺炎を治すにはどんな病院にかかればよい?

まず、そもそも間質性肺炎が治るものかどうか、というのは難しい問題です。間質性肺炎という病名は様々な病気をまとめてそう呼んでいるだけなので、少なくともどのようなタイプの間質性肺炎であるかが分からないと、治る間質性肺炎かどうかは分かりません。

例えば薬剤が原因で起きた薬剤性の間質性肺炎であれば、その薬剤を中止すれば再発することは少ないですし、原因不明の間質性肺炎の代表格である特発性肺線維症では完治することは無いと言えるでしょう。ただ、完治しない間質性肺炎でも何十年もかけてゆっくり悪くなっていく、あるいは悪化はしないようなケースも多々あるので、どんどん悪くなっていくものだ、と決めつけて落胆する必要は無いと思います。

どんな病院にかかるべきか、という点に関しては、呼吸器内科がある病院というのが無難な答えとなるでしょう。間質性肺炎の患者さんが最も多い診療科は呼吸器内科なので、純粋に間質性肺炎だけを診てもらうのであれば呼吸器内科にかかるのが一番です。ただ、例えば膠原病(こうげんびょう)と呼ばれるタイプの病気に伴って間質性肺炎が起きている場合には膠原病内科、アレルギー科、リウマチ科、などの診療科が適していることもありますし、強皮症(きょうひしょう)という病気に伴う間質性肺炎は皮膚科で主に診られているようなこともあります。このようにケースバイケースではありますが、間質性肺炎のことが気になって、質問できるかかりつけ医がいないような状況であれば、呼吸器内科を受診するのが無難と思います。

また、いま診てもらっている医療機関での診療に不安があるならば、他病院の医師の話も参考までに聴いてみたいなど、希望を担当医に率直に伝えてみてはどうでしょうか。現在の担当医も、いまの検査・治療で問題ないと判断して診ているはずなので、大きく治療方針が変わるようなことは稀ですが、希望があれば必要に応じてもっと大きな病院などを紹介してくれると思います。

5. 末期の間質性肺炎と言われたら何を考えればいい?

間質性肺炎が著しく進行すると、息苦しさや咳など呼吸に関連した苦しい症状はもちろん、疲労感、睡眠障害、恐怖感、うつ状態、活動性の低下、経済的な困窮、社会的な孤立、など様々な辛い結果につながる恐れがあります。呼吸の辛さや、活動性低下の程度、うつ症状は肺がん以上かもしれないと言われることもあります。しかし日本のホスピスは現状では主にがんを対象としています。現時点(2018年3月時点)では、保険診療上でホスピスのケアはがんとエイズに対して認められますが、間質性肺炎はカバーされていません。そのため、間質性肺炎終末期の患者さんの苦痛にどのように対処していくか、ということに関して決まった対処方法は乏しいのが現状です。

薬やリハビリなどで間質性肺炎そのものの治療をしっかりやっていくことはもちろんですが、それでも呼吸が荒く、苦しさがひどい場合には、飲み薬や注射でのモルヒネなどを使用することもあります。モルヒネというと「使うとすぐに亡くなってしまう」「使うともう会話ができなくなる」といった怖いイメージを持たれる方も多いと思います。がんの場合と比べて、間質性肺炎の終末期におけるモルヒネの使い方は確かに難しいところです。モルヒネには呼吸をゆっくりにさせる作用がある点には注意するべきと考えられます。

適切な量のモルヒネを使うことによって、ひどく意識状態を悪くしてしまうこと無く、息苦しさを緩和しながら厳しい状態を過ごしやすくすることができます。適切な緩和ケアを受けることによって、必要以上の苦しみを味わうこと無く、人間らしく過ごすことがこの段階では大事ではないでしょうか。

治療の面以外にも、終末期に際してどのように対応していきたいのかを考えておく必要があります。間質性肺炎という病名はがんのように耳にする機会が多くないかもしれませんが、実際には毎年多くの方が間質性肺炎で亡くなっています。末期の間質性肺炎と言われるような状態が死に向かうものであることを認識したうえで、自分がどれくらい危ない状態なのかを的確に認識しておくことは大切です。

