[医師監修・作成]狭心症で気をつけてほしいこと | MEDLEY(メドレー)
きょうしんしょう
狭心症
心臓の血管が狭くなり十分な酸素が届かないことで胸痛などが起こる、心筋梗塞の手前の状態。原因は動脈硬化や冠攣縮などになる
18人の医師がチェック 209回の改訂 最終更新: 2021.12.14

狭心症で気をつけてほしいこと

狭心症の人には注意点がいくつかあります。生活上の注意点を知っておくことは大事ですし、重症になりそうなサインを知っておくことで有事に素早く受診することも大切です。

1. 狭心症が疑われたら何科にかかると良いのか?

狭心症は心臓の血管(冠動脈)が狭くなる病気です。放置すると病状が進行して心筋梗塞になることがあります。そのため、狭心症が疑わしい症状を感じたら医療機関で検査してもらうことが望ましいです。(狭心症の症状に関してはこちらを参考にして下さい。)

狭心症かもしれないと思ったときにどこにかかれば良いのか分からないという人もいると思います。狭心症を考えたときには循環器内科を受診して下さい。また、心臓血管外科や救急科でも診察を受けられます。

また、緊急で受診する必要がある場合があります。どういう場面が緊急事態なのかについては下の章で説明しているので参考にして下さい。

2. 狭心症は運動して良いのか?

狭心症は重症になればなるほど安静が必要になります。一方で、運動をしない状態が続けば続くほど、筋力や心肺機能が低下します。適度な運動を行うことで心機能を維持することを心臓リハビリテーションと言い、心臓病ではとても重要です。

狭心症では運動で症状が悪化するため、狭心症が治っていないうちに運動を行うことはおすすめできません。狭心症を治療してから運動を再開すると良いです。やれる範囲で運動することは心臓リハビリテーションになります。

心臓リハビリテーションでは運動の程度が強すぎても弱すぎてもいけません。身体に負荷がかかりすぎないことが重要になってきます。どのくらいの負荷をかければ良いのかは自分の狭心症の状況によって異なりますので、医師や理学療法士にどういった運動をしたら良いかを確認するようにして下さい。

心臓リハビリテーションでは冠動脈狭窄の改善や心筋血流の改善が報告されていますが、これ以外にもリラックスなどの精神的効果も期待できるとされています。心臓リハビリテーションに関して詳しく知りたい方は狭心症の治療のページを参考にして下さい。

参考文献
・日本循環器学会, 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン2012

3. 狭心症の人はタバコを吸って良いのか?

喫煙すると狭心症になりやすくなります。これはタバコを吸うことでニコチンや一酸化炭素が動脈硬化を引き起こすからと考えられています。動脈硬化が起こった血管は段々と内腔(血液が通る部分)が狭くなります。そのため、タバコは冠動脈を狭くして狭心症を起こしやすくします。

狭心症が進行すると心筋梗塞になります。男女別に喫煙によってどのくらい心筋梗塞になりやすくなるかについてのデータがあるので紹介します。

【喫煙による心筋梗塞への影響】

 

男性

女性

非喫煙者に対する喫煙者の心筋梗塞になりやすさ

3.64倍

2.90倍

男女ともに喫煙の心筋梗塞への影響は大きいです。タバコを吸わないことはとても重要ですし、今すでに吸っている人は禁煙することが大切です。一方で、ニコチンには中毒性があるため、禁煙は簡単ではありません。最近の禁煙外来は薬物療法も非薬物療法も充実しているので、禁煙したいと考えている人は一度医療機関を受診して相談してみて下さい。

参考文献
・Baba S et al., Cigarette smoking and risk of coronary heart disease incidence among middle-aged Japanese men and women: the JPHC Study Cohort I. Eur J Cardiovasc Prev Rehabil. 2006 Apr;13(2):207-13.

4. 狭心症の人はアルコール(お酒)を飲んで良いのか?

古くから「酒は百薬の長」という言葉があるように、アルコールは体に良いという考え方があります。確かにアルコールは狭心症の原因とはならないと考えられています。しかし、過度な飲酒は心臓に負担がかかるため避けるようにして下さい。量が過ぎれば治療の妨げになる可能性があるので、狭心症の人は禁酒するのが望ましいです。

5. 狭心症の人の食事はどういったことに気をつけると良いのか?

狭心症は動脈硬化が主な原因です。狭心症の人の食事は動脈硬化を進めないようなものを選ぶことがポイントになります。特に動脈硬化を引き起こしやすい病気に注意しなければなりません。

動脈硬化を引き起こしやすい病気は次のものです。

これらの原因となるような食生活は避けたほうが良いです。特に塩分や糖質、脂質の摂りすぎには注意が必要です。次のことに気をつけてください。

  • 塩分を取りすぎない
    • 一般的な目標は1日に6g以下の塩分が目安になりますが、心不全の病状によってはもっと厳しい塩分制限が必要な場合があります
  • カロリーを摂りすぎない
    • 身長と日々の生活の運動強度によって推奨される1日の摂取カロリーが簡易的に計算できます(表1)
    • 一日の適切な三大栄要素のバランスを参考にする
      • 炭水化物:50-60%
      • 脂質:20-25%
      • タンパク質:15-20%
  • 脂質を摂りすぎない
  • 食物繊維を摂取する

