過換気症候群の基礎知識
POINT 過換気症候群とは
呼吸には主に酸素を取り込み、二酸化炭素を排出するという役割があります。過換気症候群では喉や肺など呼吸器には問題がないにも関わらず、発作的に過呼吸になってしまうことにより、二酸化炭素が過剰に排出されてしまって血液がアルカリ性に傾くことで様々な症状がでます。若年の女性に多く見られやすい病気です。 過換気症候群の症状としては、口まわりや手足のしびれ、めまい、ふらつき、失神、震え、疲労感、発汗、動悸、吐き気、腹痛などが見られます。診断は症状や呼吸状態の観察によりある程度つきますが、採血検査で二酸化炭素が過剰に排出されていることや、血液がアルカリ性に傾いていることを確認することもあります。脳や肺などに何らかの病気がないか確認するための検査も必要に応じて行われます。 治療は混乱状態や不安感を落ち着かせ、ゆっくりと呼吸することが中心となります。必要に応じて気分が落ち着くような薬剤も使用されます。過換気症候群が心配な方や治療したい方は救急科や精神科を受診してください。
過換気症候群について
- 不安や興奮などによる、いわゆる過呼吸によって体内の二酸化炭素のバランスが崩れることで現れるさまざまな症状を指す
- 病気のメカニズム
- 呼吸が速くなる
- 呼吸が速くなると息苦しさを感じて余計に息を吸い込もうとするという悪循環になる
- 心配事や不安がなくても生じることがある
- 呼吸のし過ぎによって、体内の二酸化炭素の量が低下し過ぎてしまうことが、しびれなどの原因となる
- 主な原因
- 不安や心配
- ストレス
- 精神的な問題ではなく、ほかの病気が原因で過換気症候群を起こすケースもある
- 女性に多い
- 若年者に特に多い
過換気症候群の症状
- 主な症状
- 呼吸困難感
動悸 - めまい
- 手足の先のしびれや、手の指のつっぱり
- 重症の場合は、
失神 や全身のけいれんが起こることもある
過換気症候群の検査・診断
- 呼吸回数や呼吸の浅さ、興奮状態などが重要な手掛かりになる
問診 - 問診で自覚症状や、症状を起こしたきっかけについて確認する
- 過去に似た症状を起こしたことがないかを確認する
- 行われる場合がある検査
- 血液検査:動脈から採血し、血液中の酸素や二酸化炭素の値、アルカリ性の度合いなどを調べる
- 必要に応じて
胸部レントゲン や心電図 などの検査を行い、心臓や肺の病気がないかを調べることもある
過換気症候群の治療法
- 過換気の
発作 が起きているとき- 症状が落ち着くのを待つ
- 腹式呼吸をしたり、ゆっくりと話すなどして呼吸を落ち着ける
- 以前は袋を口にあてたまま呼吸を行わせる方法(ペーパーバッグ法)が推奨されていたが、現在ではあまり勧められない
- 低酸素状態になったり、二酸化炭素が逆に溜まってしまう可能性があるため
- 主な治療
- 呼吸方法の指導:ゆっくりとした呼吸をする
- 「発作症状が起きることがあるが、時間が経てば改善する。重症化することはない」ということが納得できるよう対話をする
- 薬物療法
抗不安薬 - 抗うつ薬
過換気症候群の経過と病院探しのポイント
過換気症候群でお困りの方
過換気症候群では、息苦しさや手足のしびれ、指のつっぱり、めまいといった症状が出現します。パニック障害などが原因でなることもありますが、肺塞栓症などの身体の病気が原因で同様の状態になることもあるため注意が必要です。
呼吸が浅く早くなって、手足がしびれたり動かしにくくなったりしたらまずは過換気症候群を考えます。過換気症候群は病気の名前というよりも、「過換気(過呼吸)状態になっていること」という状態を指す用語ですから、過換気状態にあることそのものはご自身や周囲の方で判断がつくかと思います。
過換気症候群を何度も繰り返している方の場合には、周囲の方が対処法を理解しておくことが役に立ちます。パニック障害が原因で過換気症候群が起こることは多いのですが、パニック障害による過換気症候群が命に関わったり重症化して入院が必要になったりすることはほとんどありません。
過換気症候群に陥っているときは、まず本人が安心できるような環境を整えることが大切です。横になったり座ったりできるようにする、ゆっくりとした深い呼吸ができるような声掛けを適宜行う、焦らせたり何かを迫ったりすることなく、時間をかけて一つずつ対応していけば良いことを伝える、といったことがあります。
何度も過換気症候群を繰り返している方では、パニック障害など精神面に問題がある可能性を検討する必要があります。その場合は精神科のクリニックで診療を受けるのが良いでしょう。パニック障害はよくある一般的な疾患なので、精神科のクリニックであればどこでも対応が可能です。