自分が死に近づきつつあると考えるのは辛いことです。しかし、苦痛を避けてよりよい状態で終末期を迎えるためには、あらかじめ「もしもの時にはどうするか」を考えておくことが役に立ちます。極端な例で言えば「治療の効果が得られず死が目前に迫った時に、心肺蘇生措置を希望するかどうか」といったことを、リビングウィルという文書に書き記して医療者に伝えることで、知的・精神的判断能力が保たれているうちに自分の意志で治療方針を選べます。

終末期の治療を決めるのは患者さん本人だけではありません。患者さんを支える医療者や家族にとっても、間質性肺炎の自然経過として死があるという認識をご本人と共有することが重要です。判断の前提となる病状に関しては医療者と十分に話し合ってください。リビングウィルを作成するときにもあらかじめ家族などと相談しておくことが望ましいでしょう。

終末期の治療について一度意志表示をしてもあとから取り消すことはできます。終末期が近付くと想定外の事態はえてして起こります。患者さんや家族などの価値観に合う治療方針はどんなものかをよく考えてください。

6. 間質性肺炎の生存率、余命は?

間質性肺炎といっても実は非常に多くのタイプの病気の総称であり、どのようなタイプの間質性肺炎であるかが分からないと生存率や余命に関してお答えすることはできません。

例えば薬剤が原因で起きた薬剤性の間質性肺炎であれば、その薬剤を中止すれば再発することは少ないですし、原因不明の間質性肺炎の代表格である特発性肺線維症(IPF)では診断されてから3年くらいの余命になることが一般的とは言われています。ただし、どのタイプの間質性肺炎か正確に診断をつけることは非常に難しいことであり、一度つけられた診断名が経過によって違う診断名に変わることもありえます。また、たとえ平均3年で亡くなる病気でも患者さんによっては10年20年と生きられる方もいらっしゃいます。病名を告げられただけで必要以上に落ち込むよりは、担当医と一緒に治療を前向きに考えていきましょう。

参考文献

・日本呼吸器学会, 特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き 改訂第3版, 南江堂, 2016

7. 災害時に備えてできることは?

地震などの災害時には住宅の損壊、停電、居住区域の孤立、物資や水道の途絶など様々な厳しい状況が想定されます。家具を固定しておく、高所にある物品は落下防止処置を行う、備蓄食料や避難用具を準備しておく、などの一般的な災害対策はもちろん必要ですが、間質性肺炎の患者さんでは災害時でも薬が切れないように準備しておく、在宅酸素(HOT)を使っている患者さんは緊急時の業者・医療機関連絡先を確認しておく、パニックにならないように心構えをシミュレーションしておく、なども重要です。スムーズに行動・避難できるように普段から運動療法、呼吸トレーニングなどリハビリをしっかり行っておくことも当然大事です。

実際に災害が起きた際、もちろん大変な状況であることには変わりませんが、普段からよく準備ができている軽症間質性肺炎の患者さんであれば、その困難は他の被災者と大差ないかもしれません。しかし、在宅酸素療法(HOT)を使用しているような重症間質性肺炎の患者さんでは大きな困難に直面することになります。東日本大震災の時には、多くのHOT患者さんが近隣の病院や市役所に酸素を求めて避難する現象が見られました。これに対して、基幹病院が酸素業者と速やかに連携して「HOTセンター」を用意して対応しました。

この教訓を踏まえて、今後は地域のHOT患者さんを把握しておき、災害時に患者さんに医療機器の使用を提供できるような拠点の整備を進めようとする動きがあります。現状では整備不十分な地域も多いと言わざるを得ませんが、実際に災害が起きたら、HOT患者さんは、一般的な対応に加えて、これらの機器の使用をできる拠点を速やかに探す必要があります。