【表1】

生活における運動の強度

係数

軽度(デスクワーク中心)

25-30

中等度(立ち仕事中心)

30-35

重度(力仕事中心)

35-40

◎1日の推奨摂取カロリー=身長(m)✕身長(m)✕22✕上の係数

また、抗酸化物質が心筋梗塞を予防するという報告があります。食事で摂れる抗酸化物質は以下のものがあります。

  • ビタミンE
  • ビタミンC
  • カロテノイド(β-カロテンなど)
  • ポリフェノール(カテキン、アントシアニン、イソフラボン、クロロゲン酸、レスベラトロールなど)

これらを摂取するためには、野菜・果物・お茶・穀物などが推奨されます。とは言え、食事の栄養素はバランスが大事ですので、どんなに良い効果があると考えられるものであっても偏った摂取は良くありません。具体的な食事内容は管理栄養士に相談してみて下さい。

参考文献
・日本循環器学会ほか, 虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2012年改訂版)

6. 狭心症の人の服薬について

狭心症では内服薬が重要になります。状態を改善する薬として、心不全を改善する薬や冠動脈を広げる薬がよく使われます。また、心臓カテーテル治療で狭心症を根治した場合にも、冠動脈を拡げるためのステントを留置したあとには抗血小板薬(血をサラサラにする薬)が必須です。

これらの治療薬の内服を欠かすと状態が悪化します。ひどい場合には冠動脈を拡げるために留置したステント内に血栓などが詰まってしまうことがあるため、内服を忘れないような工夫が必要です。お薬カレンダーを用いたり携帯のアラームを用いたりすると定期的な内服を実行できるようになります。但し、本人の認知機能が落ちていたり、家族の協力が得られなかったりした場合には、内服を継続することが難しいので、治療法が限られてきます。

7. 狭心症に気をつけなければならない年齢はあるのか?

狭心症は年齢が上がれば上がるほど起こりやすくなります。これは動脈硬化が年齢とともに進行することを考えたら、至極当然のことです。加齢とともに狭心症に気をつけなければなりません。

特に女性は閉経後に狭心症が起こりやすくなります。つまり、30歳代以下の若い人の胸痛は狭心症の可能性が低いですが、50歳を超えると段々と狭心症による胸痛が起こりやすくなります。

一方で、狭心症の中でも冠動脈が痙攣することで起こるタイプ(冠攣縮性狭心症)は比較的若い年齢で起こることがわかっています。とは言え、30歳代以下では冠攣縮性狭心症もあまり起こらないので、胸痛の原因は狭心症以外であることが多いです。

参考文献
・日本循環器学会ほか, 冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)

8. どんな場合には救急車を呼んででも直ぐに病院に行く必要があるのか?

狭心症が疑われる場合には、医療機関を受診して検査してもらう必要があります。一方で、中にはすぐにでも受診する必要があるシチュエーションがあります。次のシチュエーションにあてはまる場合にはすぐに救急車を呼んででも迅速な受診が必要になります。

急速に息が切れるようになった

狭心症が重症になると、心筋梗塞に至り、重症の急性心不全になることがあります。急性心不全になると急速に息切れが出現し、進行すると身体を動かしていなくても息が切れるようになります。また、重症の狭心症が心不全を起こした場合は命に関わります。進行するとともにどんどん息切れが悪化して動けなくなりますので、急に息切れを感じた人は救急車を呼んででも医療機関を受診するようにして下さい。

激しい胸痛や絞扼感(胸が締め付けられる感覚)が持続する

人間が胸痛を感じるとき、きりきり鋭く痛むと表現したり、締め付けられるように苦しいと表現したりとさまざまです。

胸痛は狭心症の代表症状です。狭心症の胸痛はたいてい10分以内に治まりますが、狭心症が進行して心筋梗塞に至った場合には胸痛は30分以上持続することがほとんどです。そのため、胸痛や胸部絞扼感が持続する場合には狭心症が悪化している可能性があるので要注意です。

一方で、心筋梗塞以外でも胸痛は出現します。胸痛が出現しやすい病気を以下に示します。

つまり、胸痛を感じたら狭心症や心筋梗塞が疑わしいが、原因は他にも考えられるということです。他に考えられる原因を考えながら、狭心症や心筋梗塞と分かれば直ちに治療を行います。

胸痛の原因を考えるには、胸痛の性質を考えることも大事です。狭心症では鋭い胸痛が出現することはあまりありませんが、締め付ける様な痛みが出るのが多いことが分かっています。

意識がもうろうとする

狭心症が重症になって心筋梗塞になると、脳に必要な血液を送れなくなることがあります。すると意識が朦朧として、最終的には意識を失ってしまいます。この状態は非常に危険です。胸痛や息切れなどの症状のある人が意識朦朧としてきたら、必ず医療機関を受診して下さい。その際の移動手段として救急車を用いることは問題ないです。