狭心症の症状:胸の痛み・締め付けられる感じ、肩や腕の痛み、吐き気など
狭心症の代表的な症状は胸の締め付けられる感じや胸の痛みですが、それ以外にも症状が出ることがあります。このページでは狭心症の人が経験しやすい症状について説明します。
目次
1. 狭心症に前兆はあるのか?
狭心症には必ず前兆があるわけではありません。特に何の前触れもなく突如として胸痛が襲ってくることも少なくありません。一方で、狭心痛(胸の痛みや締め付けられる感じ)を自覚する前に、前兆として何らかの不調を感じることがあります。狭心症の前触れとして感じられることの多いものを以下に示します。
- 肩が痛い、違和感がある
- 腕が痛い、違和感がある
- 胃がムカムカする
- 吐き気がする
- 冷や汗が出る
これらの前兆は運動したときに出現しやすいです。
また、狭心症は次に当てはまる人がかかりやすいと言われていますので注意が必要です。
胸や肩に違和感があっても痛みがなければ大丈夫、などと思ってしまいがちです。しかし、狭心症の前兆に似ていると感じる人や、狭心症を起こしやすい背景がある人は、一度医療機関で検査してもらうことをおすすめします。
2. 胸が痛い・胸が締め付けられる
狭心症では胸痛が起こることが多いです。胸痛の様子は、強く締め付けられるような痛みであったり、ぎゅっと圧迫されるような痛みであったりと、感じ方はさまざまです。狭心症ではキリキリとした痛みは少なく、圧迫や締め付けられる感じの痛みが多いと言われています。しかし、痛みの様子だけで狭心症かどうかを判断することは難しいです。
一方で、胸が痛くなる病気は狭心症の他にもたくさんあります。その一例を次に示します。
これらは痛みの出方が異なることが多いです。しかし、痛み方だけでどの病気によるものか特定するのは困難です。そのため、
胸が締め付けられる感覚は「胸が痛い」という症状に似ています。胸がぎゅーっと締め付けられる感覚を胸が痛いと表現する人もいます。また、ときに窒息する感じや喉が詰まる感じという風に表現する人もいます。この症状が出るのは心臓に栄養や酸素が足りないことが原因です。
3. 肩や腕が痛い、だるい
狭心症に関連して肩や腕が痛くなることがあります。病気がある場所と別の場所が痛むこの状態を「放散痛」といいます。放散痛は狭心症や心筋梗塞の他にも胆石症や
狭心症では、胸痛が肩や腕に放散した形で痛みが起こります。心臓は身体の中心よりもやや左側にありますが、左右どちら側にも放散します。
ですから、右肩や右腕の痛みがあったとき、心臓と反対側だから大丈夫と考えるのは早計です。原因不明の痛みが肩や腕にある場合には、一度医療機関を受診して調べてもらったほうが良いです。
4. 歯が痛い
上で述べた肩や腕の痛みと同じく、歯に痛みが走ることがあります。胸痛のない狭心症や心筋梗塞はありえますので、なんだか奥歯が痛いなと思ったのに歯医者で異常がないと言われた人は要注意です。実は心筋梗塞が隠れているということもありますので、歯痛が治らなかったり繰り返されたりする場合には、歯以外に原因がないかを調べてもらってください。
5. 気持ち悪い
狭心症で気持ち悪くなったり吐いてしまったりすることがあります。なんだかよくわからないけれど気持ち悪いという状況は要注意です。
一方で、吐き気が出てきたら狭心症が極めて疑わしいとはなりません。急性胃腸炎や逆流性食道炎などの他の病気でも吐き気や嘔吐は起こるからです。下痢や腹痛などの他の症状があるかどうかや持病があるかどうかなどを確認することもポイントです。吐き気に下痢が加わっているような状態では狭心症よりも急性胃腸炎のほうが疑わしくなります。
6. だるい
狭心症が進行して心筋梗塞になると、心機能が低下して心不全になり、全身にだるさを覚えることがあります。つまり、狭心症でだるさを感じた場合には、すでに心不全に至っている可能性があります。(心不全の症状に関してもっと詳しく知りたい人は「心不全の症状について」を参考にして下さい。)
また、腕や肩にだるさを覚えることがあります。実際に腕や肩に異常が出ているわけではありませんが、放散痛のような形でだるさを感じると考えられます。
7. 息が切れる
息切れは多くの病気で起こります。例えば、喘息やCOPDのように肺の病気で息切れが起こることもあれば、過換気症候群のように精神的な病気でも息切れを感じます。
狭心症でも息切れを感じることがあります。狭心症に伴う強い胸痛を覚えると、息苦しさを感じて息が乱れます。すると息が切れるような感覚になります。また、狭心症が重症になってしまい心不全になると、肺や全身に血液がうまくめぐらなくなって酸欠になることで息切れを感じます。(別ページに心不全の息切れに関する詳しい説明があるので参考にしてください。)
8. ふらつき
狭心症でふらつきを覚えるパターンは大きく分けて2つあります。
①胸痛によって
9. 意識障害(意識もうろう)
狭心症や心筋梗塞で意識がもうろうとする場合は急を要します。心機能が低下して脳への血流が減ってしまっていることが疑われます。救急車を呼んでいい状況です。できるだけ早く医療機関へ向かってください。
10. 特に気をつけなければならない症状
狭心症は「心臓が必要としている血流量」と「
細かく言えば、運動によって心臓が送り出す血液量が増えるので冠動脈の血流も増えます。そのため上のイメージ図は身体の状態によって少しゆらぎがありますので、あくまで簡略化したものと考えて下さい。
図のように、狭心症では「心臓が必要としている血流量」と「冠動脈の血流量」のバランスが乱れることで症状が出現します。そこで、心筋梗塞に近付いていることを疑わせる症状には注意が必要です。以下で説明します。
安静にしていても症状が出るときは要注意
狭心症は安静にしていれば症状が出ない状態(労作性狭心症)であれば比較的軽症です。一方で、安静にしていても症状が出る状態(不安定狭心症)は危険なサインです。その状態からさらに冠動脈が細くなり途絶えると心筋梗塞になります。すると強い胸痛が長時間(30分以上が目安)持続します。
胸の痛みや締め付けられる感じが繰り返される人は要注意
冠動脈が多少細くなっても症状は出ません。冠動脈の血流量には余裕があるためこうしたことが起こるのですが、さらに細くなると段々と胸痛などの症状が出現するようになります。この状態になると、心臓に負担がかかるたびに胸痛を繰り返すようになります。
このように胸痛を繰り返す状態は冠動脈がある程度狭くなっているサインの可能性があります。
明け方に胸痛や胸が締め付けられる感じが出る人は要注意
冠動脈が痙攣(けいれん)することで、冠動脈の血流が減ってしまい、胸の痛みや締め付けられる感じが起こることがあります。これを冠攣縮性狭心症(異型狭心症)と言います。
このタイプの狭心症は明け方に起こりやすいことがわかっています。そのため明け方の胸部症状は狭心症の可能性があります。一方で、明け方の胸部症状は逆流性食道炎などの他の病気でも起こるため症状から判別するのは難しいことがあります。その場合には検査を受けてみるのが望ましいです。