過換気症候群の検査について:血液検査など
過換気症候群は不安感や緊張感から過呼吸になってしまうことで起こります。診断は主にお医者さんの
1. 問診、診察
過換気症候群は、ストレスなど精神面の問題が原因で起こります。若い女性に多い病気ですが、ストレス社会の影響を反映して近年は中年男性でも増えてきています。なお、「過呼吸」と「過換気」はほぼ同じ意味と考えて差し支えありません。
過換気症候群かどうかを判断するために最も重要なのは問診および診察です。お医者さんの問診では以下のような点が確認されます。
【主な問診事項】
- 過呼吸が始まったのは精神的に負担のかかる状況だったのか
- 以前にも同様の過換気になったことがあるか
- 過換気症候群に典型的な症状が出ているかどうか(息苦しさ、
動悸 、めまい、不安感、手足や唇のしびれ、筋肉のけいれん、など) - 他の病気を起こしそうな背景がないか(持病や高齢など)
- パニック障害などメンタルの病気と診断されたことがあるか
過換気症候群は繰り返してしまうことが多い病気です。そのため、今までに同様の症状が出ているかどうかは重要な目安となります。
また、お医者さんの診察では以下のようなことが重点的に確認されます。
【主な診察事項】
- 呼吸のはやさ
- 血中酸素飽和度(パルスオキシメーターで測定)
- 脈のはやさ
- 血圧
- 体温
- 呼吸音 など
過換気症候群では呼吸や脈は速くなり、血中酸素飽和度は正常あるいは上昇します(98-100%くらい)。また、血圧や体温、呼吸音などでは異常が見つかりません。こうした条件を満たせば、メンタル面の問題が原因となった過換気症候群の可能性が高まります。しかし、他の身体の病気が原因で呼吸が速くなっている恐れもあり、診察だけで身体の病気の可能性を完全に除外することはできません。
問診や診察内容を総合的に判断して、身体の病気が隠れている可能性は考えにくく、ストレスなどに伴う過換気症候群だと考えられれば、過換気症候群としての治療を開始することになります。一方で問診や診察で、隠れた身体の病気がある可能性もあると考えられた人は必要に応じて検査を受けることになります。
2. 血液検査
問診や診察で検査が必要と判断された人は、血液検査を中心とした検査を受けることになります。過換気症候群では血液が正常よりもアルカリ性に傾き、カルシウムイオン濃度、リン濃度、カリウム濃度の低下が認められます。これらの異常が身体の痺れやけいれん、不安感や錯乱状態をもたらします。
また、より正確に過換気の状態を評価するために「
なお、過換気症候群に典型的な血液データが得られたとしても、それだけで過換気症候群とは断定できるわけではありません。身体の病気が原因で過呼吸になっていても、過換気症候群と同じようなデータになることもあるからです。身体の病気をチェックするためには、
3. 胸部レントゲン(X線)検査
胸部レントゲン(
過換気症候群の診断に直接役立たないのであれば、検査の必要性が乏しいように感じる人もいるかもしれません。しかし、過換気症候群は命に関わることが極めて珍しく、また安静して落ち着いていれば治る一方で、肺炎や気胸などは命に関わることもあり、治療が必要となります。
そのため、過換気症候群の診断では「おそらく過換気症候群だろう」で済ませるのではなく、「他の重大な病気の可能性が低いので、過換気症候群と考える」というスタンスになります。したがって初めて過呼吸で困った人は、ストレスの影響だろうと自己判断せず、医療機関を受診するのが望ましいと言えます。
4. 胸部CT検査
特に肺血栓塞栓症は過換気症候群に隠れて見つけにくい身体の病気と言われています。肺の血管の中などまで精密に観察するために、「
5. 心電図検査
心電図検査もここまで説明した検査と同様に、過換気症候群の診断に直接結びつく情報が得られるわけではありません。しかし、狭心症、心筋梗塞、肺血栓塞栓症などのように心臓や肺の血管に異常が起きている人や、重大な不整脈が起きている人を見つけるのに役立ちます。手軽に行えるため、胸の痛みや動悸などの症状がある人では優先される検査です。